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恫喝とは?どこからが犯罪になるのかや成立し得る罪について解説

恫喝とは?どこからが犯罪になるのかや成立し得る罪について解説

日常生活やビジネスシーンにおいて、感情的になって相手を強く叱ったり注意したりすることは誰にでもあるものです。

しかし、その行為が「恫喝」と捉えられた場合、思わぬ法的トラブルに発展する可能性があります。

実際、強い叱責やつい感情的になって言ったことについて「厳しく言い過ぎたかな...」「訴えられたりしたらどうしよう...」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、恫喝がどのような場合に犯罪となるのか、成立し得る罪の種類と刑罰について解説します。

あわせて、恫喝をしてしまったときの対処法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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恫喝とは相手を脅して恐れさせる行為

恫喝(どうかつ)とは、人を脅して恐怖心を抱かせる行為を指す一般的な表現です。

大声で怒鳴る行為だけでなく、威圧的な言葉や態度、相手の立場を利用した心理的圧迫、不利益を匂わせる発言なども恫喝に含まれます。

また、近年ではSNSを通じた嫌がらせの予告なども恫喝行為として認識されています。

恫喝行為の本質は、「相手に恐怖感を与えること」です。

単に恐怖を与える目的の場合もあれば、相手を委縮させて自分の意図する行動を取らせるためにおこなわれる場合もあります。

恫喝はどこから犯罪になる?成立し得る罪の種類と刑罰

前提として、恫喝は一般的な表現であり、「恫喝罪」という犯罪は刑法に存在しません

しかし、その内容や手段によっては以下の刑事罰に該当する可能性があります。

  • 脅迫罪
  • 威力業務妨害罪
  • 強要罪
  • 恐喝罪

ここからは、恫喝行為によって成立し得る罪と刑罰について詳しく説明します。

脅迫罪|2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

脅迫罪は、相手やその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知して脅迫する犯罪です。

たとえば、恫喝行為の中に「殺してやる」「家を燃やすぞ」「会社をクビにしてやる」「次失敗したら殴るぞ」といった発言が含まれる場合、実際に害を加える意思がなくても、脅迫罪が成立する可能性があります。

なお、脅迫罪の法定刑としては、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が規定されています。

威力業務妨害罪|3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

威力業務妨害罪は、威力を用いて他人の業務を妨害する犯罪です。

ここでいう「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足りる勢力を指します。

そのため、たとえば店舗での過度なクレームや恫喝によって業務が停滞した場合、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

なお、威力業務妨害罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

強要罪|3年以下の拘禁刑

強要罪は、脅迫や暴行を用いて相手に義務のない行為をさせたり、権利の行使を妨害したりする犯罪です。

たとえば、「土下座しろ」や「みんなの前で謝罪しろ」といった義務のない行為の強要が典型例です。

なお、強要罪の法定刑は3年以下の拘禁刑とされており、罰金刑がありません

そのため、有罪となれば拘禁刑が科されて社会生活から隔離された生活を送らなければならなくなる可能性もあります。

恐喝罪|10年以下の拘禁刑

恐喝罪は、暴行または脅迫を用いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする犯罪です。

たとえば、恫喝行為の中に「慰謝料として金を払え」「本当に悪いと思っているなら金銭で示せ」といった金銭要求が含まれる場合が該当します。

法定刑は10年以下の拘禁刑と非常に重く、有罪になれば社会生活に大きな影響を及ぼしかねません。

なお、恐喝罪は未遂であっても処罰の対象となるため、実際に金銭を受け取らなくても、要求した時点で恐喝未遂罪が成立する可能性があります。

犯罪になりやすい恫喝行為の具体例

恫喝行為が犯罪に発展しやすい場面には一定のパターンがあります。

とくに感情的になりやすい状況や、立場の違いによる力関係が存在する場面では注意が必要です。

以下では、実際に問題となりやすい代表的なケースを紹介します。

上司から部下に対する過度な叱責

職場の上司が部下に対して過度な叱責や注意をおこなった場合、内容によっては恫喝行為に該当する可能性があります。

単にミスなどを注意するだけならば問題ありませんが、「契約が取れるまで退社するな」のような過度な要求を伴う場合は強要罪に、「クビにしてやる」といった発言があれば脅迫罪に該当する可能性があるので注意しましょう。

