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中絶でも堕胎罪が成立する要件と妊娠に関するトラブル対処法
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公開日:2015.12.2

中絶でも堕胎罪が成立する要件と妊娠に関するトラブル対処法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
Ninnpu

堕胎罪とは、自然の分娩(出産)より前に、人為的に胎児を母体から分離・排出する罪です。結果的に胎児が死亡したかどうかは無関係で、胎児を母体内で殺すことも堕胎罪となります。

 

しかし、これだけ聞くと、人工妊娠中絶も堕胎罪になるのか?と思われるでしょう。現在、日本での人工妊娠中絶の件数は年間20万件前後あります。それに対し、堕胎罪での検挙は年間数件程度です。ということは、人工妊娠中絶は堕胎罪にならないための法律があります。

 

今回は、堕胎罪の罪の定義と、人工妊娠中絶で堕胎罪にならない理由を解説していきます。
 


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【目次】

年間20万件近くある人工妊娠中絶

堕胎罪の種類と刑罰の重さ

母体保護法で人工妊娠中絶の堕胎罪は免除される

堕胎罪になる可能性がある場合

堕胎罪と殺人罪の境目

これって堕胎罪?妊娠中の女性と犯罪の関連性

まとめ

 

年間20万件近くある人工妊娠中絶

冒頭でもお伝えしましたが、現在の日本では年間20万件の人工妊娠中絶が行なわれています。これは、1日500件程度の人工妊娠中絶が行なわれていることになります。もしも人工妊娠中絶が違法であれば、もっと堕胎罪が身近でよく聞く犯罪であってもおかしくありません。

 

しかし、堕胎罪という言葉をニュースでもあまり耳にしません。なぜ人工妊娠中絶は堕胎罪にならず、どのような内容が堕胎罪として逮捕されてしまうのでしょうか。

 

堕胎罪の種類と刑罰の重さ

まず、堕胎罪の要件と刑の重さを解説していきます。堕胎罪には複数の種類があり、それぞれ量刑も変わってきます。

 

自己堕胎罪

妊娠中の女性本人が、薬物・その他の方法で堕胎した場合は、1年以下の懲役に処せられます。母親本人の身体に対しては、自損行為になるため罪にはなりませんが、胎児の生命・身体を侵すので罪となります。

 

同意堕胎罪

妊婦以外の人物が、妊娠中の女性の依頼・承諾を得て堕胎させた場合、2年以下の懲役に処せられます。結果的に妊婦を死傷させた場合、3ヶ月以上5年以下の懲役に処せられます。女性の同意を得て他人が堕胎行為を行う場合です。

 

業務上堕胎罪

医師・助産師・薬剤師・医薬品販売業者が女性の依頼・承諾を得て堕胎させた場合は、3ヶ月以上5年以下の懲役に処せられます。結果的に妊婦を死傷させた場合は、6ヶ月以上7年以下の懲役に処せられます。

 

上記の同意堕胎罪が医師などの一定の資格を持つ者によって行われた場合、業務上堕胎罪となり、身分によって刑も重くなります。

 

不同意堕胎罪・不同意堕胎致死傷罪

妊娠中の女性の依頼も承諾もなく堕胎をさせた人物は、6ヶ月以上7年以下の懲役に処せられます。未遂の場合も刑罰の対象になります。結果として、妊婦を死傷させた場合は、傷害罪(15年以下の懲役及び50万円以下の罰金)と比べ、重い刑のほうが適用されます。

 

母体保護法で人工妊娠中絶の堕胎罪は免除される

上記の内容は、刑法212条から216条まで記載されています。これだけを見ると、年間20万件前後行なわれている人工妊娠中絶も、堕胎罪の要件に当てはまってしまいます。そこで、人工妊娠中絶を合法とするために、母体保護法があります。

 

母体保護法第14条 医師の人体による人工妊娠中絶

人工妊娠中絶は、母体保護法第14条によって認められています。母体保護法第14条によると、

 

都道府県単位で設立された、医師会からの指定を受けた医師は、以下の項目に該当する場合、本人及び配偶者の同意があれば、人工妊娠中絶ができるとされています。

 

1妊娠の継続又は分娩が身体及び経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある。

2暴行もしくは脅迫により、抵抗・拒絶できない間に姦淫され妊娠した場合。

 

配偶者の同意に関しては、配偶者が分からない、配偶者が亡くなっている場合は、本人のみの同意だけで良いとされています。

 

堕胎罪になる可能性がある人工妊娠中絶

日本国内での堕胎罪の検挙も非常に低くなっていて、滅多なことではニュースにも上がらない堕胎罪ですが、以下の様な人工妊娠中絶の方法を取ると、堕胎罪になってしまう恐れがあります。

 

指定の無い医師の人工妊娠中絶

いわゆる、正規の許可を得ていないやぶ医者による人工妊娠中絶です。日本ではそのような事例は耳にしないので問題はないでしょう。ただ、隣の韓国では年間34万件(1日1,000件)程の違法な人工妊娠中絶が行なわれていると政府で発表されています。

