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横領罪は相対的親告罪!告訴が必要な条件と刑事告訴された場合の流れを解説

インテンス法律事務所
原内 直哉
監修記事
横領罪は相対的親告罪!告訴が必要な条件と刑事告訴された場合の流れを解説

「会社のお金や備品を使い込んでしまったけれど、横領罪は親告罪だから告訴されなければ逮捕されないのではないか」

そのように考えている人も少なくありません。

確かに横領罪は「親告罪」と関わりがありますが、実際には「相対的親告罪」と呼ばれ、親族間での犯行以外では告訴がなくても起訴される可能性があります。

つまり、会社からの刑事告訴や被害届がなくても、警察や検察の判断で事件化されるリスクがあるのです。

この記事では、横領罪と親告罪の違い、刑事告訴された場合の流れ、逮捕や起訴を避けるための対処法についてわかりやすく解説します。

横領に心当たりがある方は、今度のリスクを最小限に抑えるためにも、ぜひ参考にしてください。

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横領罪は相対的親告罪!兄弟姉妹などの親族が犯人なら告訴が必要に

一般的に、横領罪は「親告罪ではない」と言われますが、実際には親族間の犯行に限定して告訴が必要となる相対的親告罪にあたります

つまり、犯人と被害者の関係性によって、告訴が必要かどうかが変わるのです。

ここでは、まず「絶対的親告罪」と「相対的親告罪」の違いを整理したうえで、横領罪の3つの種類と親族間における例外的な扱いについて解説します。

【前提】親告罪には「絶対的親告罪」「相対的親告罪」の2種類がある

そもそも親告罪とは、被害者からの告訴がなければ起訴できない犯罪を指します。

そして、親告罪は「絶対的親告罪」と「相対的親告罪」の2つに分類されます。

それぞれの違いは、以下のとおりです。

種類 概要 告訴
絶対的親告罪 告訴しなければ犯人を起訴できない犯罪 必要
相対的親告罪 一定の親族が犯人である場合に限り、告訴しなければ起訴できない犯罪 配偶者・直系血族(父母・祖父母・子ども・孫など)間で横領など一定の財産犯を犯した場合は、その刑を免除できる 親族が犯人であれば告訴が必要
(親族以外であれば不要)
非親告罪 検察の判断によって起訴できる犯罪 不要

絶対的親告罪は、常に告訴がなければ起訴できない犯罪で、名誉毀損罪などが代表例です。

被害者が告訴を取り下げると、検察は起訴できなくなります。

一方、相対的親告罪は、一定の親族関係にある場合のみ告訴が必要となる犯罪です。

たとえば横領罪の場合、配偶者や直系血族、または同居の親族が被害者である場合は刑を免除でき、兄弟姉妹や別居の親族が被害者であれば告訴がなければ起訴できません

親族以外が被害者である場合は、告訴がなくても起訴可能で、検察の判断で刑事手続きが進むことになります。

つまり、「絶対的親告罪」は常に告訴が必要ですが、「相対的親告罪」は親族間に限定して告訴が必要となる点で大きく異なるのです。

横領罪には3つの種類がありいずれも相対的親告罪にあたる

横領罪には大きく分けて3つの種類があり、いずれも「相対的親告罪」に分類されます。

つまり、犯人と被害者が一定の親族関係にある場合は告訴が必要ですが、それ以外の場合は告訴がなくても起訴が可能です。

種類 概要 法定刑 親告罪/非親告罪
単純横領罪 横領罪の基本類型。
他人から預かった金銭を使ってしまった場合など。
5年以下の拘禁刑 相対的親告罪
業務上横領罪 業務上預かっていた他人の物を横領した場合 10年以下の拘禁刑 相対的親告罪
遺失物等横領罪 落とし物を横領した場合 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料 相対的親告罪

まず、単純横領罪は最も基本的な横領罪で、他人から預かった金銭や物を自己の利益のために処分したときに成立します。

たとえば、知人から預かった現金を返さずに使い込んだ場合が該当し、法定刑は5年以下の拘禁刑です。

次に、業務上横領罪は職務上の立場を利用して横領した場合に成立します。

経理担当者が会社の金銭を私的に流用するなどが典型例で、信頼関係を裏切る行為であるため処罰は重く、法定刑は10年以下の拘禁刑となっています。

最後に、遺失物等横領罪は、落とし物や誤って届いた物を警察に届けずに自分のものとした場合に成立します。

たとえば、財布を拾って交番に届けず使ってしまった場合がこれに当たり、法定刑は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料です。

このように、横領罪は類型ごとに内容や刑罰の重さは異なりますが、いずれも相対的親告罪に分類されており、親族間での犯行でなければ告訴がなくても刑事事件化する点に注意が必要です。

親族間の横領が親告罪にあたらない例外もある

横領罪は原則として「相対的親告罪」に分類されますが、状況によってはたとえ親族間であっても親告罪として扱われないケースがあります。

その典型が「業務上横領罪」です。

たとえば、親子や兄弟姉妹であっても、会社経営や事業に関わる立場で業務上の財産を管理していた場合に横領があれば、それは単なる親族間の金銭トラブルではなく「社会的信用を裏切る行為」とみなされます。

