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詐欺未遂とは?構成要件、法定刑、逮捕後の流れ、弁護士に相談するメリットを徹底解説

インテンス法律事務所
原内 直哉
監修記事
詐欺未遂とは?構成要件、法定刑、逮捕後の流れ、弁護士に相談するメリットを徹底解説

詐欺未遂罪とは、詐欺罪の未遂犯のことです。

たとえば、オレオレ詐欺事件において、被害者からお金を騙し取るために「かけ子」が被害者に電話をする行為や、「受け子」が被害者宅を訪問して現金を受け取ろうとする行為に及んだ場合、実際に現金を騙し取らなくても詐欺未遂罪が成立する可能性が高いでしょう。

詐欺未遂罪は未遂犯ではあるものの、刑法犯のなかでは重罪に位置づけられているため、万が一詐欺未遂に該当する行為をしてしまった場合は、早急な対処しなければなりません。

そこで本記事では、詐欺未遂罪に該当するかもしれない行為に手を染めてしまった人のために、詐欺未遂罪の構成要件、刑事訴追されたときの対処法などについてわかりやすく解説します。

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詐欺未遂罪とは?構成要件や法定刑などの基礎知識

まずは、詐欺未遂罪の基礎知識について解説します。

詐欺未遂罪の構成要件|財物の取得がなくても欺く行為があれば成立する

詐欺未遂罪とは、詐欺罪の未遂犯のことです。

詐欺罪の構成要件を理解したうえで、どのようなケースで未遂犯が処罰されるのかを理解するとスムーズです。

なお、詐欺罪には、1項詐欺罪・2項詐欺罪・準詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪が含まれますが、本記事では「1項詐欺罪」を前提に解説します。

詐欺罪の構成要件

詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させたとき」に成立します。

そして、詐欺罪にあたるかどうかは以下の構成要件を満たすかどうかで決まります。

  • 欺罔行為
  • 被害者側の錯誤
  • 財物の交付行為
  • 財物の移転
  • 1~4の因果関係

第1に、「欺罔行為」とは、簡単にいうと人を騙す行為のことです。

第2に、詐欺罪が成立するには「交付行為者の錯誤」が必要です。

錯誤とは、実際の事実と交付行為者の認識に齟齬がある状態を意味します。

第3に、詐欺罪は欺罔行為によって錯誤状態に陥った交付行為者が「財物の交付行為」に及ぶ必要があります。

強盗罪のように加害者側が無理矢理財物を奪取するのではなく、「欺罔行為によって錯誤状態に陥った交付行為者が、瑕疵はあるものの、自らの意思に基づいて財物を交付すること」が求められます。

第4に、詐欺罪が成立するのは、実際に財物が移転したときに限られます。

第5に、詐欺罪は「欺罔行為→錯誤→財物の交付行為→財物の移転」の一連の流れに因果関係がなければいけません。

因果関係が切れている場合には、詐欺既遂罪は不成立です。

詐欺罪の構成要件については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてチェックしておきましょう。

詐欺未遂罪の構成要件

前提として、未遂犯が成立するのは「実行の着手」があったときです。

そして、実行の着手があったか否かは、「既遂犯の具体的・客観的危険が生じたかどうか」という基準で判断されます。

そのため、詐欺未遂罪の構成要件は、「詐欺既遂罪の具体的・客観的危険が生じること」といえるでしょう。

具体的・客観的危険が生じたかどうかは、個別具体的な事情を総合的に考慮して決定されます

たとえば、詐欺未遂罪が成立する事例として、以下のものが挙げられます。

  • 一般人なら騙される程度の欺罔行為に及んだものの、財物の交付がおこなわれなかった場合
  • 一般人なら騙される程度の欺罔行為に及んだものの、被害者が騙されたふりをして、嘘だとわかっていながら被害者が交付行為をおこなった場合
  • 実際に欺罔行為がおこなわれて被害者が騙されたものの、第三者の手助けによって財物の交付行為には至らなかった場合 など