指導との境界線が曖昧になりがちですが、相手に恐怖心を与えて委縮させる行為は適切な指導ではありません。

感情的になった際の発言や行動が、思わぬ刑事責任を招くリスクがあることを覚えておくことが大切です。

相手に怒りをおぼえ「殴る」「殺す」などと言う

感情的になった際に発する「殺すぞ」「殴ってやる」といった発言は、典型的な脅迫行為として処罰対象となります。

ここで注意が必要なのは、発言者には実際にその意思がなかったとしても、相手が恐怖を感じれば脅迫罪が成立する点です。

「殴る」「殺す」などは、日常的なトラブルや口論の延長でつい口にしてしまいがちな言葉ですが、法的には重大な犯罪行為として扱われることを覚えておきましょう。

そのほか、「家を燃やすぞ」「会社をクビにしてやる」といった財産や名誉に対する害悪の告知も同様に脅迫罪に該当します。

客から店舗・業者などに対するクレーム

商品やサービスへの不満から始まるクレームが、恫喝行為に発展するケースも多く見られます。

正当な苦情や改善要求は問題ありませんが、大声で店員を威圧したり、無理な要求を繰り返したりする行為は威力業務妨害罪に該当する可能性があります。

また「土下座しろ」「謝罪文を書け」といった義務のない行為を要求すれば強要罪に、「慰謝料を払え」と金銭を要求すれば恐喝罪に該当する危険性があります。

顧客の立場を利用した過度な要求は、正当なクレームの範囲を超えた犯罪行為として処罰されるリスクがあることを覚えておきましょう。

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恫喝で逮捕されたあとの流れ

恫喝行為が脅迫罪や強要罪などの犯罪に該当した場合、逮捕される可能性も否定できません

恫喝で逮捕されると、基本的に以下のような流れに沿って手続きが進められます

  1. 警察で取り調べを受ける
  2. 検察へ送致される
  3. 警察の留置場などに勾留される
  4. 検察が起訴・不起訴を決定する
  5. 刑事裁判が開始される

ここからは、それぞれのステップごとにどのような手続きがおこなわれるのかを見ていきましょう。

1.警察で取り調べを受ける

恫喝で逮捕されると、警察署の留置場で身柄を拘束され、取り調べを受けることになります。

取り調べでは、恫喝行為の動機や経緯、認否などについて聴取されます。

なお、警察での身柄拘束期間は最大48時間で、この間に犯罪事実の確認や証拠収集がおこなわれます。

軽微な事案の場合、「微罪処分」として警察段階で事件が終了する場合も少なくありません。

2.検察へ送致される

警察が取り調べを終えると、事件が検察に送致されます

検察でも同様に取り調べがおこなわれ、24時間以内に勾留が必要かどうかを判断されます。

なお、全ての逮捕事案で必ずしも勾留が必要と判断されるわけではありません。

勾留には以下のような要件があり、これらを満たす場合にのみ勾留が認められます。

  • 罪を犯したと疑う相当の理由がある場合
  • 住所不定・証拠隠滅の恐れ・逃亡の恐れのどれかに該当する場合

3.警察の留置場などに勾留される

検察官が勾留が必要だと判断した場合、裁判所へ勾留請求がおこなわれます

そして、勾留請求が裁判官に認められると、10日間の勾留決定がなされるのが通常です。

勾留期間中は面会や外部連絡は制限され、警察署の留置場で過ごさなければなりません。

また、この間に検察官からの取り調べを受け、起訴の可否について判断材料が収集されます。

さらに、10日間では起訴の可否を判断できない場合、勾留延長によって最大20日間まで身柄拘束が継続される可能性があります。

勾留期間が長引くことは、社会生活への影響も非常に大きいです。

勾留期間中の無断欠勤によって職場での立場が悪化したり、家族に影響が生じたりするなど、起訴の可否に関わらず仕事や家庭に影響を及ぼす可能性があるでしょう。

4.検察が起訴・不起訴を決定する

勾留期間中に、検察官は起訴・不起訴の最終判断をおこないます

証拠が十分で有罪の見込みがあると判断されれば起訴され、被告人となって拘置所で刑事裁判を待つことになります。

この段階では、保釈請求も可能ですが、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されれば認められません。

