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逃走罪の改正内容をわかりやすく解説!2023年の改正で何がどう変わった?

藤垣 圭介
監修記事
逃走罪の改正内容をわかりやすく解説!2023年の改正で何がどう変わった?

2023年5月、逃走罪に関する法改正がおこなわれ、これまでとは大きく異なる罰則や対策が導入されました。

この改正は社会的に大きな注目を集めていますが、実際どのような内容なのか、詳細を把握している方は少ないかもしれません。

そこで本記事では、逃走罪に関する法改正の変更点を解説します。

逃走罪の基本的な知識から具体的な改正ポイントをわかりやすくまとめているので、参考にしてみてください。

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逃走罪は2023年における刑事訴訟法等の一部改正でどう変わった?わかりやすく解説

2023年5月に「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立しました。

具体的には「逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張等」と「刑の時効の停止に関する規定の整備」がおこなわれています。

まずは、改正の具体的内容を理解するために基本的な知識を押さえ、そのうえで主要な変更点について詳しく解説します。

変更点を把握する前におさえておくべき知識

逃走罪について理解するためには、まずその種類と内容を知っておく必要があります。

刑法上、逃走に関連する罪には以下の5種類があります。

  • (単純)逃走罪
  • 加重逃走罪
  • 被拘禁者奪取罪
  • 逃走援助罪
  • 看守者逃走援助罪

今回の法改正で主な変更が加えられたのは「単純逃走罪」と「加重逃走罪」です。

以下ではこの2つの罪について詳しく解説します。

単純逃走罪とは?|一般的な逃走罪

単純逃走罪は、多くの方が想定するであろう一般的な逃走罪であり、刑法第97条より「法令により拘禁された者が逃走すること」で成立する犯罪です。

法令により拘禁された者とは、主に以下のような人物を指します。

  • 逮捕後、刑事施設などに収容される前の人
  • 勾留されている人
  • 勾引状の執行を受けた証人
  • 確定判決により刑務所に収容されている人 

単純逃走罪が成立した場合の法定刑は「3年以下の懲役」です。

ほかの刑法犯と比較すると軽い刑ですが、実際は逃走する際や逃走したあとにさまざまな罪を犯しているケースが多く、最終的な刑罰は重くなる傾向にあります。

加重逃走罪とは?|単純逃走罪より悪質な場合に成立

加重逃走罪は、法令によって拘禁された者が悪質な手段を用いて逃走した場合に成立する犯罪です。

具体的には、以下のような条件を満たしている場合が該当します。

  • 拘禁されている場所の器具や拘束具の損壊がみられること
  • 暴行もしくは脅迫を用いていること
  • 二人以上が共謀していること

加重逃走罪の刑罰は「3月以上5年以下の懲役」です。

単純逃走罪よりも悪質性が高い分、刑罰の内容も重く規定されています。

単純逃走罪と加重逃走罪の違い

単純逃走罪と加重逃走罪の主な違いは以下のとおりです。

項目

単純逃走罪

加重逃走罪

成立要件

法令により拘禁された者が逃走すること

法令により拘禁された者が器具・拘束具の損壊、暴行・脅迫、共謀のいずれかをともなって逃走すること

法定刑

3年以下の懲役

3ヵ月以上5年以下の懲役

単純逃走罪は、単に拘禁状態から逃走した場合に成立する基本的な罪です。

一方、加重逃走罪は悪質な手段を用いた場合に適用される、より重い罪となっています。

そのほかにもある逃走罪の種類

逃走罪には、単純逃走罪と加重逃走罪以外にも、以下のような関連する犯罪があります。

罪名

内容

法定刑

被拘禁者奪取罪

拘禁されている人を看守の実力支配から離脱させ、自己・第三者の実力支配化に置くこと

3ヵ月以上5年以下の懲役

逃走援助罪

拘禁されている人の逃走を援助すること

・器具の提供などで逃走を容易にした場合:3年以下の懲役

・看守者への暴行・脅迫などをおこなった場合:3ヵ月以上5年以下の懲役

看守者逃走援助罪

看守・護送する者が拘禁されている人の逃走を援助すること

1年以上10年以下の懲役

上記の罪は、直接逃走する人ではなく、逃走を手助けする側に適用される罪です。

ですが、2023年5月の法改正で逃走罪の主体が拡大されたことに伴い、間接的に適用範囲が拡大しています。

逃走罪にかかわる2つの変更点

2023年の刑法改正では、逃走罪に関連して2つの重要な変更がおこなわれました。

  • 逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張
  • 法定刑の引き上げ

2つの変更点について詳しくみていきましょう。

単純逃走罪・加重逃走罪の主体が拡張された

2023年5月の法改正では、単純逃走罪・加重逃走罪の主体が「裁判の執行により拘禁された既決または未決の者」から「法令により拘禁された者」に拡張されました。

具体的な変更点は以下のとおりです。

 

