被告人と被疑者、容疑者の違いとは?基礎知識や被告人の権利を解説
被告人(ひこくにん)は被疑者・容疑者と並んで、刑事事件の現場でよく聞く言葉かもしれません。
これら3つの言葉は刑事事件の各段階によって使い分けられます。
犯罪の疑いをかけられて警察や検察に捜査されている場合は「被疑者」、検事から起訴されて刑事裁判にかけられる人は「被告人」と呼ぶことを把握しておきましょう。
また「被告人」と似ている「被告」という言葉も、「被告人」と意味が異なります。
「被告」は民事裁判にかけられた人を指すため、用途がまったく違う点に注意してください。
それでは、これまで被疑者と呼ばれていた被告人は、どうなってしまうのでしょうか。
この記事では、被告人に関する基礎知識や注意点、被告人が裁判中にもつ人権保障について解説します。
被告人とは起訴された人のこと
被告人とは、犯罪の疑いをかけられ、検事から起訴された人のことを指します。
わかりやすくいえば、刑事裁判にかけられる人のことです。
起訴された被告人は、刑事裁判で判決が出るまでは、身柄を拘束されていようがいまいが被告人のままです。
そして、刑事裁判で判決が確定した段階で被告人という立場ではなくなり、「受刑者」になります。
仮に、無罪判決だった場合や執行猶予付き判決を受けたような場合は、被告人ではなくなり、特段の呼称はありません。
被告人と「被疑者」「容疑者」の違い
被疑者・容疑者・被告など似たような言葉がありますが、いずれも意味が異なります。
それぞれの使い方もシチュエーションも状況によって使い分けられるので、しっかりと把握しておきましょう。
被告人とあわせてよく聞く「被疑者」、「容疑者」の意味は、以下のとおりです。
また刑事事件の段階によって呼び名も変わるため、どの段階でどのように呼ばれるかも記載しているので参考にしてみてください。
| 呼び名 | 呼び名の概要 | 刑事事件の段階 |
|---|---|---|
| 被疑者(容疑者) | 犯罪の疑いをかけられ、検事から起訴された人物。容疑者は、被疑者と同じ意味だが、捜査機関ではなく主に報道現場で使われている。 | 逮捕 |
| 取り調べ | ||
| 勾留 | ||
| 被告人 | 犯罪の疑いをかけられ、検事から起訴された人物。起訴をもって「被疑者」は「被告人」という呼び名に変わる。 | 起訴 |
| 刑事裁判 |
同じ意味ですが、「被疑者(ヒギシャ)」と「被害者(ヒガイシャ)」の聞き間違いが生じないようにするためなどの目的で、報道現場では容疑者が使われています。
被疑者に犯罪の疑いがあり、検察が刑事裁判により罰則を与える必要があると判断した場合、起訴されて被告人となります。
そして刑事裁判で有罪判決が下されると、被告人から「受刑者」に変化するため、同じ人物でも段階によって呼び方が異なる点に注意してください。
被告人と「被告」の違い
「被告人」とは別に「被告」という言葉があり、こちらも裁判当事者という意味では同じです。
一方で、被告は民事裁判で訴えられた当事者を指します。
刑事裁判にかけられている被告人とは、まったく使い方が異なります。
そもそも民事と刑事の両者は混同されがちですが、民事裁判と刑事裁判は手続きが異なり、当事者の呼称も異なるという点を押さえておきましょう。
被告人の対義語は「原告」?
