【加害者向け】窃盗事件で警察は動かないケースとは?事件を起こしたときの対応も解説
もしも窃盗をしてしまったら、警察からの連絡がなく日常生活も変わりないまま過ごせているからといって安心してはいけません。
窃盗事件は現行犯でなくても逮捕される可能性があり、いつ警察がやってくるのかはわかりません。
では、窃盗事件が起こると警察はどれくらいの確率で動くのでしょうか。
また、どのように動くのでしょうか。
または警察が捜査をしないケースにはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、窃盗事件に関する警察の動きや、窃盗を犯してしまった方がとるべき対応方法について詳しく解説します。
つい出来心でものを盗んでしまい悩んでいる方、不安な方はぜひ参考にしてください。
【窃盗罪の検挙率】窃盗事件で警察が動かない可能性はどれくらい?
窃盗事件を起こしてしまい、警察に被害届が提出されれば、たとえ証拠がないと思われる状況であったとしても、警察が捜査を開始する可能性はあります。
とくに、犯行を目撃していた方がいた場合や、監視カメラに犯人らしき人物が映っている場合など、警察によって事件性があると判断されたときは捜査がおこなわれます。
では、窃盗事件の検挙率はどれくらいなのでしょうか。
2019年〜2023年の窃盗犯の認知件数と検挙件数から、それぞれの年の検挙率を見てみましょう。
【窃盗犯の認知件数と検挙件数】
年次 |
認知件数 |
検挙件数 |
検挙率 |
2019年(令和元年) |
532,565件 |
180,897件 |
33.97% |
2020年(令和2年) |
417,291件 |
170,687件 |
40.90% |
2021年(令和3年) |
381,769件 |
161,016件 |
42.18% |
2022年(令和4年) |
407,911件 |
148,122件 |
36.31% |
2023年(令和5年) |
483,695件 |
157,115件 |
32.48% |
データを見ると、おおむね3割から4割の窃盗事件は検挙されていることがわかります。
そのため、窃盗をしてからしばらく音沙汰がなくても何らかの対処をしたほうが、あとあと逮捕されるリスクを軽減できるでしょう。
窃盗事件を起こしたと思っても警察が動かない可能性がある2つのケース
窃盗事件を起こしてしまったと加害者自身が思っていても、警察が動かないこともあります。
以下では、警察が動かない可能性がある2つのケースについて紹介します。
1.窃盗罪が成立しているとはいえない場合
窃盗罪の成立要件を満たしていない場合、窃盗罪が成立せず、警察も動くことがありません。
成立の条件のことを法律用語では「構成要件」といいます。
具体的な、窃盗罪の構成要件は以下の4つです。
取得したものが、他人の財物である
1つめの構成要件は、取得したものが自分以外の他人が占有しているものであることです。
占有とは、自分が利益を受ける意思を持ってものを支配している状態を指します。
そのものを実際に持っている人ではなく、支配している人が占有者ということです。
つまり、他人が所持していたものを盗むだけでなく、他人から借りていたものを自分が取得したとしても窃盗罪の構成要件に該当します。
逆に誰も占有していない場合には、窃盗罪は成立しないことになります。もっとも、この場合には占有離脱物横領罪(刑法254条)等が成立する可能性があります。
窃取した
2つめの構成要件は、窃取です。
他人である占有者の意思に反して、自分や第三者の占有下に移すと窃取となります。
他人である占有者が知らないうちにおこなうスリや万引きはもちろん、占有者が気づくひったくりや無理やり奪うようなケースも窃取にあたります。
反対に、自分がそのものを持っていくことを占有者が知らない場合でも、「ご自由にお持ちください。」と書かれた看板の下にある粗品等を持って行ったとしても、占有者の意思に反していることにはならないので窃取にあたりません。
故意があった
3つめの構成要件は、故意があることです。
故意とは、罪を犯す意思のことです。
