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公開日:2017.8.1  更新日:2021.2.8

危険運転致死傷罪に当てはまるケースと逮捕された後の流れ

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この記事を監修した弁護士
梅澤康二 弁護士

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

危険運転致死傷罪(きけんうんてんちししょうざい)とは、著しいスピード超過、飲酒酩酊、無免許というように自動車を制御できない危険な運転により相手を死傷させた場合に適用される罪です。法定刑は【被害者が負傷:15年以下の懲役】【被害者が死亡:1年以上の有期懲役】と非常に重い罰則が設けられています。

平成27年版 犯罪白書」によると、自動車運転過失致死傷等での検挙人数は56万6,976人に対し、危険運転致死傷罪での検挙人数はわずか463人です。確かに検挙人数は少ないかもしれませんが、重大な犯罪であることには変わりありません。

この記事では、どのようなケースで危険運転致死傷罪に問われるのか?もしも危険運転致死傷罪で逮捕された場合どのようになるのか?といったことについて解説します。

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この記事に記載の情報は2021年02月08日時点のものです

危険運転致死傷罪とは|罰則の重さと罪の要件

それでは早速、危険運転致死傷罪がどのような罪なのかを解説します。

危険運転致死傷罪の罰則

次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

冒頭でもお伝えしましたが、危険運転致死傷罪の罰則は被害者の状態によって罰則が変わります。

  • 負傷:15年以下の懲役
  • 死亡:1年以上の有期懲役

被害者が死亡した場合は1年以上の有期懲役(20年以下の懲役)、死亡しなくても法定刑は15年以下の懲役刑であり、罰則としては重い部類に含まれます。

危険運転致死傷罪に該当する6つのケース

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」には、危険運転致死傷罪に該当するケースとして6つのものが挙げられています。

①アルコールや薬物の影響で正常な運転ができない場合

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

飲酒運転 原因

 

冒頭でもお伝えしましたが、平成26年の危険運転致死傷罪での検挙者数は463人でした。その中の約26%である121人が飲酒等の影響による危険運転致死傷罪での検挙となっています。

また、昭和の時代と異なり、現在、飲酒運転に対する司法の目は極めて厳しいです。飲酒運転を理由に逮捕されることも十分あり得ます。「ちょっとくらい…」は通用しませんので、『飲んだら乗るな』を徹底してください。

②運転の制御が困難なほどの速度超過

二  その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

運転の制御ができなくなるほどの速度超過(いわゆるスピード違反)も危険運転致死傷罪に該当してきます。

死亡事故 発生件数

また、大幅なスピード違反は事故が起きた場合に相手を死傷させる可能性が極めて高く、周りの人だけでなく自分や同乗者の命の危険にまで晒されてしまいます。また、80kmや100km超といった大幅なスピード超過事案であれば、それのみで逮捕されることもあります。スピードの出し過ぎはくれぐれも控えましょう。

③運転の制御できる技能を持たないままの運転

三  その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

進行を制御できる技能を有しない。要するに無免許運転などのことですが、こちらも危険運転致死傷罪に該当するケースがあります。無免許とは、免許証を持っていない状態(免許不携帯)のことではなく、免許そのものを受けていなかったり、免許を受けていても取消しや停止により失効している場合のことを意味します。

④妨害目的のあおり運転行為

四  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

五 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為

六 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和三十二年法律第七十九号)第四条第一項に規定する道路をいう。)又は自動車専用道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十八条の四に規定する自動車専用道路をいう。)において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

近年問題となっているあおり運転を念頭に置いた規定です。相手の通行を妨害するために、相手に急接近したり、割り込んだり、幅寄せしたり、前後から煽るような行為をする場合を想定しています。

⑤信号無視など

七  赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

信号を無視し、著しいスピード超過で運転して死傷事故を起こした場合も危険運転致死傷罪に該当します。

⑥通行禁止道路の走行

八 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

引用:「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

通行禁止道路を危険な速度で走行して死傷事故を起こした場合、危険運転致死傷罪に該当する可能性があります。通行禁止道路としては例えば歩行者専用道路などがあげられます。