被告人の対義語は「原告」ではありません。
原告は「被告」の対義語です。
原告も被告も民事裁判の当事者に対する呼称であり、刑事裁判とは無関係です。
つまり、被告人の反対の立場で、起訴をする当事者は検察官です。
そのため、被告人の対義語は検察官と考えるのが正しい理解と言えます。
被告人が刑事裁判を受ける際の注意点

検察に起訴されて被告人になってしまった以上、刑事裁判は必ず受けなければいけません。
ここでは、被告人が刑事裁判を受ける際の注意点を2つ解説します。
刑事裁判の欠席はできるが保釈が取り消される恐れもある
身柄を拘束されている被告人であれば、刑事裁判の日に裁判所まで移送され、法廷に連行されることになるため、出頭は確保されます。
保釈中の被告人の場合は、被告人が自主的に裁判所に行く必要があります。
そのため、被告人は刑事裁判に行きたくなければ行かないということもできてしまうのです。
しかし、保釈条件に違反したことを理由に保釈が取り消されてしまい、再度身柄を拘束され、保釈金の全部又は一部が没収される恐れがあります。
したがって、事実上、刑事裁判に行かないという選択は取り得ません。
もちろん、病気・怪我・天災など不可抗力により出頭できない場合は、直ちに保釈が取り消されたり、保釈金が没収されるということは考えにくいです。
とはいえ、特別の事情があったとしても、事前に弁護士への相談や裁判所への連絡は必須でしょう。
裁判時の被告人の服装はスーツが望ましい
普通の生活を送っていれば、一般人はほとんど用事のない裁判所なので、服装について迷う人がいるかもしれません。
出廷について特別な決まりはありませんが、スーツを着るのが無難でしょう。
スーツの用意が難しければ、無地の白・黒・紺といった、なるべく地味で落ち着いた服装なら問題ありません。
裁判官の印象で判決が出るわけではありませんが、印象が良いに越したことはないでしょう。
被告人が受ける刑事裁判の一般的な流れ

刑事裁判では一般的に、以下のような流れで裁判が執りおこなわれます。
刑事裁判の流れについての詳細は、以下を確認してみてください。
被告人が裁判中にもつ3つの人権保障

刑事裁判を受けている被告人であっても、憲法に基づいて無罪であることが推定されるため、被告人=犯罪者という認識は誤りです。
被告人であっても、人間である以上は憲法上の基本的人権が保障されているのです。
刑事訴訟法でも、被告人の権利を保障する目的で憲法に基づいた権利を認めています。
ここでは、被告人が裁判中にもつ3つの人権保障について解説します。
公平で迅速な裁判を受けられる
被告人は、公平で迅速な裁判を受けられると、日本国憲法で定められています。
第三十七条
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。
被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
引用元:e-GOV法令検索-日本国憲法
公正で迅速な裁判を受ける権利を保障するため、検察官や裁判官が事件を担当することに問題がある場合に、忌避・除斥・回避などの制度が認められています。
実際に、これら制度が発動する機会は多くありませんが、公正で迅速な裁判システムを担保するための大切な制度です。
黙秘権が保障される
被告人が裁判中にもつ権利の2つ目は、黙秘権です。
この権利は、日本国憲法と刑事訴訟法で定められたもので、発言を強制されない権利と言えます。
第三十八条
① 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
② 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
引用元:e-GOV法令検索|日本国憲法
第三百十一条
被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
被告人は、刑事裁判に出頭する義務はありますが、発言する義務はありません。
そのため、質問された内容について一切発言をしないことも、自分が発言したい時にのみ発言するということも可能です。
被告人が黙秘権を行使したことを理由に、被告人を刑事裁判で不利益に扱うことは許されません。
なお、あくまで発言を強制されない権利であって、被告人に自由な発言を許す権利ではないことを留意してください。
