家宅捜索とは?目的と令状が出される条件・対処法

家宅捜索(かたくそうさく)とは、警察官や検察官等が令状に基づき被疑者の住居等を調べて証拠物を捜すことをいいます。
家宅捜索が実行された際には、自宅の隅々まで調査がおこなわれ、証拠品と思われるものが押収されます。
押収されたものは、起訴や有罪判決をくだすための証拠品として扱われます。
本記事では、家宅捜索の概要や逮捕された場合の流れ、家宅捜索をされた場合にやるべきことなどを解説します。
家宅捜索の目的と概要
被疑者の自宅には、犯罪を証明するために必要な証拠が隠されている場合があります。
この証拠を押収するのが家宅捜索の目的です。
家宅捜索がおこなわれるタイミング
家宅捜索がおこなわれるタイミングで一番多いのは起訴前の捜査時点です。
起訴をするためには十分な証拠を確保する必要があり、その一環で家宅捜索がおこなわれます。
警察が家宅捜索をおこなうための条件
家宅捜索が始まるきっかけ
警察は、被疑者の自宅等に証拠品の存在が覗われる場合に家宅捜索を実施します。
警察の捜査が始まるきっかけ
警察の捜査が始めるきっかけは様々ですが、たとえば以下のような場合が考えられます。
- 被害届が提出される
- 通報される
- 告訴・告発される
- 職務質問を受ける
家宅捜索には捜査差押許可状が必要
警察や検察が勝手に家宅捜索をおこなうことはできません。
捜査機関が捜索をするには捜索令状を、証拠を強制的に押収するため人は差し押さえ令状を、それぞれ裁判所に発布してもらう必要性があります。
家宅捜索の場合は、捜索令状と差し押さえ令状がセットになった捜索差押許可状が発布されます。
家宅捜索は拒否できない
家宅捜索は令状によっておこなわれる強制処分なので拒否することはできません。
もし物理的に妨害した場合は公務執行妨害行為とみなされます。
家宅捜索後に逮捕された場合の流れ
家宅捜索後に逮捕された場合はどのような流れに沿って警察・検察に対応することになるのでしょうか。
期間ごとにご説明します。
警察からの取調べ|逮捕後48時間以内
逮捕されるとまずは警察からの取調べを受けることになります。
警察は逮捕後48時間以内に検察に事件を送致する必要があります。
この48時間の間は弁護士以外の人とは接見できません。
逮捕後に弁護士と接見をすると、次のようなメリットがあります。
- 逮捕後の流れを教えてもらえる
- 取調べ・捜査への対応の仕方の相談ができる
- 家族に伝言を頼める
弁護士費用は高額なため依頼できないと考える方もいるかもしれません。
その場合は、初回のみ無料で弁護士に相談できる当番弁護士制度を利用するとよいでしょう。
検察からの捜査|送検後24時間
警察から事件送致を受けた検察は送致後24時間以内に被疑者を勾留すべきか否か判断します。
この期間も弁護士以外の人との接見はできません。
次のような場合に、勾留が必要あると判断される可能性があります。
- 住所が定まっていない
- 証拠隠滅の恐れがある
- 逃亡の恐れがある
勾留期間|原則10日最大20日
勾留は基本的に10日間ですが、検察官がさらなる捜査・身柄拘束が必要だと判断し、裁判所がその旨を認めた場合は勾留期間が最大でさらに10日(合計20日)延長される場合があります。
起訴・不起訴処分決定
検察によって起訴・不起訴が判断されます。
起訴された場合、日本では統計上99.9%有罪判決がくだりますが、不起訴になった場合は釈放されます。
家宅捜索・逮捕されそうな人ができること
家宅捜索・逮捕されそうな人は出頭(逮捕される前に警察所へ向かい名乗り出ること)を推奨します。
ただし、出頭する際はまず弁護士に相談をしたほうがよいでしょう。
理由は次のとおりです。
- 弁護士をつけることで逮捕されない場合があるから(在宅事件)
- 逮捕後の対応について弁護士と相談できるから
逮捕の必要性・緊急性がなければ、警察は被疑者を逮捕できません。
弁護士をつけて出頭をすることは、逃亡や証拠隠滅の可能性を否定することにも繋がるので、逮捕を免れ、在宅事件扱いになることがあります。
起訴されるかどうかは場合によりますが、身柄が拘束されないため捜査期間中も社会生活を送れますので、逮捕され身柄を拘束された場合よりも社会生活に与える悪影響が少なくなります。
家宅捜索された場合の対処法
家宅捜索をされて犯罪の証拠品を押さえられた場合の対処法をお伝えします。
無実なのに証拠品として家の物が証拠品として押収された場合
証拠品が証拠としての法的効力を持たないことを証明する必要があります。
そのために証拠品の開示請求をしたり、捜査の違法性を検察官や裁判官に主張したりしましょう。
ちなみに法的効力を持たない証拠には、強制的な自白による証拠品や検察が偽造した証拠品(参考:大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件)などがあります。
証拠品の効力を否定する場合や、捜査の違法性を主張する場合には、法的根拠のある主張をする必要があるため、弁護士に相談されることを推奨します。
実際に犯罪行為をした上で、その行為の証拠を押収された場合
証拠品を押収されてしまった場合には、起訴されて有罪判決を受ける可能性があります。
犯行の証拠を押さえられた場合は、潔く罪を認めて反省の意を裁判官に伝えるように動くことが望ましいでしょう。
反省が伝わると処分が軽減される可能性があります。
その際には被害者との示談や反省文の提出などで反省の気持ちや更生の様子を伝える方法があります。
家宅捜索に関するよくある疑問
家宅捜索に関してよくある疑問への回答をお伝えします。
差し押さえたものは返還されるのか?
