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実名報道と匿名報道の基準は?判断基準とプライバシー侵害の問題点

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事

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実名報道(じつめいほうどう)とは、マスメディアの報道において、被疑者・被告人・その他関係者の実名を明示することです。

ニュースを見ていると、加害者の実名が明示されているケースもある一方、明らかにしていないケースもありますね。同じ類型の犯罪であっても、実名報道されることもあれば、匿名報道になることもあるようです。

では、実名報道されるかどうかの基準はどこにあるのでしょうか

そこでこの記事では、実名報道について次のような点について解説します。

  • 実名報道の問題点
  • 実名報道されないケース
  • 実名報道とプライバシー権・名誉棄損の関係性
  • 実名報道された場合の対処法 など

実名報道へ理解を深めたい人は参考にしてください。

ご家族や自身が逮捕されそうな方へ

警察に逮捕されれば、実名報道をされる可能性はあります。

実名報道の可能性を減らすためにも、ご家族や自身が逮捕されそうな方は、弁護士への依頼がおすすめです。

弁護士に依頼をすれば、下記のような活動を効果的に行ってくれます。

 

  • 逮捕されないための弁護活動
  • 被害者との示談交渉
  • 実名報道を控える意見書の提出
  • 自首をする際の同行
  • 取り調べの受け方のアドバイス など

 

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実名報道の問題点2つ

実名報道には2つの問題点があります。まずはどういった問題点があるか確認しておきましょう。

報道された人とその家族の人権や日常が損なわれる

実名が出るため報道される人はプライバシーが関係なく損なわれてしまいます。メディア上に名前が出たが最後、大衆はその人を犯罪者として接するようになります。仕事をクビになるだけでなく、再就職先を見つけるのも困難でしょう。

また、困るのは本人だけではありません。実名報道された人の家族も「犯罪者の家族」という目で見られ、会社や学校で差別を受ける恐れがあります。

さらに、被害者の実名が報道された場合も問題が発生します。メディアが被害者家族の自宅に押し掛ける「メディアスクラム」などによって、被害者や家族のプライバシーが損なわれるでしょう。

特に殺人事件など重大な事件の場合、被害者家族は精神的に大きな負担となっていることも多く、実名報道によってさらに心に傷を負うということもあるでしょう。

判決前にもかかわらず犯人であるかのような印象を与えてしまう

日本の報道機関は実名報道を原則としています。違法性はないのですが、裁判の結果が出る前でも報道がされるため、あたかも犯罪者であるかのような印象を大衆に与えてしまいます。

裁判で判決が下るまでは、報道された人の身分は犯罪者ではなく被疑者です。被疑者をいかにも犯罪者のように報道することで、本来は無実の人であってもプライバシーを侵害されてしまいます。

このように加害者によって実名報道は大きなデメリットがあります。実名報道を避けるには対処が必要です。「実名報道された場合の対処法」に詳しい記載があるので、「家族が逮捕され実名報道された」人は参考にしてください。

【関連記事】実名報道される4つのデメリット|報道される基準と回避方法について

実名報道がされない4つのケース

実名報道がされない4つのケース

ケースによっては実名報道がされない場合もあります。ここでは、具体的にどういったケースがあるか確認しておきましょう。

少年事件である場合

日本の法律で未成年は守られています。少年法61条には、罪を犯した少年の個人情報を報道してはいけない、という旨の記載があります。

家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

引用元:少年法61条

ただ中には例外もあって、放火や殺人など凶悪犯罪を行った場合など必要性が高い時は実名で報道がされるようです。

任意捜査や書類送検の場合

任意捜査や書類送検の段階では匿名で報道されることになります。ただ、責任が重い場合や官公庁が処分を実名で公表した場合などは実名報道に切り替えられるようです。

罪が軽い場合

既にお伝えしたように基本は実名報道となっていますが、微罪の場合などは犯罪者への行き過ぎた制裁を避けるため、匿名で報道される場合もあります。

精神障害者である場合

被疑者が精神障害者で心神喪失状態であった場合は、刑事責任能力がないと判断され、匿名報道される可能性があります。ただし、麻薬を使っていた場合や犯罪が凶悪だった場合は例外です。

