日本の懲役の実態|懲役刑が果たす3つの役割と問題点
懲役(ちょうえき)とは、有罪判決を受けた人物を刑務所に拘禁し、刑務作業を行わせる刑罰です。受刑者を刑事施設に拘禁し、自由を奪う、自由刑の一つです。
同じく自由刑のうち、刑事施設に拘禁するものの、刑務作業を義務付けていない刑罰として、禁固刑が別にあります。
今回は、懲役刑を中心に日本の刑罰の種類と実態、そして懲役を回避するための制度を解説していきます。
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懲役刑とは?|懲役刑の3つの目的と役割
冒頭でも説明しましたが、懲役刑は受刑者を刑務所に入れ、刑務作業を行わせる刑罰の一つです。無期懲役という刑罰も聞いたことがあるでしょうが、無期懲役刑も懲役刑のうちの一つで、懲役の期間が決まっているか決まっていないかの違いだけです。
現在、日本には7種類の刑罰があります。懲役刑はその2番目に重い刑罰です。
懲役刑は自由刑に該当し、受刑者の自由を奪うことが罰則の大きな目的ですが、以下の3つの目的があります。
懲役刑の3つの目的と役割
懲役には、本来3つの目的と役割があります。
隔離
犯罪を起こした人物を、刑事施設に隔離し、社会の安全性を保つ目的があります。たとえば、凶悪殺人を犯した人物が罰金を払ってすぐに社会に戻されたのであれば、世間は不安を感じ、不満に思うでしょう。
抑止
長期に渡り自由を奪うペナルティーを科す事で、犯罪に対する抑止をする効果があります。「犯罪を起こすと刑務所に入れられる」という概念があるから、悪いことに踏み切らないことも実際のところはあります。
矯正
刑務所内で強制労働させることで、苦痛による再犯防止・生活習慣改善・職業訓練などの意味合いもあります。苦痛と言っても受刑者にも人権がありますので、起床時間・生活習慣の徹底や強制労働などにより矯正をしていきます。
懲役刑で起きている問題
このような目的で設けられている懲役刑ですが、現状として懲役刑が抱える問題も存在しています。
犯罪を助長することとなる
刑務所内で毎日顔を合わせる人物は、刑務官か同じ受刑者しかいません。受刑者はもちろん犯罪者です。
さらに懲役刑となると、比較的重大な事件(殺人や強盗)を起こした人物や、再犯を起こしたような人物が多くいます。暴力団の組員もいるでしょう。たとえ本人が「社会に戻れば真っ当に生きよう」と誓っても、長い間、毎日周りにそのような人物しかいないと、自然と周りのコミュニティに染まっていくことも考えられます。
実際に刑務所内では、薬物の売人情報や犯罪の手口などの犯罪情報が流れていることもあるようです。
社会復帰が難しくなる
懲役刑で拘束される期間が長くなればなるほど、社会への復帰が厳しくなります。まず、逮捕前の仕事に復帰することは、相当寛大か人手不足、親戚家族が経営する会社でない限り、無理でしょう。
再就職の際、懲役期間の情報を知らせる義務はありませんが、履歴書に長期の空白期間があることは、再就職に不利になります。人間関係でも劣等感を感じたり、家族に見放されたりすることで、社会生活に居心地が悪くなり、再び犯罪を起こしてしまうこともあるようです。
懲役刑での収監期間と仮出所の傾向
実際に懲役刑を受けると、どれほどの期間刑務所に入れられてしまうのでしょうか。具体的な刑期は犯した罪の内容にもよりますが、「仮釈放」もあります。
実際の懲役刑の期間を見てみましょう。
懲役刑の長さは刑事裁判で決まる
まず、ご存知の方がほとんどでしょうが、懲役刑は刑事裁判によって刑期が決められます。たとえば、強姦罪の法定刑(各犯罪に規定されている罰則)は、【3年以上の懲役】と、はっきりと決められていません。
そこで、実際の刑事裁判で法定刑と事件内容を元に、検察官・弁護士・裁判官による刑事裁判で刑期が決められます。
関連記事:誰でもわかる刑事裁判の簡単ガイド!流れや民事裁判との違いとは?
