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レジ金横領の証明に有効な証拠とは?証拠が集まったあとの対処法も解説

原綜合法律事務所
原 隆(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
監修記事
レジ金横領の証明に有効な証拠とは?証拠が集まったあとの対処法も解説

従業員がレジ金を盗んでいるかもしれないというとき、経営者や上司は、とても残念な気持ちになるものです。

指摘しづらいと思ったとしても、放っておくと被害が大きくなりかねないため注意が必要です。

しっかりと証拠を集め、適切な対応をし、解決するための準備をしていきましょう。

従業員がレジのお金を盗むと、横領罪が成立するという考え方もありえます。

しかし、横領罪が成立するためには、自己が占有する他人のものであることや委託信任関係があったことなどの要件が求められます。

バイトやパートのレジ係の職務などには、多くの場合レジ金の管理が含まれません。

そのため、レジのお金を盗む行為は、横領罪ではなく窃盗罪として扱われることが一般的です。

では、従業員の窃盗行為を追及するには、どのように証拠を集めればよいのでしょうか。

また、盗まれたお金を返してもらうために、何をすればよいのでしょうか。

有効な証拠の種類や収集方法、お金を返してもらうためにできる手続きなどを紹介します。

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レジ金横領(窃盗)の証拠として最も有効なのは監視カメラの映像などの直接証拠

レジ金を盗まれた際、もっとも有力なのは監視カメラの映像などの直接証拠です。

証拠には、主に直接証拠と間接証拠があり、それぞれ次のような定義となります。

  • 直接証拠…主要な事実を直接的に証明できる証拠
  • 間接証拠…主要事実を推認させる事実があったと証明できる証拠

直接証拠は、確実にその従業員がお金を盗んだと証明できる証拠であり、監視カメラの映像や犯行をしている最中の目撃証言などが該当します。

一方、間接証拠は、被告人が犯行時刻の前後にレジの近くでそわそわしているのを目撃されていたことや、レジからなくなった分と同じ金額のお金を持っていたことなど、犯行が疑われるような状況を指します。

もしも従業員がレジから現金を着服した疑いがある場合には、店舗に設置している防犯カメラ映像を確認しましょう。

現金を取り出している場面が映っていれば、直接証拠になるためです。

常習性がありそうな場合であれば、複数回の映像があると、より強固な証拠となります。

通常、防犯カメラの映像は時間が経つと消えてしまいます。

ハードディスクやSDカード式であれば、約15〜75時間、クラウド保存型であれば、契約日数分の保存が可能ですが、3日や2週間など、店舗によってさまざまです。

管理職であれば、自店では防犯カメラ映像の保存期間がどれくらいなのか、把握しておくとよいでしょう。

映像が消えてしまう前に、早めにバックアップしておくことが重要です。

犯行の瞬間が鮮明に映っていなければ、証拠として不十分

たとえレジ周辺の状況を撮影している防犯カメラがあったとしても、映像が不鮮明であるために直接証拠として不十分なケースもあります。

顔や手元がはっきりと見えなければ、直接証拠としての効力は低くなります。

暗い店内での犯行など、防犯カメラで判断しづらい状況を証拠にする場合、鮮明に映っているかどうか確認することが重要です。

また、たとえ鮮明な映像だったとしても、犯行そのものが確認できないために証拠として不十分となることがあります。

たとえば数秒ごとに撮影されるコマ送りタイプの防犯カメラを使っている場合、最初のコマではレジの引き出しを従業員が開けている状況が写っていて、次のコマでは既に引き出しが閉まっているなどのケースがあります。