少年事件で実名報道されるケース

上記でもお伝えした通り、少年法61条では、事件の加害者となった少年について実名報道をすることを禁止しています。少年法の目的は、加害少年の処罰ではなく、更生にあるからです。

実名報道によって社会復帰が困難になることを防ぐため、実名報道はされません。もっとも、次のようなケースでは実名報道されることがあります。

報道機関の判断で実名報道されるケース

次のようなケースでは、報道機関の判断によって実名報道がされるケースがあります。

少年事件で実名報道されるケース
  • 社会的に重大な事件で少年の保護・更生よりも社会的な利益が優先されるケース
  • 少年が起こした事件が重大で、その少年が逃走中であり今後さらに凶悪な事件が発生する可能性があるケース
  • 少年が起こした事件が重大で、その少年が逃走中であり指名手配などで捜査に協力する必要があるケース

3つともに共通しているのは、少年の保護よりも、報道することによる利益の方が大きいという点でしょう。

報道の自由や国民の知る権利が優先される場合や、少年の実名を公表することで凶悪事件の発生を防ぐ・少年の逮捕につながるといったケースでは、実名報道されるケースがあるようです。

18歳・19歳の少年で起訴されたケース

18歳・19歳が少年事件を起こし、起訴された場合には実名報道される可能性があります。2021年2月19日に、18歳・19歳の少年を「特定少年」として特例規定を設ける改正少年法が閣議決定されたことが理由です。

少年事件では、原則全件が家庭裁判所に送致されます。その後一定の重大事件に限り、事件を検察に戻す逆送が行われます。対象となる事件は「法定刑の下限が懲役か禁錮1年以上の罪」で、殺人のほか、強盗や強制性交、放火罪などです。

実名報道とプライバシー侵害・名誉毀損の関係性

実名報道とプライバシー侵害・名誉毀損の関係性

被疑者のプライバシーを侵害し名誉を毀損するにもかかわらず、なぜ実名報道がされるのでしょうか。プライバシーと実名報道はどのような関係になっているのでしょうか?ここで確認しておきましょう。

報道機関には表現の自由、国民には知る権利がある

容疑者にもプライバシーがあるものの、報道機関には表現の自由があり、国民には知る権利があります。プライバシーと表現の自由、どちらを優先するのかという話ですが、日本においては表現の自由が優先されているのが現状です。

損害賠償が一部認められた事例

ただ、実名報道後に不起訴になった場合に新聞社を訴えることで、損害賠償が支払われた例もあります。

自身の逮捕を報じた新聞記事で名誉を傷付けられたとして、平成22年に愛知県警に逮捕され不起訴となった男性が毎日と朝日、中日の新聞3社に損害賠償を求めた訴訟で最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は、男性の上告を退ける決定をした。実名報道によるプライバシー侵害を認めず、逮捕容疑を誤って報じた毎日にのみ110万円の支払いを命じ、朝日と中日への請求は退けた2審東京高裁判決が確定した。決定は13日付。

 1審東京地裁は毎日に55万円の支払いを命じた一方、朝日と中日への請求を棄却。男性が「実名報道の必要はなかった」と主張した点は「容疑者の氏名を公表する社会的意義は大きい」と退けた。2審は毎日への賠償額を110万円に増額。朝日、中日への請求は認めなかった。

引用元:産経ニュース|実名報道はプライバシー侵害に当たらず 最高裁、容疑誤報の毎日新聞は敗訴確定

男性は不起訴になったにもかかわらず実名報道でプライバシーが侵害されたとして、新聞社3者を訴えました。「容疑者の氏名を公表する社会的意義は大きい」としてプライバシー侵害は認められなかったものの、逮捕容疑を誤って報じた毎日新聞には、110万円の支払いが命じられました。