危険運転致死傷罪以外の交通事故に関する罪と罰則

危険運転致死傷罪以外にも自動車運転に関する犯罪は多くあります。冒頭でもお伝えしましたが、自動車運転過失致死傷等での検挙人数は56万6,976人に対し、危険運転致死傷罪での検挙人数はわずか463人です。

裏を返せば、危険運転致死傷罪で刑事手続きを受けていても、「「○○罪」の方が適しているのではないか」というような主張もすることができるのです。

過失運転致死傷罪

交通事故により被害者を死傷させた場合、まず過失運転致死傷罪に問われることが多いです。法定刑は【7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金】となっています。

危険運転致死傷罪の罰則よりもかなり軽いです。そのため、危険運転致死傷罪で逮捕された事例について、「○○の理由で過失運転致死傷罪の方が適切ではないか」という弁護活動がされることは、十分考えられます。

救護義務違反等

こちらは、事故後に現場にとどまらずに立ち去った場合の罰則です。交通事故を起こした当事者は、現場に留まって負傷者の救護や警察への通報をする義務があります。この義務に違反した場合は犯罪として立件される可能性があります。例えば、救護義務違反(いわゆる「ひき逃げ」)の法定刑は【10年以下の懲役及び100万円以下の罰金】報告義務違反の法定刑は【3か月以下の懲役及び5万円以下の罰金】です。

酒酔い運転・酒気帯び運転

常識ですが、飲酒運転も犯罪です。飲酒による影響により適用される罰則が異なります。

  • 酒酔い運転:【5年以下の懲役または100万円以下の罰金】
  • 酒気帯び運転:【3年以下の懲役または50万円以下の罰金】

飲酒運転について詳しくは以下のコラムもご覧ください。

無免許運転

これも常識ですが、無免許運転も犯罪です。法定刑は【3年以下の懲役または50万円以下の罰金】です。ちなみに、免許を携帯していなかった場合の免許証不携帯の罰則は5万円以下の罰金刑ですが、通常は刑事事件とならずに反則金で処理されることが多いです。

速度超過

厳密にいえば法定速度を1km/hでもオーバーしたら速度超過として罰則の対象になりますが、1kmオーバーで検挙される可能性はほぼありません。概ね15~20km以上の速度超過が謙虚対象となると思われますが、この場合でも行政上のペナルティを受けるに留まり、刑事事件となる可能性は低いでしょう。仮に悪質な速度超過として刑事事件で立件された場合の法定刑は【6か月以下の懲役または10万円以下の罰金】です。

なお、著しい速度超過によって死傷事故を引き起こした場合には、危険運転致死傷罪が適用される可能性があることは上記のとおりです。

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危険運転致傷罪で逮捕されたニュース

それでは、実際に危険運転致傷罪で逮捕されたニュースをいくつか実例として見ていきましょう。

6人負傷の事故|危険運転致傷罪は無罪

2015年に登校中の小学生の列に乗用車が突っ込み、児童6人が重軽傷を負った事件です。危険運転致傷罪で捜査が進められていましたが、危険運転致傷罪は無罪になり、別件で罪に問われていた傷害罪が成立し、30万円の罰金となりました。

検察は睡眠導入剤の検査反応が出たことが事故原因だと主張していましたが、「睡眠導入剤が原因とするには、合理的な疑いが排除できない」という判断が裁判長によってされました。

大阪・御堂筋の暴走事件|過失運転致傷罪で有罪

2014年に大阪・ミナミの御堂筋で低血糖症の意識障害の危険性を知りながら自動車を運転し暴走、3人に重軽傷を負わせた事件です。こちらも危険運転致傷罪が問われていましたが、判決は過失運転致傷罪による禁錮1年6か月、執行猶予3年というものでした。

危険運転致傷罪にならなかった理由としては、具体的な認識があったとは言えなかったからです。検察側は、事故直前に血糖値を上げる効果があるどら焼きやジュースを口にしていたので「認識があった」と主張していましたが、認められず過失運転致傷罪となりました。

このように、危険運転致死傷罪は裁判でも認められにくい傾向にあります。検察側は被告人の危険性の認識やアルコール・薬物などによる影響が大きいというような主張をして、弁護側と反論になることが多くあります。その結果裁判もたびたび控訴審、上告審と長引くこともあります。

