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児童虐待防止法とは|虐待児童を発見した場合の対処法とその後の流れ

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
児童虐待防止法とは|虐待児童を発見した場合の対処法とその後の流れ

児童虐待防止法(じどうぎゃくたいぼうしほう)とは、正式名称を『児童虐待の防止等に関する法律』と言い、虐待によって児童の成長や人格形成に悪影響を及ぼすことを防止するための法律です。18歳未満の児童に対する虐待の防止や、児童虐待を発見した場合の保護などについて定められており、2000年5月に公布され、同年11月に施行されました。

 

もともと児童虐待に関する法律として『児童福祉法』がありましたが、あまり機能していないという問題点がありました。そして、1994年に子供の基本的人権を国際的に保護することを目的とした『子どもの権利条約』に日本が加盟したことや、1990年代以降メディアで児童虐待に関する報道が積極的になされました。

 

これによって、児童虐待問題への関心・認知度が高まったことを背景に、2000年に児童虐待防止法が制定されました。

 

この記事では、児童虐待防止法に関する規定についてご紹介します。

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児童虐待防止法の規定

さっそく、児童虐待防止法の規定について確認しましょう。

児童への虐待に関する規定

児童虐待防止法において、児童とは『18歳未満の人』と定められています。また、同法律では、親権者や成年後見人、さらに児童施設の施設長、現在児童を監視している人などの『保護者』が、児童に対して以下の行為を行うことを「虐待」としています。

虐待の種類

虐待の内容

身体的虐待

・児童に対して暴行すること

性的虐待

・児童とわいせつな行為をすること

・児童にわいせつな行為をさせること

ネグレクト

・著しく食事の量を減らすこと

・長時間放置すること

・同居する人が児童に対して虐待していることを放置すること

心的虐待

・児童に対する暴言

・ドメスティックバイオレンス(配偶者などへの暴力や暴言)を見せること

参考:児童虐待の防止等に関する法律 第2条

なお、児童虐待を行うことは、児童虐待防止法の第3条によって禁止されています。

(児童に対する虐待の禁止)

第三条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。

引用元:児童虐待の防止等に関する法律 第3条

児童虐待の早期発見や予防に関する規定

児童虐待防止法では、以下に該当する人は、児童虐待の早期発見に努めなければならないと規定されています。

  • 学校・児童福祉施設・病院などの団体
  • 学校・児童福祉施設の教職員
  • 医師・保険師・弁護士 など

さらに、幼稚園や学校、児童施設などは、保護者と接する機会も多いことから、児童と保護者に対して児童虐待のための啓発活動を行わなければならないとされています。

参考:児童虐待の防止等に関する法律 第5条

児童虐待を発見したときの規定

児童虐待を発見した場合には、市町村や福祉事務所、児童相談所などに通告しなければなりません。なお、通告の対象は、児童虐待を発見した場合だけでなく、『児童虐待を受けたと思われる児童』を発見した場合も含まれます。

 

そのため、児童虐待の明確な証拠がなかった場合でも、一般的に考えて児童虐待が疑われる場合は通告しなければなりません。通告は匿名でも可能ですし、名乗ったとしても相談先の施設・事務所以外に知られることはありません。

参考:児童虐待の防止等に関する法律 第6条

児童虐待の通告後の規定

児童虐待に関する通告を受けた市町村や福祉事務所、児童相談所、さらに都道府県知事などは、それぞれ必要に応じて以下の対応を取らなければなりません。

 

必要に応じ取るべき措置

市町村・福祉事務所

  • 児童との面会および安全確認のための対策を取る
  • 児童を児童相談所へ送致する
  • 保護者の出頭や保護者への質問、立ち入り調査、一時保護が必要と認められるものを都道府県知事および児童相談所所長に通知する

児童相談所

  • 児童との面会および安全確認のための対策を取る
  • 一時保護を行う

都道府県知事

  • 児童福祉従事者に、保護者を児童同伴のもと出頭させ、調査・質問をさせる
  • 出頭に応じない場合、児童福祉従事者に立ち入り調査・質問をさせる
  • 出頭に応じない場合、裁判所の許可を取った上で、児童福祉従事者に臨検、捜索させる