そのため、刑法244条の親族間免除の規定が適用されず、告訴がなくても検察が起訴できる非親告罪扱いとなるのです。

つまり、親族間だからといって必ず告訴が必要になるわけではなく、業務上の信任関係を利用した横領のように、社会的影響が大きい場合は例外的に非親告罪とされます。

したがって、会社経営を親族でおこなっているケースなどでは、「身内だから刑事事件にならないだろう」と安心するのは禁物です。

親告罪で告訴ができるのは6ヵ月間

親告罪には「告訴できる期間」があり、刑事訴訟法235条で犯人を知った日から6ヵ月以内と定められています。

この「犯人を知った日」とは、住所や氏名を詳細に把握する必要はなく、ほかの人と区別できる程度に「誰が犯人か」を特定できた日を指します。

そして、期限を過ぎて告訴した場合は無効とされ、受理されません。

なお、ここで混同しやすいのが「公訴時効」との違いです。

告訴期間は「告訴するためのタイムリミット」であり、被害者側が告訴権を行使できる期間を意味します。

一方で、公訴時効は「検察が起訴できるタイムリミット」を指し、犯罪の種類や法定刑の重さによって期間が変わります

たとえば、業務上横領罪の公訴時効は7年、単純横領罪の場合は5年です。

つまり、親告罪であれば6ヵ月以内に告訴をおこなう必要がありますが、非親告罪であれば告訴の有無に関係なく公訴時効内であれば起訴が可能です。

横領罪は会社と従業員の間では非親告罪として扱われるため、会社が被害届や告訴状を提出すれば、6ヵ月経過していても起訴される可能性がある点に注意が必要です。

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親告罪は告訴が可能な「告訴権者」が決まっている

親告罪では、誰でも告訴できるわけではなく、法律で定められた「告訴権者」だけが告訴をすることができます

告訴権者の基本となるのは被害者本人であり、犯罪によって直接被害を受けた人に限られます。

たとえば会社の横領事件であれば、被害者は法人である会社そのものであり、告訴をおこなえるのは代表取締役など法人を代表する立場の人です。

なお、被害者本人が告訴できない状況にある場合には、法定代理人が告訴をおこなうことができます。

たとえば未成年である場合は親権者、成年後見人が付いている場合は後見人が代わって告訴できるのです。

また、被害者が亡くなった場合には、配偶者や直系親族、兄弟姉妹などが告訴権者として告訴をおこなえます。

ただし、生前に「告訴は望まない」と意思表示していた場合には告訴できないとされています。

さらに、加害者が被害者の法定代理人であったり近い親族関係にある場合には、被害者の親族が告訴できるケースもあります。

このように、親告罪では告訴できる範囲が明確に決まっており、それ以外の人、たとえば友人や同僚などが告訴することはできません。

横領で刑事告訴をされたらどうなる?判決が出るまでの流れ

会社から刑事告訴を受け、それが受理されると、事件は刑事手続きとして本格的に進んでいきます

以下では、横領による告訴から裁判までの一連の流れを詳しく説明します。

警察の捜査が開始される

告訴が受理されると警察が動き、証拠収集や関係者への聞き取りが始まります

具体的には、会社が提出した資料や記録をもとに、横領の金額や期間、関与の程度などが調査されます。

場合によっては勤務先への立入調査や自宅の捜索がおこなわれることもあり、事件が「水面下」で進んでいくのではなく、周囲に知られる形で進展することもあります

警察から呼び出しを受ける

捜査によって被疑者として特定されると、警察から呼び出しを受け、取り調べを受けることになります

この段階での供述内容は、後の処分判断に大きく影響するため注意が必要です。

焦って不用意な発言をすれば不利に働く可能性があるので、弁護士に事前に相談しておくことが重要です。

必要に応じて逮捕される

警察から証拠を隠すおそれや逃亡の危険があると判断されれば、逮捕に踏み切られることがあります

逮捕されると身柄は警察に拘束され、家族や職場に知られるのは避けられません。

ここで社会的信用を大きく失うケースも多いため、逮捕を避けるための弁護士による働きかけが不可欠です。

検察へ身柄が送致される

逮捕された場合、取り調べを受けたうえで48時間以内に検察庁に送致されます。

ここで検察官は警察の捜査記録を精査し、身柄拘束を継続する必要があるかどうかを判断するのです。

その後、検察の判断で勾留請求が出されれば、裁判官が審査をおこない、認められると最長で20日間の勾留が続きます

勾留され検察から取り調べを受ける

勾留が決定すると、勾留中に検察官による取り調べがおこなわれ、供述内容や証拠の整合性が確認されます。

この期間に被害弁償や示談が成立すれば、不起訴処分や早期の釈放につながる可能性がありますが、進展がないと起訴の可能性は高まるでしょう。

検察が起訴・不起訴の決定をおこなう

勾留期限内に、検察官は事件を起訴するか、不起訴とするかを決めます

被害額が高額であったり、会社側が強く処罰を求めていたりする場合は起訴に進みやすいでしょう。

逆に示談が成立し被害者が処罰を望まない場合には、不起訴処分になる可能性もあります。

起訴されたら刑事裁判を受け判決がでる

横領罪によって起訴されると、刑事裁判に進みます

裁判では証拠や供述の信用性が審理され、最終的に有罪か無罪か、有罪であればどの程度の刑罰を科すかが判決として言い渡されます。

横領額の多寡や反省の有無、被害弁償の有無などが刑の軽重に大きく影響するでしょう。

横領罪で逮捕や有罪になるのを避けるためには?