 

今はありませんが、「韓国で整形すると安い」というような感覚で「韓国で中絶すると安く済む」といった情報が広まってしまうと、自ら犯罪に踏み入ってしまう恐れがあります(韓国でも違法な人工妊娠中絶は取り締まっています)。更には、違法な人工妊娠中絶が母体にどのような悪影響をおよぼすかも分からず、非常に危険です。この事を念頭に置いて下さい。

 

同意の無い人工妊娠中絶

妊婦本人・配偶者の同意なく人工妊娠中絶を行なう不同意堕胎罪ですが、こちらは更に珍しい犯罪です。近年では、2009年に東京の病院の医師が、交際中の女性に「ビタミン剤」と称して子宮収縮剤を飲ませて流産させ、逮捕された実例があります。

 

妊娠22週以降の人工妊娠中絶

妊娠22週以降になると、妊婦からの申出があっても人工妊娠中絶を行なうことは違法になります。たとえ母体に危険が及ぶ状態で、迅速に胎児を除去する必要があっても、帝王切開などの胎児救出も可能な方法を優先しなくてはなりません。

 

堕胎罪と殺人罪の境目

「人工妊娠中絶は殺人だ」と訴える団体もありますし、国や宗教によっては、人工妊娠中絶自体を禁止しているところもあります。しかし、現在の法律的観点からいって、胎児が母親の体内にいる時点での人工妊娠中絶は殺人罪にはなりません。

 

母体から露出した段階で殺人罪になる

どこから殺人罪になるかというと、胎児が母親の体内から露出した瞬間です。母親の体内から露出した瞬間に「胎児」から「人」になり、殺人罪に問われるようになります。それまでは、母親の身体の一部又は「胎児」として法律上扱われます。

 

妊娠22週以降の人工妊娠中絶は堕胎罪

上記でもご説明しましたが、妊娠22週以降の人工妊娠中絶は認められておらず、この場合、堕胎罪に問われてしまいます。

 

これって堕胎罪?妊娠中の女性と犯罪の関連性

上記のように、堕胎罪は検挙数も少なくなっています。というのも、堕胎罪が適用される前に、妊婦に対する犯罪(傷害罪や強要罪)などが、適用されるからです。こちらでは、妊娠中の女性と犯罪に関する疑問を解説します。

 

妊娠中の女性を暴行すると堕胎罪になるのか?

「妊娠中に夫に暴力を受けて流産してしまった・・・」そのような話を耳にしたことがあります。この場合、状況によって夫には2つの罪のどちらかが問われます。

 

明らかに流産させる目的で暴行した場合は不同意堕胎罪

一概には言えませんが、明らかに流産させる目的があって暴行した場合(妊婦のお腹を何度も蹴ったなど)、妊婦の同意なく堕胎させたとして、上記の不同意堕胎罪が問われてくる可能性が出てきます。

 

暴力の結果、流産した場合は傷害罪

一方、カッとなって妊婦を突き飛ばしたり、妊娠中も重労働を指示したりし、結果的に流産してしまった場合は、妊婦が無事であっても妊婦に対する傷害罪が問われます。理由としては、法律上、胎児は妊婦の体の一部とされ、その一部を損傷させたとして傷害罪が成立するからです。

 

妊娠中の女性に人工妊娠中絶を強要することは堕胎罪になるのか?

望んでいない妊娠を家族に知らせると「そんなの認めない!堕ろせ!」と、人工妊娠中絶を強要されたという悩みも聞きます。結論を言うと、強要しただけでは堕胎罪には当てはまりません。「殺すぞ!」と言ったからといって、殺人罪にならないことと同じです。

 

ただ、相手が望んでいないこと(義務のないこと)を強要しているので、強要罪になる可能性があります。また、断続的に「堕ろせ!」と精神的苦痛を与え、結果的に流産してしまった場合、傷害罪が問われる可能性が出てきます。

 

困ったら一度弁護士に相談してみる

このように、家族間での問題が多いため、妊娠・出産を巡ったトラブルは刑事事件だけではなく、民事問題でも多くなっています。妊娠時にトラブルを感じた場合は、事態が大きくなる前に一度弁護士に相談をされてみることをオススメします。

 

相手を堕胎・流産させてしまった⇒「刑事事件を得意とする弁護士を探す

男女間でのトラブル⇒「男女(DV)問題を得意とする弁護士を探す

妊娠中なのに労働環境が粗悪だ⇒「労働問題を得意とする弁護士を探す

 

 まとめ

いかがでしょうか。堕胎罪自体は検挙数も少なく、通常の生活とは程遠い犯罪になります。しかし、妊娠・出産に関するトラブルは相変わらず多くなっています。困ったら一人で悩まず、弁護士に相談して下さい。
 

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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