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他人に怪我をさせた場合の慰謝料の相場|高額になるケースや金額の決定方法などを解説

ゆら総合法律事務所
阿部 由羅
監修記事
他人に怪我をさせた場合の慰謝料の相場|高額になるケースや金額の決定方法などを解説

他人に対して暴行を加えて怪我をさせる行為は、傷害罪による処罰の対象となります。

(傷害)

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法| e-Gov法令検索

さらに傷害罪の犯人は、被害者に対して慰謝料などの損害賠償責任を負います。

被害者の怪我の状態によっては高額の損害賠償を強いられる可能性があるので注意が必要です。

その一方で、被害者側との示談が成立すれば、重い刑事罰を回避できる可能性が出てきます。

傷害事件の示談交渉は、刑事弁護を得意とする弁護士に依頼しましょう。

本記事では、他人に怪我をさせた場合の慰謝料相場や、慰謝料が高額になるケース・慰謝料額の決定方法などを解説します。

傷害事件を起こしてしまった方やそのご家族は、本記事を参考にしてください。

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他人に怪我をさせた場合に支払うべき慰謝料の金額相場

傷害事件によって他人に怪我をさせた場合は、被害者に生じた損害を賠償しなければなりません。

傷害事件に関する損害賠償のうち、大きな金額を占めることが多いのが「慰謝料」です。

慰謝料とは、被害者が受けた精神的損害に対する賠償金をいいます。

怪我をした被害者に対して支払うべき慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類に大別されます。

入通院慰謝料の金額相場

「入通院慰謝料」とは、怪我の治療のために入院や通院を強いられたことに伴い、被害者が受けた精神的損害に対する賠償金です。

入通院慰謝料の算定に当たっては、交通事故事件において用いられる算定表が参考になります。

下記の2つの表は、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」に掲載されているものです。

別表Ⅰは骨折などの重症について、別表Ⅱは打撲、捻挫などの軽症について用います。

入院期間と通院期間が交差する部分が、加害者が被害者に支払うべき入通院慰謝料の目安額となります。

別表Ⅰ(骨折などの重症時)単位:万円
  入院期間 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
通院期間 0 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335  
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332    
12月 154 183 211 236 260 250 298 314 326      
13月 158 187 213 238 262 282 300 316        
14月 162 189 215 240 264 284 302          
15月 164 191 217 242 266 286            
別表Ⅱ(打撲、捻挫などの軽症時)単位:万円
  入院期間 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
通院期間 0 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 023 203
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209  
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204    
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200      
13月 120 137 152 162 173 181 189 195        
14月 121 138 153 163 174 182 190          
15月 122 139 154 164 175 183            
(例)
  • 骨折により入院1か月、通院4か月の場合
  • →別表Ⅰに基づき、入通院慰謝料の目安額は130万円

後遺障害慰謝料の金額相場

「後遺障害慰謝料」とは、後遺症が残ったことに伴い、被害者が受けた精神的損害に対する賠償金です。

傷害事件によって負った被害者の怪我が完治せず、後遺症が残った場合には、加害者は被害者に対して後遺障害慰謝料を支払わなければなりません

後遺障害慰謝料の金額は、交通事故事件について認定される後遺障害等級に応じて、下表のとおり目安が決まっています。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

