転売で逮捕されるって本当?違法行為について事例付きで解説
『メルカリ』などのフリマアプリの登場により、個人間でも不用品等の売買がしやすくなりました。それに伴い、転売によって本業以外の稼ぎを得ている人も出てきていますし、転売を主な収入にした自営業者も増えています。
あまり良い印象を持たれないことも多い転売行為ですが、先にお伝えすると転売そのものは違法ではありません。しかし、販売方法や価格、仕入れ方法、商品の内容などによっては、転売行為が違法となり逮捕されることもあり得ます。
この記事では、どのような転売行為が逮捕になり得るのか、具体的な違法行為の内容や例を交えながら解説します。すでに転売している人は、違法行為にならないようにしっかりルールを守って転売してください。
また、転売で逮捕された場合の罰則、逮捕後の傾向、対処法についてもお伝えします。特に警察から捜査を受けている・すでに逮捕されている方は最後までお読みいただくことをおすすめします。
転売自体は違法ではなく逮捕もされない
転売に対して悪い印象を持っている人も多いですが、転売行為そのもので逮捕されることはありません。ただし、物を売ることには様々な法律が関わってくるため、その法律に反することで逮捕される可能性があります。
そもそも転売とは、店や人から買った物を他の人に売る行為です。転売で利益を出すためには、買った値段より高く売る必要があります。
ただし、普通にお店の値段より高く売っても、そう簡単には買ってくれませんね。そのため、中には買い占めを行い、市場で商品が出回る数を減らしてしまうといったケースが起こり得ます。
買い占めるような行為自体も、違法にはなりません。しかし、後述する罪に該当することで逮捕される可能性が出てきます。
転売行為そのもので逮捕はされないがマイナスの印象を持つ人が多い
転売そのものは違法ではありませんが、転売に関して良い印象を持っていない人が多いことも事実です。
音楽チケットの転売について「転売を容認できるかどうか」というアンケートには、60%以上が「転売に容認できない」と答えています。
これは、転売するにあたって、人気商品を買い占めたり、儲けを出すために高額転売をしたりしているからでしょう。
最近では、新型コロナウイルス感染防止のためのマスクが転売目的で買い占められ、市場から不足する問題も起こりました(後にマスクやアルコール類の転売規制が導入)。
また、PS5やニンテンドースイッチなどの人気商品の買い占めなども起こり、各販売店やメーカーは転売対策をしているところも増えています。
転売で逮捕される可能性もある|該当する罪と罰則
- 古物営業法違反
- 迷惑防止条例違反
- チケット不正転売禁止法違反
- 窃盗罪や詐欺罪
具体的な内容については後述しますが、転売で逮捕される可能性がある罪を挙げると上記のようなものがあります。
古物商許可証を持たずに転売を繰り返し業として行っていたり、転売する上で禁止されている商品を取り扱っていたりすることで逮捕される可能性が出てきます。
また、逮捕されることはなくても、マスク転売のように緊急的には転売に制限が設けられる場合もあります。
古物営業法違反
古物営業法違反:3年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくは科料 |
盗品の売買を防止するために古物営業法があります。古物と聞くと、一度使用された中古品や骨董品などをイメージしますが、新品でも取引きする物は古物になります。
以下のように洋服、カメラ、ゲーム機、書籍など、転売の対象になるほとんどの物が古物の対象になりますので、古物商許可証を持たずに無許可で転売を繰り返していることで、古物営業法違反で逮捕される可能性が出てきます。
(古物の区分)
第二条 法第五条第一項第三号の国家公安委員会規則で定める区分は、次のとおりとする。
一 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
二 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)
三 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)
四 自動車(その部分品を含む。)
五 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。)
六 自転車類(その部分品を含む。)
七 写真機類(写真機、光学器等)
八 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)
九 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)