被告人は、刑事裁判を受ける場合、裁判所の訴訟指揮に従って発言する必要があり、勝手に発言することは許されません。
判決が出るまでは罪を犯していない人として扱われる
被告人が持つ権利の根底には、「無罪推定の原則」という重要な考え方があります。
これは、刑事裁判で有罪判決が確定するまでは、何人も罪を犯していない者として扱わなければならないという原則です。
この原則は、日本国憲法だけでなく、世界人権宣言の第11条1項にも明記されています。
第十一条
1. 犯罪の訴追を受けた者は、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。
マスコミの報道は、逮捕されたり刑事裁判で起訴されたりした時点で、当然のように犯人扱いするケースが大半です。
しかし、このような姿勢は憲法的には誤りというほかないのです。
さいごに|被告人は弁護士への相談が必須
本記事では、被告人に関する基礎知識や注意点、被告人がもつ権利を解説しました。
最初は罪を犯した疑いがあるため、被告人ではなく被疑者と呼ばれます。
しかし、起訴された時点で、被告人と呼ばれてしまいます。
また、保釈金や保釈条件などは、決して簡単な手続きではありません。
絶対条件ではありませんが、事実上弁護士への相談がマストになるでしょう。
刑事手続きは非常に複雑で、専門的な知識がなければ適切に対応することは困難です。
弁護士に依頼して、適切な対応方法やアドバイスを教えてもらいましょう。
刑事事件に強い弁護士を探すなら、当サイト「ベンナビ刑事事件」の利用がおすすめです。
地域や相談したい内容から、自分に合う弁護士を効率的に探し出せます。
無料で利用できるので、ぜひご利用してみてください。
【加害者専用窓口】対応実績1000件以上!家族が逮捕された方/取り調べ中の方は初回相談0円◆不同意わいせつ/痴漢/盗撮/のぞき/児童買春など◆不起訴・示談・早期釈放の実績多数!≪夜間・休日スピード対応◎≫
事務所詳細を見る
【性犯罪/風俗店トラブルの実績多数】ご自身・ご家族が逮捕された、取調べを受けているならすぐにご相談を!夜間相談も◎刑事事件全般に対応し、難しい示談交渉も粘り強く対応します。【初回相談0円|通訳で外国語相談も可能】
事務所詳細を見る
【初回相談0円】性犯罪/痴漢・盗撮/窃盗/少年事件/万引きなど幅広い事件に対応可能◆裁判員裁判などの複雑な案件も対応してきた実績あり◎ご家族が逮捕されてしまった方/警察から連絡を受けた方へ《原則、面談にて丁寧に対応いたします》
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
刑事事件の基礎知識に関する新着コラム
-
侵奪とはどのような意味か、不動産トラブルで耳にした方もいるかもしれません。本記事では、不動産侵奪罪がどのような場合に成立するのかを解説します。他人の...
-
在留カードの「満了日」を確認すれば、在留期間の満了日がわかります。万が一期限切れであれば、「在留期間更新許可申請」や「在留特別許可申請」を検討しまし...
-
不法滞在が発覚すると、入管法に基づき強制送還の手続きが進みます。この記事では、調査・収容・審査・退去強制令書までの流れを整理し、在留特別許可や口頭審...
-
不法滞在を通報された場合、警察での取り調べから検察判断、入管への引き渡しまで短期間で多くの対応が必要になります。本記事では、逮捕からの流れを段階的に...
-
在留期限切れは放置すると不法滞在(オーバーステイ)となり、罰則や退去強制の対象になります。本記事では、期限切れが発覚する流れ、取るべき対応、更新が遅...
-
オーバーステイとは何か、発覚した場合の罰則・退去強制・上陸拒否の期間までわかりやすく解説しています。技能実習生や特定技能の受け入れ担当者が知っておく...
-
不法就労助長罪の初犯でも、拘禁刑や罰金刑といった刑罰を受けるおそれがあります。不法就労助長罪に問われないためには、定期的な在留資格の確認や従業員への...
-
オーバーステイの罪名や不法残留に該当する法律上の扱い、刑事罰・退去強制などのリスク、さらに出国命令制度や在留特別許可、仮放免などの対処法を解説します...
-
事件から1年が経過しても、後日逮捕される可能性はあります。とくに殺人などの重大事件を起こした場合、事件発覚が遅れた場合、新しい証拠が見つかった場合に...
