略式起訴とは、検察官が簡易裁判所に対して被疑者への処罰を求める簡易的な手続きのことです。
通常の起訴である「正式起訴」と比べると、手続きがシンプルで迅速に事件が終結するというメリットはあるものの、基本的に被告人は有罪となって罰金または科料が科せられます。
刑事事件を起こすと検察官から略式起訴の打診を受けることもありますが、受け入れるべきかどうかは状況に応じて異なります。
あとで後悔することがないよう、一度弁護士に相談することも検討しましょう。
本記事では、略式起訴と正式起訴との違いや前科の有無、略式起訴のメリット・デメリットや手続きの流れなどを解説します。
前科が付くのを避けたい方へ
略式起訴の場合、正式起訴に比べて身体拘束が短期間で済む可能性があるものの、基本的には罰金刑や科料が科されて前科が付いてしまいます。
自分や家族が刑事事件の加害者となってしまって前科を避けたい場合は、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。
刑事事件で弁護士に相談・依頼するメリットは以下のとおりです。
- 取り調べでの受け答えの仕方をアドバイスしてくれる
- 不起訴処分の獲得を目指して弁護活動を進めてくれる
- 早期釈放のために捜査機関に対して働きかけてくれる など
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略式起訴とは
略式起訴とは起訴手続きの一種で、検察官が簡易裁判所に対して簡易的な手続きで被疑者への処罰を求めることです。
比較的軽微な刑事事件の場合、検察官が略式起訴を打診してくることがあります。
ここでは、略式起訴の特徴や正式起訴との違い、略式起訴の要件や関連用語などを解説します。
略式起訴と正式起訴の違い
起訴には、大きく分けて「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。
正式起訴とは、検察官が裁判所に対して公開法廷で被疑者への処罰を求める手続きのことです。
正式起訴は一般的な起訴方法で、起訴後は裁判所に出廷して弁護人側と検察側でそれぞれ主張を尽くしたのち、最終的には裁判官によって判決が言い渡されます。
略式起訴と正式起訴の大きな違いをまとめると以下のとおりです。
| |
略式起訴 |
正式起訴 |
| 裁判形式 |
非公開の書面審理 |
公開法廷での裁判 |
| 被告人の出廷 |
不要 |
必要 |
| 被疑者の同意 |
必要 |
不要 |
| 裁判での判決 |
基本的に有罪となる |
有罪または無罪となる |
| 刑罰の制限 |
100万円以下の罰金刑または科料 |
なし |
| 前科の有無 |
付く |
付く
(無罪の場合は付かない) |
略式起訴となるケース
検察官が被疑者を略式起訴できるのは、以下の要件を全て満たしている場合に限られます。
- 簡易裁判所が管轄する事件であること
- 100万円以下の罰金刑または科料に相当する事件であること
- 被疑者が略式手続きに同意していること
たとえば「①・②は満たしているものの、被疑者が略式手続きに同意していない」というようなケースでは、略式起訴は認められません。
被疑者は、検察官から略式起訴の打診を受けた際に拒否することもでき、拒否した場合は正式起訴が選択されるのが通常です。
略式起訴に関連する用語
略式起訴に関連する主な用語としては、略式命令・略式手続き・起訴・不起訴・罰金刑・科料などがあります。
ここでは、それぞれの用語の意味について解説します。
略式命令
略式命令とは、略式起訴後に裁判所から出される命令のことを指します。
略式起訴では被疑者が罪を認めていることが前提となるため、基本的には略式命令として「100万円以下の罰金刑または科料」が科されることになります。
略式命令は確定判決と同一の効力があり、確定後は通常の裁判での有罪判決と同様に前科が残ることになります。
略式手続き
略式手続きとは、検察官が略式起訴を選択してから裁判官が略式命令を出すまでの流れのことを指します。
具体的な手続きの流れについては「略式起訴の手続きの流れ」で後述します。
起訴・不起訴
起訴とは、検察官が裁判所に対して被疑者への処罰を求めることを指します。
