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業務上横領は少額でも成立する?問われる責任と今すぐ取るべき対処法を解説

インテンス法律事務所
原内 直哉
監修記事
業務上横領は少額でも成立する?問われる責任と今すぐ取るべき対処法を解説

ギャンブルなどで資金が必要になり、勤務先の金庫から少額の現金を抜き取ってしまった場合、「このまま発覚すればどうなるのか」「逮捕や解雇につながるのか」と不安を感じるでしょう。

業務上横領罪は、横領した金額の大小にかかわらず成立する可能性があるため、たとえ少額であっても刑事処分や懲戒解雇などの重大な結果を招くおそれがあります

また、損害賠償請求や社会的信用の失墜といった影響がでるリスクもあるので、心当たりがある場合は今すぐに適切な対処をとることが大切です。

この記事では、業務上横領が少額の場合でも成立する理由や考えられるリスク、そして加害者が取るべき具体的な対応策について解説します。

今後の対応を検討する際の参考にしてください。

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業務上横領罪は少額でも成立する|横領金額の大小は関係がない

「つい会社のお金を使ってしまった」というときに気になるのは「少額でも業務上横領は成立するの?」という点ではないでしょうか。

ここからは、少額でも業務上横領罪は成立するのかどうかや、「少額」という言葉の法的な位置づけについて解説します。

横領金額は業務上横領罪の成否に関係しない

業務上横領罪は、横領した金額にかかわらず成立します。

刑法には金額の下限や免責規定がなく、たとえ1円であっても、業務上預かった他人の財産を自己のために処分すれば業務上横領罪の要件を満たすので注意しましょう。

(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。

引用元:刑法 | e-Gov 法令検索

判例や実務でも、数千円~数万円程度の着服であっても業務上横領罪として捜査や処分の対象となった事例は多数あります。

そのため、「少額だから大丈夫」と考えず、今すぐに対処することが大切です。

「少額」の定義については明確には決まっていない

そもそも、法律上「少額」という概念に明確な定義はありません。

実務では数万円程度までを「少額」と表現することが多いですが、その判断は事案や文脈によって異なります

実際、1万円未満で起訴される事例もあれば、10万円超でも被害弁償済みで不起訴になるケースもあるのです。

少額かどうかは社会通念や関係者の感覚による相対的な評価であり、「いくら以下なら罪に問われない」という明文化された基準は存在しないので注意しましょう。

少額の業務上横領をした場合に考えられる4つのデメリット

少額であっても業務上横領が発覚すれば、さまざまな不利益を受けることになります。

以下では代表的な4つのリスクについて解説します。

1.刑事事件となった場合は身柄を拘束される

業務上横領が刑事事件として扱われると、会社が警察に被害届や告訴状を提出し、捜査が開始されます。

その結果、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されれば、逮捕・勾留に至る可能性もあるでしょう。

逮捕された場合の勾留期間は、最長で20日間です。

その間は、職場復帰や日常生活が大きく制限されます。

2.有罪判決になった場合は拘禁刑に処される

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」と重く定められています。

実務では被害額や被害弁償の有無、反省の態度などが考慮され、少額の場合は執行猶予がつく可能性が高いものの、有罪判決となれば前科が残る点には注意が必要です。

たとえ横領額が少額であっても、前科が付くと再就職や資格取得に影響するほか、社会的信用を大きく損なうおそれがあるでしょう。

3.会社から弁償(損害賠償)を求められる

会社のお金を使い込んだ場合、刑事責任とは別に民事上の責任として会社から損害賠償請求を受けることになります。

少額であっても会社に対する背信行為であることに変わりはなく、全額返済を求められるのが通常です。

返済に応じなければ給与や財産の差し押さえなど強制執行の対象になる場合もあります。

4.仕事を懲戒解雇される可能性がある

業務上横領は会社に対する重大な裏切り行為とみなされ、金額にかかわらず懲戒解雇の対象となるのが一般的です。

懲戒解雇は即時解雇が可能で、退職金の不支給や経歴への傷など、社会的にも大きな不利益が生じます。

さらに、労働基準法上の除外認定が適用されれば、解雇予告手当すら支払われないこともあります

特に、金融や公務など信用が重視される職種に就いている場合、厳しい処分が下されやすいでしょう。

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少額の業務上横領で逮捕や解雇などを回避できる可能性が高い理由


