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前科があると海外旅行できない?パスポートやビザの取得に与える影響を解説

インテンス法律事務所
原内 直哉
監修記事
前科があると海外旅行できない?パスポートやビザの取得に与える影響を解説

犯罪を犯して前科がつくと、就職や資格取得への制限が課されるほか、海外渡航の自由が制限されることがあります。

そのため、前科が付いたあとは海外旅行に行くのが難しくなる可能性もゼロではありません。

本記事では、前科による海外への渡航制限の具体的な内容や、パスポート・ビザの取得における制限事項について詳しく解説します。

どのような場合に渡航が制限されるのか、その判断基準についても説明するので、ぜひ参考にしてください。

なお、もし現在刑事事件に直面されている方で、前科が付くのを防ぎたい場合は、早めに弁護士への相談をご検討ください。

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前科があると海外旅行へ行けない可能性がある

前科がついてしまった場合、海外旅行に行くためには3つの大きな関門をクリアしなければなりません。

1つ目は日本国からのパスポート発給、2つ目は渡航先国のビザ取得、そして3つ目は入国審査です。

これらのいずれかの段階で制限を受ける可能性があるため、旅行や出張などで海外へ渡航する場合は確認が必要です。

とくにパスポートについては、新規発給を受けられない場合やすでに所持している場合でも返納を命じられる可能性があります。

パスポートが取得できたとしても、渡航先によってはビザが必要となり、審査で発給が認められないケースもあるでしょう。

前科がついてしまった場合、海外旅行のハードルは非常に高くなると思っておきましょう。

前科がある場合はパスポートの取得を制限されることがある

海外渡航には必ずパスポートが必要ですが、前科がある場合はパスポートの取得自体に制限がかかることがあります。

これは個人の判断ではなく、法律で定められた重要な規定です。

旅券法第13条では、以下のような特定の条件に該当する場合、パスポートの発給が制限される可能性があると定めています。

  • 渡航先の法律によって入国が認められない場合
  • 重罪で裁判を受けている場合や身柄拘束が予定されている場合
  • 懲役・禁錮の仮釈放中や執行猶予期間中の場合
  • 旅券法第23条の規定によって刑に処されている場合
  • パスポートの偽造などによって刑に処されている場合
  • 日本の利益・公安を害するおそれがある場合

それぞれの条件について、以下で詳しく解説します。

1.渡航先の法律によって入国が認められない場合

渡航先の国で定められている法規により、入国が認められない場合はパスポートが発給されないことがあります。

具体的には、過去にその国で犯罪を犯して刑罰を受けた方や、何らかの理由で強制退去処分を受けたことがある方などが該当します。

2.重罪で裁判を受けている場合や身柄拘束が予定されている場合

死刑や無期懲役、または2年以上の懲役・禁錮に当たる重い罪で裁判中の方、またはそれらの罪を犯した疑いで身柄拘束が予定されている方は、パスポートの発給が制限される場合があります。

これは、海外への逃亡を防止し、刑事裁判や捜査に支障をきたさないようにするためです。

ただし、すでに前科がある場合でも、現在新たな重罪で訴追されていなければ、この規定による制限は受けません。

3.懲役・禁錮の仮釈放中や執行猶予期間中の場合

禁錮、懲役、死刑の刑に処せられ、その執行が終わっていない方は、パスポートの取得が制限される可能性があります。

具体的には以下のような場合が該当します。

  • 禁錮・懲役の実刑判決後、仮釈放中の方
  • 刑の執行が停止されて出所中の方(心神喪失、高齢、妊娠などによる)
  • 執行猶予期間が経過していない方

一方で、以下の方々は制限を受けません。

  • 懲役・禁錮の服役を終えた方
  • 執行猶予期間が経過した方
  • 罰金・科料のみの処分を受けた方
  • 交通違反で反則金を納付した方

なお、仮釈放中や執行猶予期間中であることを隠してパスポートを申請した場合、旅券法違反として5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

4.旅券法第23条の規定によって刑に処されている場合

過去に旅券法第23条違反による前科がある場合、パスポートの発給が制限される可能性があります。

同条では、以下のような行為について、5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科の対象としています。

  • パスポート申請時の虚偽記載や不正行為によるパスポート取得
  • 他人名義のパスポート使用
  • 自己名義のパスポートを他人に譲渡・貸与する行為
  • 他人名義のパスポートの譲渡・貸与・受領・所持
  • 偽造パスポートの譲渡・貸与・受領・所持
  • パスポート返納命令に従わない行為
  • 効力を失ったパスポートの使用

とくに悪質な場合として、営利目的でこれらの行為をおこなった場合は、より重い7年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科せられます。

また、指定された渡航先以外への渡航や、帰国時の指定経由地以外への渡航なども30万円以下の罰金の対象となります。

これらの違反行為により有罪判決を受けた場合、その後のパスポート取得に制限が加えられる可能性があるでしょう。

5.パスポートの偽造などによって刑に処されている場合

パスポートや渡航書の偽造、または偽造された文書の使用により刑に処された方も、パスポート発給の制限対象です。

具体的には、刑法第155条の公文書偽造罪や第158条の偽造公文書行使罪、これらの未遂罪による前科がある場合が該当します。

6.日本の利益・公安を害するおそれがある場合

外務大臣が法務大臣との協議を経て、日本国の利益や公安を著しく害するおそれがあると判断した場合も、パスポートの発給が制限されます。

これは主に、テロ行為や国際的な麻薬取引などの前科がある場合を想定しています。

前科はビザの取得にも影響する?