一方、証拠が足りない場合や罪を犯したと認められない場合は、不起訴処分となり事件が終了します。

なお、不起訴処分には「嫌疑不十分」と「起訴猶予」があります。

嫌疑不十分は証拠不足の場合、起訴猶予は有罪の見込みはあるものの被害者との示談成立や初犯であることなどを考慮して起訴を見送る場合です。

5.刑事裁判が開始される

検察に起訴されると、刑事裁判が開始されます。

裁判では恫喝行為の事実認定と量刑について審理がおこなわれます。

初犯で反省の態度を示し、被害者との示談が成立していれば執行猶予付き判決となる場合も少なくありません。

しかし、悪質性が高い場合や常習性がある場合は実刑判決が下されることもあります

有罪判決が確定すれば前科がつき、就職や資格取得に大きな影響を与えかねません。

さらに、執行猶予付き判決だとしても執行猶予期間中に再び犯罪を犯せば執行猶予が取り消され、実刑となる可能性もあります。

なお、日本の刑事裁判における有罪率は99.9%と極めて高く、起訴されれば有罪判決を受ける可能性が高いのが現実です。

恫喝事件を起こしてしまった場合にやるべきこと

恫喝行為をおこなってしまった場合、その後の対応によって刑事処分の内容や社会復帰への道筋が大きく左右されます

ここでは、恫喝事件を起こしてしまったときにすべきこととして以下3つを紹介します。

  • 被害者との示談を成立させる
  • 自首を検討する
  • 刑事事件の対応が得意な弁護士に相談する

少しでも自分の生活への影響を抑えるために、それぞれの対処法をチェックしておきましょう。

被害者との示談を成立させる

示談の成立は、恫喝事件をスムーズに終結させるために最も重要な要素の一つです。

なぜなら、被害者から許しを得ることができれば、刑事事件かするのを防げるほか、不起訴処分の可能性が大幅に向上するからです。

示談交渉では、まず被害者に対する真摯な謝罪の意思を伝えましょう

恫喝によって与えた精神的苦痛を認め、心からの反省を示すことで交渉の土台を築きます。

ただし、恫喝は被害者に強い不快感や恐怖心を与える行為であり、直接の交渉は感情的な対立を生むリスクもあります。

そもそも被害者が加害者との接触を拒否するケースも多いため、弁護士へ依頼するなどして交渉を進めてもらうのがおすすめです。

自首を検討する

恫喝事件を起こしてしまったときは、自首をすることも検討しましょう。

自首をすることで反省の意思や捜査への協力姿勢を示せるため、逮捕の必要性がないと判断されやすくなります。

また、仮に起訴されたとしても、自首をしたことによって刑が減刑されることも期待できます。

ただし、自首が有効なのは「恫喝事件の犯人が判明していないとき」のみです。

すでに警察が犯人を特定している場合、自首ではなく出頭という扱いになってしまうため、注意しましょう。

自首を検討する際は、事実関係を整理し、どの部分が犯罪に該当するかを正確に把握することが重要です。

曖昧な状態で自首をするとかえって不利な状況を招くおそれもあるので、弁護士へ相談しながら検討することをおすすめします。

刑事事件の対応が得意な弁護士に相談する

示談交渉や自首の判断は、いずれも刑事事件の知識なしで適切におこなうのは困難です。

そのため、恫喝事件を起こしてしまった場合は、刑事事件に精通した弁護士への相談・依頼が欠かせません。

弁護士に相談することで得られるメリットは、主に以下のとおりです。

  • 示談交渉の代理
    被害者との直接交渉を避け、客観的な立場から冷静な話し合いをしてもらえる
  • 自首のサポート
    事件の性質や証拠関係を踏まえた自首の是非やタイミングの助言をしてもらえる
  • 取り調べ対応
    発言内容や黙秘権の行使について法的観点からアドバイスをもらえる
  • 身柄解放活動
    勾留回避や早期釈放に向けた具体的な弁護活動をしてもらえる

恫喝事件は一般的に重大犯罪とはなりにくいものの、初動対応の良し悪しが最終的な処分に大きく影響します。

その点、刑事事件対応に精通した弁護士が早期に関与することで、不起訴処分や執行猶予付き判決といった寛大な処分を受けられる見込みが格段に高まるでしょう。

事件が発覚する前の段階でも相談は可能ですので、恫喝行為に心当たりがある場合は速やかに弁護士のアドバイスを求めることをおすすめします。

さいごに|恫喝は犯罪になり得る!まずは弁護士に相談を!

恫喝行為は、その内容や状況によって脅迫罪や強要罪、恐喝罪などの重大な犯罪に該当する可能性があります。

「単に注意しただけ」「感情的になっただけ」という認識でも、相手に恐怖心を与えれば法的な責任を問われるリスクがあるのです。

とくに職場でのパワハラやクレーム行為は、日常的に起こりやすい場面であるため、普段から言動に注意を払うことが重要です。

もし恫喝行為の結果、相手から「警察に相談する」と言われたり、会社から「法的措置を検討している」と通告されたりした場合は、問題が深刻化する前に弁護士への相談を検討してみてください。

弁護士は自首の可否をはじめ、被害者との示談交渉や取り調べ対応など、逮捕前から逮捕後まで一貫してサポートができます。

恫喝に関する問題で法的トラブルに発展する可能性がある方は、事態が深刻化する前に刑事事件に精通した弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

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磯田 直也 (兵庫県弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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