危険運転致死傷罪で逮捕された後の流れと傾向

こちらでは、危険運転致死傷罪で逮捕された後の刑事事件の流れと傾向について解説します。

危険運転致死傷罪で逮捕された後の流れ

危険運転致死傷罪で逮捕された後の刑事事件の流れは、他の犯罪で逮捕された場合と変わりません。基本的に

と進められていきます。また、危険運転致死傷罪は重い罪であるため起訴後に保釈される可能性は一般的に低いでしょう。

危険運転致死傷罪は起訴率が非常に高い

交通事故 検察終局処理人員の処理区分別構成比

引用:「平成27年版 犯罪白書

上の図をご覧ください。犯罪白書によって報告された交通事故に関する事件の検察での処分内容の比率です。見てもわかるように危険運転致死傷罪で処理する場合の公判請求(起訴)の割合が83.3%と非常に高いです。

一方で、不起訴率は6.5%。これは一般事件での不起訴率47.6%と比べてみても非常に低いことがわかります。危険運転致死傷罪は、非常に重い罪であるため、刑事手続きが進められると起訴される可能性は非常に高いです。

起訴・不起訴については以下のコラムをご覧ください。

危険運転致死傷罪で逮捕された場合は弁護士にサポートしてもらうのがおすすめ

危険運転致死傷罪は非常に重い罪であり、被疑者・被告人となった場合には今後の人生に大きな影響が生じる可能性があります。そのため、刑事事件の被疑者・被告人としてどのように対応するべきかは、弁護人と相談しながら慎重に決めていくべきと思われます。

被疑者・被告人の立場からサポートを求めることができる弁護人には以下のような弁護人がいます。

弁護士の種類

特徴

私選弁護人

依頼者が費用を払って選任。契約にもよるが事件解決まで責任をもって注力してくれる。逮捕前でも依頼可能。

当番弁護士

逮捕後すぐに呼ぶことが可能。初回の接見(面会)は無料。弁護士側が了承する場合は、費用を払って私選弁護人として選任したり、勾留後に国選弁護人への切替をしてもらったりすることも可能。

国選弁護人

原則、起訴後の選任。刑事事件において私選弁護人を選任できない場合でも弁護人を付す制度。弁護士の基本的な活動範囲は私選弁護人と同じであるが、サービスの内容・質が異なる場合もある。

私選弁護人は依頼者が自分で弁護士を探して費用を払って依頼します。逮捕されていない状態でも依頼することができます。当サイトのようなポータルサイトなどで弁護士を探してみましょう。

逮捕後は『当番弁護士』に無料で面会してもらう制度がありますし、勾留後は『国選弁護人』などの無料で弁護人を選任してもらう制度があります。繰り返しますが、危険運転致死傷罪は重大事件であるため、弁護人のサポートは必須です。弁護人のサポートは多種多様ですが、例えば以下のような弁護活動があり得ます。

危険運転致死傷罪に該当しないことを主張してもらう

危険運転致死傷罪は、法定の構成要件をすべて満たす場合に限り成立します。そのため、同罪の構成要件を充足しないため、同罪が成立しないという弁護活動が考えられます。この場合は、法的な知識・経験を踏まえた戦略が必要となりますので、弁護人のサポートは必須です。

被害者側との示談交渉をしてもらう

危険運転致死傷罪は被害者がいる事件であり、被害者側と示談交渉によって和解することもあり得ます。このような和解が成立している場合、当事者間では事件が解決しているとして、刑事事件の被疑者・被告人の処遇に影響することもあります。

危険運転致死傷罪の場合、被疑者・被告人は基本的に身柄を拘束されていますし、被害者の身元がそもそも分からないことも多いです。そのため、同罪について示談交渉を進めたいという場合も弁護人のサポートは必須でしょう。

まとめ

危険運転致死傷罪は検挙件数も少ない犯罪ではありますが、犯罪としては重い部類に入ります。他方、成立要件はかなり厳格に定められており、同罪が成立するか微妙なケースも多々あります。万が一自身が同罪の被疑者・被告人となったという場合は、弁護人のサポートを受けながら適切に対応するべきでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
編集部

本記事は刑事事件弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※刑事事件弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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