執行猶予期間中でも海外に行ける?渡航の可能性と必要な準備をわかりやすく解説

- 「執行猶予期間中だけど、海外旅行に行きたい……」
- 「執行猶予期間中に海外に行くにはどうしたらいいの?」
過去に刑事事件で起訴されて執行猶予期間中の方のなかには、このような悩みを抱えている方も多いでしょう。
実は、執行猶予期間中でも海外渡航が可能な場合があります。
本記事では、執行猶予期間中でも海外渡航が可能なケースや、海外に行くための具体的な手順、注意点について詳しく解説します。
パスポートの取得方法から、渡航先に応じたビザの必要性、さらには専門家への相談方法まで、詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
執行猶予期間中でも海外渡航は可能な場合がある!
執行猶予期間中の日常生活における制限はごく一部に留まり、基本的には事件前と同様の生活を送ることが可能です。
海外渡航も全面的に禁止されているわけではないので、執行猶予期間中であっても海外旅行に行くことは不可能ではありません。
特に、すでに有効なパスポートを所持している場合は、大きな問題なく海外に渡航できるケースも多いでしょう。
執行猶予期間中に海外渡航をするための大まかな手順
執行猶予期間中に海外渡航をするためには、下記の手順が必要です。
1.パスポートがない場合は取得する
海外に渡航するためには、執行猶予期間中であるかどうかに関わらずパスポートが必要です。
そのため、パスポートがない場合には、取得手続きからはじめなければなりません。
ただし、執行猶予期間中に新たにパスポートを申請する場合、通常とは異なる特別な審査が必要です。
また、旅券法第13条1項3号は、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」に対して、パスポートの発給を拒否できると定めています。
執行猶予付き判決を受けた場合もこれに該当するため、パスポートの発給が拒否される可能性があるのです。
なお、執行猶予期間中にパスポートを申請する際には、通常の申請書類に加えて、各都道府県の申請窓口に備え付けの「渡航事情説明書」に所定事項を記入し提出する必要があります。
加えて、執行猶予中であることを証明するために、判決謄本1通をあらかじめ用意しなければなりません。
申請書の刑罰等関係欄には、執行猶予中である旨を正直に申告することが重要です。
虚偽の申告をした場合、旅券法違反として処罰されるおそれがあります。
2.渡航先によってはビザを取得する
有効なパスポートを取得できたとしても、渡航先によっては別途ビザが必要となる場合があります。
執行猶予期間中の人がビザを申請する場合は、渡航先の国の入国審査基準によってビザが下りない可能性があることも覚えておきましょう。
なお、日本のパスポートの場合、観光などの短期滞在であれば、多くの国でビザが免除されていますが、犯罪歴がある場合はこの限りではありません。
例えば、アメリカのビザ免除プログラムである、ESTAは、執行猶予期間中に利用することはできず、別途ビザを取得する必要があります。
そのほかの国についても、執行猶予期間中のビザの扱いは国によって異なるので、渡航前に必ず確認しておきましょう。
執行猶予期間中に海外渡航できるか心配なときの対処法
ここでは、執行猶予期間中に海外渡航できるか心配なときの対処法を紹介します。
1.旅行代理店などに相談する
執行猶予期間中の海外渡航について不安がある場合、まずは旅行代理店に相談してみるのもひとつの方法です。
旅行代理店は、一般的な海外渡航に関する情報を持っているだけでなく、過去の事例や各国の入国事情に詳しい場合があります。
そのため、渡航先の国への入国が可能かどうか、どのような手続きが必要かなど、基本的な情報を得られるでしょう。
また、旅行代理店によっては、パスポート申請の代行手続きをおこなってくれる場合もあります。
ただし、旅行代理店は法的な専門知識を持っているわけではないため、より詳細な情報や個別の状況に応じたアドバイスが必要な場合は、大使館や領事館、あるいは弁護士に相談するのが確実です。
2.大使館や領事館に問い合わせる
渡航を希望する国の大使館や領事館は、執行猶予期間中の海外渡航に関する問い合わせに対応しています。
各国の大使館や領事館であれば、その国の入国管理に関する最新の規定や運用について正確な情報を提供してくれるでしょう。
また、自身が受けた判決や犯罪類型をもとに、入国が許可される可能性についても過去の事例などを踏まえてアドバイスを受けられる場合があります。
海外渡航に関して疑問があれば、渡航先の国の大使館・総領事館に相談してみましょう。
