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クレプトマニア(窃盗症)とは|特徴やきっかけ・治療方法を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

クレプトマニア(くれぷとまにあ)とは、窃盗をおこなう緊張感と、窃盗後の解放感からくる精神的な起伏を好み、窃盗を繰り返してしまう精神障害です。

窃盗癖ともいわれ、利益目的の窃盗(万引き)とは区別されます。

犯罪自体は数百~数千円の物を万引きするような軽微なものですが、何度も万引きを繰り返してしまい、逮捕回数が複数回に及ぶことも少なくありません。

その結果、社会生活へも支障をきたしてしまうので、軽く考えてはいけない問題です。

もし、ご家族が何度も万引きを繰り返してしまうのであれば、クリプトマニアになっている可能性があります。

利益目的の万引きとは異なるので、理解を深めて適切な対処をしなければなりません。

本記事では、クレプトマニアの特徴や治療法、逮捕されたときに弁護士へ依頼するメリットなどを解説します。

ご家族が万引きを繰り返し何度も逮捕されている方へ

ご家族にクレプトマニアの疑いがあったら、クレプトマニアに理解のある弁護士に相談することをおすすめします。

  • クレプトマニアに特化した弁護活動をしてもらえる
  • 早期釈放・減刑を目指せる
  • 再犯防止のために必要なことを教えてくれる

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クレプトマニアの特徴|主な原因ときっかけ

クレプトマニアとは、窃盗癖とも呼ばれる窃盗を止めることのできない精神障害のひとつです。

犯罪行為自体は、数千円程度の軽微な万引きを繰り返すことが見受けられます。

  1. お金はあるのに窃盗(万引き)を繰り返す
  2. ストレスの発散にしている可能性が高い
  3. 窃盗する物は自分もあまり必要としていないもの
  4. クレプトマニアとなるきっかけ
  5. うつ病との関係性

お金はあるのに窃盗(万引き)を繰り返す

通常、窃盗をおこなう動機は「その物が欲しいけど、お金が足りなかった」といった、利益目的の動機があるはずです。

しかし、クレプトマニアの人は「窃盗している時のスリルが欲しい」「ダメだと分かっているのに止められない」といったような、利益目的と関係ない理由で窃盗を繰り返してしまいます。

ストレスの発散にしている可能性が高い

クレプトマニアになってしまう大きな原因が、ストレスや依存によるものです。

ストレスや不安、寂しさなどを感じ、その感情の穴埋めをするために窃盗をおこなってしまいます。

買い物依存症の人が「買う行為」で満たされるように、クレプトマニアは「盗む行為」で自分の満たされない感情を満たします。

窃盗する物は自分もあまり必要としていないもの

窃盗している物自体も自分は必要としていないようなものばかりで、捨てたり、他人に譲ったり、中には万引きをしてもすぐに店に返すような行為を取ります。

ギャンブル依存症などに近く、ゲーム感覚、もしくは、ストレス発散方法として窃盗を繰り返します。

クレプトマニアとなるきっかけ

クレプトマニアとなるきっかけは、強いストレスが背景になるとされています。

具体的には、拒食症や摂食障害、過度なダイエットなどによってストレスがかかったときにクレプトマニアになるケースが多いようです。

うつ病との関係性

過度なダイエットや精神的なストレスを抱えている方が陥りやすいといわれており、過去の判例では「摂食障害等の精神障害があり,本件犯行時の被告人の行動制御能力は,相当程度強く障害され,被告人の本件犯行は,心神耗弱に準ずる行為として評価されるべきである」と、弁護士が主張した事例もあります。

最終的には「犯行には,被告人のクレプトマニアや摂食障害等の精神症状による衝動制御の障害が関連してる」とする判決が出ているため、うつ病や摂食障害等でクレプトマニアとなる可能性はゼロではありません。

