廃棄物処理法違反とは?該当する行為と事例をわかりやすく解説
ごみの処分方法などは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)によって決められています。
たとえば、不法投棄や不法焼却などをした場合は、廃棄物処理法違反となり刑事罰が科される可能性があります。
また、廃棄物処理法では事業者向けの規制も多く設けられており、これらに違反した場合も刑事罰を科されます。
本記事では、廃棄物処理法違反のことを知りたい方向けに、以下の内容について説明します。
- 廃棄物処理法違反とは何か
- 廃棄物処理法違反に該当する代表的な行為
- 一般人向けの廃棄物処理法違反を防止するポイント
- 事業者向けの廃棄物処理法違反を防止するポイント
- 廃棄物処理法違反をした場合に弁護士に相談するメリット など
本記事を参考に、廃棄物処理法に違反する行為を理解し、日々の生活や事業で違反を防げるようになりましょう。
廃棄物処理法違反とは?ごみをルール通りに捨てない場合に成立する違反のこと
廃棄物処理法違反とは簡単にいうと、ごみをルール通りに処理しなかった場合に成立する犯罪のことです。
廃棄物処理法は、ごみの種類や処分方法などに加えて産業廃棄物業の許可制度についても規定しています。
そのため、廃棄物処理法違反は「市民も対象になる犯罪」と「事業者が対象になる犯罪」にわけられます。
廃棄物処理法違反による近年の検挙件数|年間5,000件~6,000件程度はある
環境省の「令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」によると、近年の検挙件数は以下のとおりです。
|
年次 |
検挙件数 |
|
2019年 |
5,375件 |
|
2020年 |
5,759件 |
|
2021年 |
5,772件 |
|
2022年 |
5,275件 |
|
2023年 |
5,054件 |
近年の検挙件数は年間5,000件~6,000件程度となっており、さらに廃棄物事犯の内訳は以下のようになっています。
|
様態 |
産業廃棄物 |
一般廃棄物 |
|
不法投棄 |
213件 |
2,420件 |
|
委託違反 |
10件 |
4件 |
|
無許可処分業 |
12件 |
10件 |
|
その他 |
419件 |
1,966件 |
|
合計 |
654件 |
4,400件 |
不法投棄が最も多く、廃棄物処理法違反の中では約52.1%を占めています。
なお、不法投棄の一種であるたばこのポイ捨ては、廃棄物処理法違反だけでなく軽犯罪法違反になる可能性もあります。
廃棄物処理法違反に該当する代表的な行為3選|要件や罰則を確認しよう
廃棄物処理法違反に該当する主な行為は、以下のとおりです。
- 不法投棄
- 無許可営業
- 委託基準違反
ここでは、廃棄物処理法違反に該当する行為とそれぞれの罰則などについて説明します。
1.不法投棄|みだりに廃棄物を捨てること
不法投棄とは、廃棄物処理法第16条に規定されている、みだりに廃棄物を捨てる行為です。
(投棄禁止)
第十六条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
条文に「何人も」とあるとおり、一般人か事業者か関係なく、不法投棄をすると処罰の対象になります。
不法投棄の法定刑は、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科」です(同法第25条)。
また、事業者であった場合は、法人に対しても同様の罰金刑が科されることになります(同法第32条)。
2.無許可営業|都道府県などの許可を得ずに廃棄物の収集・運搬・処分をおこなうこと
廃棄物処理業を営むためには、廃棄物処理法に定められた許可を取得しておく必要があります。
- 一般廃棄物の収集・運搬にかかる許可(同法第7条1項)
- 他社から依頼されて産業廃棄物の収集・運搬をする許可(同法第14条1項)
- 他社から依頼されて特別管理産業廃棄物の収集・運搬をする許可(同法第14条の4第1項)
無免許で廃棄物処理業を営んだ場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科」が科されます。
なお、第7条や第14条に違反した場合は、その法人に対して「3億円以下の罰金」が科されます(同法第32条)。
3.委託基準違反|許可を持たない下請事業者に対して廃棄物の収集・運搬を依頼すること
廃棄物処理法では、許可を持たない下請事業者に対して廃棄物を収集・運搬させる行為も禁止しています。
- 廃棄物処理業の許可を持たない事業者に依頼する行為(同法第12条5項ほか)
- 廃棄物処理業の許可を持つ事業者が名義貸しをして依頼する行為(同法第14条の3の3ほか)
このような委託基準違反をした場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科」となります。
また、違反したのが事業者であった場合は、法人に対して同様の罰金刑が科されます。
【一般人向け】廃棄物処理法違反を防止するための2つのポイント
一般の方が廃棄物処理法に違反しないためのポイントは、以下のとおりです。
- 廃棄物処理法の違反事項を正しく理解する
- ごみの捨て方で困ったら自治体に確認する
ここでは、一般の方が廃棄物処理法違反をしないための2つのポイントについて説明します。
1.廃棄物処理法の違反事項を正しく理解する
一般の方の場合、まず何が廃棄物処理法違反になるのかを理解しておくことが重要です。