各等級に該当する後遺症の具体的な内容については、国土交通省が公表している後遺障害等級表をご参照ください。

他人に怪我をさせた場合の慰謝料額が相場より高額になりやすいケース

傷害事件で他人に怪我をさせた場合の慰謝料額は、以下のようなケースにおいて高額になりやすい傾向にあります。

  1. 暴行の悪質性が高い場合
  2. 怪我が重症である場合

暴行の悪質性が高い場合

暴行が長時間または複数回に及ぶなど、きわめて悪質性の高い形でおこなわれた場合には、慰謝料額が高額になりやすいと考えられます。

暴行の悪質性が高い場合、被害者は実際に受けた怪我によるものに加えて、暴行自体への恐怖によって大きな精神的損害を受けた可能性が高いです。

したがって、一般的な入通院慰謝料の相場額に比べて、加害者の支払うべき慰謝料は高額となる傾向にあります。

怪我が重症である場合

被害者の怪我が重症である場合は、入通院慰謝料が重症時の基準によって算定されることに加えて、被害者に後遺症が残る可能性が高いです。

被害者に後遺症が残った場合、加害者は被害者に対して後遺障害慰謝料を支払う必要があります。

後遺障害慰謝料は数百万円から数千万円に及ぶことがあり、加害者においては多額の支出を強いられてしまいます。

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慰謝料以外に怪我をさせた被害者に支払うべき損害賠償の例

傷害事件を起こした加害者が被害者に支払うべき損害賠償は、慰謝料だけに限られません。

そのほかにも、以下のような項目の損害賠償を支払う義務を負います。

  1. 治療費
  2. 通院交通費
  3. 入院雑費
  4. 休業損害
  5. 逸失利益
  6. 介護費用

治療費

傷害事件の被害者が、怪我の治療を受けるために負担した治療費は、その全額が加害者による損害賠償の対象となります。

治療費の例
  • 病院やクリニックに支払った費用
  • 薬剤の購入費用
  • 装具、器具の購入費用
  • リハビリテーションの費用 など

通院交通費

傷害事件の被害者が怪我の治療のために通院した場合、その通院に要した交通費が、加害者による損害賠償の対象となります。

通院交通費の例
  • 公共交通機関の乗車料金
  • 自家用車で通院した場合の燃料費
  • タクシーの乗車料金 など
  • ※タクシーの乗車料金については、合理的に必要と認められる場合に限ります。

入院雑費

傷害事件の被害者が入院した場合、入院中の日用品購入等に充てる雑費が、加害者による損害賠償の対象となります。

入院雑費については、入院一日当たり1,500円程度が認められる傾向にあります。

休業損害

傷害事件の被害者が怪我の治療やリハビリのために仕事を休んだ場合には、休業によって得られなくなった収入相当額が、加害者による損害賠償の対象となります。

なお、被害者が有給休暇を取得して仕事を休んだ場合にも、休んだ日に対応する給与相当額が損害賠償の対象となります。

逸失利益

傷害事件の被害者に後遺症が残った場合、後遺症による労働能力の喪失に対応して、将来失われた収入(=逸失利益)が加害者による損害賠償の対象となります。

逸失利益の金額は、以下の式によって計算します。

  • 逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
  • 基礎収入額:原則として、事故前の年収の実額。

ただし専業主婦(専業主夫)の場合は、賃金センサスに基づく女性労働者の全年齢平均給与額を用います。

逸失利益の算定に用いる労働能力喪失率は、後遺症の部位や程度に応じた後遺障害等級に応じて、下表のとおり目安が決まっています。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 33%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

介護費用

傷害事件の被害者が、怪我の後遺症によって要介護状態となった場合には、介護費用が加害者による損害賠償の対象となります。

要介護の状態は一生涯続くと考えられるため、介護費用の損害賠償はきわめて高額となるケースが多い点に注意が必要です。

他人に怪我をさせた場合における慰謝料額の決定方法

傷害事件の慰謝料や、その他の損害賠償の金額は、以下のいずれかの方法によって決定します。

  1. 示談交渉|当事者同士の話し合いで慰謝料額を決める
  2. 損害賠償請求訴訟|民事訴訟を通じて慰謝料額を決める
  3. 刑事裁判における損害賠償命令|刑事裁判を担当した裁判所が慰謝料額を決める