このとき、犯行そのものは映っていないため、証拠としての価値が低くなると考えてください。

確実に犯行におよんだと断定できない映像を警察に持って行っても、告訴をするための証拠としては不十分と判断される可能性があります。

そのようなときは、ほかにも証拠を集めるなど、準備をしましょう。

直接証拠がない場合は、犯人であることを客観的に証明できる間接証拠を探す

直接証拠がなくても、間接証拠なら見つかる可能性があります。

たとえば、該当の従業員が犯行時刻の前後に怪しい動きをしてなかったか、ほかの従業員から目撃情報を集めましょう。

ほかにも、レジ金を盗まれたと証明できる有効な間接証拠の例を、次章で紹介します。

そもそも間接証拠は、直接証拠に比べて価値が低いのではないかと考える方もいるでしょう。

しかし、間接証拠をたくさん用意できるほど、立証しやすくなるため、可能な限りの証拠を集めることが大切です。

レジ金横領(窃盗)の犯人を証明するのに有効な間接証拠の例

ここからは、証拠としての価値が高いと考えられる間接証拠の例を、4つ紹介します。

レジの集計記録・データ | レジ金盗難時にレジを操作していた従業員を特定する

レジ金横領(窃盗)の犯人を証明する場合、レジの記録を確認し、レジ金が盗難された日にレジを操作していた従業員を特定する方法があります。

常習の場合、現金が不足している日の大半に、特定の従業員がレジを触っていたとわかることがあり、犯人を推認できる間接証拠となるケースがあります。

操作履歴が残るレジであれば、会計時以外に引き出しを開けている記録などを確認するのもよいでしょう。

セキュリティ上、従業員それぞれが個別のカードやパスワードを使わなければ操作できないような仕組みのレジであれば、より特定しやすくなります。

従業員のシフト | レジ金盗難時、現場にいた従業員を特定する

お金が盗まれた期間に在籍・勤務していた従業員のスケジュールやシフトを確認することで、レジ金横領(窃盗)の犯人を特定できることもあります。

レジ担当をしていない従業員が、レジ担当者が席を離れた隙に犯行におよんだ可能性も考えられます。

出勤予定ではないにも関わらず、忘れ物を取りにきたなどの口実で店にいたスタッフがいる可能性も考えられます。

レジ金がなくなったときに現場にいた従業員は誰なのか、疑わしい人物がいないかを調べましょう。

従業員がお金に困っていたり金遣いが突然荒くなったりした事実

従業員がお金に困っていたという事実や、金遣いが荒くなったという事実も、間接証拠になり得ます。

家族が借金をして困っている、これまでよりも節約しているようであるなど、お金に困っているような気配がなかったか、あるいはそのような話を聞いたことがなかったか、ふり返ってみましょう。

ブランドの服を着てくるようになったり、高級なレストランに行くようになったりという金遣いが荒くなるような行動も、要チェックです。

有効な証拠が集まらないときの対応例

上記のような間接証拠だけでは、窃盗の証拠として不十分と判断されることがあります。

間接証拠によって犯行におよんでいる従業員がある程度特定されたら、なるべく鮮明に映せる防犯カメラを用意する、サクラの顧客を用意して確実に犯行現場を押さえるなど、明確な証拠を確保しましょう。

サクラの顧客を用意する際の具体的な方法は、紙幣の番号を控えておき、あとでレジに同じ紙幣が残っているかを確認するなどの方法があります。

1000円札では釣銭として客に渡してしまう可能性があるため、この方法で証拠を確保する際は、1万円札を使いましょう。

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証拠が集まったあとに必要となる主な対応

証拠が集まったら、従業員本人への聞き取り調査などをすることになるでしょう。

従業員として信頼していた仲間の犯行に関する証拠を集め、聞き取りをすることは、心苦しいかもしれません。

しかし、被害が大きくなるほど真っ当に働いているほかの従業員や客に迷惑がかかることになります。

心を決めて、次のような対応を、順を追って検討しましょう。

まずは本人と話し合い、レジ金を盗んだ事実を認めさせる

まずは、本人と話し合うことが大切です。

盗んだ事実を認めさせるため、話し合いの場を設けましょう。

素直に認めて反省し、返金してくれる可能性もあります。

また、話し合いだけでは素直に反省する姿勢見られない場合でも、証拠を見せることで返金してもらえるケースもあるでしょう。

従業員を疑うのは気分のよいことではありませんが、言い分を変えられるリスクに備えて、記録を残すことをおすすめします。

話し合いの場では従業員が窃盗の事実を認めていても、あとで主張をひるがえし、認めない状況になる可能性も考えられるからです。

記録を残す際には、罪を認めている事実だけでなく、いつ・どこで・どれくらいの金額を盗ったのか、返金するつもりがあるのかなどをしっかりと聴取し、文書などで残しましょう。

また、パソコンにデータとして残すだけでなく、書類に名前や押印をさせたり、ボイスレコーダーに録音しておいたりすることが賢明です。

従業員がレジ金を盗んだ事実を認めない場合

罪を認めていない場合であっても、記録に残すことはとても重要です。

言い分を全て記録しておけば、集めた証拠と矛盾する点や、説明の非論理的な点などが見えてくるでしょう。

従業員が罪を認めない場合、法的措置をとるときのために、録音しておくのもよいでしょう。

反社会的と判断されるような方法を避け、適切に録音すれば、秘密録音も証拠能力が否定されません。

法的措置を考えるうえで、話し合いに参加していない弁護士などに依頼をする際にも、録音したデータは有効です。

必要に応じて法的な手続きも検討する

証拠が揃ったら、法的な手続きを検討しましょう。

とくに、従業員が容疑を認めない場合や反省していると感じられない場合のほか、返金してくれない場合には、法的な手続きをとるとよいでしょう。

窃盗被害における法的措置としては、刑事告訴または損害賠償請求があります。

刑事告訴

刑事告訴とは、警察や検察に告訴状を提出し、捜査を経て裁判手続きを進めることをいいます。

会社から捜査機関に対して、窃盗をした従業員とその犯罪事実を申告し、処罰を求めるのです。

レジ金を盗まれたと証明できる客観的な証拠を、告訴状とともに提出することで、告訴は受理されやすくなります。

証拠が十分でない場合は、捜査をしてもらえない可能性が高いでしょう。

刑事告訴をして起訴され、有罪判決が出れば、そのあとに民事訴訟をおこなった場合に認められ、返金される可能性が高まります。

ただし、従業員が盗んだレジ金をすでに使い込んでいる、多額の借金があるなど、支払いが困難な状況であれば、後の民事訴訟の判決として賠償請求が認められたとしても、スムーズに戻ってくるとは限りません。