詐欺未遂罪の法定刑|基本は10年以下の懲役だが、減刑される可能性はある

詐欺未遂罪の法定刑は、詐欺既遂罪と同じ「10年以下の懲役刑」です。

ただし、未遂罪場合は実行の着手に至っていたとしても、実際に法益侵害の結果は生じていません。

そのため、実際の刑事裁判では、未遂犯であることを理由に法定刑が「5年以下の懲役刑」まで減刑される可能性があります。

ただし、未遂罪は裁判所が減刑するかどうかは任意に決めるため「未遂犯だからといって必ず刑が減軽される」というわけではありません

未遂犯であったとしても、事件が悪質だったり、危険が生じた法益侵害が重大だったりする場合には減軽を受けることができず、10年以下の懲役刑の範囲内で処断される可能性があります。

また、詐欺未遂罪で刑事訴追されたケースでは、執行猶予付き判決を獲得できるかが重要なポイントになります。

なぜなら、執行猶予付き判決を獲得できなければ、刑期を満了するまでは刑務所に収監されて、社会復帰が困難になりかねないからです。

以上を踏まえると、減刑や執行猶予付きの判決を獲得するためには、いち早く弁護士へ相談して防御活動をおこなうべきだといえます。

詐欺未遂罪で警察に逮捕された事例3選

ここでは、実際に詐欺未遂罪で逮捕された事例を3つ紹介します。

1.屋根の修理をかたり現金をだまし取ろうした事例

本件は、会社ぐるみで詐欺マニュアルを作成して、屋根の修理費用を騙し取ろうとした企業経営者が詐欺未遂罪などの容疑で逮捕された事案です。

「屋根が壊れているのが見えた」と嘘をつき、本来なら修理の必要がない屋根を自ら破損して、リフォーム費用を詐取しようとしました。

実際に被害者が修理代を支払う前に検挙されたため、詐欺未遂罪で立件されています。

2.闇バイトで指示どおりに動いたところ逮捕された事例

本件は、インターネット上で募集されていた闇バイトに応募をして、指示通りに実行役を担った人物が詐欺未遂罪で逮捕された事案です。

犯人は、金融機関の職員を装って、80代の被害女性の自宅にキャッシュカードを回収するために訪問をしたところを現行犯逮捕されました。

振り込め詐欺事件や特殊詐欺事件は、指示役と実行役を別の人物が担っており、実行役は詐欺計画の全貌を把握していないことが少なくありません。

しかし、詐欺計画の一角を担い、自ら詐欺計画の一部を担っていることを認識している以上、実行役にも重い刑事責任が科される可能性が高いです。

3.警察官になりすまして現金をだまし取ろうしたした事例

本件は、警察官になりすました18歳の少年が、70代の女性から現金2,000万円を騙し取ろうとした事案です。

警察官になりすました人物から「あなたの携帯電話の名義を1億円で購入した犯人を逮捕した。

あなたの財産を全て確認する必要があるため、毎日現金を引き出してほしい」と電話を受けましたが、不信感を抱いた被害者が警察に相談をしたところ、詐欺事件であることが判明しました。

