告発(刑事告発)とは?告訴・被害届・内部告発との違いや受理されない理由などを解説

- 「告発とはなんだろう。告訴や被害届と何が違うのか?」
- 「告発されたらどうなるだろう?」
告発という言葉を聞いたことがあっても具体的にどのような手続きか、告訴や被害届と何が違うかわからず疑問に感じる方もいるでしょう。
告発・告訴・被害届の提出はいずれも警察へ犯罪事実を申告する手続きですが、それぞれおこなわれる場面が異なります。
告発されたらどうなるか把握したいときも、手続きの概要をきちんと知っておきたいところです。
本記事では告発とは何かや、告発が必ずしも受理されるとは限らない理由、告発と告訴・被害届や内部告発との違い、告発された場合に起こることを解説します。
本記事を読めば告発について理解できるうえに、万が一告発されたらどうなるか、どうすればいいかもイメージできるようになるでしょう。
告発とは?第三者が捜査機関に犯罪事実を申告して、処罰を求めること
告発とは犯罪事実を把握した第三者が、警察などの捜査機関に犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める手続きのことです。
告発における第三者とは、被害者や犯人といった犯罪の当事者ではない方のことです。
刑事訴訟法第239条第1項では、犯罪の事実を把握した場合、誰もが告発ができると規定されています。
告発は、告発状という書面または口頭でおこないます。
第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
② 官吏又は公吏は、その職務をおこなうことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
告発状が必ずしも捜査機関に受理されるとは限らない3つの理由
誰もが告発することができるとはいえ、必ずしも捜査機関に受理されるとは限りません。
本来、要件が整っている告発状であれば、警察や検察は受理しなければなりません。
しかし、さまざまな理由によって正式な受理がされず、預り状態となることがあります。
警察が告発状を受理しない主な理由として、以下3つが挙げられます。
1.申告された内容が犯罪行為とは言えない
被害が生じていたとしても、刑法における犯罪行為に該当しないようなケースでは、告発状を受理してもらえません。
たとえば著作権の侵害や不当解雇などは、必ずしも犯罪行為といえず民事で争うべきことが多い内容になります。
このように民事裁判で解決できるケースでは、警察は介入しないので告発状も受理されないのです。
2.告発しようとしている犯罪行為が親告罪にあたる
明らかな犯罪行為であっても、第三者からの告発では起訴ができず、被害者などから申し出ることが必要な種類の犯罪があります。
そのような種類の犯罪を親告罪といいます。
反対に、第三者の告発によっても起訴することが可能な犯罪は非親告罪です。
親告罪の例として以下が挙げられます。
- 器物損壊などの軽微な事件
- 家族間での窃盗など原則として家族内で解決すべきとされる事件
- 名誉毀損罪・侮辱罪など被害者自身の名誉に関わる事件
- 著作権など私権に関する事件
3.公訴時効が成立してしまっている
公訴時効が成立してしまっていると、告発状を受け付けることもできません。
公訴時効とはあらかじめ定められた時効期間が経過し、被疑者を起訴できなくなる制度です。
告発自体には期限はありませんが、公訴時効が成立してしまっていると事件を捜査しても、起訴したり刑罰を与えたりすることはできません。
そのため、公訴できる期間が過ぎている場合は告発も受け入れられないのです。
公訴時効は、犯罪の種類によって異なります。
たとえば、次のような公訴時効が設定されています。
犯罪の種類 | 時効期間 |
---|---|
軽犯罪法違反 | 1年 |
名誉毀損罪・侮辱罪・器物損壊罪・傷害罪 | 3年 |
未成年者略取誘拐罪・過失運転致傷罪 | 5年 |
窃盗罪・詐欺罪 | 7年 |
強盗罪・傷害罪 | 10年 |
不同意わいせつ罪 | 12年 |
傷害致死罪・危険運転致死罪 | 20年 |
殺人未遂罪・現住建造物等放火罪 | 25年 |
殺人罪・強盗致死罪 | なし |
告発(刑事告発)と似ている用語との違い|告訴・被害届・内部告発
告発(刑事告発)と似ている用語に告訴・被害届・内部告発があり、混同されることが少なくありません。
ここでは、これらの違いを見ていきましょう。