実名報道された場合の対処法

実名報道された場合の対処法

実名がメディアで報じられれば、インターネット上にも情報が残るため、再就職がしにくかったり、あらぬ差別を受けたりする恐れがあります。事実無根にも関わらず、実名報道がされた場合の対処法を確認していきましょう。

記事の削除依頼をする

実名報道後はインターネットで記事が公開されます。放置しているとネット上でどんどん拡散してしまいますので、今後の生活を考えるのであればサイト管理者に削除依頼をしておいた方が良いでしょう。

ただし、サイト側は任意の交渉には応じてくれないケースも少なくありません。

そういったときには、裁判所を通じて記事削除を求める仮処分の申立てをする必要があります。あなた自身では対応が難しいケースが通常です。

ネット上の記事の削除は、「ITトラブルに注力している弁護士」に依頼するとよいでしょう。

損害賠償請求をする

日本では実名報道が原則となっているものの、先程ご紹介した事例にもあるように、誤報道をされた場合などは損害賠償が認められる事もあります。ただし、損害賠償請求についてもあなた自身での対処はおすすめしません

報道により、どのような権利が侵害され、それによってどの程度の損害が発生したかなどを法的に正しく主張・立証するには、やはり弁護士に依頼する必要があるでしょう。

損害賠償請求を検討した場合にも、一度弁護士に相談することをおすすめします。

記事削除や損害賠償請求が認められる条件とは

もちろん記事削除依頼や損害賠償請求のすべてが認められるわけではありません。プライバシー侵害、もしくは名誉棄損のいずれかが成立している必要があります。

報道内容が間違っていた場合などは削除依頼や損害賠償請求が認められやすくなるものの、実際に認められるかどうかは個々のケースごとに弁護士に判断してもらうのがもっとも確実です。

なお、ネット上の記事削除や損害賠償請求については、IT問題に注力する弁護士への相談がおすすめです。

姉妹サイトの「IT護士ナビ」は、ITトラブルに注力している弁護士を探せるサイトです。以下の都道府県一覧をクリックすれば対応可能な事務所が一覧で表示されます。

相談料無料の事務所もありますので、記事削除・損害賠償請求を検討している人はまずは相談してみましょう。

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【関連記事】
プライバシー侵害とは|成立要件と事例(判例)で具体例を解説
名誉毀損で逮捕されるケース|刑事と民事の名誉毀損の違いと対処法

まとめ

刑事事件の被疑者になっても、必ず実名報道されるとは限りません。この記事でも紹介した通り、少年事件である場合、任意捜査や書類送検した場合、罪が軽い場合などは実名報道されないこともあります。

しかし、一度実名報道されてしまうと、プライバシー権侵害や名誉棄損など、民法上の不法行為に該当し不利益を被る可能性も考えられます。

もし、これから逮捕される可能性があるといった場合には、実名報道を避けるためにも、さらに刑事手続きを有利に進めるためにも、刑事事件に注力している弁護士に依頼するのを強くおすすめします。

なお、すでに実名報道されてしまい、特定のネット記事を削除したい、もしくは損害賠償請求をしたい場合も、弁護士へ依頼しましょう。ただしネット記事の削除やネット上の損害賠償請求については、ITトラブルに注力する弁護士に依頼する方がベターです。

姉妹サイトの「IT弁護士ナビ」はITトラブルに注力する弁護士を探せるので、あわせて利用してみてください。

ご家族や自身が逮捕されそうな方へ

警察に逮捕されれば、実名報道をされる可能性はあります。

実名報道の可能性を減らすためにも、ご家族や自身が逮捕されそうな方は、弁護士への依頼がおすすめです。

弁護士に依頼すれば、下記のような活動を効果的に行ってくれます。

 

  • 逮捕されないための弁護活動
  • 被害者との示談交渉
  • 実名報道を控える意見書の提出
  • 自首をする際の同行
  • 取り調べの受け方のアドバイス など

 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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