自分のおこないが犯罪にあたるとわかっていて、わざとおこなうと故意があることになります。
つまり、勘違いでほかの人のものを自分のものだと思って持って帰ってしまった場合には、故意がないこととなるため窃盗罪にはなりません。
例えば、飲食店で隣の席に座った他人のスマートフォンが自分のものと酷似していたため、自分の物だと思ってカバンの中に入れたとしても、「他人の物を盗もう」と思って行った行為ではないため故意が認められません。
ただし、他人の物だと気づいた後で、中古ショップに売却しようとするなど所有者でなければできない処分をしようとしただけで(その処分を完了しなくても)横領罪(刑法第252条)が成立する可能性があります。
不法領得の意思があった
4つめの構成要件は、不法領得の意思です。
これは、権利者を排除して自分のものにする意思と、それを利用したり処分したりする意思のことをいいます。
そのため、他人の物を勝手に奪って使ったとしても、あとから返すつもりだったというケースでは、窃盗罪にならない可能性があります。
例えば、駅の駐輪場に鍵が刺さったままの自転車に勝手に乗り、近くのコンビニまで往復して元の場所に自転車を返した場合には、自転車を「自分の物にしよう」という意思がないため、窃盗罪には該当しません。
しかし、占有者の意思に反して勝手に物を使用しておいて「あとから返すつもりだった」というのはなかなか信じてもらえません。
「あとから返すつもりだった」ことを立証するのは難しいため、返すつもりだったという理由で窃盗罪による処分を免れる可能性は低いでしょう。
2.親族相盗例に該当している場合
窃盗罪には、刑法第244条1項に定められた「親族間の犯罪に関する特例」という例外があります。
これは、窃盗罪に限らず親族間で罪を犯したときは刑罰が免除されるという特例です。
たとえば、息子が親の財布から勝手にお金を持ち去ったり、妹が姉のバッグを勝手に使ってしまったり、妻が夫の時計を売ってしまったとします。
これらの行為は窃盗罪の構成要件に該当し、他人であれば窃盗罪が成立する状況であったとしても、親族間でおこなわれた場合は親族相盗例が適用されます。
民法第725条では、親族の範囲を以下のように規定しています。
- 6親等内の血族
- 配偶者
- 3親等内の姻族
親族相盗例で刑が免除されるのは、上記の親族のうち加害者が被害者(所有者・占有者共に)の配偶者・直系血族(親や子等)又は同居の親族である場合です。
そのため、窃盗の加害者が上記に該当する場合、警察に通報しても立件される可能性は低いと言えます。
また、配偶者・直系血族(親や子等)又は同居の親族以外の親族間で窃盗罪が行われた場合、被害者からの告訴なしには起訴できません(刑法第244条2項)。
これらの親族が加害者である場合、被害者である親族から刑事告訴がなされないときには警察に通報しても立件される可能性は低いでしょう。
警察が動く・動かないにかかわらず窃盗事件を起こした場合にとるべき対応
実際に窃盗事件を起こしてしまったら、どうすればよいのでしょうか。
逃げてしまいたくなる方も少なくありませんが、日本には多くの防犯カメラなどが設置されており、逃げ切ることは難しいといえます。
そこで、警察が動く・動かないに関わらず窃盗事件を起こした場合にとるべき対応について解説します。
1.警察に逮捕される前に自主する
窃盗事件を起こしてしまったら、警察に逮捕される前に自首しましょう。
自発的に犯人が捜査機関に出頭し、罪を申告することを自首といいます。
自首は、捜査機関が犯人を特定する前に行わなければいけませんが、自首することで刑の減軽などが見込めます。
しかし、すでに犯人が特定されていれば自首は成立しません。
そのため、自らが犯人であることを示す証拠が残っている可能性が高い場合は、一刻も早く自首すべきです。
特定されてからでは刑の減軽などの効果が期待できなくなるからです。
なお、自首をする際は、弁護士にアドバイスをもらい、弁護の依頼をしたうえで出頭するのが賢明です。
弁護士に依頼することは不起訴やさらなる刑の減軽につながるでしょう。
2.被害者と示談交渉をする