有期懲役の最大刑期
たとえば、強姦罪の法定刑は3年以上の懲役となっていますが、3年以上であれば何年でも刑期を延ばすことができるわけではありません。これを有期懲役と言い、30年間の懲役と決められています。
これに対して、期間が決められていない懲役刑を無期懲役と言います。
関連記事:無期懲役とは|仮釈放・出所はできる?終身刑との違い・死刑との分かれ目
仮出所の確率は約半数
刑期が満期になる前に受刑者を出所させることを仮出所(仮釈放)と言いますが、懲役刑を受けて仮釈放によって早めに出所する人は、令和元年のデータでは58.3%となっています。
参考:令和2年版犯罪白書
仮出所は刑期の7割を過ぎてから
仮出所がいつから可能になるかと言うと、原則的に満期の3分の1を過ぎてからです。しかし、実際のところ3分の1で仮出所が検討されることはほとんどなく、刑期の7割を過ぎてから仮出所が検討されるようになります。
現在の日本の刑罰一覧
それでは、現在の日本の刑罰の一覧を説明します。先にも述べましたが、現在日本には7種類の刑罰があります。
| 生命刑 | 自由刑 | 財産刑 | 付加刑 | |||
| 死刑 | 懲役 | 禁固 | 拘留 | 罰金 | 科料 | 没収 |
| 受刑者の生命を奪う | 刑事施設に収監し、刑務作業を行わせる | 刑事施設に収監する | 1日以上30日未満の刑事施設への収監 | お金を支払う刑罰 | 千円以上一万円未満の財産刑 | 犯罪に使われた物、犯罪で得たものを国が取り上げる |
死刑
ご存知のとおり、受刑者の生命を奪う最も重い刑罰です。日本では絞首刑が採用されています。
余談ですが、先進国で死刑制度がある国は、日本とアメリカのみ、準先進国を加えても、シンガポールと台湾しかありません。世界的に見て、死刑を採用する国は少なくなっています。
懲役
上記に説明したとおり、刑事施設に収監し、刑務作業を行わせる刑罰です。懲役期間の定められない無期懲役と、「◯年以下」とあるような有期懲役に分かれ、有期懲役の最大年数は30年となっています。
禁固
懲役刑と同じ、刑事施設に収監される自由刑ですが、懲役刑との大きな違いは、刑事施設内での刑務作業の義務がないことです。刑罰としては懲役刑の方が重いとされていますが、受刑者は刑務所内でもすることがなく、自ら刑務作業を志願する人も多いようです。
拘留
同じく刑事施設に収監される自由刑ですが、懲役・禁錮との違いは、拘束期間の長さです。1日以上30日未満と短期の期間が設定されています。
罰金
ご存知の通り、罰則金を徴収する刑罰です。1万円以上で定められており、罰金の使い道は国の予算に当てられます。
被害者に返されるということはありません。被害者は民事での示談交渉などで損害賠償を請求できます。
科料
同じく、罰則金を徴収する財産刑ですが、1,000円以上10,000円未満と額が定められています。
没収
没収のことを付加刑と言い、没収刑単独での刑罰の言い渡しはありません。要するに、罰金刑と没収刑、懲役刑と没収刑といったように、他の刑罰と一緒に処罰されます。
没収は、犯罪に使用されたもの(銃や刃物などの凶器や薬物犯罪で使用した物)や、犯罪で得たもの(詐欺で得た金銭、窃盗で得た物品)が対象になります。こちらも確実に所有者が分からない場合、被害者には返されず、所有が国へと移ります。
懲役と禁錮と拘留の違い
上記の内容を見てみて、自由刑に当てはまる「懲役刑」「禁錮刑」「拘留刑」はそれぞれ紛らわしい部分もあるかと思いますので、こちらで別途説明をします。
懲役
お伝えしたとおり、懲役刑は刑務所に収監し刑務作業を行わせる罰則です。刑務所への収監で自由を奪うだけではなく、刑務作業をすることも刑罰の一つになります。
禁錮
禁錮刑は、刑務所に収監されることが罰則となります。懲役刑との違いは、刑務作業が罰則に含まれていない事です。
刑務作業がない分、禁錮刑が楽なようにも感じられるかもしれませんが、実際のところ部屋(牢屋)の中で何もすることがないというのは、長期的には耐えられなくなり、自ら刑務作業を志願する人がほとんどのようです。禁錮刑は、交通事故などの過失で犯罪を起こしてしまった際に受けやすくなっています。
関連記事:過失致死の定義とは|罪の重さや殺人との違いをわかりやすく解説
拘留
懲役と拘留の違いは、拘束期間の違いにあります。30日未満刑事施設に拘束させる刑を拘留と言いますが、実際のところ拘留刑は全犯罪を見てみても、年間数件と滅多に判決を受ける刑罰ではありません。