警察・検察が必要でなくなったものは返却する決まりになっています。
押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。
引用元:刑事訴訟法第123条
家宅捜索でどこまで調べられる?
捜査区間(場所)にあるものはすべて捜索の対象となります。
寝室やお風呂などとはもちろん、たとえその時にたまたま遊びに来ていた人のバッグの中さえも捜索対象です。
前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
引用元:刑事訴訟法第219条
誰が家宅捜索後の片づけをするのか?
家宅捜索後の片付けは、被疑者自身がおこなうことになります。
家宅捜索は刑事訴訟法第218条を根拠におこなわれますが、誰が片付けをするかに関する規定はないので、捜査機関が後片付けをする法的根拠はないことになります。
家宅捜索がおこなわれる時間帯は?
家宅捜索が来る時間に関しては、ケース・バイ・ケースです。
家宅捜索突入時は通知なし
ほとんどのケースで家宅捜索は事前の通知なしに突然やってきます。
事前に告知をしてしまうと被疑者が証拠を隠滅してしまうおそれがあるからです。
家宅捜索をする時間帯は特に決まっていない
家宅捜索に法的な時間制限はありません。
ただ、日没後と日の出前に家宅捜索を実行する場合は令状に夜間でも執行できる旨の記載が必要です。
さいごに
家宅捜索によって証拠を押さえられてしまった場合は検察によって起訴される可能性があります。
起訴されてしまうと99.9%有罪判決を言い渡され、罰金刑・懲役刑の処罰を受けるでしょう。
この記事では家宅捜索に関して、主に以下の4つの事項についてお伝えしました。
- 家宅捜索の概要
- 家宅捜索がおこなわれる時間は決まっていない
- 家宅捜索後に逮捕された場合の流れ
- 家宅捜索・逮捕されそうな人は弁護士をつけて出頭することの推奨
警察が犯行に気づく前に自首をすれば、刑が減軽されることも期待できます(刑法第42条)。
被疑者候補になってしまった後なら逮捕される前に出頭し、反省の態度を示すほうが対応としては適切でしょう。
どちらにしても早く行動しないと刑罰が重いものになってしまいます。
まずは弁護士にどういう行動をすればいいのか相談しましょう。



◤逮捕直後の行動が今後を左右します ◢24時間対応で即日接見可能!殺人・裁判員裁判などの複雑な問題も対応可能◎解決実績200件以上・身柄事件を中心に在宅事件も迅速に対応いたします
事務所詳細を見る
◤即相談・対応可能◤逮捕されたご家族やご友人の元に、1回だけ弁護士が即お話をしに行くことをご依頼いただくことも可能◎弁護士による迅速対応で依頼者様をサポート◎迅速な身柄解放・勾留阻止に自信アリ!痴漢・性犯罪から暴行まで幅広く、会社や職場に知られないように即日対応
事務所詳細を見る
【刑事少年事件専門・24時間365日受付・無料相談・全国に支店】年間相談数3000件超、年間解決事例数約500件、釈放保釈多数の圧倒的実績で社会復帰を強力に弁護する刑事特化のリーディングファーム
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡



刑事事件の基礎知識に関する新着コラム
-
本記事では執行猶予期間中の方に向けて、執行猶予の取り消しについての定義・意味、執行猶予が取り消しになる2つのパターン、再犯をして執行猶予が取り消しに...
-
詐欺未遂罪とは、詐欺罪の未遂犯のことです。本記事では、詐欺未遂罪に該当するかもしれない行為に手を染めてしまった人のために、詐欺未遂罪の構成要件、刑事...
-
刑事事件における時効とは、犯罪から一定期間経過すると加害者が起訴されなくなる制度です。罪を逃れられる制度がなぜ存在しているのか、疑問に感じている人も...
-
本記事では、刑事事件と時効廃止の関係について知りたい方に向けて、公訴時効が廃止された犯罪の条件と具体例、人を死亡させた罪ではあるものの公訴時効が廃止...