1.告訴|被害者などが捜査機関に犯罪被害を申告して処罰を求めること
犯罪の被害に遭った本人などが捜査機関に犯罪被害を申告し、犯人の処罰を求めることを告訴といいます。
告訴ができる権利をもつのは、被害者本人、被害者が未成年の場合は親権者など、被害者が死亡した場合の配偶者や親族です。
前述の親告罪については、告訴をしなければ相手を処罰することはできません。
告訴 | 告発 | |
---|---|---|
できる人 | 告訴権者(被害者本人、条件によっては被害者の親族や配偶者など) | 告訴権者・犯人以外の第三者 |
期限 | 親告罪については犯人を知った日から6ヵ月以内。それ以外はなし。 | なし ※親告罪については告発できない |
2.被害届|被害者が捜査機関に対して犯罪被害について申告すること
被害届は、犯罪被害者が、犯罪に遭った事実を捜査機関に対して申告する書類です。
告訴状と似ていますが、被害届の役割はあくまでも犯罪被害の事実を申告するのみです。
被害届が提出されたとしても、捜査機関が捜査をおこなう義務はありません。
これに対して、告訴状は起訴や処罰を求める役割があり、告訴状を受理した捜査機関は捜査をおこなう義務が生じます。
確実に捜査をしてもらいたい場合は、告訴状を提出するべきでしょう。
被害届 | 告発状 | |
---|---|---|
届出ができる人 | 被害者本人 | 被害者などの告訴権者や犯人以外の第三者 |
犯人の処罰意志 | 求められない | 求められる |
捜査義務 | 生じない | 生じる |
処分結果の通知義務 | 生じない | 生じる |
3.内部告発|組織の内部でおこなわれている不正行為などを通報すること
内部告発とは組織内部でおこなわれている不正行為・違法行為を、組織内部の人が上司や外部の監督庁・報道機関などに通報することです。
内部告発と区別するため、これまで説明してきた「告発」を刑事告発と呼ぶことがあります。
内部告発と告発(刑事告発)の主な違いは以下のとおりです。
内部告発 | 告発(刑事告発) | |
---|---|---|
目的 | 組織内部における不正の是正や対象者の処罰を求めること | 犯罪事実の調査や対象者の処罰を求めること |
申告・通報先 | 組織内部の上司や外部の監督機関・報道機関など | 警察などの捜査機関 |
できる人 | 組織内部に所属する人 | 被害者などの告訴権者や犯人以外の第三者 |
なお刑事告発という言葉自体は厳密にいうと正式な用語でなく、刑事訴訟法上は告発と呼ぶのが正しいです。
【加害者向け】告発(刑事告発)された場合に起こりうる2つのこと
犯罪加害者となって告発された場合はどうなるのでしょうか。
逮捕や刑事裁判の可能性について解説します。
1.捜査機関が捜査を始めて逮捕される可能性がある
告発が受理されると、警察などの捜査機関が捜査を開始することになります。
捜査の結果、告発された犯罪事実が確認された場合、対象者は逮捕される可能性も否定できません。
逮捕されるのは、対象者(被疑者)に逃亡や証拠隠滅の恐れがあると警察などが判断した場合です。
仮に逮捕されなかったとしても、在宅事件として調査が継続されることになります。
2.捜査の結果によっては、起訴され裁判になる
告発によって捜査がおこなわれ証拠が十分に集まり犯罪事実が確認されたら、起訴され裁判となる可能性があります。
起訴された場合の有罪率は99.9%で、ほぼ確実に刑罰を受けることになるのです。
起訴を避けるには、真摯に反省し再犯の可能性がないことを示したり、被害者と示談を成立させたりすることが重要になります。
しかし逮捕され身柄拘束された場合、被害者と示談交渉をすることはできません。
また仮に逮捕されなくても、被害者は直接被疑者と交渉するのを拒否することがほとんどです。
再犯の可能性がないことをどう主張すればよいか、わからないという方も多いでしょう。
これらの対応を速やかにすすめるには、弁護士の協力が欠かせません。
弁護士であれば、被害者が示談交渉に応じることが多いです。
また弁護士は依頼人が反省し再犯の可能性がないことを、警察などへ適切に主張してくれます。
そのため告発されたことが判明した場合、一刻も早く弁護士に相談・依頼することが推奨されるのです。
無料相談に応じる弁護士も多いので、まずは弁護士に連絡をしてアドバイスを求めるとよいでしょう。
さいごに|告発とは第三者が捜査機関に犯罪事実を申告する手続きのこと!