参考:児童虐待の防止等に関する法律 第8条

保護者に対する指導における規定

児童虐待防止法では、保護者が指導を受けなければならないことや、指導を受けないときには都道府県知事が勧告を行うこと、また、勧告にも応じない場合には児童を一時保護できることを規定しています。なお、児童虐待を行った保護者に対して指導を行うことは、児童福祉法第27条により規定されています。

(児童虐待を行った保護者に対する指導等)

第十一条 児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の規定により行われる指導は、親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた児童が家庭(家庭における養育環境と同様の養育環境及び良好な家庭的環境を含む。)で生活するために必要な配慮の下に適切に行われなければならない。

2 児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置が採られた場合においては、当該保護者は、同号の指導を受けなければならない。

3 前項の場合において保護者が同項の指導を受けないときは、都道府県知事は、当該保護者に対し、同項の指導を受けるよう勧告することができる。

4 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わない場合において必要があると認めるときは、児童福祉法第三十三条第二項の規定により児童相談所長をして児童虐待を受けた児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させ、同法第二十七条第一項第三号又は第二十八条第一項の規定による措置を採る等の必要な措置を講ずるものとする。

5 児童相談所長は、第三項の規定による勧告を受けた保護者が当該勧告に従わず、その監護する児童に対し親権を行わせることが著しく当該児童の福祉を害する場合には、必要に応じて、適切に、児童福祉法第三十三条の七の規定による請求を行うものとする。

引用元:児童虐待の防止等に関する法律 第11条

保護者への制限に関する規定

虐待を受けた児童が、児童福祉法第27条の規定により『施設入所等の措置』や、児童相談所により一時保護を受けている場合に、それぞれの施設長は、児童虐待防止に関する法律第12条により、保護者に対し以下の行為を制限できると規定しています。

  • 虐待を受けた児童との面会
  • 虐待を受けた児童との通信

参考:児童虐待防止に関する法律 第12条

児童虐待を受けた児童への支援に関する規定

虐待を受けた児童への支援に関して、以下のような規定があります。

  • 各市町村は、保育所に入る児童を選定する際に、児童虐待を防止するために各家庭の事情を考慮すること
  • 国や地方団体は、虐待を受けた児童が十分な教育を受けられるための必要な施策を講じること
  • 国や地方団体は、虐待を受けた児童が自立できるようにするため、住居の確保や進学の支援をすること

参考:児童虐待防止に関する法律 第13条3項

虐待されている児童を発見したときには

前述したとおり、虐待されている児童を発見した場合には、市町村や福祉事務所、児童相談所などに通告する義務があります。『虐待を受けたと思われる児童』を発見した場合も、証拠がなくても通告しなければなりません。

 

具体的な通告先は、市町村の児童福祉課、福祉事務所、児童相談所などです。

 

通告をしなかった場合における罰則の規定はありません。しかし、子供は日本の将来を担う大事な資産ですので、地域の皆で見守るようにしたいところです。

 

虐待が疑われる児童の特徴として以下のような例が挙げられます。

  • 身体に不自然なあざ・火傷がある
  • 通常ならできないようなところに、あざや火傷のあとがある
  • あざや火傷について説明ができない
  • 年齢不相応な性知識・性に対する関心・他人の性器を触る・自分の性器を見せる
  • 無表情である・少しのことでおびえる・落ち着きがなく周囲をうかがう
  • 不衛生な服を着ている・異臭がする
  • 親が現れるとそわそわする
  • 急に話をしなくなる・ボーっとする
  • 異常な食欲を見せる
  • 虫歯が多く長期にわたり治癒しない

このような特徴を持つ子供を見かけた場合、通告する必要があると言えるでしょう。

まとめ

児童虐待防止に関する法律では、児童への虐待の禁止や、虐待されている児童を発見した場合には通告の義務があること、虐待を受けた児童を保護することなどを規定しています。

 

児童虐待防止法は、2000年11月の施行後、2度改正されています。これは、児童相談所への相談件数が年々増加していることで、児童虐待のさらなる増加が憂慮された背景があります。

 

この記事が、児童虐待防止への理解につながれば幸いです。

出典元一覧

児童虐待の防止等に関する法律

児童福祉法

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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