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堕胎罪とは?定義・成立要件・中絶との違い・逮捕された場合の罰則を解説

堕胎罪とは?定義・成立要件・中絶との違い・逮捕された場合の罰則を解説

堕胎罪とは、妊娠中の胎児を堕胎させた場合に成立する犯罪です。

日本法の下で人工妊娠中絶が認められ、犯罪が成立しないと解されるのは、一定の条件を満たしている場合に限られます。

妊婦本人が自己中絶をおこなった場合や、医師等の第三者が人工妊娠中絶をおこなった場合でも、状況によっては堕胎罪に問われて処罰を受ける可能性があります。

堕胎罪の法定刑には拘禁刑しか設けられておらず、初犯でも実刑判決が下される可能性がありますので、重い処分を回避したいのであれば速やかに弁護士へ相談しましょう。

本記事では、堕胎罪の定義や成立要件、堕胎罪で科される罰則や逮捕後の流れ、加害者になった場合の対処法などを解説します。

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【前提】母体保護法の要件を満たしていれば、中絶しても堕胎罪には問われない

前提として、母体保護法の要件を満たしている人工妊娠中絶であれば、堕胎罪には問われません。

実際に、2024年度は12万7,992件もの人工妊娠中絶がおこなわれています(表6人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移|厚生労働省)。

母体保護法とは、母性の生命や健康の保護を目的に定められた法律のことです。

以下のような要件を満たしている場合は、例外的に人工妊娠中絶が認められます。

  • 母体保護法指定医師が手術を担当すること
  • 妊婦本人及び配偶者の同意を得ていること
  • 妊娠22週未満であること
  • 暴行や脅迫されて抵抗・拒絶できない状態で姦淫されて妊娠したこと、または身体的理由や経済的理由で妊娠の継続・出産が母体の健康に重大な影響を及ぼす可能性があること

堕胎罪とは

堕胎罪とは、妊娠中胎児を堕胎させた場合に成立する犯罪のことです。

詳しくは「【種類別】堕胎罪の罰則」で後述しますが、堕胎罪は自己堕胎罪・同意堕胎罪・業務上堕胎罪・不同意堕胎罪などに分類され、それぞれ異なる罰則が設けられています。

ここでは、堕胎の定義や堕胎罪の成立要件、殺人罪との違いなどを解説します。

堕胎とは

堕胎とは、自然の分娩期よりも前に人為的に胎児を母体から排出・分離させたり、母胎内で死亡させたりする行為のことです。

なお、似たような意味合いの言葉としては「中絶」などもあります。

中絶も堕胎も「人為的な手段によって妊娠を終わらせる」という点は共通していますが、厳密には適法か違法かという点で異なります。

一般的に用いられる中絶は「母体保護法に基づいておこなわれる正当な医療行為」であるのに対し、法律上の堕胎は「法律に違反する犯罪行為」という扱いになっています。

堕胎罪の成立要件

堕胎罪の成立要件としては、主に以下のようなものがあります。

  •  
  • 母体内に胎児が存在する状態でおこなわれていること
  • 堕胎行為が故意におこなわれていること
  • 結果的に流産や死産などに至っていること など

堕胎罪は故意犯に分類され、堕胎行為が故意におこなわれていない場合は不成立となります。

たとえば「偶然交通事故の被害に遭って胎児が死亡した」「妊娠の事実を知らない者から暴力を振るわれて流産した」というようなケースでは、基本的に堕胎罪は成立しません。

堕胎罪と殺人罪の違い

なかには「堕胎は胎児を死亡させる行為であるため、殺人罪が成立するのではないか」などと考えている方もいるでしょう。

しかし、日本の刑法上、堕胎行為で殺人罪は成立しません。

殺人罪は、人を殺した者に成立する犯罪です(刑法第199条)。

刑法上は「あくまでも胎児は母体の一部であり、人ではない」という解釈になっているため、堕胎行為では殺人罪は成立せず、堕胎罪で処罰を受けることになります。

【種類別】堕胎罪の罰則

堕胎罪は主に以下の4種類あり、犯罪ごとに異なる罰則が設けられています。

犯罪 罰則
自己堕胎罪 1年以下の拘禁刑(刑法第212条)
同意堕胎罪 2年以下の拘禁刑(刑法第213条)
業務上堕胎罪 3ヵ月以上5年以下の拘禁刑(刑法第214条)
不同意堕胎罪 6ヵ月以上7年以下の拘禁刑(刑法第215条)