「告発」とは、被害者ではない第三者が犯罪事実を捜査機関に申告し、処罰を求める手続きです。
告発がおこなわれた場合、警察などの捜査機関は調査を開始します。
捜査の状況などによっては、告発の対象者は逮捕・起訴され刑事裁判にて有罪となる可能性があるでしょう。
告発されてしまったらどうしようと不安がある方は、早めの相談が重要です。
弁護士は状況を把握したうえで、示談交渉をすすめるなどして逮捕や起訴、重い刑罰を回避するための活動をしてくれます。
加害者の弁護をしてくれる法律事務所を見つけたい場合は「ベンナビ刑事事件」の利用をおすすめします。
ベンナビ刑事事件は、お住いの地域や複数の条件によって加害者弁護に精通した法律事務所を検索できるポータルサイトです。
希望に合う弁護士を効率的に見つけられますので、ぜひ活用ください。



【初回面談1時間1万円】【早期釈放】【示談交渉】【刑事事件の解決実績多数】家族が逮捕されてしまった/警察から取調べ・呼び出しを受けたなど、手遅れになる前に今すぐご相談を!《料金表・解決事例は写真をクリック》
事務所詳細を見る
【立川駅近く】不同意わいせつ・盗撮・暴行・窃盗・万引き等、元検事率いる刑事弁護チームがスピード対応!不起訴処分/逮捕回避/示談での解決を目指すなら、すぐにご連絡ください!▶最短で即日接見可能◀
事務所詳細を見る
【初回面談30分無料】【元検事の弁護士が在籍】刑事事件の対応実績豊富な弁護士が、依頼者様に寄り添います。早期釈放を通じた社会復帰のことも考えた対応を大切に、最後までサポート。ぜひお早めにご相談ください。
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡



刑事事件の基礎知識に関する新着コラム
-
この記事では、痴漢で解雇されるシチュエーションや、解雇するかどうかを判断するときに考慮されるポイント、弁護士に早期相談・依頼するメリットなどについて...
-
ニュースでよく聞く「検挙」という言葉の正確な意味を理解している人は、実はそこまで多くはありません。検挙という言葉がよく使われるシーンや、似た用語との...
-
本記事では告発とは何かや、告発が必ずしも受理されるとは限らない理由、告発と告訴・被害届や内部告発との違い、告発された場合に起こることを解説します。
-
盗撮の冤罪にあいそうなときでも、対応を間違えると逆に状況が悪化する可能性があります。万が一のときに冷静に対応できるよう、正しい対処法と注意点をおさえ...
-
犯罪を犯して起訴された場合は、通常、刑事裁判に移行します。刑事裁判は有罪・無罪や刑罰が決定する重要な場になるので、先を見据えてしっかりと準備しておく...
-
本記事では、刑事罰の役割や刑法で規定されている6つの刑事罰について解説します。2025年6月に運用が始まった拘禁刑の詳細や、刑事罰の種類・重さの一般...
-
事件を起こし警察に検挙・逮捕された場合は、不起訴処分の獲得を目指すのが一般的です。本記事では、不起訴処分とは何かや無罪との違い、不起訴処分を獲得する...
-
「立件」という言葉はニュースなどで頻繁に用いられます。しかし、具体的にどのような状況を指すのか理解している人は少ないはずです。本記事では、立件の意味...