廃棄物処理法で「何人も~」と規定されている項目には、以下のようなものがあります。
- 不法投棄:みだりに廃棄物を捨てる行為(同法第16条)
- 不法焼却:特定の方法以外で廃棄物を焼却する行為(同法第16条の2)
- 指定有害廃棄物の処理:硫酸ピッチを処分する行為(同法第16条の3)
たとえば、道端に粗大ごみを捨てる行為や、コンビニに家庭ごみを捨てる行為は、不法投棄になります。
また、空き地などでごみを燃やす行為(野焼き)は、不法焼却に該当するため注意が必要になるでしょう。
2.ごみの捨て方で困ったら自治体に確認する
ごみの捨て方で迷ったら、自治体の窓口に問い合わせることをおすすめします。
電話窓口などが設けられていることが多く、粗大ごみ受付や動物死体処理などにも対応してくれます。
また、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビ、パソコンなどの処分に関するアドバイスももらえるでしょう。
【事業者向け】廃棄物処理法違反を防止するための4つのポイント
事業者が廃棄物処理法に違反しないためのポイントは、以下のとおりです。
- 事業者向けの違反事項を理解しておく
- 許可の申請や更新を忘れずにおこなう
- 従業員に対する教育を徹底しておこなう
- 廃棄物処理法が得意な弁護士に相談する
ここでは、事業者が廃棄物処理法に違反しないための4つのポイントについて説明します。
1.事業者向けの違反事項を理解しておく
排出事業者や廃棄物処理業者が遵守すべき事項は、以下のようにかなり多くあります。
|
事業者の種類 |
遵守事項 |
|
排出事業者 |
・不法投棄や不法焼却をしない(同法第16条、第16条の2) ・契約書を作成してから依頼をする(同法第12条第6項ほか) ・マニフェストに必要事項を記載する(同法第12条の3第1項ほか) など |
|
廃棄物処理業者 |
・不法投棄や不法焼却をしない(同法第16条、第16条の2) ・産業廃棄物管理責任者などを設置する(同法第12条第8項ほか) ・無許可で廃棄物の輸出やその準備をしない(同法第10条) など |
上記のほかにも、排出事業者や廃棄物処理業者が守るべき項目はたくさんあります。
なお、事業者の場合は刑事罰だけでなく、改善命令や措置命令などの行政処分が科されるリスクもあります。
2.忘れずに許可証の申請や更新をおこなう
廃棄物処理業を営むためには、都道府県知事などから許可を得る必要があります。
許可証には以下のような種類があり、取り扱う廃棄物の種類や業務の範囲で必要な許可が異なります。
- 産業廃棄物収集運搬業許可
- 産業廃棄物処分業許可
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可
- 特別管理産業廃棄物処分業許可
許可証がない場合は「無許可営業」になってしまうため、業務に必要なものを必ず取得しておきましょう。
また、産業廃棄物処理業については5年ごと(優良認定の場合は7年ごと)に更新が必要になるので、忘れずに手続きをしてください。
3.従業員に対する教育を徹底しておこなう
廃棄物処理業を営む場合、以下のような内容を従業員へ教育するのもおすすめです。
- 業務に必要な携行品は何か
- マニフェストをどのように読むか
- 日々の業務にどう取り組むべきか
- 産業廃棄物処理の帳簿をどう書くのか
- 廃棄物処理法に違反するとどうなるのか など
従業員への教育に力を入れることで、廃棄物処理法違反を起こすリスクを下げることができます。
また、余談ですが、業務の安全面のアップも期待できて、労働災害のリスクも下げられるでしょう。
4.廃棄物処理法に詳しい弁護士に相談する
廃棄物処理法について不明点・疑問点がある場合は、弁護士に相談しておくこともおすすめです。
廃棄物処理法に詳しい弁護士であれば、相談者の現状をヒアリングし、リスクや対処法などを教えてくれます。
誤った判断をしてしまうと刑事事件に発展したり、行政処分を受けたりするリスクがあるため注意してください。
廃棄物処理法違反に該当する行為をした場合はなるべく早く弁護士に相談を
廃棄物処理法に違反した場合は、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談・依頼をすることで、以下のような対応が期待できます。
- 自首や出頭に同行してくれる(逮捕前の場合)
- 示談交渉を進めてくれる(被害者がいる事件の場合)
- 被害弁償を進めてくれる(費用を負担した人がいる事件の場合)
- 再犯防止策を検討して、捜査機関に働きかけをしてくれる など
廃棄物処理法違反の起訴率は50%を超えており、不起訴処分を獲得する難易度は高いといえます。
早めに弁護士に相談・依頼をして、できる限り不起訴処分や執行猶予などを獲得できるようにしましょう。
さいごに|廃棄物処理法違反は刑事罰になる可能性があるため注意しよう
廃棄物処理法違反には、不法投棄、不法焼却、無許可営業、委託基準違反などがあります。
一般の方の場合は不法投棄や不法焼却などをおこなわず、自治体のルールに従ってごみを処分しましょう。
一方、廃棄物処理にかかわる排出事業者や廃棄物処理業者の場合はより細かな項目を守る必要があります。
廃棄物処理法に違反した場合は、違反した本人だけでなく、その事業者も処罰の対象になる点には注意が必要です。
最悪の場合、許可取消しなどの処分を受けるリスクもあるため、法律を守って事業をおこなうようにしましょう。
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