ここでは、各犯罪の成立要件や罰則などを解説します。

1.自己堕胎罪|1年以下の拘禁刑

自己堕胎罪とは、妊婦が自分で胎児を堕胎した場合に成立する犯罪です(刑法第212条)。

自己堕胎罪の罰則は1年以下の拘禁刑のみで、罰金刑は設けられていません。

たとえば「妊婦が中絶薬を個人輸入し、自己判断で服用して堕胎した」「器具を用いて堕胎した」などのケースでは、自己堕胎罪が成立する可能性があります。

2.同意堕胎罪|2年以下の拘禁刑

同意堕胎罪とは、刑法第214条に定められている者以外の第三者が妊婦からの依頼や承諾を受け、胎児を堕胎させた場合に成立する犯罪です(刑法第213条)。

同意堕胎罪の罰則は2年以下の拘禁刑のみで、罰金刑は設けられていません。

なお、堕胎行為によって妊婦を死傷させた場合は、同意堕胎致死傷罪が成立します(刑法第213条)。

同意堕胎致死傷罪の罰則は3ヵ月以上5年以下の拘禁刑のみで、同意堕胎罪と同様に罰金刑は設けられていません。

たとえば「妊婦から依頼を受け、医師資格のない知人が堕胎行為をおこなった」という場合は同意堕胎罪、「堕胎行為によって妊婦を負傷させた」という場合は同意堕胎致死傷罪が成立する可能性があります。

3.業務上堕胎罪|3ヵ月以上5年以下の拘禁刑

業務上堕胎罪とは、医師や助産師などの医療従事者が妊婦からの依頼や承諾を受け、業務として胎児を堕胎させた場合に成立する犯罪です(刑法第214条)。

業務上堕胎罪の罰則は3ヵ月以上5年以下の拘禁刑のみで、罰金刑は設けられていません。

なお、堕胎行為によって妊婦を死傷させた場合は、業務上堕胎致死傷罪が成立します(刑法第214条)。

業務上堕胎致死傷罪の罰則は6ヵ月以上7年以下の拘禁刑のみで、業務上堕胎罪と同様に罰金刑は設けられていません。

たとえば「妊婦から依頼を受け、母体保護法の要件を満たさない状態で医師が手術した」という場合は業務上堕胎罪、「手術によって妊婦を負傷させた」という場合は業務上堕胎致死傷罪が成立する可能性があります。

4.不同意堕胎罪|6ヵ月以上7年以下の拘禁刑

不同意堕胎罪とは、妊婦による依頼や同意がない状態で胎児を堕胎させた場合に成立する犯罪です(刑法第215条)。

不同意堕胎罪の罰則は6ヵ月以上7年以下の拘禁刑のみで、罰金刑は設けられていません。

なお、堕胎行為によって妊婦を死傷させた場合は、不同意堕胎致死傷罪が成立します(刑法第216条)。

不同意堕胎致死傷罪の罰則は被害状況によって異なり、妊婦が傷害を負った場合は6ヵ月以上15年以下の拘禁刑、死亡した場合は3年以上の有期拘禁刑となります。

たとえば「妊婦の依頼や同意を得ないまま、医師などが手術をおこなった」という場合は不同意堕胎罪、「手術によって妊婦を負傷させた」という場合は不同意堕胎致死傷罪が成立する可能性があります。

人工妊娠中絶で堕胎罪が成立する3つのケース

冒頭でも触れたとおり、母体保護法の要件を満たしている人工妊娠中絶であれば堕胎罪には問われません。

一方で、以下のようなケースでは、堕胎罪が成立して罰則が科される可能性があります。

  1. 妊娠22週以降に人工妊娠中絶をおこなった場合
  2. 母体保護法指定医師以外が人工妊娠中絶をおこなった場合
  3. 妊婦や配偶者の同意を得ずに人工妊娠中絶をおこなった場合