-
正当な理由なく他人の建物に侵入すると建造物侵入罪にあたります。住居侵入罪との違い、構成要件、「侵入」や「正当な理由」の定義、刑罰、逮捕後の流れ、弁護...
-
窃盗事件を起こした場合は、いつか逮捕されるのではないかと不安になるものです。そのなかで、時効の完成まで逃げ切ろうと考えている人もいるのではないでしょ...
刑事事件の基礎知識に関する人気コラム
-
逮捕されて有罪になると前科が付きますが、前歴というものもあり、こちらは逮捕されただけで付きます。前科は間逃れても前歴が残ると今後の生活にどう支障がで...
-
犯罪事件捜査の対象になった場合、刑事手続きはスピーディに進行します。早期に刑事手続きから解放されるためには、初動の段階から迅速な対応をとることが肝心...
-
本記事では私人逮捕の条件や私人逮捕によるトラブルの対処法を解説します。
-
【弁護士監修】書類送検を徹底解説!書類送検とは被疑者を逮捕せず、書類のみ(証拠を含む)を検察官に送る手続きです。この記事では、そもそも送検とはどうい...
-
少年院(しょうねんいん)とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容するための施設を言います。
-
鑑別所とは、正式には「少年鑑別所」と呼ばれる施設で、家庭裁判所の少年審判をおこなうにあたって、犯罪を犯した未成年の少年を一時的に収容する場所です。本...
-
観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
-
この記事では親告罪と何か、親告罪に該当する罪を解説したあと、告訴されたときの対処法について紹介しています。親告罪を犯してしまって告訴される可能性があ...
-
刑事裁判と言っても、事件内容によって方法が少し異なります。この記事では刑事裁判の種類や流れの他に、民事裁判との違いやよくある質問(裁判員制度について...
-
公訴時効とは、刑事上の時効の概念で、犯罪が終わってから一定期間が過ぎると、公訴の提起(起訴)ができなくなることです。
刑事事件の基礎知識の関連コラム
-
実名報道されてしまうことのデメリットは多く、一度報道されてしまうと日常生活に大きな影響を及ぼします。この記事では、実名報道されることによるデメリット...
-
「立件」という言葉はニュースなどで頻繁に用いられます。しかし、具体的にどのような状況を指すのか理解している人は少ないはずです。本記事では、立件の意味...
-
この記事では、痴漢で解雇されるシチュエーションや、解雇するかどうかを判断するときに考慮されるポイント、弁護士に早期相談・依頼するメリットなどについて...
-
本記事では、刑事罰の役割や刑法で規定されている6つの刑事罰について解説します。2025年6月に運用が始まった拘禁刑の詳細や、刑事罰の種類・重さの一般...
-
罪を犯してしまったものの、証拠がないから大丈夫だろうと安心している方もいるかもしれません。本記事では、警察がどのような状況で動くのか、証拠の種類や重...
-
無免許運転で逮捕された高校生は、長期間の身体拘束や退学処分を受ける可能性があります。早期の身柄解放や退学処分の回避、家庭裁判所・学校と連携を図るため...
-
少年審判がおこなわれることがわかったら、できるだけ軽い処分を獲得するために準備を進めなければなりません。本記事では、少年審判や少年事件の流れ、少年事...
-
公訴時効とは、刑事上の時効の概念で、犯罪が終わってから一定期間が過ぎると、公訴の提起(起訴)ができなくなることです。
-
ものを盗む行為は強盗や窃盗にあたり、どちらも逮捕される可能性が高い犯罪です。 例をあげながら強盗と窃盗の内容や法定刑について解説します。また、強盗...
-
観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
-
執行猶予中の海外渡航は、条件付きで可能です。パスポートの有無で手続きが異なり、新規申請は審査が厳しく時間がかかる場合もあります。パスポート取得の難し...
-
少年院(しょうねんいん)とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容するための施設を言います。
刑事事件の基礎知識コラム一覧へ戻る