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パスポートは犯罪歴があっても取れる?取得時のポイントと取得できないケースを解説

藤垣 圭介
監修記事
パスポートは犯罪歴があっても取れる?取得時のポイントと取得できないケースを解説
  • 「犯罪歴があるとパスポートは取得できないの?」
  • 「会社から海外赴任を命じられたけれど、過去の犯罪歴が原因でパスポートを取得できなかったらどうしよう」

このように、前科・前歴がパスポートにどのような影響を与えるか不安を抱えている方も多いでしょう。

犯罪歴があると、その内容次第ではパスポートの発給制限を受ける可能性があります

そして、パスポートがなければ海外旅行や海外出張に行くことはできません。

本記事では、犯罪歴が原因でパスポートが発給されない具体的な状況、犯罪歴のある人がパスポートの発給を申請するときの流れなどについてわかりやすく解説します。

なお、仮に今犯罪歴がついていない状況なら、いち早く弁護士に相談して防御策を講じるのが一番です。

まずは弁護士の無料相談を活用して、対応を検討しましょう。

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犯罪歴がある場合はパスポートの制限を受ける可能性がある!

出入国管理及び難民認定法第60条及び第61条では、日本人が出国・入国するときには有効な旅券(パスポート)が不可欠だと定めています。

しかし、パスポートは誰でも無条件に発給されるわけではありません

パスポートを取得するには所定の発給申請手続きが求められ、以下の質問事項にひとつでも該当するものがあると、別途手続きをおこなう必要があります。

  1. 外国で入国拒否、退去命令又は処罰されたことがありますか。
  2. 現在日本国法令により起訴され、判決確定前の状態ですか。
  3. 現在日本国法令により、仮釈放、刑の執行停止又は執行猶予の処分を受けていますか。また刑の執行を受けなければならない状態にありますか。
  4. 旅券法違反で有罪となり、判決が確定したことがありますか。
  5. 日本国旅券や渡航書を偽造したり、又は日本国旅券や渡航書として偽造された文書を行使したりして(未遂を含む)、日本国刑法により有罪となり、判決が確定したことがありますか。
  6. 国の援助などを必要とする帰国者に関する領事官の職務などに関する法律を適用され外国から帰国したことがありますか

これらの項目に該当する場合、パスポート申請の際に、渡航事情説明書や起訴状の写し・判決謄本などの必要書類を提出しなければいけません。

その後外務省で審査がおこなわれて、パスポートを発給するかが決まります。

仮にパスポート偽造などの前科がある場合には、発給審査に落ちる可能性があるでしょう。

発給の可否が決まるまでに1ヵ月~2ヵ月の期間を要するので、海外旅行や海外赴任の予定があるなら、できるだけ早いタイミングでパスポート関係の手続きを開始しましょう

犯罪歴がある方がパスポートを取得するための大まかな流れ

犯罪歴がある場合、一般の人に比べてパスポートの取得手続きが複雑になります

そこで、ここでは犯罪歴がある人向けのパスポート取得手続きの流れや必要書類について解説します。

1.犯罪経歴証明書などの必要書類を取得する

犯罪歴がある人がパスポートを取得するには、発給審査に向けて一般旅券発給申請書以外の書類を用意する必要があります

どのような書類の提出を求められるかは申請者の状況・犯罪歴の内容によって異なります。

詳しくは、各都道府県の申請窓口まで直接確認しましょう

なお、代表的な必要書類として以下のものが挙げられます。

  • 渡航事情説明書
  • 判決謄本
  • 渡航証明書(犯罪経歴証明書、無犯罪証明書) など

2.一般旅券発給申請書などを準備して提出する

パスポートを取得するには、一般旅券発給申請書の必要事項を記入したうえで、各都道府県の窓口などに提出する必要があります

一般旅券発給申請書の記載内容について疑問がある人は、担当部署や窓口の職員まで確認しましょう。

3.外務省での審査を経てパスポートが発給される

犯罪歴がある人のパスポート申請については、外務省で慎重に審査が実施されます

外務省の審査は1ヵ月~2ヵ月程度の期間を要することもあるので、海外旅行や海外赴任の予定が入ったときには、時間に余裕をもって申請手続きを済ませましょう

犯罪歴によってパスポート取得に制限を受ける6つのケース

ここでは、旅券法第13条で規定されている「パスポートの発給制限」の対象になる具体的な場面について解説します。

1.渡航先の法律によって入国が認められない場合

渡航先で施行されている法規によってその国への入国が認められない人については、パスポートの発給が制限される可能性があります

たとえば、過去に渡航先で犯罪行為に及んで国外退去や強制送還の対象になった場合などが挙げられます。

2.一定以上の刑罰が定められている犯罪の容疑で刑事訴追されるなどしている場合

死刑、無期もしくは長期懲役2年以上の刑罰が定められている犯罪に及んだことを理由に、刑事訴追されている場合、もしくはこれらの犯罪に及んだことを理由に逮捕状・勾引状・勾留状・鑑定留置状が発せられている場合には、パスポートの発給制限の対象になる可能性が高いです。