クレプトマニアと通常の窃盗犯との違い

クレプトマニアと通常の窃盗をおこなう理由の違いを解説していきます。

簡単にいえば「利益目的があるか」ということと「依存性があるか」ということです。

クレプトマニアの特徴

  • 利益目的が全てではない
  • 常習性が有る
  • 他の病気との合併症が見受けられる
  • 買えないから盗むというわけではない

利益目的が全てではない

窃盗の理由に、利益目的がありません。

単に窃盗をしている瞬間の快感が欲しかったり、辛いことから目をそらすために窃盗をおこなってしまいます。

クレプトマニアは、窃盗の為の窃盗ともいわれています。

常習性が有る

窃盗をおこなって一時的な快感を覚えた後に、罪悪感が訪れます。

万引きしたところを見つかると本当に深く反省します。

しかし、窃盗を止めることを自身で制御できず、時間が経つとまた窃盗をおこないたくなってしまいます。

他の病気との合併症が見受けられる

クレプトマニアの方には、他の病気を合併している傾向がみられます。

うつ病・摂食障害・女性のホルモンバランスの乱れなどが見られます。

とくにクレプトマニアは、女性が多くなっています。

買えないから盗むというわけではない

クレプトマニアの方が窃盗する物は、値段が高い物とは限りません。

むしろ、どこにでも手に入るような数百円の物ばかりです。

いざクレプトマニアで万引きした人を捕まえてみても、財布の中には盗んだ物が買えるだけのお金を十分に持っていることはよくあります。

通常の窃盗をおこなう人の特徴

  • 生きるため・利益のために犯行に及ぶ
  • 一時的な感情で犯行に及ぶ

生きるため・利益のために犯行に及ぶ

  • 「貧困で食費が足りないから万引きをした」
  • 「自分では買えそうにないから窃盗をした」
  • 「生活費が必要だからスリをした」

窃盗の理由としてもわかりやすいものではないでしょうか。

アルコール依存や薬物依存、性的欲求などの別の依存性を満たすために窃盗をおこなう方もいます。

覚せい剤を買うお金が欲しくて盗みを働いたり、自分の性的欲求満たすための下着泥棒などがこちらに当てはまります。

一時的な感情で犯行に及ぶ

仕事や恋愛が上手くいかず、イライラした感情をぶつけるために、衝動的に窃盗をおこなう人もいます。

クレプトマニアとの違いは、常習性が有るかどうかです。

一時的な感情で「魔が差して」窃盗をする方もいます。

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クレプトマニアの治療方法

クレプトマニアの方が捕まってしまったからといって、周りの人が「また盗んだよ」などといった反応をしてしまうと、本人は余計自己嫌悪に陥り、症状が悪化してしまいます。

クレプトマニアの人が逮捕されてしまっても「犯罪を起こした人」と見る前に「病気に悩んでいる人」として接してあげることを心がけてください。

本人が関わる人達にも身近な人が可能な限り事情を伝え、接し方を改めてもらうようにしてください。

  • 専門機関に診てもらう
  • 周りの人たちが気にかけてあげる

専門機関に診てもらう

クレプトマニアは病気です。

「クレプトマニアかも」と思ったら、専門家の診断を受けるようにしてください。

何科の病院がよいかというと、精神科・心療内科です。

クレプトマニアは、アメリカの精神医学会の診断基準であるDSM-5においても、「窃盗症」と記載されている精神疾患です。参考までに、DSM-5におけるクレプトマニアの診断基準は以下の5項目です。
A:個人的に用いるのでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
B:窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
C:窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。
D:盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。
E:盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。
ただここで示されている診断基準は、1つの目安ではありますが絶対的なものではありません。

引用元:医療法人社団 榎会|クレプトマニア(窃盗症)

ただ、まだクレプトマニア自体の認知度も低く、思うような診断をしてくれず「やっぱり自分が悪いのか」と余計本人の負担になってしまうだけで終わってしまうケースもあります。

事前に病院に問い合わせてみるか、インターネットで「クレプトマニア 治療 地域名」で検索してみて、クレプトマニアに適した病院を探してもよいでしょうし、依存症の治療に特化した病院や診療所もあります。

周りの人たちが気にかけてあげる

クレプトマニアに悩んでいる方がいても、本人だけの頑張りで解決させることは難しいです。

何よりも周りの家族や知人・友人がクレプトマニアを理解して寄り添うことが大切です。

クレプトマニアの方は犯罪行為をしてしまいますが、「また盗んだよ」という反応で接してしまうと、本人がさらに傷つきクレプトマニアを制御するどころか、より悪化してしまうことが目にみえています。

家族の方が万引きをして警察やお店から呼び出された際は、真っ先に叱ったり注意したりするのではなく、一緒に寄り添って、クレプトマニアを治していくことを最優先に考えましょう。

クレプトマニアの治療方法

クレプトマニアだと診断された場合には、意思は周囲の人と一緒に治療をおこないます。

クレプトマニアは本人の意思だけで止められるものではないため、一般的な精神疾患と同様に、治療が可能なのです。

治療をおこなう医師によって内容は異なりますが、3つの柱により治療すすめることがあります。

通院とデイナイトケア 規則正しい生活を身につける
通院して認知・行動療法に参加する
再発防止 窃盗行動に走るきっかけ(引き金)を本人が見つける
対象行為を回避する方法を学習する
自助グループ ミーティングに参加してお互いのエピソードを話し合う
5年、10年と問題行動が止まっている回復モデルを知る