ここでは、人工妊娠中絶で堕胎罪が成立するケースについて解説します。

1.妊娠22週以降に人工妊娠中絶をおこなった場合

妊娠22週以降に人工妊娠中絶をおこなった場合、原則として堕胎罪の処罰対象となります。

母体保護法では、人工妊娠中絶の期間について以下のように定められています。

2 この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

引用元:母体保護法第2条2項

ここでいう「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」とは、通常妊娠満22週未満(21週6日目まで)を指します(「母体保護法の施行について」の一部改正について(通知)(◆令和02年10月20日発子第1020001号))。

妊娠12週未満であれば初期中絶手術、12週〜22週未満であれば中期中絶手術がおこなわれますが、22週以降の後期中絶手術は基本的に認められません。

2.母体保護法指定医師以外が人工妊娠中絶をおこなった場合

母体保護法指定医師以外が人工妊娠中絶をおこなった場合も、原則として堕胎罪の処罰対象となります。

母体保護法では、人工妊娠中絶をおこなえる者について以下のように定められています。

(医師の認定による人工妊娠中絶)

第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。

引用元:母体保護法第14条1項

人工妊娠中絶がおこなえるのは「各都道府県の医師会が指定した母体保護法指定医」に限られており、母体保護法指定医師以外の医師による人工妊娠中絶は基本的に認められません。

なお、各都道府県の母体保護法指定医師については、「各地の医師会|日本医師会」から最寄りの都道府県医師会に連絡すれば確認できます。

3.妊婦や配偶者の同意を得ずに人工妊娠中絶をおこなった場合

妊婦や配偶者の同意を得ずに人工妊娠中絶をおこなった場合も、原則として堕胎罪の処罰対象となります。

母体保護法では、人工妊娠中絶での条件について以下のように定められています。

(医師の認定による人工妊娠中絶)

第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。

引用元:母体保護法第14条1項

人工妊娠中絶をおこなうためには妊婦本人や配偶者の同意を得ておく必要があり、同意がない状態での人工妊娠中絶は基本的に認められません。

例外として「夫婦関係が実質的に破綻している」「配偶者からDV被害に遭っている」などのケースでは、妊婦本人のみの同意でも人工妊娠中絶が認められることがあります。

堕胎罪で逮捕された場合の流れ

逮捕された場合の流れ

堕胎罪で逮捕された場合、上図のような流れで刑事手続きが進行します。

刑事事件の被疑者として逮捕されると、警察官や検察官による取り調べがおこなわれ、最大で逮捕後23日間も身柄拘束が続く可能性があります。

取り調べ後は、検察官によって起訴・不起訴が判断され、起訴された場合は被告人として刑事裁判で裁かれることになります。

刑事裁判の有罪率は99%以上と言われており、起訴されると高い確率で有罪判決が下されるため、前科を回避するには起訴・不起訴が判断される前に対応を尽くすことが大切です。

刑事事件の各手続きについて詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

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堕胎罪に問われた場合の3つの対処法

堕胎事件の加害者となり、なるべく重い処分を回避したい場合は、以下のような対応を検討しましょう。

  • 弁護士に相談する
  • 警察に自首をする
  • 被害者と示談交渉する

ここでは、堕胎罪に問われた場合の対処法について解説します。

1.弁護士に相談する

堕胎事件の加害者になった場合は、まずは速やかに弁護士に相談しましょう。

まだ捜査が進んでおらず逮捕前の段階なら、今後の逮捕の可能性を判断してくれますし、逮捕の回避に向けた自首のアドバイスや自首当日の同行なども依頼可能です。

すでに捜査が進んでいる段階でも、取り調べの受け方のアドバイスや、被害者との示談交渉や捜査機関への意見書作成など、早期釈放や不起訴処分の獲得に向けて動いてくれます。

