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名誉毀損で逮捕されるケース|刑事と民事の名誉毀損の違いと対処法

ご家族が名誉毀損で逮捕された場合の対処法とは?

名誉毀損では、被害者との示談交渉が有効です。

当事者同士で交渉を進めることは難しいですが、弁護士が代理人として間に入ることで円滑に交渉が進むでしょう。

ご家族が名誉毀損で逮捕されたり、民事事件として訴えられたりした場合には、法的知識を有する弁護士に相談することをおすすめします。

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名誉毀損(めいよきそん)とは、公然と事実を適示して、他人の名誉を傷つけ社会的評価を低下させる不法行為や犯罪のことです。

たとえば「採用したばかりの営業が会社の金を不正利用しようとしている」など、名指しではないにせよ、その表現から名誉を害された人が特定できるようであれば、名誉毀損に該当する可能性があります。

一方で、「バカ、アホ、死ね、役立たず」など、事実を適示せずに、いわゆる悪口で他者を侮辱した場合は、名誉毀損ではなく侮辱罪に該当する可能性があります。

「公然」とは、不特定または多数人が認識できる状態のことで、少人数であっても不特定ならば公然となります。

名誉毀損には民事事件としての名誉毀損と、刑事事件としての名誉毀損罪がありますが、いずれにしても人格を否定するという点においては共通しています。

本記事では、名誉毀損が成立する条件、名誉毀損が成立する具体例、トラブルに発展した時の対処法について解説します。

名誉毀損の定義とは?

冒頭でもお伝えしましたが、名誉毀損とは公然と事実を適示して、他人の名誉を傷つけ社会的評価を低下させる不法行為や犯罪のことを言います。

簡単に言うと、公の場で他人の名誉を壊したり傷つけたりすることですが、ひとえに名誉と言っても、様々な意味合いがあります。

 

概要

内部的名誉

その人の真価

人知れず善いおこないをしているなど

外部的名誉

その人の社会的地位や評判、事実

真面目な生活を送っているなど

名誉感情

その人が自分に対して持っている価値観など

プライド、自尊心

たとえば「〇〇さんには多額の借金があり、それが原因で奥さんと別れた」などと公の場所で述べれば、名誉毀損に問われる可能性があります。

一方で、「バカ」「クズ」といったような悪口や、「あの店はマズイ」という意見などを述べた場合、侮辱罪に問われることはあっても名誉毀損罪は成立しないでしょう。

つまり、事実とは言えない意見を述べたかどうかが判断基準になります。

実際に社会的評価が下がったかどうかは、名誉毀損罪の成立に関して考慮されません。

また、名誉毀損には免責規定があり、実際に他人の名誉を毀損しても、以下の条件を満たしていれば正当化されることがあります。

【名誉毀損が成立しないケース】
公共の利害に関する事実を述べている このまま世間に公表しなければ公共に対して利害が生じるような場合は名誉毀損罪は成立しません。
交益を図る目的で述べている 政治家の資質を問うためにスキャンダルを報じたり、会社の不正を暴露するために内部告発をするような場合は名誉毀損罪は成立しません。
述べた事実が真実であると証明できる 述べたことが事実であり、それが証明できる場合は名誉毀損罪は成立しません。

民事事件での名誉毀損と刑事事件での名誉毀損がある

名誉毀損と一口に言っても、民事上の責任を負うケースと刑事上の責任を負うケースがあります。

  1. 「民事事件」としての名誉毀損
  2. 「刑事事件」としての名誉毀損

結論からいうと被害者が

  • 「裁判所に訴えてやる!(訴訟)」となれば民事事件になる
  • 「警察に訴えてやる!(告訴)」となれば刑事事件になる

しかし、最終的に賠償責任や刑事罰の判決を下すのは裁判所になります。

民事事件と刑事事件では以下のような基準で判断されます。

  刑事事件 民事事件
事実の摘示 事実を提示し、社会的評価を低下させる危険性を生じさせた場合名誉毀損罪が成立 事実の提示だけではなく、人身攻撃に及ぶなどの意見・論評の域を逸脱したものは名誉毀損による不法行為が成立する
意見や論評 事実の摘示以外で社会的評価を低下させた場合は侮辱罪が成立
名誉感情の侵害 社会的評価の低下が無ければ、名誉毀損罪も侮辱罪も成立しない 民事上の名誉毀損は外部的名誉のみ。名誉感情の侵害は名誉毀損とはならない。ただ、名誉感情の侵害として不法行為が成立することがある
故意・過失 故意の場合のみ名誉毀損罪が成立 過失であっても不法行為として成立する
公然性 公然におこなわれていないと成立しない 公然性は要件とはなっていないものの、社会的評価を低下させていることが要件となるため、公然とおこなわれていなければ、名誉毀損として成立する可能性は低い