【参考】クレプトマニアデイナイトケア|医療法人社団 明善会 榎本クリニック

「自分はクレプトマニアかもしれない」と悩んでいる場合、こういったプログラムに取り組むことを検討してみてください。

クレプトマニアの万引きで逮捕された時の弁護方法

クレプトマニアは病気とはいえ、物を盗む行為自体は犯罪です。

万引きをすれば逮捕されてしまうことも十分に考えられます。

捜査機関にはまだまだクレプトマニアという認知が少なく、「何度も万引きしてしまう」という結果だけのみを考慮されるケースも少なくありません。

しかし、刑事罰を与えるだけでクレプトマニアは治らず、刑の終了後に再犯をしてしまうことが往々にしてあります。

ここでは、クレプトマニアの人が万引きで逮捕されてしまった後の弁護方法を解説します。

ご家族が「クレプトマニアかもしれない……」と心配な人は参考にしてください。

  1. クレプトマニアは刑罰では治らない
  2. クレプトマニア独自の弁護方法
  3. クレプトマニアに責任能力は有るのか?

クレプトマニアは刑罰では治らない

窃盗という犯罪行為を繰り返してしまうクレプトマニアですが、逮捕され有罪判決を受けると刑事罰を受けます。

刑事罰には、犯罪の抑制や加害者の反省・再犯防止を目的とされたものですが、刑事罰を受けたところでそもそものクレプトマニアを治すことはできないといえます。

クレプトマニアの方に罰則を与えても、再犯を起こしてしまうのであれば捜査機関本来の目的でもありませんし、クレプトマニアの方本人もクレプトマニアに悩み続けます。

そのため、クレプトマニアの弁護では刑事手続をいち早く終わらせて、早急に治療に専念させることが最重要になってきます。

クレプトマニア独自の弁護方法

クレプトマニアの弁護方法は、少し特殊なものがあります。

クレプトマニアは刑事罰(刑務所に入れる)程度では治らないと考えられています。

刑務所から出所しても、すぐにまた万引きをしてしまう人が非常に多くなっています。

ですので、万引きで捕まったとしても、実際のところの重要度でいくと「罰則を与える<クレプトマニアの治療」なのです。

理想としては「万引きで捕まる→早急に病気を治すという弁護→釈放される→専門家に診てもらう→完治」でしょう。

クレプトマニアに理解のある弁護士に依頼をする

クレプトマニアでの逮捕で一番のリスクは、実刑判決で拘束期間が長引き、クレプトマニアが治らないまま社会に戻され、再び万引きを繰り返してしまうことです。

何としても早く釈放され、病院での治療が重要になってきます。

クレプトマニアは、高額なものを盗んだり計画的な犯行はおこないません。

いわゆる万引きなのですが、本来万引きは、そこまで刑罰が重くなるものではありません。

しかし、万引きを繰り返すことで、刑罰も重くなってしまうのです。

クレプトマニアに理解のある弁護士に依頼をして、早期釈放での治療を必要とすることを弁護してもらうことが理想的です。

理解のない弁護士に依頼すると、適切な刑事弁護を受けられず、身体釈放が遅れたり、不必要な刑事罰を受ける可能性も否定できません。

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カウンセリングを受ける病院をみつける

クレプトマニアで捕まっている人が釈放されたら、まず迅速におこなってほしいことは、クレプトマニアに理解を示す病院のカウンセリングを受けることです。

これは、クレプトマニアの方の弁護活動の一貫として、家族や弁護士が協力して、治療に効果が見込めそうな病院にあらかじめ目星をつけておくことがよいでしょう。

2014年の法務省の犯罪白書でも、「精神疾患型の窃盗犯罪は医療機関に適切につなぐ必要がある」という見解をしています。

弁護側と捜査機関の思惑が一致すれば、身柄開放も治療への第一歩もスムーズに進むでしょう。

クレプトマニアに責任能力は有るのか?

しかし、現段階ではクレプトマニアを理由に責任能力が無くなるとは言い切れません。

責任能力が無いという理由で、無罪を獲得することは難しいでしょう。

上記のような弁護方法を取ることが確実です。

さいごに

もし、ご家族が万引きを繰り返して逮捕されているなら、ただちに弁護士に相談しましょう。

初回は微罪処分や不起訴で終わったとしても、逮捕された回数が増えるごとに、略式裁判で罰金、正式起訴され懲役など、より刑罰が重くなることが通常です。

クレプトマニアに理解のある弁護士に依頼すれば、クレプトマニアに特化した弁護活動をしてもらえるほか、刑事手続のなかで適切な治療を受け、クレプトマニアからの回復も目指せるでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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