これらの重大犯罪については、前科がつく前の段階でもパスポートが発給されない可能性がある点に注意してください

3.禁錮刑以上の犯罪をし、執行猶予期間中である場合

禁錮刑以上の刑に処せられている場合、その執行を終わるまで、またはその執行を受けることがなくなるまでの間は、パスポートが発給されない可能性があります。

たとえば、以下のようなケースでは、パスポートの発給が制限されるでしょう

  • 懲役刑の実刑判決が確定して一定期間服役をしたあとの仮釈放中の場合
  • 高齢や妊娠などを理由に一時的に実刑の執行が停止された場合
  • 懲役刑や禁錮刑について執行猶予付き判決が確定して執行猶予期間が満了していない場合

4.前科の内容が旅券法違反や公文書偽造罪などの場合

以下の前科がある場合には、パスポートの発給が制限される可能性があります

  • 旅券法第23条の規定に違反して刑に処せられた者(虚偽の情報で旅券の発行を受けた場合や、他人名義の旅券を行使した場合)
  • 旅券や渡航書の偽造、偽造された旅券や渡航書の行使、これらの未遂によって、公文書偽造罪や偽造公文書行使罪の容疑で刑に処せられた者

5.過去に国援法の適用を受けた場合

過去に国援法(国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律)の適用を受け、海外からの帰国費用を国に負担してもらったことがある場合、パスポートの発給が制限される可能性があります

具体的には、パスポートを発給することで再び海外からの帰国費用を国が負担しなければならないおそれがある場合、パスポートの発給を受けられない可能性が高いでしょう。

6.前科の内容がテロ行為や国際麻薬犯罪などである場合

ここまで紹介したケースに加えて、著しく、かつ直接に日本国の利益や公安を害する行為をおこなうおそれがあると認められる場合、パスポートの発給申請が拒否される可能性があります。

たとえば、テロ行為や国際的な麻薬取引に関与して検挙された過去があるケースが挙げられます

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パスポートを取得できても海外渡航ができない2つのケース

犯罪歴がある場合、パスポートを取得できたからといって必ずしも海外渡航が可能になるわけではありません

ここでは、パスポートを取得できたのに海外旅行・海外渡航が許されないケースを具体的に紹介します。

1.入国審査で拒否された場合

パスポートを取得できたとしても、入国審査で拒否されるとその国に入国することはできません

世界の国々のなかには、海外からの入国者に対して厳しい審査を実施する国があります。

たとえば、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国、オーストラリアは、テロ対策や不法就労者対策を目的として、以下の電子渡航認証システムを導入しています。

  • アメリカ:ESTA(エスタ)
  • カナダ:eTA(イータ)
  • ヨーロッパ諸国:ETIAS(エティアス)
  • オーストラリア:ETAS(イータス)

これらの電子渡航認証システムを利用する際には、前科・前歴の有無を確認されるので、犯罪歴を理由に入国を拒否される可能性が高いです。

また、犯罪歴があることを隠して電子渡航認証システムを申請したことが発覚すると、強制退去などの厳しい措置がとられるだけではなく、今後一切その国へ入国できなくなるでしょう

なお、ここに挙げた国以外でも、入国審査の際に前科・前歴の有無などを質問されることがあります。

犯罪歴の内容次第では入国審査に落ちる可能性があると理解しておいてください

2.ビザの発給が受けられない場合

外国に入国するには、その国が発行したビザが必要な場合があります。

パスポートは日本側が自国の国民に対して発行するものであるのに対し、ビザ(査証)は外国側が渡航希望者に対して発行する入国許可証です。

そのため、外国側が自国に悪影響・害を及ぼすと判断した人物に対しては、ビザの発給が拒否されることもあるでしょう

なお、国によってはビザなしで入国できる場合もありますし、渡航先での滞在期間や渡航目的によってビザの要否や種類は異なるので、期間に余裕をもって入国予定の国の大使館や総領事館のホームページなどを確認しましょう