そこで、相談を受けた警察は騙されたふり作戦を遂行し、犯人が現金入りの荷物を引き取るために被害女性宅を訪問したところを詐欺未遂罪の容疑で現行犯逮捕しました。

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詐欺未遂罪で逮捕されたあとの大まかな流れ|5ステップ

詐欺未遂罪の容疑で逮捕されたあとの刑事手続きの流れを紹介します。

1.警察による取り調べを受ける

詐欺未遂罪の容疑で逮捕されたあとは、警察で取り調べが実施されます。

任意の事情聴取とは異なり、逮捕段階で実施される警察の取り調べは拒否することが

できません

また、逮捕処分を下された以上、取り調べ以外の時間も留置施設に身柄が押さえられた状態が続きます。

学校や会社に通うことができないだけではなく、外部と電話やメールなどで連絡をとることも認められません

2.送検される|逮捕から48時間以内

逮捕後、警察での取り調べが終了すると、逮捕から48時間以内に身柄が検察官に送致(送検)されます。

警察での取り調べと同じように、検察で実施される取り調べも拒否することはできません。

検察では、警察と検察の取り調べで得られた証拠などを前提に、検察官が詐欺未遂事件の起訴・不起訴を判断します。

なお、一定の刑事事件については、検察官に送致されずに、警察の判断で刑事手続きを終了できます

これを微罪処分といいます。

たとえば、前科がなく、被害者との間で示談が成立済みで、軽微な犯罪類型に該当するものについては、警察だけの判断で身柄が釈放されることがあるでしょう。

ただし、詐欺未遂事件は重い犯罪類型に位置づけられるため、微罪処分を狙うのは不可能に近いです。

3.勾留請求される|送検から24時間以内

検察に送致されたあと、起訴・不起訴を判断するだけの証拠が不十分な場合は、勾留請求がおこなわれる可能性があります。

近年、詐欺未遂事件で逮捕される事案は、特殊詐欺事件のような大規模なものが多いです。

このような事案では、詐欺集団の全貌を明らかにする必要性があるため、勾留請求される可能性が高いでしょう。

4.勾留される|通常10日間(最長20日間)

検察官による勾留請求が裁判所に認められた場合、被疑者の身柄の拘束期間が10日間延長されます。

また、やむを得ない事情により10日間の勾留期間だけでは公訴提起の判断が難しい場合、検察官の請求によってさらに勾留期間を10日間延長することができます。

つまり、詐欺未遂罪の容疑で逮捕された場合、事件の内容や取り調べへの対応状況次第では、公訴提起の判断が下されるまでに最長23日間の身柄拘束期間が生じる可能性があるということです。