起訴されると被疑者は被告人となり、刑事裁判が開かれて有罪無罪や量刑が言い渡されます。
一方、不起訴とは、検察官が「被疑者を起訴しない」と決定することを指します。
不起訴となった場合、裁判は開かれずに刑事手続きが終了し、被疑者は解放されて前科も付かずに済みます。
罰金刑
罰金刑とは、一定の金銭の納付を命じる刑罰のことです。
原則として最低額は1万円で、上限額は犯罪の種類によって異なります(刑法第15条)。
罰金刑が確定した場合、後日自宅に納付書が届けられ、記載内容に従って金融機関や検察庁にて支払いを済ませれば刑罰は終了となります。
科料
科料とは、罰金刑よりも低額の金銭の納付を命じる刑罰のことです。
科料の場合、1,000円以上1万円未満の範囲内で言い渡されます(刑法第17条)。
金銭的負担は軽く済むものの、罰金刑と同様に前科は付きます。
略式起訴のメリット・デメリット
略式起訴には、主に以下のようなメリット・デメリットがあります。
- メリット
-
- 出廷や証拠集めなどの手間が省ける
- 正式起訴に比べて事件解決が早い
- 罰金刑・科料以上の刑罰は科されない
- 非公開で手続きが進行するため、第三者に知られずに済む可能性がある など
- デメリット
-
- 無罪の主張や事実関係の争いができない
- 基本的には有罪となり前科が付く
- 略式起訴の同意後の撤回は難しい など
検察官から略式起訴の打診を受けた際は、メリット・デメリットの双方を考慮したうえで応じるかどうか判断しましょう。
ここでは、略式起訴のメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
メリット
まず、略式起訴では裁判所に行かずに済むうえ、通常の裁判よりも手続きがスピーディに終了するというのが大きなメリットです。
手続きは非公開で進行するため第三者が傍聴するようなこともなく、周囲に知られるリスクを抑えることができます。
また、略式起訴で科される刑罰は罰金刑と科料のどちらかであり、死刑や拘禁刑などが科されることはありません。
有罪となっても刑事施設には収容されずに済み、日常生活に復帰できるというのも特徴のひとつです。
デメリット
一方、略式起訴では被疑者が罪を認めていることが前提となるため、基本的に有罪となって前科が付くというのが大きなデメリットです。
被告人は出廷せずに書面のみで審査が進行するため反論の機会がなく、裁判官に対して無実であることを主張したり、事実関係を争ったりすることはできません。
また、捜査機関が違法な手続きで収集した証拠があっても見過ごされてしまうこともあり、被告人にとって不利に働くおそれもあります。
略式起訴の手続きの流れ
刑事事件で略式起訴となるまでの基本的な流れは以下のとおりです。
- 検察官が略式起訴が相当かどうか判断する
- 検察官が被疑者に略式起訴について説明する
- 被疑者が同意して申述書を作成する
- 検察官が簡易裁判所に略式命令の請求をおこなう
- 簡易裁判所にて略式命令が出される
- 罰金・科料を納付する
ここでは、それぞれの手続きの流れについて解説します。
1.検察官が略式起訴が相当かどうか判断する
警察や検察による取り調べなどを経て、これまでの捜査をもとに検察官が被疑者を起訴するか不起訴とするかを決定します。
検察官が起訴する場合、略式起訴の要件を満たしているケースについては「正式起訴とするか略式起訴とするか」も判断されます。
なお、刑事事件は、被疑者を身柄拘束した状態で捜査が進行する「身柄事件」と、身柄拘束されずに捜査が進行する「在宅事件」の2種類に大きく分けられます。
身柄事件と在宅事件では事件発生から起訴・不起訴までの流れが異なり、詳しくは以下の記事をご覧ください。
2.検察官が被疑者に略式起訴について説明する
検察官が「略式起訴が相当」と判断した場合、被疑者に対して説明がおこなわれます。
略式起訴の手続き内容や、正式起訴という選択肢もあることなどが説明されたのち、略式起訴に同意するかどうか判断を求められます。
3.被疑者が同意して同意書を作成する
略式起訴に同意する場合、検察官から同意書の署名押印が求められます。
指示に従って作成を済ませたら検察官に提出します。
なお、略式起訴に同意しない場合は正式起訴が選択されるのが通常です。
