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商標権侵害に該当する行為や罰則事例・逮捕された際の対処法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
商標権侵害に該当する行為や罰則事例・逮捕された際の対処法

商標権侵害(しょうひょうけんしんがい)とは、商標権者に許可なく同一の商標(自社と他社を区別する印)を使用するなどして、権利を侵害することを指します。商標権侵害は商標法違反に当たり、違反した場合は懲役・罰金などが科される可能性があります。

 

この記事では、商標権侵害の定義や事例、逮捕後の流れなどについて解説します。

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商標権侵害の基本概要

まずは、商標権侵害とは何かについて解説します。

商標の定義

商標とは、事業者が取り扱う商品・役務(サービス)について、自社と他社を区別するための印のことで、商標法では次のように定義されています。

(定義等)

第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

引用元:商標法 第2条

つまり、街中で見かけるお店のロゴ、スーパーの商品の名前・デザイン、利用するサービスに付帯する名称など、それを見て一目で「これは○○社が作っている▲▲だ!」とわかるような目印のことです。商標権の存続期間は10年間と設定されており、この期間中は商標の無断使用などが禁止されています。

(存続期間)

第十九条 商標権の存続期間は、設定の登録の日から十年をもつて終了する。

引用元:商標法 第19条

商標権の効力範囲

商標を登録する際は、商標が使用される指定の商品・役務もセットで登録手続きを行います。そのため、商標権の効力範囲は商標だけでなく、指定の商品・役務にも及びます。

 

商標権者には、指定の商品・役務に商標を使用できるという専用権(商標法第25条)や、商標や指定の商品・役務について、他社が同一のもの(または類似していると認められるもの)を使用していた場合、禁止・排除が主張できるという差止請求権 (商標法第36条)などが認められています。

商標権侵害の成立条件

商標権侵害については、商標と商品・役務それぞれの類似性がどれだけ高いかという点から判断され、次のような場合は商標権侵害が成立するとされています。

 

  • 商標が同一であり、商品・サービスも同一
  • 商標が類似しており、商品・サービスが同一
  • 商標が同一であり、商品・サービスが類似
  • 商標が類似しており、商品・サービスも類似

 

参考:商標権の侵害とは|経済産業省特許庁

 

あくまでも商標法は、他の事業者による侵害行為から商標権者を守る法律であるため、個人が私的利用の範囲内で使用する場合や、商標権者から許可を得ている場合などは商標権侵害に当たりません。

商標権侵害の罰則

商標権侵害は商標法にて禁止されており、違反した場合は罰則が科せられます。

商標権侵害行為

商標権侵害行為については、次のような罰則が科せられます。また、懲役刑と罰金刑が併せて適用されることもあります。

(侵害の罪)

第七十八条 商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

引用元: 商標法 第78条

商標権侵害の準備行為

例として、他社の商標を無断でTシャツにプリントして、それを販売するために所持している場合などは、商標権侵害の準備行為に当たります。商標権侵害行為と同様に禁止されており、罰則は次のとおりです。

第七十八条の二 第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

引用元:商標法 第78条の2

法人の場合

法人などの組織による商標権侵害行為については、実行者の処罰と併せて3億円以下の罰金刑が科せられます。

(両罰規定)

第八十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

一 第七十八条、第七十八条の二又は前条第一項 三億円以下の罰金刑

引用元:商標法 第82条

商標権侵害の事例

サイバー犯罪の検挙件数の内訳

引用元:令和2年度犯罪白書|警察庁

2014(平成26)年以降、商標法違反に関する事件は、サイバー空間に限って言えば毎年およそ300件検挙されており、状況は改善されていません。この項目では、商標法違反の事例をご紹介します。