示談交渉|当事者同士の話し合いで慰謝料額を決める

「示談交渉」は、被害者と加害者が話し合って、慰謝料などの損害賠償の金額や支払方法を取り決める手続きです。

傷害事件の加害者にとっては、被害者との示談が成立するか否かによって、刑事事件における処分の内容が大きく左右されることがあります。

示談が成立して被害弁償をおこなうことができれば、その事実を考慮して、刑事裁判における量刑が緩和されることが多いです。

被害者の怪我が軽症であれば、執行猶予が付く可能性が高くなります。

これに対して、示談が成立しないままに刑事裁判の審理が終了すると、実刑判決を含む重い刑罰が科される可能性が高いと考えられます。

傷害事件の加害者としては、できる限り早い段階で、被害者との示談を成立させることが大切です。

ただし、身柄拘束や被害者側の反発によって、なかなか示談交渉が進まないというケースもよくあります。

その場合は、示談交渉の対応を弁護士に依頼しましょう。

損害賠償請求訴訟|民事訴訟を通じて慰謝料額を決める

示談交渉が決裂した場合、傷害事件の被害者は、加害者を被告とする損害賠償請求訴訟を提起する場合があります。

損害賠償請求訴訟は、裁判所が損害賠償責任の有無や金額を判断する裁判手続きです。

被害者は、加害者の傷害行為や自らが受けた損害の額などを立証し、裁判所に対して損害賠償を命ずる判決を求めます。

加害者は、被害者側の主張を精査したうえで、不適切な点があれば反論します。

損害賠償請求訴訟の判決が確定すると、加害者はその内容に従って、命じられた損害賠償を被害者に支払わなければなりません

なお、損害賠償請求訴訟の途中で、被害者と加害者の間で和解が成立するケースもあります。

損害賠償請求訴訟は1年前後の長期にわたることも多いので、弁護士を代理人として対応することをおすすめします。

刑事裁判における損害賠償命令|刑事裁判を担当した裁判所が慰謝料額を決める

刑事裁判は本来、加害者に対する処罰の要否や量刑を決定する手続きであり、民事訴訟とは明確に区別されています。

しかし傷害事件等については例外的に、刑事裁判の手続きにおいて、被害者が損害賠償請求をおこなうことも認められています犯罪被害者保護法24条以下)。

被害者は刑事裁判における弁論の終結までに、審理の対象となっている不法行為(傷害など)に基づく損害につき、裁判所に対して損害賠償命令の申し立てをすることができます(犯罪被害者保護法24条1項)。

刑事裁判を担当した裁判所は、その審理を通じて事件の背景をよく理解しているので、損害賠償請求に関する審理をスムーズにおこなうことができる点が大きなメリットです。

裁判所は、傷害事件の被害者に生じた損害を認定したうえで、加害者に対して損害賠償命令を発します犯罪被害者保護法33条)。

損害賠償命令の内容に不服がある場合には、当事者は裁判所に対し、損害賠償命令の送達(または審理期日における主文および理由の要旨の告知)を受けた時から2週間以内に異議を申し立てることができます

適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令が確定します(犯罪被害者保護法34条)。

損害賠償命令が確定した場合には、加害者はその内容に従って、命じられた損害賠償を被害者に支払わなければなりません。

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傷害事件の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

ご自身やご家族が傷害事件を起こしてしまったら、被害者との示談交渉を速やかに弁護士へ依頼しましょう。

傷害事件の示談交渉を弁護士に依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。

  1. 適正な示談金額がわかる
  2. 身柄拘束中でも示談交渉を進められる
  3. 被害者側の反発を緩和できる可能性がある

適正な示談金額がわかる

傷害事件の示談金額は、被害者が実際に受けた損害額をベースに決めるのが適切です。

しかし、被害者においてどの程度の損害が生じたのかを、加害者側が正確に把握するのは難しいでしょう。

弁護士に相談すれば、傷害事件が起きた際の状況に応じて、加害者が支払うべき示談金額の適正水準をおおむね把握できます。

弁護士の助言を受けたうえで示談交渉に臨めば、適正額による示談が成立する可能性が高まります。

身柄拘束中でも示談交渉を進められる

傷害事件の加害者は、警察によって逮捕・勾留されるケースが多いです。

逮捕・勾留によって身柄を拘束されている状態では、被害者との示談交渉を自らおこなうことはできません。

しかし弁護士に依頼すれば、身柄を拘束された状態でも、被害者との示談交渉を進めることができます。

傷害事件に関する重い刑事処分を回避するためには、早期に被害者との示談を成立させることが重要です。

できる限り早い段階で弁護士に相談し、示談交渉を速やかに進めてもらうよう依頼しましょう。

被害者側の反発を緩和できる可能性がある

傷害事件の被害者は、その被害感情の強さゆえに、加害者本人から示談の申入れがあっても反発して応じないケースが多いです。

被害者が示談に強く反発しているケースでは、加害者側は弁護士を代理人に立てるのがよいでしょう。

加害者本人ではなく弁護士が示談交渉に当たれば、被害者側の反発を幾分緩和できる可能性があります。

さいごに

傷害事件の加害者は、被害者に対して慰謝料その他の損害賠償を支払わなければなりません。

被害者の怪我の状況によっては、非常に高額の損害賠償責任を負う可能性があるので注意が必要です。

傷害事件に関して重い刑事処分を回避するには、被害者との間で早期に示談を成立させることが非常に重要です。

被害者の怪我が軽症であれば、示談の成立および被害弁償がなされたことを考慮して、被疑者が不起訴となる可能性も出てきます。

仮に起訴されたとしても、被害者との示談が成立していれば執行猶予付き判決が言い渡され、実刑判決による刑務所への収監を回避できることがあります。

被害者との示談を早期に成立させるためには、刑事弁護を得意とする弁護士に示談交渉を依頼しましょう。

「ベンナビ刑事事件」には、刑事弁護を得意とする弁護士が多数登録されており、相談内容や地域に応じてスムーズに弁護士を検索できます。

ご自身やご家族が傷害事件を起こしてしまった場合には、「ベンナビ刑事事件」を通じて速やかに弁護士へご相談ください。

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部 由羅 (埼玉弁護士会)
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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