日本では、検察官に起訴されて刑事裁判になると、有罪になる確率が99%以上だとされています。
そのため、窃盗事件で逮捕された際は、裁判になる前に不起訴処分とされることを目指すことが大切です。
裁判になれば、基本的には有罪となり前科がつくと考えてよいでしょう。
前科がつけば、仕事や近隣との関係など社会生活に影響が生じてしまいます。
窃盗事件で裁判になるのを防ぐためには、被害者と示談することが大きなポイントとなります。
被害者との示談が成立すると、捜査機関からは被害が回復されたと捉えられます。
そのため、厳しい処分を免れられることが期待できるのです。
そのほか、初犯の場合や悪質性が低い事件の場合、不起訴処分となる可能性は高いでしょう。
3.弁護士に相談・依頼する
自首をするときはもちろん、逮捕される可能性がある場合でも、弁護士に相談・依頼するのが一番です。
弁護士であれば自首をする際の注意点や示談交渉の進め方など、窃盗事件の刑事処分を少しでも軽くするための方法を多く知っています。
刑事事件においては、状況に応じて何をするべきか素早く判断しなければなりません。
なぜなら、警察に逮捕されてから検察に事件が送られるまで48時間しかないなど、刑事裁判までの流れには時間制限があり、早期対応がポイントだからです。
そのため、事件を起こしてしまったら、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
窃盗事件に関するよくある質問
ここからは、窃盗事件に関するよくある質問に答えていきます。
Q.窃盗事件の証拠には何があるか?
窃盗事件の際に証拠として採用される可能性が高いものには、次のようなものがあります。
- 防犯カメラの映像
- 犯行の目撃者による証言
- 犯行現場に残る指紋
- 窃盗品を所持していること
- 現場の下調べをしていた事実
また、自白も高い証拠能力を持ちます。
Q.窃盗の証拠がない場合にはどうなるか?
捜査を進めても窃盗の証拠が見つからない場合、不起訴処分となるでしょう。
不起訴処分になるのは、嫌疑不十分・嫌疑なし・起訴猶予であるときです。
嫌疑不十分とは、被疑者が事件を起こした疑いはあるものの、確実に盗んだ証拠がなかったり、提出された資料やものの証明力が低かったりするときに不起訴となることを指します。
嫌疑なしとは、捜査の結果、被疑者が事件を起こしたわけではないと証明でき、疑いが晴れたときに不起訴となることです。
真犯人が見つかったり、事件発生時に被疑者が犯行不可能な場所にいたと証明できたりした場合は、嫌疑なしになります。
起訴猶予とは、有力な証拠があり、被疑者の犯行であることに間違いないはないものの、初犯で窃盗したものが安価であるなど被害が軽微な場合や、示談が成立し被害が回復されその他情状から再犯可能性がないと認められた場合などに不起訴処分が下されることをいいます。
Q.窃盗罪で有罪判決になった場合の刑罰は?
刑法第235条では、窃盗罪の法定刑について、以下2つを規定しています。
- 10年以下の懲役
- 50万円以下の罰金
懲役は最低30日以上、罰金は最低1万円以上です。
減刑された場合、罰則の上限と下限が半分になるため、15日以上5年以下の懲役または5,000円以上25万円以下の罰金となります。
なお、窃盗罪には窃盗未遂罪があるため、盗もうとして失敗した場合にも適用されます。
さいごに|窃盗事件が得意な弁護士を探すならベンナビ刑事事件がおすすめ
窃盗事件を起こしても警察が動かないケースは存在します。
しかし、警察が動かないからといって安心していてはいけません。
捜査が進めば逮捕、勾留される可能性もあります。
逮捕や起訴の可能性を軽減するためには、自首や被害者との示談交渉が非常に重要です。
なるべく早く弁護士に相談をし、適切な対応をおこないましょう。
刑事事件について、弁護士なしで取り調べなどに応じるのは大変なことです。
万が一、ご自身が捜査機関に伝えた意図と違う捉えられ方で供述調書記載されると、それを基に起訴される等不利な結果に陥りかねません。
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