パスポートを取得できたとしても、渡航先の国が発行する「ビザ(査証)」を取得しなければなりません。

しかし、前科の内容によっては、ビザの取得が困難になる場合があります。

ここからは、前科があることによって、ビザに対してどのような影響があるのかを説明します。

そもそも日本のパスポートがあれば、だいたいの国はビザなしで旅行へ行ける

前科がある場合でも、ビザの取得には大きな影響がない可能性もあります。

なぜなら、日本のパスポートは、世界でも特に信頼性の高い渡航文書として知られているからです。

イギリスの調査会社「ヘンリー&パートナーズ」がおこなった調査によると、2024年時点で日本のパスポートは世界第1位の渡航の自由度を誇っており、世界192カ国・地域に対してビザなしで渡航することが可能です。

つまり、そもそもビザが不要な国であればパスポートさえ取得できれば、渡航自体に影響することはないでしょう。

ただし、ビザが不要な場合でも、入国時には空港での入国審査があり、渡航先の基準によっては入国を拒否される可能性があることに注意が必要です。

ビザが必要とされる渡航先の例

日本のパスポートは自由度が高いとはいえ、全ての国がビザなしでの渡航を認めているわけではありません。

以下のような国々では、前科の有無にかかわらず、基本的にビザの取得が必要です。

渡航にビザの取得が必要な国の例

中国、インド、ロシア、北朝鮮、イラク、シリア、サウジアラビアなどの中東諸国、ナイジェリア、リビアアフリカ諸国、ブータン、トルクメニスタン、パキスタンなど

前科の内容次第ではビザが発行されないケースもある

パスポートとは異なり、ビザは渡航先の国が発行する入国許可証です。

ビザの申請時には前科の申告が求められ、内容によってはビザの発給が拒否される可能性があります。

とくに薬物関連の前科については、多くの国で厳しい審査の対象となります。

たとえば、アメリカでは薬物関連の前科がある場合、一般の旅行客が利用するビザ免除プログラム「ESTA(エスタ)」による渡航が認められず、別途ビザ申請が必要です。

しかも、薬物製造や販売に関わった場合は、ビザを取得できる見込みが著しく低くなります。

なお、一部の州で大麻が合法化されているアメリカでも、ビザ申請や入国審査では連邦法が適用されるため、大麻関連の前科はビザ取得において重大な障壁となる可能性があります。

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前科があるとビザが不要の国でも、入国審査を通過できない可能性がある

最近では、渡航にビザの取得が不要であっても、テロ対策や不法就労者対策の一環として電子渡航認証システムを導入している国も増えつつあります。

このシステムでは、前科・前歴に関する申告をしなければならず、ビザが不要な国であっても、内容次第で認証がおりない可能性があるのです。

たとえば、アメリカのESTA(エスタ)では、申請時に前科・前歴について申告しなければなりません。

虚偽の申告をした場合、認証が取り消されるだけでなく、今後一切入国できなくなる恐れがあります。

また、2025年からは、ヨーロッパの自由移動圏であるシェンゲン圏でETIAS(エティアス)という事前渡航認証システムが導入される予定です。

このシステムでは、過去10年間の犯罪歴について申告が必要となります。

とくに、以下のような前科がある場合は渡航認証が降りない可能性があることを注意しましょう。

  • 殺人、強盗、詐欺など重大な犯罪
  • 薬物関連の犯罪
  • 悪質な交通違反(飲酒運転による過失致死など)

システムで認証が得られない場合、ビザ申請によって渡航が認められることもありますが、より厳密な審査を要する場合があります。

前科と海外旅行に関してよくある質問

最後に前科者の海外旅行についてよくある質問とその回答を紹介します。

似たような疑問を持っている方は、ここで解消しておきましょう。

パスポートに前科の有無は記載される?

パスポートには前科の有無は記載されません。

パスポートに記載される情報は、氏名、生年月日、性別、国籍などの基本的な個人情報のみです。

ただし、これは前科が関係機関に記録されていないという意味ではありません。

ビザの要否を確認する方法は?

ビザの要否は、渡航先の国、渡航目的、予定滞在期間によって異なります。

また、要件は予告なく変更される可能性があるため、以下の手順で確認することをおすすめします。

  • 渡航先国の在日大使館・領事館に直接問い合わせる
  • 外務省の海外安全ホームページで最新情報を確認する
  • 必要に応じて旅行会社や専門家に相談する

とくに、アメリカへの90日以内の渡航にはビザは不要ですが、ESTA(電子渡航認証)の取得が必須となります。

このように、ビザの取得を免除している国であっても、別途手続きが必要な場合があるので、早めの確認と準備が大切です。

さいごに|前科がある方は海外旅行の前にパスポート発給可否などの確認が必要

前科は、海外渡航に大きな影響を及ぼす可能性があります。

パスポートの取得が制限されたり、ビザの発給が拒否されたり、さらには入国審査で入国を拒否されたりするケースが考えられるでしょう。

一度前科がついてしまうと、これらの制限を解消することは極めて難しくなります。

もし現在刑事事件に巻き込まれている方は、まず弁護士への相談を検討してください。

弁護士に早期に相談することで、前科がつかないための法的対応を検討できるほか、示談などの解決方法の選択肢を広げることができます。

また、万が一に前科がついた場合でも、その影響を最小限に抑える方法を見出せるでしょう。

刑事事件に巻き込まれた場合は、決して一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で弁護士に相談してください。

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この記事の監修者
インテンス法律事務所
原内 直哉 (第二東京弁護士会)
ご相談いただきましたら、これまで様々な業種の会社を経営してきた経験や、弁護士や司法書士といった法律の専門家としての知識を活かして、ご相談者様のお悩み解決にお力添えさせていただきます。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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