2016年4月新潟地裁の判決

2012年、インターネットショップの代表取締役を務めていた被告人Aが従業員Bと共謀し、C社のブランドバッグに類似したバッグを所持・販売したとして、商標法違反容疑で逮捕された事件です。裁判所は、「最終意思決定を行ったAの責任はBより重いものの、ともに社会内での更生が期待できる」として、Aに罰金100万円、Bに懲役1年6ヶ月および罰金100万円、執行猶予3年の判決を下しました。

裁判年月日 平成28年4月8日

裁判所名 新潟地裁 裁判区分 判決

事件番号 平28(わ)6号

事件名 商標法違反事件

裁判結果 有罪

参考:文献番号 2016WLJPCA04086006

2011年9月松山地裁の判決

2010年から2011年までの間、香川県にて被告人A・Bが共謀した上で、C社のブランドジャージに類似したジャージを所持・販売譲渡したとして、商標法違反容疑で逮捕された事件です。裁判所は、「商標権侵害の程度は大きいものの、前科がなく酌むべき事情も存在する」として、Aに懲役1年6ヶ月および罰金100万円、Bに懲役1年4ヶ月および罰金100万円、また、両名に対して執行猶予4年の判決を下しました。

裁判年月日 平成23年9月13日

裁判所名 松山地裁 裁判区分 判決

事件番号 平23(わ)190号 ・ 平23(わ)203号

事件名 商標法違反被告事件

裁判結果 有罪 上訴等 確定

参考:文献番号 2011WLJPCA09137001

2016年6月宇都宮地裁の判決

2015年2月から3月までの間、被告人がA社の販売する商品に類似した商品に関する広告を、インターネットサイト上に載せたとして、商標法違反容疑で逮捕された事件です。裁判所は「犯行はかなり悪質で、被告人の規範意識には相当問題がある」として、被告人に対して懲役1年および罰金100万円の判決を下しました。

裁判年月日 平成28年6月24日

裁判所名 宇都宮地裁 裁判区分 判決

事件番号 平27(わ)464号 ・ 平28(わ)10号

事件名 商標法違反

裁判結果 有罪(懲役1年及び罰金100万円(求刑 懲役1年6月及び罰金100万円)) 上訴等 控訴 

参考:文献番号 2016WLJPCA06246012

商標権侵害で逮捕された場合

「商標権侵害に当たるとは知らずに、類似商標を使用してしまっていた」というケースもあり得ますが、そのような場合でも罰則が科せられる可能性があります。この項目では、万が一ご自身や家族などが商標権侵害で逮捕されてしまった場合のその後の流れについて、解説します。

逮捕された後の流れ

逮捕された後の流れ

刑事裁判で量刑が決まるまでは、上図のような流れで進められます。

逮捕後から勾留までの72時間は、弁護士以外は面会できません。もし逮捕された場合は、早いうちに弁護士に相談することで、被告人にかかる不利益を緩和することができるでしょう。

量刑の判断材料

量刑は、被害の大きさや動機、計画性などから判断されます。被害者との示談交渉や、信頼のおける身元引受人に情状証人(裁判で被告人の量刑を判断するにあたり、酌むべき事情を述べる証人)として「これからの生活指導を担当する」などと、今後の計画について証言してもらうことで、減刑されるケースなどもあります。

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弁護士を呼ぶ際は、国選弁護士・私選弁護士・当番弁護士の中から選択することができます。『いつ呼べるか?』『交代・解任はできるか?』など、それぞれ特徴が異なるため、実際に相談する際は上の表を参考にしてください。

まとめ

商標権は、商標だけでなく商品・役務などにも効力範囲が及びます。また、『意識せず商標権を侵害してしまっている』というケースもゼロではありません。

 

もし商標権侵害で逮捕された場合は、早いうちに弁護士に相談することをおすすめします。この記事を見て、「もしかしたら商標権を侵害してしまっているかも…」と心配になった方も、弁護士に相談することで不安を解消できるでしょう。

参照元一覧

商標法

商標権の侵害とは|経済産業省特許庁

令和2年度犯罪白書|警察庁

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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