損害賠償請求

損害賠償請求は、民事上の手続きであり、相手の不法行為や契約違反による損害の賠償を求める手続きです。

たとえ、刑事事件として警察が捜査をしてくれないケースでも、あるいは起訴されなかったり有罪判決でなかったりした場合でも、窃盗をした従業員に対して、損害賠償を請求できます。

ただ、刑事事件の場合と同様、すでに該当の従業員がお金を使い切っていた場合や、返金できるだけの資産を持っていない場合は、すぐに戻ってこないと心得ましょう。

従業員の親など、身元保証契約を締結していた場合であれば、身元保証人に対して損害賠償請求できる可能性があります。

しかし、身元保証期間は、契約書で期間を設定していなければ3年、期間を定めていたとしても最長5年と制限されています。

そもそも身元保証契約をしていたのかどうかや、期限内かどうかなどを確認することが重要です。

給与天引で賠償させるのはNG

注意点として、賠償させたいからといって給料から天引きをするのはやめましょう。

労働基準法第24条を根拠とする賃金全額払いの原則では、法令で認められている源泉徴収や社会保険料控除などのほかに、賃金の一部を差し引くことは原則禁止されています。

従業員の同意を得ていれば可能ですが、実際は労働者保護の観点から同意が妥当かどうかの検討が必要です。

あとから不当だとして逆に訴えられる可能性があるため、給与からの天引きで賠償させることには慎重にならなければなりません。

従業員の処分を決める

窃盗をしていた従業員の処分を決める際にはまず就業規則をチェックしましょう。

就業規則に解雇事由や懲戒解雇事由として、横領・窃盗・着服などの記載があれば、従業員を解雇できます。

また、具体的な犯罪の内容が記載されていなくても、前各号に準ずる事由などとして、解雇事由や懲戒解雇事由が規定されていれば、懲戒解雇という方法が考えられます。

就業規則にそのような記載がない場合は普通解雇となります。

懲戒解雇も普通解雇も、企業側の一方的な通知で従業員をやめさせるものであり、労働者を保護する観点から、厳しい制約が設けられています。

そのため不当な解雇と判断されるリスクがあり、これまでの判例には、不当解雇として、裁判所から多額の支払いに加え、雇用継続を命じられたケースもあります。

そのため、自社で処分を決める前に、解雇できるかどうか、解雇するためにどうすればよいのか、解雇ができない場合にはどのような手段があるのかなどについて、弁護士に相談することをおすすめします。

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対応に困ったら弁護士へ相談するのもおすすめ

従業員がレジ金を盗んでいる場合、自店での調査がどの段階にあるときでも、弁護士に相談することでスムーズな解決を期待できます。

うまく証拠を集める方法や、集まった証拠を用いて従業員に罪を認めさせる方法のほか、責任を追及する方法など、法的な観点からさまざまなアドバイスをもらえるでしょう。

また、従業員との話し合いの場に第三者として同席してもらうことも可能です。

弁護士に同席してもらうことで、レジ金を盗んだ従業員が嘘をつくことに後ろめたさを感じ、素直に罪を認めてくれるかもしれません。

ほかにも弁護士を頼れば、従業員の説明や言い分に対し、客観的な立場から意見やアドバイスをしてくれることもあるでしょう。

さらに弁護士なら、刑事告訴ができるか、民事上の損害賠償請求をするのは現実的か、それぞれどのような手続きをおこなえばよいのかなど、さまざまなアドバイスをしてくれます。

また法的手続きの代行を任せることも可能です。

さいごに | 従業員のレジ金横領(窃盗)については弁護士へ相談を!

従業員がレジ金を盗んでいる疑いがある、または実際に盗んでいたというときは、弁護士を頼りましょう。

自分たちで解決できるのが一番だと考える雇用主もいるでしょう。

しかし内々で解決しようとしても、より大きなトラブルを招いてしまう可能性があるため注意が必要です。

被害額がこれ以上大きくならないうちに、なるべく確実に返金されるよう、ぜひ専門家の力を借りてください。

窃盗被害による返金を求めるのであれば、債権回収を得意とする弁護士に依頼するとよいでしょう。

あるいは、刑事事件の被害者の相談に応じている弁護士への依頼が適切です。

全国の法律事務所が多数登録している、法律事務所検索サイト「ベンナビ」を活用し、状況に合った弁護士を探しましょう。

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この記事の監修者
原綜合法律事務所
原 隆(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修) (福岡県弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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