-
警察の事情聴取を受ける際に気を付けることをわかりやすく解説します。被疑者として呼び出された場合に知っておくべき基本対応や、黙秘権・署名拒否などの権利...
刑事事件の基礎知識に関する人気コラム
-
この記事では、前科・前歴の違いから、生活への影響、前科をつけないための対処法までわかりやすく解説します。
-
本記事では私人逮捕の条件や私人逮捕によるトラブルの対処法を解説します。
-
犯罪事件捜査の対象になった場合、刑事手続きはスピーディに進行します。早期に刑事手続きから解放されるためには、初動の段階から迅速な対応をとることが肝心...
-
書類送検とは、警察が被疑者の身柄を拘束せずに事件記録や捜査資料を検察に送る手続きのことを指します。本記事では、書類送検の意味や逮捕との違い、書類送検...
-
少年院(しょうねんいん)とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容するための施設を言います。
-
鑑別所とは、正式には「少年鑑別所」と呼ばれる施設で、家庭裁判所の少年審判をおこなうにあたって、犯罪を犯した未成年の少年を一時的に収容する場所です。本...
-
観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
-
この記事では親告罪と何か、親告罪に該当する罪を解説したあと、告訴されたときの対処法について紹介しています。親告罪を犯してしまって告訴される可能性があ...
-
刑事裁判と言っても、事件内容によって方法が少し異なります。この記事では刑事裁判の種類や流れの他に、民事裁判との違いやよくある質問(裁判員制度について...
-
本記事では、在宅起訴の意味や逮捕との違い、起訴後の流れから判決までをわかりやすく解説します。
刑事事件の基礎知識の関連コラム
-
本記事では、前科があることで就職にどういった影響が出るのか、企業側の見方や採用の実情、そして前科があっても働くために知っておくべきポイントをわかりや...
-
少年法が一部改正され、2022年4月1日から18歳または19歳の少年についての実名報道が可能になりました。今回は、18歳または19歳の少年が加害者と...
-
オーバーステイの罪名や不法残留に該当する法律上の扱い、刑事罰・退去強制などのリスク、さらに出国命令制度や在留特別許可、仮放免などの対処法を解説します...
-
罪を犯してしまったものの、証拠がないから大丈夫だろうと安心している方もいるかもしれません。本記事では、警察がどのような状況で動くのか、証拠の種類や重...
-
本記事では、YouTube違法アップロードに関する逮捕事例などを交えながら、問われる罪や視聴者側の対処法などを解説します。
-
恫喝は状況により脅迫罪・強要罪・恐喝罪など重大な犯罪に該当する可能性があります。「単に注意しただけ」でも相手に恐怖心を与えれば法的責任を問われるリス...
-
歩いていたら突然声をかけられて、職務質問をされたことがある方も多いでしょう。本記事では、職務質問を拒否できるか否か、職務質問をスムーズに終わらせる方...
-
業務をしているとき、過失によって事故を起こしてしまったら、業務上過失致死傷罪に問われます。業務上過失致死傷罪に該当するのは、どのような事故のときなの...
-
略式命令は簡易な刑事裁判手続です。100万円以下の罰金刑である犯罪で、被疑者の同意がある場合に選択されます。この記事では略式命令の概要や、略式命令に...
-
包丁の持ち運びは、銃刀法違反になる可能性があります。そのため、アウトドアなどで包丁を携帯する際は、 刃体の長さなどについて法的に認められる基準を理...
-
不法滞在が発覚すると、入管法に基づき強制送還の手続きが進みます。この記事では、調査・収容・審査・退去強制令書までの流れを整理し、在留特別許可や口頭審...
-
盗撮の冤罪にあいそうなときでも、対応を間違えると逆に状況が悪化する可能性があります。万が一のときに冷静に対応できるよう、正しい対処法と注意点をおさえ...
刑事事件の基礎知識コラム一覧へ戻る