執行猶予期間中に海外渡航をする場合の3つの注意点
執行猶予期間中に海外渡航をする場合には、以下の3点に注意しましょう。
1.パスポートを取得できない可能性がある
執行猶予期間中の場合、パスポートの取得自体が拒否される可能性があります。
旅券法第13条1項3号では、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの者は、パスポートの発給または渡航先の追加を拒否すると定めています。
執行猶予付き判決もこれに含まれるため、パスポートの申請が認められない可能性があるでしょう。
また、渡航しようとする国が前科のある者の入国を一切認めない場合も、パスポートの発給が制限されます。
2.電子渡航認証によって拒否される可能性がある
日本のパスポートは多くの国でビザ免除対象となっているため、渡航先によってはESTA(米国電子渡航認証システム)のような電子渡航認証システムによって事前申請をおこなうことになるでしょう。
しかし、執行猶予期間中の人がこれらのシステムを利用する場合、犯罪歴に関する質問に正直に回答する必要があります。
その結果、渡航許可が下りない可能性もあるでしょう。
なお、虚偽の回答をした場合、認証が取り消され、将来的にその国への渡航が困難になる可能性があるので注意してください。
たとえESTAが認証されたとしても、入国審査時に犯罪歴が判明した場合、入国を拒否される可能性が高いです。
3.犯罪の内容によってはビザを取得できないこともある
執行猶予の原因となった犯罪の種類や内容によっては、渡航先のビザを取得できないことがあります。
アメリカでは、不道徳犯罪(CIMT)に該当する犯罪で有罪判決を受けた場合、執行猶予期間中はもちろん、満了後もビザの取得は困難です。
また、就労ビザなど特定の種類のビザを申請する際には、無犯罪証明書の提出が求められることがありますが、執行猶予期間中は無犯罪証明書が発行されないため、ビザの取得に影響が出る可能性があるでしょう。
さいごに|執行猶予期間中でも海外渡航ができる可能性はある!
執行猶予期間中であっても、海外渡航の道が完全に閉ざされているわけではありません。
しかし、パスポートの申請や渡航先の国の入国審査においては、通常よりも慎重な対応が求められることを理解しておきましょう。
パスポートの新規申請には、追加の書類や審査期間が必要となる可能性があり、場合によっては発給が拒否されることもあります。
また、渡航先の国によっては、ビザの取得が必須であり、犯罪の種類や内容によってはビザが発給されないこともあるでしょう。
執行猶予期間中に海外渡航を検討する際には、まず自身の状況を正確に把握し、渡航先の国の入国規定を十分に確認することが重要です。
旅行代理店や大使館・領事館などの専門機関に早めに相談し、適切なアドバイスを受けるのがよいでしょう。



【早期釈放/不起訴実績多数】加害者側・被害者側双方で、示談交渉対応多数◆痴漢・盗撮/暴行傷害/事故/窃盗など迷う前に電話◆早めの相談で選択肢を広げることが可能◎◆【即日接見で安心をお届け】
事務所詳細を見る
痴漢・盗撮・不同意性交などの性犯罪/万引き/暴行など幅広い事案に対応可能です。被害者の方との示談交渉についてもぜひお任せください。まずはご連絡をお待ちしております。【初回相談0円】
事務所詳細を見る
【初回面談1時間1万円】【早期釈放】【示談交渉】【刑事事件の解決実績多数】家族が逮捕されてしまった/警察から取調べ・呼び出しを受けたなど、手遅れになる前に今すぐご相談を!《料金表・解決事例は写真をクリック》
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡



刑事事件の基礎知識に関する新着コラム
-
道路交通法違反の時効と刑事罰に関する完全ガイドです。スピード違反から飲酒運転、あおり運転まで、各交通違反行為に適用される公訴時効を解説します。違反種...
-
犯罪歴があると、その内容次第ではパスポートの発給制限を受ける可能性があります。 本記事では、犯罪歴が原因でパスポートが発給されない具体的な状況、犯...
-
執行猶予中の海外渡航は、条件付きで可能です。パスポートの有無で手続きが異なり、新規申請は審査が厳しく時間がかかる場合もあります。パスポート取得の難し...
-
本記事では、特定少年とは何かや17歳以下や成人とどのように扱いが異なるか、特定少年には懲役や死刑の判決がでる可能性があるかをわかりやすく解説していま...
-
防犯カメラの映像が決定的な証拠になる可能性がありますが、逮捕に繋がるかは状況次第です。防犯カメラの映像が与える影響や逮捕されるケースを理解しておきま...