身柄の拘束期間が数週間に及ぶと、学校や会社に隠し通すのが難しいので、仮に不起訴処分が下されたとしても、今後の社会生活に甚大な悪影響が生じかねないでしょう。

5.検察が起訴・不起訴の判断をする

逮捕・勾留による身柄拘束期間が終了するまでに、検察官が詐欺未遂事件の起訴・不起訴を決定します。

起訴処分とは、詐欺未遂事件を公開の刑事裁判にかける旨の訴訟行為のことです。

一方不起訴処分とは、詐欺未遂事件を刑事裁判にかけることなく、検察の判断で刑事手続きを終了させる旨の意思表示を意味します。

不起訴処分を獲得できればその時点で刑事手続きが終わり、身柄が釈放されるだけではなく、前科がつくこともありません

6.刑事裁判にかけられる

検察官が起訴処分を下した場合、詐欺未遂事件は公開の刑事裁判にかけられます。

日本の刑事裁判の有罪率は極めて高く、刑事裁判にかけられた時点で実質的に有罪判決が確定してしまいます。

そのため、有罪判決の回避を狙うのなら、刑事裁判で無罪を主張するのではなく、検察の取り調べの段階で不起訴処分を獲得することを目標にするのが合理的だといえます。

さらに、裁判によって懲役刑が確定すると、刑期を満了するまでは刑務所から出ることはできません。

詐欺未遂罪の容疑で起訴されたときには、執行猶予付き判決獲得を目指して防御活動を展開する必要があります。

なお、実刑判決であっても執行猶予付き判決であったとしても、有罪判決であることに変わりはありません。

執行猶予付き判決の獲得に成功したとしても前科はつくので、今後の社会生活などに一定の支障が生じると理解しておきましょう

詐欺未遂罪で逮捕された場合に弁護士に依頼する3つのメリット

詐欺未遂罪で逮捕されたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼をしてください

というのも、刑事弁護を得意とする弁護士の力を借りることによって、以下3つのメリットを得られるからです。

  1. 逮捕・勾留されても早期の身柄釈放を期待できる
  2. 不起訴処分獲得の可能性が高まる
  3. 執行猶予付き判決獲得によって実刑判決回避の可能性が高まる

1.早期釈放の可能性が高まる

詐欺未遂罪の容疑で逮捕されると、起訴・不起訴の判断が下されるまでに72時間~23日間の身柄拘束期間が生じる可能性があります

もちろん、家族がうまく説明をするなどすれば、会社や学校に詐欺未遂罪の容疑で逮捕されたことを隠し通すのは不可能ではありません。

しかし、身柄拘束期間が長引くほど学校や会社にバレるリスクは高まります。

また、逮捕・勾留期間中は拘置施設での生活を強いられるので、精神的・肉体的にもストレスがかかります。

プレッシャーがかかる状況で取り調べが実施されると、正常な判断ができず、自らにとって不利な供述をしてしまう可能性も高まります

その点、刑事事件を得意とする弁護士へ相談・依頼をすれば、「逮捕・勾留という身柄拘束処分の必要性がない」という状況を作り出してくれるので、在宅事件への切り替えや勾留阻止を期待できるでしょう

2.不起訴になる可能性が高まる

日本の刑事裁判の有罪率は非常に高いので、「実刑判決を避けたい」「前科をつけたくない」と希望するのなら、検察官による不起訴処分を獲得する必要があります。

ここでのポイントは、不起訴処分は以下5種類に分類されるということです。

つまり、実際に詐欺未遂罪の容疑をかけられる犯罪行為に及んでいたとしても、不起訴処分を獲得する余地はあるということです。

  • 嫌疑なし
  • 嫌疑不十分
  • 起訴猶予
  • 訴訟条件を欠く
  • 罪とならず

中でも重要なのが「起訴猶予」です。

犯人の性格や年齢、境遇や犯罪の軽重、情状や犯罪後の情況などの諸般の事情を総合的に考慮したときに、検察官が「刑事裁判にかける必要がない」と判断すれば、起訴猶予を理由として不起訴処分が下されます。

刑事事件を得意とする弁護士に依頼をすれば、速やかに被害者との間で示談交渉を進めたり、反省文の提出・取り調べ中の供述方針の明確化などのノウハウを活かしたりすることによって、起訴猶予処分獲得の可能性を高めることができるでしょう

3.執行猶予になる可能性が高まる

検察官が起訴処分を下したときには、刑事裁判での執行猶予付き判決獲得を目指さなければいけません。

というのも、実刑判決が確定すると社会生活から一定期間断絶された状態が発生するため、刑期満了後の社会復帰が極めて困難になるからです。

執行猶予付き判決を獲得するには、未遂減軽、情状減軽などを引き出すために、公判廷で効果的な防御活動を展開する必要があります。

刑事裁判実務に詳しい弁護士の力を借りることによって、執行猶予付き判決獲得の可能性が高まるでしょう

さいごに|ベンナビ刑事事件で詐欺事件が得意な弁護士を効率よく探そう

近年、知らず知らずのうちに闇バイト事件に関与した結果、詐欺未遂罪の容疑で刑事訴追されるケースが増加しています。

関与した本人には深い考えはなかったとしても、詐欺未遂罪は比較的重い犯罪類型に位置づけられるので、立件されると厳しい刑事処分が下されかねません。

もちろん、詐欺未遂罪の容疑をかけられたときには、国選弁護人・当番弁護士などを頼ることも可能です。

しかし、国選弁護人や当番弁護士には、「どのような経歴の弁護士が担当につくかを被疑者・被告人側で選ぶことができない」というデメリットが存在します。

少しでも軽い刑事処分を獲得して、今後の社会生活への影響を回避・軽減したいのなら、刑事事件に力を入れている私選弁護人のサポートを受けるべきでしょう。

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この記事の監修者
インテンス法律事務所
原内 直哉 (第二東京弁護士会)
ご相談いただきましたら、これまで様々な業種の会社を経営してきた経験や、弁護士や司法書士といった法律の専門家としての知識を活かして、ご相談者様のお悩み解決にお力添えさせていただきます。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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