法改正前

法改正後

単純逃走罪

加重逃走罪

単純逃走罪

加重逃走罪

・確定判決で刑事施設などに収容された者

・刑事施設などに勾留されている者

・逮捕後、刑事施設などに収容される前の者

・勾引状の執行を受けた証人

×

・現行犯逮捕後、勾留される前の者

・令状未発付で緊急逮捕された者

・少年院に収容中の者

×

×

たとえば、これまでは逮捕されて、パトカーに乗る前に逃走した加害者に対しては、単純逃走罪を適用することができませんでした。

しかし、法改正以降、法律に従って身柄を拘束された者は、原則として逃走罪の適用対象になっています。

法定刑が引き上げられた

単純逃走罪の法定刑が引き上げられたことも、法改正による大きな変更点です。

具体的には「1年以下の懲役」から「3年以下の懲役」に変更されました。

なお、懲役の最長刑期が延びたことにより、単純逃走罪は逮捕状なしでも逮捕できる「緊急逮捕」の対象になっています。

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逃走罪の改正は結局いつから?

逃走罪に関する刑法改正を含む「刑法等の一部を改正する法律」は2023年5月10日に成立し、同年5月17日に公布されました。

そして、2023年6月6日に施行されこの日から逃走罪の主体拡張に関する新たな規定が適用されるようになりました。

なお、「成立」とは法律案が国会で承認されたことを意味し、「公布」はその法律が一般に告知されることを指します。

最後に「施行」は、法律が実際に効力を持ち、適用される日です。

逃走罪に関わる刑法の改正点 | 刑の時効の停止に関する規定が新設された

2023年5月の法改正では、刑の時効に関する規定が新設されました。

刑の時効とは、確定した刑の執行がない状態で一定期間経過すると、刑を執行できなくなる制度です。

本制度を悪用すると、刑の言い渡しを受けたあとで国外逃亡し、身を潜めていれば、刑の執行を逃れることも理論上は可能でした。

そこで、「刑の言渡しを受けた者が国外にいる間は刑の時効が進行しない」ことが刑法の条文に追加されたのです。

逃走罪に関わる刑事訴訟法の改正点|保釈中の被告にGPS端末の装着命令が可能に

逃走罪の改正と同時におこなわれた刑事訴訟法の改正では、裁判所が保釈の条件として被告人にGPS端末の装着を命じることができる制度が新たに導入されました。

GPS装着命令の対象になるのは、海外に拠点を持つ企業の幹部など、国外逃亡のおそれがある被告人です。

被告人が立入禁止区域に入ったり、GPS端末を外したりした場合は1年以下の拘禁刑に処されます。

なお、逃走のリスクを抑えるための措置として、公判に出頭しない場合に成立する「不出頭罪」や、指定された住所を一定期間離れた場合に成立する「制限住居離脱罪」も新設されました。

さいごに|逮捕を回避するなら弁護士へ相談を

逃走罪の対象拡大、刑の時効停止に関する規定の新設など、一連の法改正により逃走に対する法的措置が大幅に強化されています。

また、保釈中の被告人への監視も強化され、逃亡のリスクは著しく高まっています。

しかし、犯罪を犯した場合でも、逮捕を回避できれば逃走が頭をよぎることもないでしょう。

そのため、逮捕されるおそれがあるのなら、一刻も早く弁護士に相談してください。

刑事事件が得意な弁護士であれば、適切な法的アドバイスを提供し、不必要な逮捕や勾留を回避する手助けをしてくれるはずです。

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この記事の監修者
藤垣 圭介 (埼玉弁護士会)
これまで500件以上の刑事事件に携わり、特に痴漢/盗撮/暴行/傷害に関する事件の解決を得意とする。レスポンスの早さにこだわりをもって対応し、豊富な経験をもとに即日接見を用いて、早期釈放を目指している。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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