-
本記事では、未成年飲酒における警察の対応や未成年飲酒で問われる犯罪、学校や会社に生じる悪影響などについてわかりやすく解説します。
-
無免許運転で逮捕された高校生は、長期間の身体拘束や退学処分を受ける可能性があります。早期の身柄解放や退学処分の回避、家庭裁判所・学校と連携を図るため...
-
迷惑防止条例では、痴漢や盗撮のような明確な性犯罪行為に加えて、卑猥な言動を処罰対象にしていることが多いです。本記事では、迷惑防止条例に規定される卑猥...
-
本記事では、立ちションと罰金の関係が気になる方に向けて、立ちションだけなら罰金になる可能性はないこと、立ちションと一緒に成立する可能性がある犯罪4選...
-
本記事では、心神喪失状態で起こした事件について、なぜ無罪になるのかについて詳しく解説します。 また、心神喪失で無罪になったあとの手続きの流れや、心...
刑事事件の基礎知識に関する人気コラム
-
逮捕されて有罪になると前科が付きますが、前歴というものもあり、こちらは逮捕されただけで付きます。前科は間逃れても前歴が残ると今後の生活にどう支障がで...
-
犯罪事件捜査の対象になった場合、刑事手続きはスピーディに進行します。早期に刑事手続きから解放されるためには、初動の段階から迅速な対応をとることが肝心...
-
本記事では私人逮捕の条件や私人逮捕によるトラブルの対処法を解説します。
-
【弁護士監修】書類送検を徹底解説!書類送検とは被疑者を逮捕せず、書類のみ(証拠を含む)を検察官に送る手続きです。この記事では、そもそも送検とはどうい...
-
少年院(しょうねんいん)とは、家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容するための施設を言います。
-
鑑別所とは、正式には「少年鑑別所」と呼ばれる施設で、家庭裁判所の少年審判をおこなうにあたって、犯罪を犯した未成年の少年を一時的に収容する場所です。本...
-
観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
-
この記事では親告罪と何か、親告罪に該当する罪を解説したあと、告訴されたときの対処法について紹介しています。親告罪を犯してしまって告訴される可能性があ...
-
刑事裁判と言っても、事件内容によって方法が少し異なります。この記事では刑事裁判の種類や流れの他に、民事裁判との違いやよくある質問(裁判員制度について...
-
在宅起訴とは、刑事事件を起こした被疑者の身柄を拘束しないまま検察官が起訴することをいいます。逮捕を受けないまま起訴されるため日常生活に与える影響は少...
刑事事件の基礎知識の関連コラム
-
本記事では、廃棄物処理法違反について知りたい方向けに、廃棄物処理法違反に該当する代表的な行為、一般人・事業者それぞれの廃棄物処理法違反を防止するポイ...
-
任意同行(にんいどうこう)とは、犯罪容疑のある人物が警察などの捜査期間から任意的に捜査に同行してもらうことです。
-
名誉毀損の可能性がある行為をしてしまったら、刑法第230条を理解することが非常に重要です。 本記事では、刑法第230条について、どのようなときに名...
-
もしも自分や家族が刑事告訴され、警察から連絡があったら、逮捕後の流れや、各段階でやるべきことを確認しておく必要があります。本記事を参考に、早めに弁護...
-
鑑別所とは、正式には「少年鑑別所」と呼ばれる施設で、家庭裁判所の少年審判をおこなうにあたって、犯罪を犯した未成年の少年を一時的に収容する場所です。本...
-
逮捕されて有罪になると前科が付きますが、前歴というものもあり、こちらは逮捕されただけで付きます。前科は間逃れても前歴が残ると今後の生活にどう支障がで...
-
道路交通法違反の時効と刑事罰に関する完全ガイドです。スピード違反から飲酒運転、あおり運転まで、各交通違反行為に適用される公訴時効を解説します。違反種...
-
実名報道(じつめいほうどう)とは、マスメディアの報道において関係者の実名を明示することを言います。今回は、実名報道の問題点や、実名報道されてしまった...
-
出頭に関する知識として、自首との違いや正しい使い方、出頭するメリットデメリットについてご紹介します。
-
本記事では、YouTube違法アップロードに関する逮捕事例などを交えながら、問われる罪や視聴者側の対処法などを解説します。
-
刑事事件での身元引受人(みもとひきうけにん)とは、逮捕によって身柄を拘束された被疑者(被告人)の監督を行なう人の事を言います。
-
略式命令は簡易な刑事裁判手続です。100万円以下の罰金刑である犯罪で、被疑者の同意がある場合に選択されます。この記事では略式命令の概要や、略式命令に...
刑事事件の基礎知識コラム一覧へ戻る