犯罪歴がある場合のパスポート発行・更新に関する3つの注意点

さいごに、犯罪歴がある人のパスポート発行・更新に関する注意点を紹介します。

1.通常よりも申請・審査に時間がかかる

パスポートの発行期間は、通常申請してから1週間~2週間程度が目安です。

しかし、犯罪歴がある人の申請に対しては外務省で別途審査が実施されるため、1ヵ月~2ヵ月程度の期間を要する可能性があります。

海外旅行や海外赴任の直前にパスポートを申請しても間に合わないので、スケジュールが決定した段階ですみやかに旅券事務所まで問い合わせておきましょう

2.嘘の申請をした場合は旅券法違反になる

「犯罪歴が原因でパスポートが発給されないのは困る」「犯罪歴を隠して申請すれば一般の人と同じ手続きでパスポートを取得できるはずだ」というように、犯罪歴がある事実を隠蔽したり申請時に嘘をついたりしようとする人は少なくありません。

しかし、犯罪歴を隠してパスポートの発行申請や更新手続きをするのはハイリスクです。

なぜなら、旅券法第23条では、以下の行為に対して刑事罰を定めているからです。

罰則

対象の行為

5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(併科あり)

・パスポートの申請や請求に関する書類の虚偽の記載をするなど、不正な行為によって旅券や渡航書の交付を受けること

・他人名義の旅券や渡航書を行使すること

・行使の目的で、自己名義の旅券や渡航書を他人に譲り渡したり貸与したりすること

・行使の目的で、他人名義の旅券や渡航書を譲り渡したり、貸与、譲り受け、借り受け、所持したりすること

・行使の目的で、旅券や渡航書として偽造された文書を譲り渡したり、貸与、譲り受け、借り受け、所持したりすること

・旅券の返納命令を受けたにもかかわらず、期限までに返納しないこと

・期限の徒過など、効力を失った旅券や渡航書を行使すること

7年以下の懲役もしくは500万円の罰金(併科あり)

営利の目的をもって以下の行為に及ぶこと

・パスポートの申請や請求に関する書類の虚偽の記載をするなど、不正な行為によって旅券や渡航書の交付を受けること

・行使の目的で、他人名義の旅券や渡航書を譲り渡したり、貸与、譲り受け、借り受け、所持したりすること

・行使の目的で、旅券や渡航書として偽造された文書を譲り渡したり、貸与、譲り受け、借り受け、所持したりすること

30万円以下の罰金

・一般旅券に記載された渡航先以外の地域に渡航すること

・渡航書に帰国の経由地が指定されているにもかかわらず、経由地以外の地域に渡航すること

仮に、犯罪歴を隠してパスポートの発給を受けたことがバレると、警察に逮捕・勾留されて数日~数週間身柄拘束されたり、刑事罰が科されたりしかねません。

すでに犯罪歴がある状態で旅券の不正取得に及んでしまうと、今後海外への渡航が事実上不可能になるだけではなく、社会復帰が難しいほどのペナルティが加えられてしまうでしょう

以上を踏まえると、犯罪歴がある人がパスポートの取得や更新を希望する場合には、嘘をついたり隠ぺいをしたりすることなく、正直に犯罪歴を申告して適切な取得手続きを履践するべきだといえます。

3.取得済みのパスポートの返還を求められることがある

犯罪歴がある人がパスポートの新規発行をする際には、厳しい手続き・審査をクリアしなければいけません

一方、すでにパスポートを取得している人が犯罪行為に及んだ結果、前科・前歴がついてしまった場合には、取得済みのパスポートの返還を求められる可能性があります。

つまり、有効に取得したはずのパスポートが失効し、これまでどおりに海外旅行・海外出張できなくなるということです。

返納を命じられたのに期限までに返却しなければ刑事罰のリスクに晒されるので注意してください。

さいごに|パスポートの申請・更新のことなら弁護士や行政書士に相談を!

犯罪歴があると、パスポートの申請・更新に支障が生じたり、就職・転職活動や現在の仕事に悪影響が及んだりしかねません

犯罪歴があるというだけで日常生活においてさまざまなデメリットを強いられるので、せっかく更生をして真面目に社会復帰を目指そうとしても、前科・前歴によるデメリットが高いハードルとして立ちふさがってしまうでしょう。

もし、犯罪歴がパスポート関係に与える影響などについて不安・疑問を抱いたなら、できるだけ早いタイミングで刑事事件を得意とする弁護士や行政書士まで相談ください。

専門家に相談すれば、今後渡航を想定している国に犯罪歴があっても問題なく入国できるのかなどについて判断してくれるはずです。

ベンナビ刑事事件では、刑事事件をめぐるさまざまなトラブルに詳しい専門家を掲載しているので、この機会にぜひご活用ください。

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この記事の監修者
藤垣 圭介 (埼玉弁護士会)
これまで500件以上の刑事事件に携わり、特に痴漢/盗撮/暴行/傷害に関する事件の解決を得意とする。レスポンスの早さにこだわりをもって対応し、豊富な経験をもとに即日接見を用いて、早期釈放を目指している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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