たとえ起訴されて刑事裁判になったとしても、弁護士は執行猶予の獲得に向けて証拠収集や説得力のある主張を展開してくれるため、実刑にならずに済む可能性があります。

刑事事件では、初動対応によって結果が大きく左右されるため、なるべく早い段階で弁護士に相談しておくことが大切です。

2.警察に自首をする

堕胎事件の加害者として逮捕されていない段階であれば、自首が有効です。

自首は任意的減刑事由のひとつとして定められており、逮捕の回避・早期釈放・不起訴処分の獲得・実刑判決の回避などにつながる可能性が高まります(刑法第42条1項)。

ただし、自首には成立要件が定められており、素人が自己判断でむやみに動くと自首として扱ってもらえないおそれもあります。

弁護士のサポートを得れば、法的視点から自首が成立するかどうか判断してもらったうえで的確にプロセスを進められるため、自首を考えている場合は弁護士に依頼しましょう。

3.被害者と示談交渉する

堕胎事件でなるべく重い処分を回避したい場合は、被害者との示談交渉も有効です。

被害者との示談が成立した場合も、加害者側に有利な事情として考慮され、早期の身柄解放や減刑獲得などが期待できます。

ただし、被害者は加害者に対して怒りや恐怖などを感じていたりして、加害者が直接示談を申し入れようとすると無視・拒否されることもあります。

第三者である弁護士に示談交渉を代行してもらえば、被害者側の感情にも配慮しながら丁寧に対応してくれるため、スムーズな示談成立を目指したい場合も弁護士への依頼がおすすめです。

堕胎罪に関するよくある質問5選

ここでは、堕胎罪に関するよくある質問について解説します。

1.堕胎と中絶は何が違う?

中絶も堕胎も「人為的な手段によって妊娠を終わらせる」という点は共通していますが、厳密には適法か違法かという点で異なります。

一般的に用いられる中絶は「母体保護法に基づいておこなわれる正当な医療行為」を指します。

一方、法律上の堕胎は「法律に違反する犯罪行為」であり、処罰対象になるという点で異なります。

2.堕胎罪は現在でも存在しますか?

日本の刑法では、現在も堕胎罪が存在します。

刑法第212条~216条にて、自己堕胎罪・同意堕胎罪・業務上堕胎罪・不同意堕胎罪などが規定されています。

なお、各犯罪の罰則は拘禁刑のみで、罰金刑は設けられていません。

3.自分で中絶薬を使用した場合は堕胎罪が成立しますか?

妊婦が自分で中絶薬を使用した場合、自己堕胎罪が成立する可能性があります。

堕胎行為は刑法で禁じられており、たとえば「妊婦が中絶薬を個人輸入し、自己判断で服用した」というようなケースでは、自己堕胎罪に問われるおそれがあります。

なお、自己堕胎罪の罰則は1年以下の拘禁刑のみです(刑法第212条)。

4.医師に人工妊娠中絶手術を頼んだ場合でも堕胎罪は成立しますか?

医師に人工妊娠中絶手術を頼んだ場合でも、堕胎罪が成立する可能性があります。

たとえば「母体保護法指定医師ではない医師に手術を頼んだ」「妊娠22週を過ぎてから手術を頼んだ」というようなケースでは、業務上堕胎罪などに問われるおそれがあります。

なお、業務上堕胎罪の罰則は3ヵ月以上5年以下の拘禁刑のみです(刑法第214条)。

5.配偶者の暴力や事故で流産した場合でも堕胎罪は成立しますか?

堕胎罪は故意犯であり、故意におこなわれた堕胎行為でなければ成立しません。

したがって、偶然の事故で流産した場合や、頭に血が上った配偶者から暴力を受けて結果的に流産した場合などは、基本的に堕胎罪は成立しません。

ただし、配偶者から暴力を振るわれた場合は、暴行罪や傷害罪などの堕胎罪以外の犯罪が成立する可能性があります。

さいごに|堕胎罪で早期釈放や減刑獲得を目指すなら、まずは弁護士に相談を

堕胎事件の当事者になった場合、逮捕されたり実刑判決が下されたりする可能性があります。

なるべく重い処分を回避したいのであれば、弁護士によるスピーディかつ適切な弁護活動が必要不可欠です。

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野口 潤之介 (第二東京弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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