検挙とは?警察が使うシーンや似ている「摘発」「立件」などとの違いを中心に解説

ニュース番組や新聞で、よく「〇〇容疑者を検挙」などという言葉を見聞きします。
しかし、「検挙」とは具体的にどんな状態を指すのか、実ははっきりと理解できていない人は多いのではないでしょうか?
本記事では、「検挙」という言葉の正確な意味や使われる場面、逮捕・摘発・立件との違い、検挙後の流れなどを解説します。
ニュースで耳にする言葉の理解を深めたい方や、万が一自分や身近な人が検挙されたときのために最低限の知識を身につけておきたい方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後まで参考にしてください。
検挙とは?警察が犯人を特定し、送致や微罪処分に必要な捜査を終えること
検挙とは、犯罪の被疑者を捜査機関が特定し、捜査の対象とすることです。
検挙の定義は、警視庁の「犯罪統計細則」で定められています。
(5) 検挙 犯罪について被疑者を特定し、送致・送付又は微罪処分に必要な捜査を遂げることをいう。
引用元:警察庁「犯罪統計細則」
ただし、検挙は法律上の正式な用語ではありません。
主に警察内部で使われている用語であり、具体的な意味は文脈によって変わることがあります。
そのため、実際に逮捕したことを「検挙」と呼ぶ場合もあれば、任意で事情を聞いたり、捜査の対象として扱い始めた段階を「検挙」と表現することもあるのです。
「検挙」という言葉は広い意味を持ち、使われる場面によって異なるニュアンスを含む点に注意しましょう。
一般的に「検挙」という言葉が使われることが多いシーン
「検挙」という言葉が使われることが多いシーンとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 事件が検察に送致された場合
- 事件を微罪処分として終了させた場合
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
1.事件が検察に送致された場合
事件が検察に送致されるタイミングで、「検挙」と表現されることがあります。
送致とは、警察が事件を検察に引き継ぐことです。
原則として、警察は逮捕した被疑者を48時間以内に検察官へ送致します。
送致を受けた検察官は、24時間以内に被疑者を引き続き身体拘束する必要があるか判断し、必要があれば裁判所に勾留を請求します。
2.事件を微罪処分として終了させた場合
事件を微罪処分とするタイミングでも、「検挙」と表現されることがあります。
微罪処分とは、比較的軽い犯罪について、警察が捜査を終えた時点で事件処理を完了させ、検察に送致しないまま手続きを終了する方法です。
通常、刑事事件は「犯罪発生→逮捕→検察官送致→勾留→起訴→裁判→判決」という流れで進みます。
しかし、検察官からあらかじめ指定された一定の軽微な事件については、例外的に検察官に送致せず、警察の判断で処理を終えることが認められています。
「検挙」と似ている用語との違い|摘発・立件・逮捕など
検挙に似た意味で使われる言葉には、「摘発」「立件」「逮捕」などがあります。
これらはどれも犯罪に関連する用語ですが、意味や使われ方に違いがあるので、確認しておきましょう。
1. 摘発とは|捜査機関が世の中に犯罪を暴いて公表すること
摘発とは、犯罪などの悪事を明らかにして世間に公表することです。
たとえば「違法風俗店を摘発した」など、捜査機関が違法行為を見つけて発表するときに使用されます。
摘発も検挙も、どちらも法律用語ではなく、誰がどんな手続きをするかが決まっている言葉ではありません。
ただし、一般的には以下のように使い分けられています。
- 検挙:容疑者を特定して取り調べなどに進めること
- 摘発:違法行為そのものを明らかにすること
2.立件とは|マスコミが使う「起訴の可能性が高い事件」などのこと
立件という言葉に明確な定義はありません。
しかし、実際には起訴の可能性が高い事件を警察から検察へ送致することを意味することが多いです。
検挙も立件も、マスコミが多く使う表現で、どちらも法律用語ではありません。
用語の意味合いに明確な違いがあるわけではありませんが、一般的には以下のように使い分けられています。
- 検挙:容疑者を特定して捜査を開始すること
- 立件:警察が、捜査の結果として起訴の可能性が高いと判断した事件を検察に引き継ぐこと
【関連記事】立件とは?定義や意味、使われることが多いシチュエーションなどについて解説
3.逮捕とは|捜査機関や私人が被疑者の一時的に身柄を拘束すること
逮捕とは、被疑者の身柄を拘束する手続きのことです。
検挙と逮捕は、どちらも捜査機関の行為として使われる言葉ですが、以下のような違いがあります。
- 検挙:捜査機関が被疑者を特定して捜査を開始すること
- 逮捕:被疑者の身体を直接拘束すること
刑事事件における検挙率は約4割|検挙されない事件が多いのはなぜ?
警察が事件を把握しても、全てのケースで犯人の特定や捜査に進むわけではありません。
法務省が発行する「令和6年版 犯罪白書」によると、警察が認知した事件は703,351件あり、そのうち実際に検挙されたのは269,550件でした。
このことから、検挙率は約38%、つまり全体の約4割にとどまっていることがわかります。
検挙されない事件が多いのは、次のような理由があるものと思われます。
- 犯人を特定できない
目撃情報も防犯カメラもなく、手がかりが非常に少ない事件では、犯人の特定は困難です。 - 軽微事件は検挙しない傾向がある
警察のリソースが限られており、事件が軽微で被害が少ないケースでは、ほかの重大事件を優先することがあります。
さいごに|検挙とは通常、被疑者が特定されて検察へ送致されたことを指す
本記事では「検挙」という言葉の定義や類似用語との違いなどについて詳しく解説しました。
検挙とは、被疑者が特定されて検察に送致された場合をさすのが通常ですが、さまざまな場面で利用されており、定義は明確に定まっていません。
報道内容から、検挙という言葉がどのような意味で使われているか判断して、事件報道をより深く理解できるようになりましょう。
また、よく似た言葉である「摘発」「立件」「逮捕」などとの違いをおさえ、混同しないように注意しましょう。



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