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なぜ公訴時効は設けられている?最高裁判所の見解や主な理由などを確認しよう

インテンス法律事務所
原内 直哉
監修記事
なぜ公訴時効は設けられている?最高裁判所の見解や主な理由などを確認しよう

刑事事件においては、時間経過を理由に犯罪者が起訴されなくなったり、刑の失効が免除されたりする制度が存在します。

「時効」と呼ばれるもので、誰しもが耳にしたことがあるはずです。

しかし、犯罪者が優遇されているかのようにみえる制度が、なぜ存在するのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、刑事事件において時効が存在する理由について詳しく解説します。

最高裁判所の見解も示しながら、わかりやすくポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

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刑事事件に関係する2つの時効|公訴時効と刑の時効

刑事事件に関係する時効には、「公訴時効」と「刑の時効」の2種類が存在します。

それぞれに時効の成立によって生じる効果に違いがあるので、詳しくみていきましょう。

公訴時効|捜査機関が公訴を提起できなくなる制度のこと

公訴時効とは、犯罪発生後一定期間経過すると、捜査機関が公訴を提起できなくなる制度のことです。

通常、犯罪が発生した場合は捜査機関が加害者を特定し、証拠を集めたうえで、最終的に検察官が公訴を提起します。

公訴を提起することは「起訴」と呼ばれており、起訴された加害者は裁判にかけられ、有罪になると刑罰に処されるわけです。

一方で公訴時効が成立すると、そもそも加害者は起訴されなくなるので、刑罰を受けることがなくなります。

なお、公訴時効の期間は犯罪の種類によって、以下のとおり定められています。

【人を死亡させ、禁錮以上にあたる罪】

法定刑の上限

具体例

公訴時効の期間

死刑

殺人罪・強盗殺人罪

なし

無期の懲役・禁錮

不同意わいせつ致死罪・不同意性交等致傷罪

30年

長期20年の懲役・禁錮

傷害致死罪・危険運転致死罪

20年

長期20年に未満の懲役・禁固、その他の刑

業務上過失致死罪・自動車運転過失致死罪

10年

【「人を死亡させた罪で禁錮以上の刑にあたる犯罪」以外の罪】

法定刑の上限

具体例

公訴時効の期間

死刑

現住建造物等放火罪・殺人未遂罪

25年

無期の懲役・禁錮

強盗致傷罪

15年

長期15年以上の懲役・禁錮

強盗罪・傷害罪・危険運転致傷罪

10年

長期15年未満の懲役・禁錮

窃盗罪・恐喝罪・詐欺罪・業務上横領罪・虚偽告訴罪

7年

長期10年未満の懲役・禁錮

収賄罪・業務上過失致傷罪・背任罪・単純横領罪・過失運転致傷罪・監禁罪

5年

長期5年未満の懲役・禁錮又は罰金

強要罪・脅迫罪・暴行罪・名誉棄損罪・侮辱罪・公然わいせつ罪・過失傷害罪・住居侵入罪・器物損壊罪・わいせつ物陳列罪

3年

拘留・科料

軽犯罪法違反

1年

なお、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪やそれらの致傷罪など一部の性犯罪については、特則によって時効期間が5年延長されます。

また、上述した性犯罪の被害者が未成年だった場合は、18歳に達するまでの期間が時効期間に加算される点にも注意しておきましょう。

刑の時効|裁判で確定した刑罰の執行を免れる制度のこと

刑の時効とは、裁判で言い渡された刑罰が一定期間執行されなかった場合に、刑罰の執行が免除される制度のことです。

例えば、裁判所の手違いが起きた場合や、刑罰が確定したあとに被告人が逃走して捕まらなかった場合などは、刑の時効が成立する可能性があります。

刑の時効期間は、刑罰の種類によって以下のように定められています。

  • 無期の懲役・禁錮:30年
  • 10年以上の懲役・禁錮:20年
  • 3年以上10年未満の懲役・禁錮:10年
  • 3年未満の懲役・禁錮:5年
  • 罰金:3年
  • 拘留・科料・没収:1年

ただし、長期間にわたって刑罰が執行されず、刑の時効が実際に完成することはほぼあり得ません

あくまでも刑法で定められているルールのひとつであり、刑の時効を期待するのは誤った考え方といえるでしょう。

公訴時効はなぜ存在する?最高裁平成27年12月3日判決より

公訴時効の必要性については、最高裁平成27年12月3日判決で見解が示されています。

平成22年の法改正により、殺人罪などの公訴時効が廃止されたことの是非などについて争われた判例です。

判決によると、公訴時効の趣旨は時の経過に応じて公訴権を制限し、処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにあるとされています

治安を守り、人々の生活に平穏をもたらすためには犯罪者を処罰する必要がある一方で、時間の経過とともに散逸する証拠や長期間継続している事実状態なども考慮してなければ、法秩序に対する信頼も薄れてしまいます。