関連記事:拘留と勾留の違い|拘留になる犯罪も併せて解説
労役場勾留
上記の刑事罰にはありませんでしたが、労役場勾留というものがあります。これは、罰金・科料の判決を受けたにも関わらず、指定された期限に罰金・科料を納められなかった場合に受けるものです。
罰金を完納することができない場合は、1日以上2年以下の期間、科料を完納することができない場合は、1日以上30日以下の期間、労役場で強制的に働かされますので、実質、懲役刑と同じような罰になります。
関連記事:罰金・科料を納めなかった場合
懲役刑と実刑と執行猶予の違い
たまにニュースなどで、「執行猶予付き判決」「実刑判決」などと耳にしますが、執行猶予や実刑とは、どういうことでしょうか?こちらでは、懲役刑と関連してくる実刑や執行猶予について解説していきます。
執行猶予付き懲役刑とは
執行猶予付き懲役刑とは、懲役〇年の懲役刑に該当するが、〇年間犯罪を起こさなければ懲役刑の罰則は受けなくてよいという判決です。この「〇年間犯罪を起こさなければ」の期間が執行猶予期間になります。
たとえば、【懲役3年執行猶予4年】という判決を受けると、「懲役3年が相当だが、4年間他の罪を犯さなければ懲役3年の罰則は受けなくていい」ということになります。
実刑判決とは
実刑とは、執行猶予が付かず、上記3つの自由刑を受けることを言い、実刑判決とは、簡単に言うと即刻刑務所に入れられる判決のことを言います。同じ懲役刑でも、この執行猶予付き判決か実刑判決かで天と地の差があります。
懲役刑を受けた後の生活

説明したとおり、執行猶予が付かず懲役刑になると、刑務所に入れられ、刑務作業を行なうことになります。
刑務所での生活
刑務所での生活は、朝6時に起床し、21時には就寝という規則正しい生活になります。食事は3食きっちり出ますが、外の世界では200~300円でも食べる気が起きないような、質素なものになっています。
日中は刑務作業を行い、土日は休みで余暇時間に当てられます。部屋は雑居房で、数人と24時間同じ空間を過ごします。
風呂は週に2~3回、プライバシーなどはありません。
表向きでは刑務所は更生施設という部分もありますが、犯罪者同士交流することにより犯罪を助長させている部分も否めません。
刑務作業
刑務作業は、金属・革製品・木工・洋裁・印刷などの工場で行われます。労働時間は、1日8時間土日祝日は休みと、一般の企業と同じです。
また、出所後に就職で困らないように実技訓練を受けることもありますし、実際に出所後の受刑者を引き受けてくれる企業もあります。
刑務作業での報酬
一応給与のようなものももらえますが、月数百円から数千円となっています。年間でも1~5万円程度です。
報酬は、刑務所内で嗜好品を購入する際に利用するか、出所時に渡され、交通費や生活費などに充てられます。
出所後の生活
一度刑務所に入れられた人物の再犯率は高くなっています。理由は、出所しても受け入れてくれるところが少なく、結果、自暴自棄になり再び犯罪を起こしてしまうからです。
社会復帰は、刑期が長くなればなるほど難しくなります。
受刑者が出所後に真っ当な社会復帰を目指すのであれば、本人の並々ならぬ努力と家族や友人などのサポートが必要になってきます。しかし、犯罪を起こす人物の中には、全く反省できない人物もおり、出所させたところで再び犯罪を起こしてしまいます。
無期懲役刑の実態
無期懲役と聞くと、「一生刑務所に入れられるもの」とイメージされる方も多いとは思います。実質、期限を決められていない懲役刑のことなので、そのような性質はあります。
ただ、仮釈放で刑務所を出る可能性はあります。
無期懲役での拘束期間は30年以上
無期懲役刑でも10年を経過すると、仮釈放を許可する制度があります。このことがあり、「無期懲役でも10~20年すれば仮釈放される」といった風説がありました。
しかし、実際のところ、有期懲役の最大年数が30年であるため、無期懲役の仮釈放の審査は30年を超えて行なわれます。そうなると、出所するときの年齢は50代を超えており、そこからの社会復帰は非常に難しいものとなるでしょう。
無期懲役については、「無期懲役とは|仮釈放・出所はできる?終身刑との違い・死刑との分かれ目」をご覧ください。
まとめ
いかがでしょうか。
懲役は、犯罪を起こした人物の自由を長期間奪う重い刑罰です。数ヶ月・数年であっても、社会へ及ぼす影響と、復帰後の大変さは計り知れません。
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