十 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)
十一 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)
十二 書籍
十三 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令(平成七年政令第三百二十六号)第一条各号に規定する証票その他の物をいう。)
【引用】古物営業法第2条
古物商許可証が必要になるケース
営利目的で反復継続する場合は、古物商許可証が必要になります。(転売目的で大量購入を行っている場合には、営利目的と判断されやすいですし、実際に転売で毎月利益を得ているのであれば、反復継続していることになり得るでしょう。)
この状況で古物を扱っていると、古物営業法での無許可営業として逮捕される可能性があり得ます。
一方で、古物商許可証が不要だと考えられるケースは、自分で使っていた不用品を売るような、本来のフリマアプリの使い方をしている場合です。
この場合には古物営業法違反の可能性は低いと考えられます。
迷惑防止条例違反
各都道府県の迷惑防止条例では、ダフ屋行為を禁止しています。ダフ屋行為とは、乗車券や入場券(チケット)を他人に売る目的で購入し、高値で転売する行為です。
罰則は各都道府県によって違いますが、東京都では【6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金】、常習の場合【1年以下の懲役または100万円以下の罰金】に処せられる可能性があります。
また、青森県など一部の県にはダフ屋行為禁止に関する条例が設けられていない県もあります。
ただ、後述するチケット不正転売禁止法が2019年に施行されたことにより、迷惑防止条例違反で逮捕される可能性より、チケット不正転売禁止法違反で逮捕される可能性が高くなりました。
チケット不正転売禁止法違反
チケット不正転売禁止法違反:1年以下の懲役または100万円以下の罰金もしくは科料 |
2019年6月にチケット不正転売禁止法が施行されました。これにより、イベントやコンサートなどのチケット転売で逮捕される可能性が非常に高くなりました。
電子チケットも対象となり、反復継続的に定価よりも高くチケットを転売していることで、チケット不正禁止法違反に該当することがあります。
一方、購入したチケットの当日に会場等に行けなくなり1度だけ他の人に売った場合や、販売価格が定価以下での場合であれば、チケット不正転売禁止法には違反しません。
窃盗罪や詐欺罪
ここまで、自分で商品を購入して仕入れ、噓偽りなく販売するきちんとした転売に対する違法行為についてご紹介してきました。しかし、転売のために商品を仕入れたり、販売する中で犯罪行為を行って逮捕されたりするケースがあります。
主に考えられる犯罪行為が窃盗罪と詐欺罪で、この場合、明らかな犯罪行為として、逮捕され厳しく罰せられる可能性が高いでしょう。この場合は刑法犯が連なっていくので、重く処断される可能性が高い。
窃盗罪:10年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
詐欺罪:10年以下の懲役 |
後述する事例でもご紹介しますが、物を盗んで転売すれば窃盗罪になりますし、フリマアプリなどに載せている情報とは別の商品を送りつける行為は、詐欺罪に該当するケースがあります。
また、チケット不正禁止法などを回避するために、噓をついて興行主などからチケットを購入する行為に詐欺罪が適用されるケースもあります。
転売が禁止・規制されている物
転売する商品によっては、チケット不正禁止法のように特別に転売が禁止されていたり、販売に免許が必になったりするケースがあります。
マスク・アルコール類 |
一時的に規制(2021年3月現在は解除) |
医薬品 |
免許が必要。薬機法違反の可能性 |
酒類 |
免許が必要。酒税法違反の可能性 |
個人輸入した化粧品 |
薬機法違反の可能性 |
偽ブランド品 |
商標法違反の可能性 |
まず、医薬品や酒類の販売には、免許が必要になるため、免許なしで転売することで逮捕される可能性が生じてきます。そもそも、メルカリなどのフリマアプリの方でも出品が禁止されていることも多いです。
また、記憶に新しい方も多いでしょうが、新型コロナウイルス対策のため品薄状態になった、マスク・アルコール類の転売が一時的に禁止されていました(2021年3月現在は解除)。
このように、社会情勢に応じて一部の物が転売禁止にされることは大いにあり得るでしょう。