4.検察官が簡易裁判所に略式命令の請求をおこなう
同意書の提出後は、検察官が簡易裁判所に対して略式命令の請求をおこないます(刑事訴訟法第462条1項)。
裁判官が提出書類を審査して「略式裁判が相当」と判断した場合、略式命令が出されます。
5.簡易裁判所にて略式命令が出される
通常、略式命令の請求後14日以内には略式命令が出されます。
基本的には「100万円以下の罰金刑または科料」が科されることになり、被告人に対して告知されます。
6.罰金・科料を納付する
略式命令が確定すると、後日自宅に罰金・科料の納付書が届けられます。
原則として一括払いで、指定の金融機関・検察庁にて期限内に納付する必要があります。
罰金・科料を支払わない場合は労役場留置となる
略式命令が確定したにもかかわらず期限内に罰金・科料を納付できなかった場合、労役場留置という処分になります(刑法第18条)。
労役場留置とは、刑事施設に収容されて一定期間労働を科される処分のことです。
留置期間は刑罰によって異なり、罰金刑の場合は「1日以上2年以下」、科料の場合は「1日以上30日以下」となります。
略式起訴されて不服がある場合の対処法
略式起訴されて罰金や科料などの内容に納得いかない場合、略式命令の告知を受けてから14日以内であれば正式裁判の請求が可能です(刑事訴訟法第465条1項)。
略式命令が出た簡易裁判所に対して書面にて請求を済ませれば、通常の裁判手続きに移行して争うことになります。
裁判所に出廷して証拠の提出や主張立証などをおこない、十分に尽くされたところで裁判官によって有罪無罪や量刑などが言い渡されます。
正式裁判にて判決がなされると、略式命令の効力は失われます(刑事訴訟法第469条)。
略式起訴に関するよくある質問
ここでは、略式起訴に関するよくある質問について解説します。
略式起訴されるとどうなる?前科は付く?
略式起訴されると、簡易裁判所にて書面のみで審査が進められて「100万円以下の罰金刑または科料」が科されます。
略式起訴では被疑者が罪を認めていることが前提となるため、基本的には有罪となって前科が残ることになります。
前科が付いてしまうと、解雇や離婚など生活に影響が出るおそれがあるほか、再犯した場合には身柄拘束が長引いたり刑が重くなったりする可能性もあります。
略式起訴は会社にバレる?
略式起訴されても、正式起訴に比べると会社に知られるリスクは低いと言えます。
手続きは非公開で進行して、出廷のために会社を休む必要もありませんし、有罪となっても刑事施設には収容されずに日常生活に復帰できます。
略式起訴されても会社に通知が届くわけではないため、起訴されるまでの時点で会社に知られていなければ、起訴後もそのまま知られずに済む可能性があります。
正式起訴と略式起訴の違いは?
正式起訴と略式起訴の主な違いとしては、被疑者の同意・被告人の出廷・裁判形式・裁判での判決・刑罰の制限などがあります。
略式起訴の場合、検察官が被疑者の同意を得たうえで簡易裁判所に対して請求したのち、被告人は出廷せずに書面だけで審査が進められます。
基本的に被告人は有罪となり、「100万円以下の罰金刑または科料」が科されて前科が残ることになります。
一方、正式起訴の場合、検察官の判断で裁判所に対して請求したのち、被告人は出廷して公開法廷で証拠の提出や主張立証などをおこないます。
裁判では有罪無罪や量刑などが争われ、有罪となった場合は「死刑・拘禁刑・罰金刑・科料」などが科されて前科が残り、無罪となった場合は前科が付かずに終了となります。
さいごに|略式起訴の打診を受けたら、まずは弁護士に相談を
略式起訴となった場合、早期に刑事手続きから解放される反面、基本的には罰金刑と科料のどちらかが科されて前科が付くことになります。
特に「身に覚えのない罪で疑いをかけられている」「前科を回避したい」というようなケースでは、なるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士なら、今後の見通しや取るべき対応をアドバイスしてくれるほか、前科の回避や減刑獲得に向けた弁護活動を依頼することもできます。
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