名誉毀損というと、日常でも起こりやすそうな犯罪のイメージがあります。

しかし、実際に名誉毀損罪として受理されている人数は、下図のように年間1,000名を満たしていません。

実際に名誉毀損がおこなわれても刑事事件にまで発展せず、民事事件として争われることが多いと考えられます。

原告(被害者)も、「相手を罰したい」という感情よりも「名誉毀損による損失を弁償してほしい」ということが強いからです。

民事事件の名誉毀損について

名誉毀損での慰謝料相場は100万円以下だと言われていますが、状況によります。

極端な話、名誉毀損によって著しく社会からの信用を失い、その会社が破産にまで追い込まれてしまい、そのことが名誉毀損との関連性が認められると、慰謝料も非常に高額になります。

もしも名誉毀損で相手とトラブルになり訴訟されそうになっているのであれば、早い段階から誠意をもって謝罪することが一番だと考えられます。

名誉毀損に該当する内容を早急に削除したり、場合によっては示談金で解決を図ることも考えてください。

しかし、お互いに感情的になることも考えられますし、足元を見られて高額な示談金にしか応じないというような事態にもなりかねません。

対処法として、早い段階で弁護士への相談を心掛けてください。

刑事事件の名誉毀損について

逮捕された場合、刑事事件に発展することになります。

さらに名誉毀損罪は親告罪となっています。

親告罪とは、被害者からの告訴が無ければ、刑事手続きを進められない罪を言います。

名誉毀損罪については刑法230条1条に表記されており、罰則は【3年以下の懲役/禁錮/50万円以下の罰金】と、意外と重い罰則が設けられています。

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

引用元:刑法第230条

名誉毀損罪で逮捕されかねない誹謗中傷行為の例

ここでは、具体的にどのような誹謗中傷行為が刑法の名誉毀損罪にあたる可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。

インターネット上での悪口

誰でも閲覧可能なインターネット、SNSなどは公然の場と考えられています。

そのため、悪口や悪ふざけが拡散されるようなことがあれば、損害賠償問題や名誉毀損罪になることもあります。

また、口コミサイトへの事実無根の悪質な書き込みも名誉毀損罪に該当することがあります。

口コミサイトに掲載している側は、このようなマイナスな書き込みがされることもある程度は認識しているのでほとんど事件になるようなことはありませんが、たとえば同じユーザーが何度も同じところに悪い口コミを書いていたり、事実を拡大して悪い情報を流せば、後述する信用毀損に該当するケースもあります。

メディアの偏向報道

テレビや雑誌などのメディアによる誹謗中傷が賠償問題に発展するケースもあります。

特にニュースや週刊誌では、スキャンダルや不正をインパクト重視で誇大な演出をしたり、偏向報道したりするケースもあり、それが特定の人物や会社の社会的信用低下につながってしまうことがあります。

このように名誉毀損の対象は特定の個人だけではなく、会社や店などに対しても対象となります。

街宣活動による誹謗中傷

街宣活動で、誹謗中傷により特定の人物の社会的信用を低下させたのであれば、名誉毀損罪に該当するでしょう。

事実、不当解雇の裁判を起こした従業員が敗訴になり、その後も会社の周りで街宣活動をおこない会社の信用を低下させたとして名誉毀損になった例があります。

労組の解雇撤回闘争に伴う街頭宣伝活動が解雇有効の判決確定後も継続したため、会社、経営者が当該行為の差止めと不法行為による損害賠償を請求したもので、一審東京地裁は、会社の入居するビルや経営者の自宅近辺での抗議活動を禁止し損害賠償も容認したため、解雇労働者や労組が控訴した。東京高裁は大筋で原審の判断を支持し、控訴を棄却した。