横領が発覚すれば、逮捕や有罪判決を受ける可能性は十分にあります

しかし、初動での対応次第では逮捕を避けられるほか、不起訴や執行猶予といった軽い処分にとどめられることも少なくありません。

そこでここからは、横領罪に問われる可能性があるときにすべき対処法を解説します。

刑事事件の対応を得意とする弁護士に相談する

横領で告訴される可能性があるときに最も重要なのは、できるだけ早く刑事事件を得意とする弁護士に相談することです。

弁護士は、逮捕前の段階から示談交渉や被害弁償の進め方を助言し、逮捕を回避するための活動もおこないます。

また、警察の取り調べや検察の判断に影響を与える意見書を提出するなど、専門的な対応によって有利な処分につながることが可能です。

被害者に謝罪し被害弁償をする

横領事件では、被害者の感情が処分に大きく影響します。

そのため、被害者に誠意をもって謝罪し、被害額を弁償することで、処罰感情が和らぐ可能性があります。

実際に、被害が完全に弁償されているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断するうえで重視されるポイントです。

被害者と示談を成立させる

被害者との示談が成立すれば、被害届や告訴が取り下げられることがあります

横領額が大きい場合でも、示談によって「処罰を望まない」という意思が示されれば、不起訴や執行猶予に結びつく可能性が高くなるでしょう。

ただし、自分や家族が直接交渉を試みると失敗するケースも多いため、弁護士を通じておこなうことが現実的です。

弁護士であれば、相手の被害感情に寄り添いながらも、スムーズな示談成立を実現できます。

弁護士同行での自首を検討する

すでに会社が不正に気づいている場合や、いずれ発覚する可能性が高い場合は、弁護士同行のうえで自首を検討することも有効です。

自首は「逃げる意思がない」「反省している」という意思表示となり、刑事処分を軽くする事情として評価されます。

結果として、逮捕を回避できる場合もあるでしょう。

ただし、すでに警察が捜査を始めている場合は逆効果になるおそれもあるため、弁護士と相談して判断することが重要です。

横領罪についてよくある質問

最後に、横領罪に関するよくある質問を取り上げて解説します。

「警察は動かないのではないか」「呼び出しがあっても行かなければ逮捕されないのではないか」と不安に感じている方は、ぜひ参考にしてください。

横領事件で警察は動かないというのはほんとう?

横領事件だからといって警察が動かないというわけではありません。

とはいえ、横領は窃盗のように現行犯で発覚しにくく、被害者である会社からの申告がなければ事件化しづらいのも事実です。

しかし、会社が被害届や告訴状を提出すれば、警察は正式に捜査を開始します。

逆に言えば、被害届や告訴状を出されないよう示談を成立させることが非常に有効であり、そのためにも弁護士のサポートを受けることが重要です。

横領罪の被疑者として警察から呼び出しを受けても拒否してよい?

警察から被疑者として呼び出された場合、これを無視すると「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」と判断され、逮捕される可能性があります。

そのため、呼び出しには応じるべきです。

ただし、取り調べでは不用意な発言が後の判断に不利に働くこともあるため、必ず事前に弁護士へ相談して対応を確認しておきましょう。

さいごに|横領罪での逮捕や起訴を避けたい場合は弁護士に相談を!

横領は金額の大小にかかわらず重大な犯罪であり、発覚すれば逮捕や起訴につながる可能性があります。

特に会社が被害届や告訴状を提出すれば、警察や検察は本格的に動き出し、弁償や謝罪だけでは済まないケースも少なくありません。

ただし、早期に弁護士へ相談することで、逮捕を回避できる可能性があるほか、不起訴や執行猶予を獲得できる可能性は十分にあります

弁護士は被害者との示談交渉や被害弁償の進め方、取り調べ対応のアドバイスなど、状況に応じたサポートをおこなってくれます。

また、事件が公になったあとの社会的信用や家族への影響といった問題についても相談でき、精神的な支えにもなるでしょう。

そのため、横領が発覚しそうな状況や会社から呼び出しを受けている段階であれば、迷わず専門の弁護士に相談してください。

初期対応の速さが、その後の結果を大きく左右します。

逮捕や起訴を回避し、生活へのダメージを最小限に抑えるためには、一刻も早く専門家の力を借りることが重要です。

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原内 直哉 (第二東京弁護士会)
ご相談いただきましたら、これまで様々な業種の会社を経営してきた経験や、弁護士や司法書士といった法律の専門家としての知識を活かして、ご相談者様のお悩み解決にお力添えさせていただきます。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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