そのため、公訴時効により一定期間経過した犯罪に限って処罰の対象外にすることで、「処罰の必要性」と「法的安定性」のバランスを保っているのです。

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公訴時効はなぜ存在するのか?代表的な3つの理由を確認しよう

次に、公訴時効が存在する3つの理由を解説します。

1.時間の経過によって証拠が散逸・風化し、事実関係の立証が難しくなるから

公訴時効が存在する理由のひとつは、時間の経過によって証拠が散逸・風化し、事実関係の立証が難しくなるからです。

例えば、犯行の瞬間がコンビニの防犯カメラに映っていた場合、映像記録は証拠のひとつになるでしょう。

しかし、保存期間を過ぎれば犯行当時の映像は上書きされてしまうので、証拠として利用できなくなってしまいます

また、コンビニ周辺に目撃者がいたとしても、時間が経てば経つほど人の記憶は曖昧になるため、証拠としての利用価値はいずれなくなってしまうでしょう。

犯罪を立証するためには証拠が必要ですが、収集できる期間には限界があります。

そのなかで捜査機関の人員をいつまでも割くわけにはいかず、捜査の規模は徐々に縮小していき、最終的には公訴時効により事件終了となってしまうのです。

2.時間の経過によって犯罪の社会的な影響力が弱まるから

時間の経過によって犯罪の社会的な影響力が弱まることも、公訴時効が設けられている理由のひとつです。

例えば、比較的軽微な事件であれば、被害者自身が賠償請求を諦めたり、社会全体が事件の存在自体を忘れたりするケースも少なくありません。

そのなかで加害者が真面目に生活を立て直している場合、過去の過ちを蒸し返してしまうと、かえって社会的不利益を生みだすおそれがあります。

社会的な影響や被害者の処罰感情がゼロになることはなくても、時間の経過とともに希薄化する傾向にあるため、時効による期限が設けられているのです。

3.長期間継続している事実状態は保護に値するから

長期間継続している事実状態は保護に値することも、公訴時効が存在している理由のひとつです。

事件から長期間経過した場合、加害者は「自分は起訴されないかもしれない」という前提のもとで生活を送るようになります。

そのなかで、さまざまな権利関係が生まれたり、周囲との関係を構築したりすることになるため、法律も事実状態に合わせるべきだとする価値判断があるのです。

とはいえ、凶悪・重大な犯罪に関しては、事実状態を保護する必要性が本当にあるのか、時効の趣旨に対する反対意見も数多くみられます

刑事事件の時効に関するよくある質問

最後に、刑事事件の時効に関してよくある質問を紹介します。

Q.刑事告訴の期限と公訴時効はどの点が異なるのか?

刑事告訴の期限とは、被害者が被害を受けた事実と処罰を求める意思を捜査機関に申告できる期限のことです。

一部の犯罪は「親告罪」と呼ばれ、刑事告訴がなければ、加害者が起訴されることもありません。

そのため、加害者に対して処罰を求めるのであれば、原則として「犯人を知った日から6ヵ月以内」に刑事告訴する必要があります。

一方で、公訴時効は加害者が起訴されなくなる期限のことです。

たとえ、被害者が刑事告訴をおこなっていても、加害者が逃げ切って公訴時効を迎えれば起訴されなくなるので、当然処罰を受けることもなくなります。

Q.犯罪によって公訴時効が存在するものとしないものがあるのはなぜか?

公訴時効が存在しないのは、「人を死亡させた罪」のうち、法定刑の上限が死刑の犯罪です。

例えば、以下のような犯罪には公訴時効がありません。

  • 殺人罪
  • 強盗殺人罪
  • 強盗致死罪
  • 強盗・不同意性交等致死罪

上記のような犯罪も、かつては25年の公訴時効期間が定められていました。

しかし、家族を殺人された遺族から、時間の経過を理由に犯人が無罪放免となることへの反発の声が上がるようになったのです。

そこで平成22年の法改正により、人を死亡させた罪のうち特に重大な犯罪については公訴時効が廃止されました。

さいごに|公訴時効の制度趣旨や存在理由などをしっかりと理解しよう

公訴時効には、制度趣旨や存在理由があります。

制度の良し悪しをどう捉えるのかは人それぞれですが、まずは背景にあるものを理解しておくことが大切です。

もし自身や家族が犯罪を犯してしまい、時効の完成を期待しているような場合はすぐに弁護士へ相談してください。

何年も公訴時効の完成を待つのは現実的ではないので、自首を含めて、然るべき対応を速やかに講じる必要があります

少しでも不安を抱えている方は、身近に頼れる弁護士を今すぐ探しましょう。

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この記事の監修者
インテンス法律事務所
原内 直哉 (第二東京弁護士会)
ご相談いただきましたら、これまで様々な業種の会社を経営してきた経験や、弁護士や司法書士といった法律の専門家としての知識を活かして、ご相談者様のお悩み解決にお力添えさせていただきます。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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