チケット不正禁止法の施行もここ数年ですし、転売に対する世間からの厳しい目の向けられ方を考えると、今後も法律によって転売に制限を加えられることは十分あり得ます。
転売によって利益を得ていきたいのであれば、このように法律周りの変化にもしっかりアンテナを張っておくべきでしょう。
実際に転売が問題となった事例・逮捕された事例
ここでは、実際に転売行為が問題となった事例や逮捕された事例について見ていきましょう。
ブランド品の古着転売をして古物営業法違反で書類送検された事例
逮捕はされていませんが、古着転売をする際に古物商許可証を取っていなかったとして、書類送検されたニュースです。
上でもお伝えしたように、転売行為が反復継続的に行われており、営業だと判断されれば、古物営業法違反で逮捕・捜査されることがあります。
プロ野球のチケットを高額転売して逮捕された事例
プロ野球の観戦チケットやコンサートチケットなどは、数年前から高額転売が問題視されていました。
2019年からチケット不正禁止法が施行されたことにより、チケットの高額転売は逮捕されやすい状況になったと言えるでしょう。
人気チケットの転売は、「5倍以上の価格でも売れる」「年間数百万円の利益が出せる」といった状態にもなっていましたが、違法行為で逮捕されれば元も子もありません。
売上金や転売の回数が多ければ、厳しく罰せられる可能性も高くなるでしょう。
転売目的でトラクターを盗み逮捕された事例
転売目的であれ、自分で使う目的であれ、盗む行為は紛れもない犯罪行為です。
悪いこととはわかってはいるでしょうが、目先の利益に目がくらみ転売目的で窃盗を行って逮捕される人も定期的に出てきます。
- 先輩後輩の2人、夜通しでトラクター盗む 容疑で逮捕|Yahoo!ニュース
転売目的を隠してチケットを購入し詐欺罪で逮捕された事例
チケット転売不正禁止法が施行される前のチケット購入で、詐欺罪が適用され逮捕されたニュースです。
チケットの販売条件には、「営利目的の転売」や「オークション等への出品禁止」が明記されていることが多いのですが、興行主に噓をついて購入することで詐欺罪にも該当することがあります。
チケット不正禁止法が施行された現在でも、詐欺罪の方が重い罰則を与えることができますので、特に悪質なチケット転売には詐欺罪が適用されることも考えられます。
転売で逮捕された後の刑事事件の流れ
ここまで解説したように、転売の違法行為は様々ありますが、どの罪で逮捕されても、基本的には以下のような流れで刑事手続きが進められていきます。
特に大事な部分は、【起訴】されるまでの最大23日間です。起訴されてしまうと、99.9%の確率で有罪になる可能性があり、何かしらの罰則を受けることになるでしょう。
一方、起訴されない=不起訴になれば、身柄拘束も解かれ、これ以上捜査や罰則を受けることはありません。起訴されるまでにできる限りの対処を取っておくべきです。
転売で逮捕された場合の対処法
繰り返しますが、転売で逮捕された場合には早い段階の対応が必要です。ただし、具体的にどのような対応が適切かは、逮捕された罪や状況によって異なります。
古物営業法違反のように、反復継続的に業として転売が行われていたかどうかの弁解をする余地もありますが、罪を否定し続けることで、警察や検察からの印象は悪くなり、身柄拘束も長くなる傾向にあります。
逮捕後は無料で弁護士を呼ぶことも相談することもできますので、必ず弁護士に相談して状況に応じたアドバイスを受けるようにしてください。
また、不当に身柄拘束が長引いている場合の検察官との交渉や、被害者がいる事件での示談交渉の代理などを依頼することができます。
いずれにしても、自分だけの判断で警察や検察に対応しようとしても、かえって悪い印象に繋がることも多いと考えられますので、必ず弁護士に相談するようにしてください。
まとめ
転売行為そのものは違法行為ではありませんが、転売する商品の種類や入手方法、無許可営業などによっては逮捕されることがあります。
フリマアプリの登場により、近年特に個人規模での転売も活発になっていますが、個人の転売でも逮捕の可能性があることは十分に理解しておく必要があります。
また、世間の転売に関する関心は高く、あまり良い印象を持っていない人も多いです。店舗や興行主側で転売対策が取られることもありますし、チケット不正禁止法やマスク転売規制が施行されたこともここ数年の出来事です。
今後も転売に関する法律が変わってくることもあり得るでしょうから、転売をするのであれば、ご自身が関わる商品や販売方法に対する法律にはしっかりアンテナを張って、違法行為にならないように気を付けておきましょう。
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