少額の業務上横領であっても犯罪として成立する可能性はありますが、状況によっては逮捕や解雇、さらには刑事処分を回避できる場合もあります

ここからは、その理由を大きく2つに分けて解説します。

1.会社と示談できる可能性が高いため

被害額が少額の場合、加害者が全額を返済することが容易なため、会社と示談が成立しやすい傾向があります。

そして、示談が成立すると会社が被害届や告訴を取り下げることも少なくありません。

刑事事件化を避けられれば、逮捕や起訴のリスクは大幅に減少します。

さらに、示談書には「今後一切の請求をおこなわない」といった清算条項や「刑事処罰を求めない」との宥恕条項を盛り込むことで、後日のトラブルを防ぐことが可能です。

特に初犯かつ被害弁償が完了している場合、検察が起訴を見送る可能性は高まります。

2.警察が捜査しない可能性があるため

少額の横領の場合、警察が必ずしも本格的な捜査に着手するとは限りません。

また、被害額が1万円~数万円程度であれば、会社側が「内部処理で解決したい」と判断し、被害届を提出しないケースもあります

この場合、警察は事件として扱わず、刑事手続き自体が進まない可能性があるのです。

とはいえ、被害額が少なくても会社が厳格な処分方針を持っている場合や、ほかの不正行為も発覚している場合には、捜査がおこなわれるケースもあるので油断は禁物です。

少額の業務上横領事件を起こした場合に加害者が取るべき3つの対処法

少額の業務上横領であっても、発覚すれば刑事処分や懲戒解雇の可能性があります。

そのため、もしも業務上横領をおこなってしまった場合は、早期に適切な対象をしなければなりません。

ここでは、業務上横領の加害者が今すぐ実行すべき3つの対処法を紹介します。

1.会社に事実を告げて示談交渉をする

横領をしてしまった場合、まずは事実を隠さず会社に伝えることが重要です。

事実を認めたうえで謝罪し、速やかに被害金の返済を申し出ましょう。

返済がすぐに難しい場合でも、親族からの借入や分割払いの提案など、誠意を示す行動が示談成立の可能性を高めます。

示談が成立すれば、会社が被害届や告訴を取り下げる、あるいは刑事手続きをそもそもおこなわない可能性が高まり、逮捕や起訴を避けられる場合もあります

なお、示談書には「今後一切の請求をおこなわない」との清算条項や「刑事処罰を求めない」との宥恕条項を盛り込み、後日のトラブルを防ぎましょう。

2.必要に応じて警察へ自首などをする

会社との示談が難しい、もしくは刑事手続きが避けられない状況であれば、早めに警察へ自首することを検討しましょう

自首は、事件発覚前に自ら罪を申告することで、逮捕を回避できる可能性や量刑の軽減が見込める制度です。

法律上は刑の減軽が認められる場合があり、特に被害額が少額で返済の意思を示している場合は、不起訴処分になる可能性も高まります

ただし、自首をおこなうタイミングや方法を誤ると逆効果になる場合があるため、実行する際は必ず弁護士などの専門家に判断を仰ぐことが大切です。

3.刑事事件が得意な弁護士に相談する

業務上横領事件は、示談交渉や自首の判断、警察対応など専門的な知識が求められるため、刑事事件に精通した弁護士に相談することが不可欠です。

弁護士は、会社との交渉を代理し、感情的な対立を避けつつ示談成立へ導く役割を担います。

また、警察や検察とのやりとりを代理することで、不利な発言を避け、逮捕や起訴の回避につなげ流ことが可能です。

早期に弁護士を介入させることで、事案が刑事事件化する前に解決できる可能性が大幅に高まります。

さいごに|少額の業務上横領であっても逮捕や解雇などのリスクはある

業務上横領は、被害額が少額であっても刑事事件として扱われる可能性があり、逮捕や起訴、懲戒解雇など重大な結果を招くおそれがあります

そのため、「数万円程度なら大ごとにはならない」と考えるのは危険です。

とはいえ、被害額が小さい場合は、会社との示談や全額弁償によって刑事事件化を回避できる可能性があるのも事実です。

被害届や告訴が取り下げられれば、逮捕や起訴のリスクは大きく下がり、社会的なダメージを最小限に抑えられるでしょう。

しかしそのために重要なのは、発覚後の迅速かつ誠意ある対応です。

事実を認めたうえで被害弁償に努め、必要に応じて弁護士の力を借りることで、事態の悪化を防ぐことができます。

少額だからと油断せず、早期に適切な行動を取ることが、自分の将来を守る最善の方法です。

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この記事の監修者
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原内 直哉 (第二東京弁護士会)
ご相談いただきましたら、これまで様々な業種の会社を経営してきた経験や、弁護士や司法書士といった法律の専門家としての知識を活かして、ご相談者様のお悩み解決にお力添えさせていただきます。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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