-
本記事では、撮影罪がいつから施行されているのか、いつの行為から適用されるのかを解説します。撮影罪が成立するケースや、迷惑防止条例との違いも紹介するの...
-
受刑者は、どのように1日を過ごすのでしょうか。なぜ、刑務所での生活は辛いといわれるのでしょうか。本記事では、刑務所生活が辛いといわれる理由を紹介し、...
-
罪を犯してしまったものの、証拠がないから大丈夫だろうと安心している方もいるかもしれません。本記事では、警察がどのような状況で動くのか、証拠の種類や重...
-
本記事では、刑務所と拘置所の違いを分かりやすく解説します。それぞれの施設の目的・収容される方・生活の様子やルールなどについて詳しく紹介するので、ぜひ...
-
名誉毀損の可能性がある行為をしてしまったら、刑法第230条を理解することが非常に重要です。 本記事では、刑法第230条について、どのようなときに名...
-
犯罪をしてしまったときはもちろん、罪を犯していなくても指紋が警察のデータベースに登録されるケースがあります。 本記事では、警察に採取・登録された指...
刑事事件の基礎知識に関する人気コラム
-
逮捕されて有罪になると前科が付きますが、前歴というものもあり、こちらは逮捕されただけで付きます。前科は間逃れても前歴が残ると今後の生活にどう支障がで...
-
犯罪事件捜査の対象になった場合、刑事手続きはスピーディに進行します。早期に刑事手続きから解放されるためには、初動の段階から迅速な対応をとることが肝心...
-
本記事では私人逮捕の条件や私人逮捕によるトラブルの対処法を解説します。
-
【弁護士監修】書類送検を徹底解説!書類送検とは被疑者を逮捕せず、書類のみ(証拠を含む)を検察官に送る手続きです。この記事では、そもそも送検とはどうい...
-
少年院(しょうねんいん)とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容するための施設を言います。
-
鑑別所(かんべつしょ)とは、正式名称は少年鑑別所と呼ばれ、家庭裁判所の少年審判を開くために犯罪を犯した未成年の少年を収容し、少年審判で処分を決めるた...
-
観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
-
この記事では親告罪と何か、親告罪に該当する罪を解説したあと、告訴されたときの対処法について紹介しています。親告罪を犯してしまって告訴される可能性があ...
-
刑事裁判と言っても、事件内容によって方法が少し異なります。この記事では刑事裁判の種類や流れの他に、民事裁判との違いやよくある質問(裁判員制度について...
-
在宅起訴とは、刑事事件を起こした被疑者の身柄を拘束しないまま検察官が起訴することをいいます。逮捕を受けないまま起訴されるため日常生活に与える影響は少...
刑事事件の基礎知識の関連コラム
-
本記事では、YouTube違法アップロードに関する逮捕事例などを交えながら、問われる罪や視聴者側の対処法などを解説します。
-
裁判員制度の仕組みや流れ、裁判員の選ばれ方などについてまとめました。
-
情状証人(じょうじょうしょうにん)とは、刑事裁判で被告人の刑の定めるにあたっての事情を述べるために公判廷に出廷する証人を言います。刑事裁判では弁護側...
-
略式命令は簡易な刑事裁判手続です。100万円以下の罰金刑である犯罪で、被疑者の同意がある場合に選択されます。この記事では略式命令の概要や、略式命令に...
-
懲役(ちょうえき)とは、有罪判決を受けた人物を刑務所に拘禁し、刑務作業を行わせる刑罰です。受刑者を刑事施設に拘禁し、自由を奪う、自由刑の一つです。
-
緊急避難とは、刑法で定められた違法性阻却事由の一つです。正当防衛も違法性阻却事由という点では同じですが、緊急避難と正当防衛は成立要件が異なります。具...
-
余罪があることを自覚している場合、余罪捜査がどこまで進められるのか、大きな不安を抱えながら毎日を過ごすことになります。本記事では、余罪が発覚しやすい...
-
刑事事件でよく聞く被疑者という言葉ですが、「容疑者」や「被告人」とはどういった違いがあるのでしょうか。そしてもしも自分が被疑者になってしまった場合、...
-
保釈金は問題なく裁判が進めば返金(還付)されるお金ですが、裁判が終わった後に直接手渡されるわけではなく弁護士の口座などを通してあなたに返金されます。...
-
いじめは犯罪だと聞いたことがあるかもしれません。自分の子どもが逮捕されてしまうのか、犯罪者になってしまうのか、と不安に感じる方もいるでしょう。本記事...
-
鑑別所(かんべつしょ)とは、正式名称は少年鑑別所と呼ばれ、家庭裁判所の少年審判を開くために犯罪を犯した未成年の少年を収容し、少年審判で処分を決めるた...
-
刑事事件での身元引受人(みもとひきうけにん)とは、逮捕によって身柄を拘束された被疑者(被告人)の監督を行なう人の事を言います。
刑事事件の基礎知識コラム一覧へ戻る