暴行罪と聞くと、殴る蹴るなど直接暴力を加えたケースのみ該当するように思われがちですが、実にさまざまなケースが暴行罪に当てはまります。
暴行罪は、人に対し暴行を加え相手が傷害を負わなかったときに成立する罪です。他方、相手が傷害を負ってしまった場合は「傷害罪」が成立します。
この記事では、暴行罪の構成要件や傷害罪との違いについて解説していきます。
この記事に記載の情報は2021年02月22日時点のものです
暴行罪の構成要件
暴行罪の構成要件は、加害者が「人の身体に対し不法に有形力を行使する」と暴行罪が成立します。
暴行とは、他人の身体に対する不法な「有形力を行使する」ことと定義されていますが「有形力を行使する」という言葉にいまいちピンとこないのではないでしょうか?
暴行罪でいう「有形力の行使」とは、例えば、直接的に人を殴るとか蹴ると言った直接的な暴力を用いる時に適用されます。
有形力の反対で、無形力と呼ばれるものは病菌・光・熱・電気・臭気・音波などがあり、無形力の行使による被害は、基本的には暴行罪として認められず、それにより、傷害を負った場合に傷害罪として認められます。

ただし、過去には部屋で日本刀を振り回した、部屋の中で太鼓を連打したといった場合などは障害を負っていなくても、暴行罪として認められたケースもあります。
暴行の定義
刑法において、暴力の定義は4種類に分類されています。
1. 最広義=有形力が不法に行使されるすべての場合を含み、その対象は人に対するもの、物に対するもの、そのいずれであるかを問わない。
2. 広義=人に対する不法な有形力の行使を指称するが、物に対する有形力でも、人に対する強度の物理的影響を与えうるもの(間接暴力)であればこれに含まれる。
3. 狭義=不法な有形力が人の身体に対して加えられた場合を指し、本罪の暴行はこれに当たる
4. 最狭義=人の反抗を抑圧し、または著しく困難にする程度に強度に不法な有形力の行使をいう。
暴行罪において、暴行とは、3. の狭義を指します。
どんなことが暴行にあたるか?
極端な例でいうと、お笑い芸人が相方の頭をたたくことも「有形力の行使」にあたりますが、ただ犯罪が成立するためには、 1.構成要件、2.違法性、3.責任という3つの要件を満たさなければいけません。
仮に構成要件は満たしていても、この場合、正当業務行為といって、仕事内でのお互い同意を得た行動であるため、違法性はないということができるので、暴行罪には当てはまりません。
しかし、過去の事例では、水を相手にかけただけで暴行罪になったケースもあり、この暴行罪に当てはまるかというのはその因果関係なども考慮するため実にケースバイケースです。
暴行罪と傷害罪のちがい
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暴行罪 |
傷害罪 |
該当する行為 |
暴行を加えたものの傷害を負わなかったら |
人の身体に傷害を負わせたら
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罰則 |
2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 |
15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
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根拠 |
第208条 |
第204条
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「殴ったら(暴行罪)被害者が怪我をした(傷害罪)」というように、暴行罪の延長線上に傷害罪があります。
しかし、すべての事件が殴った・殴っていないのようなわかりやすいものではありません。「どこから傷害にするか?」については、以下の3種類の説が唱えられています。
- 生理機能傷害説:人の健康状態を悪化させたら(風邪を引かされた、病気にさせられたなど)
- 身体完全性侵害説:体に変化を与えたら(けがや病気の他に、無断で他人の髪を切るなど)
- 折衷(せっちゅう)説:上記の2点を合わせて傷害と考える
一般的な刑事事件では全治5日程度が傷害罪か暴行罪の分かれ目になり、軽微な怪我では暴行罪として処理されることも多いようです。
まとめ
相手への暴行を行ってしまった場合、暴行罪になるのか傷害罪になるのかで、罰則が大きく異なります。
お酒の勢いで他人への暴行を行ってしまい、暴行を行った記憶がないまま警察に逮捕されたり出頭要請を受けたりするケースも珍しくありません。
もし、暴行に対し自覚がある場合は早い段階での謝罪や示談が重要です。
示談は個人で行うことが難しいため、まず刑事事件が得意な弁護士へ相談しましょう。
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