引用元:労働新聞社

死者への冒涜

死者への冒涜による名誉毀損は、適示した事実が虚偽である場合に限り罰せられます。

また、その発言によって遺族の方などの社会的評価が低下する危険が生じれば、名誉毀損罪で訴えられ、逮捕される可能性もあります。

ただし、亡くなった方に対して「この人は生前女性関係にだらしなかった」と言っても、その内容が虚偽でなければ名誉毀損罪にはなりません。

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名誉毀損罪で逮捕された場合の刑事手続きの流れ

お伝えしたように、名誉毀損罪として刑事事件に発展することは少ない傾向にあります。

被害者の方も「罰則を与えてくれ!」という感情よりも「失った信頼分の損害を弁償してくれ」ということが強い傾向があるためです。

とはいえ、被害者が告訴して逮捕されたケースも多々あります。

では実際に逮捕されるとどのような流れで刑事手続きがおこなわれるのでしょうか。

逮捕されてから警察の取調べ|逮捕後48時間以内

逮捕されると警察の取調べがおこなわれます。

これは、逮捕後48時間以内に終了しなければならないという決まりがあり、その間はたとえ家族の方であっても面会をすることができません。

検察への送検と捜査|送検から24時間以内

警察の取調べが終了すると、検察へと身柄が移されます。

このことを送検(送致)と言い、検察の捜査は送検から24時間以内と決まっています。

この24時間以内に捜査が終了しなければ、勾留請求がおこなわれ、裁判所が認めれば勾留されます。

勾留期間|最大20日間

勾留期間は原則的に10日間ですが、さらに期間が必要となれば勾留延長によってさらに最長10日間、合計20日の勾留期間が最長期間として設けてあります。

起訴・不起訴|逮捕後23日以内

逮捕後の警察の捜査(48時間)、検察の捜査(24時間)、勾留期間(20日間)の合計最大23日以内に検察により、起訴・不起訴の処分を受けることになります。

起訴されると99.9%は有罪になり、不起訴は事実上の無罪です。

刑事裁判|逮捕後1~2か月

起訴されると、逮捕から1~2か月後に刑事裁判がおこなわれます。

ここで有罪・無罪や刑罰の判決が下されます。

名誉毀損罪で逮捕された場合の対処法

名誉毀損罪で逮捕されることは少ないですし、よほど悪質な内容でなければ身柄拘束が長引くことも少ないのですが、名誉毀損罪で逮捕されてしまったのであれば以下の対処法が取れます。

  1. 被害者と示談をする
  2. 適切な対処法を弁護士に聞く

被害者と示談をする

被害者からの告訴を取り消してもらえば、捜査機関もこれ以上刑事事件として捜査することができなくなります。

そこで、名誉毀損罪では被害者との示談交渉が非常に効果的です。

示談とは、被害者と示談金などを用いて和解することです。

ただ、刑事事件となった場合、被害者との接触が禁止されることもありますので、弁護士に示談の仲介に入ってもらうことが一般的です。

適切な対処法を弁護士に聞く

名誉毀損罪は他の犯罪に比べると、非常に定義が難しい罪です。

初犯であればいきなり重い罰則を受けることは低いと考えられますが、状況によってどのような対処を取ればいいのかはかなり変わってきます。

ですので、もしも名誉毀損罪で逮捕されてしまったり、民事事件として訴えられてしまった場合は、必ず弁護士に相談し、具体的な状況を説明の上、的確なアドバイスを受けるようにして下さい。

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名誉毀損罪と関連する罪

名誉毀損罪には類似の罪がいくつかあります。

こちらでは、名誉毀損罪に関連してくる罪の違いと罰則について解説します。

  1. 侮辱罪
  2. 信用毀損及び業務妨害罪
  3. 脅迫罪
  4. 虚偽告訴罪

侮辱罪

度々登場していますが、名誉毀損罪に非常に近いものに侮辱罪があります。

侮辱罪は公然と他人を侮辱する犯罪で、罰則は【拘留/科料】となっており、罰則は非常に軽いものです。

侮辱とは、他人の人格を蔑視するようなことです。

たとえば、「お前はどうしよもないクズだ」と、具体的事実の適示ではなく意見等を述べることです。

名誉毀損罪との違いは、具体的事実の適示がない点にあります。

信用毀損及び業務妨害罪

信用毀損及び業務妨害罪は、相手の嘘の風説(噂等)を流し、信用を毀損させたり、業務に悪影響を与える行為です。

罰則は【3年以下の懲役/50万円以下の罰金】です。

たとえば、「A店で買ったパンにカビが生えていた」などと嘘の風説?を流し、A店の信用を毀損させる行為です。

こちらも名誉毀損罪と非常に似通った内容になりますが、信用を損ねたり業務に支障をきたす危険が生じれば、信用毀損罪又は業務妨害罪に該当することが多いです。

脅迫罪

脅迫罪は、相手の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を与えることを告知して脅すような犯罪行為です。

たとえば「お前の悪いおこないを世間にさらしてやる」などの名誉に対する脅し行為は脅迫罪になることがあります。

罰則は【2年以下の懲役/30万円以下の罰金】となっています。

虚偽告訴罪

虚偽告訴罪とは、相手に刑事処分を受けさせる目的で嘘の告訴をおこなった人物に対しての罰則です。

罰則は【3か月以上10年以下の懲役】と非常に重いものとなっています。

名誉毀損罪との違いは、逮捕させるつもりで告訴をしたかどうかです。

さいごに

名誉毀損刑事事件と民事事件の両方があります。主に言葉のみで信用を傷つける行為になりますので、法律でもきちんと判断しにくい部分もあります。

名誉毀損でお困りでしたら、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
小野塚 直毅 弁護士 (埼玉弁護士会所属)
事務所を開設25年以上、埼玉県を中心に刑事事件を扱う特別チームが迅速に対応。的確な弁護活動で、依頼者の利益のために最善を尽くす。話をよく聞き、丁寧な説明を心掛けている。無罪獲得実績もあり。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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