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誤認逮捕のときに利用できる3つの賠償制度|それぞれの制度のポイントを確認しよう

笠井 勝紀
監修記事
誤認逮捕のときに利用できる3つの賠償制度|それぞれの制度のポイントを確認しよう

誤認逮捕とは、実際には罪を犯していないにもかかわらず、警察等によって逮捕されてしまうことを指します。

法的には「推定無罪の原則」が定められ、逮捕されたとしても刑事裁判で有罪判決(若しくは略式命令)が確定しない限り、犯罪を犯した(=有罪)とは考えません。そのため、逮捕されても犯人として扱われるべきではありません。

しかしながら、現状、上記「推定無罪の原則」が浸透しているとはいえず、警察のみならずマスコミや一般人の理解からも「逮捕=有罪」との考えの人が多く、誤認逮捕がもたらす不利益は甚大と言わざるを得ません。

精神的な苦痛のみならず、社会的な評価にまで影響が及ぶこともあるでしょう。

誤認逮捕された場合に、実際にどのような賠償が受けられるのでしょうか。

本記事では、誤認逮捕の被害者が利用できる補償・賠償制度について解説します。

誤認逮捕されてしまった方や、罪を犯していないのに警察から疑われている方はぜひ本記事を参考に、弁護士に相談することも検討してください。

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誤認逮捕で不起訴処分になった際に使える被疑者補償規程の補償のポイント

被疑者補償規程によると、被疑者として身体の拘束を受けたが、結果として不起訴処分となった場合、一定の条件を満たせば刑事補償がなされます。

どのような条件で被疑者補償規程の補償制度を利用できるのでしょうか。

また、誤認逮捕で不起訴処分になったら、どんな補償が受けられるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

1.被疑者補償規程の補償制度を利用できる3つのケース

誤認逮捕に対して補償制度を利用できる条件は以下のとおりです。

【被疑者補償規程の補償制度を利用できるケース】

  1. 「罪とならず」又は「嫌疑なし」の理由で不起訴となっている場合
  2. 上記以外で逮捕された人が罪を犯さなかったと認められる理由がある場合
  3. 逮捕された人が補償の申し出をした場合

第4条 補償に関する事件の立件手続は,次の場合に行う。

(1) 被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき,事件事務規程(昭和62年法務省刑総訓第1060号大臣訓令)第72条第2項に定める「罪とならず」又は「嫌疑なし」の不起訴裁定主文により,公訴を提起しない処分があつたとき。

(2) 前号に掲げる場合のほか,被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき,公訴を提起しない処分があつた場合において,その者が罪を犯さなかつたと認めるに足りる事由があるとき。

(3) 補償の申出があつたとき。

引用元:検察庁「被疑者補償規程(法務省訓令)」

刑事補償は、放っておいて支払われるものではありません。

補償制度の利用条件に該当する場合でも、補償の申し出をしなければならないので、注意が必要です。

申し出を検討する際には弁護士に相談しましょう。

2.被疑者補償規程の賠償額と金額に影響する要素

刑事補償の賠償額は、被疑者補償規程によると逮捕や勾留された日数に応じて1日1,000円以上12,500円以下の補償金が支払われることとされています。

また、補償金の額を決めるにあたっては、拘束の種類・期間・本人が受けた財産上の損失・得るはずだった利益の喪失・精神上の苦痛など考慮するとされています。

【被疑者補償規程の賠償額に影響する要素】

  1. 拘束の種類
  2. 拘束期間の長さ
  3. 本人が受けた財産的損失
  4. 得るはずだったのに喪失した利益
  5. 拘束によって本人が受けた精神的苦痛 など

(補償内容)

第3条 補償は,抑留又は拘禁の日に応じ,1日1,000円以上12,500円以下の割合による額の補償金を本人に交付して行う。

(中略)

(補償金額裁定の基準)

第4条の2 補償金の額を定めるには,拘束の種類及びその期間の長短並びに本人が受けた財産上の損失,得るはずであつた利益の喪失及び精神上の苦痛その他一切の事情を考慮しなければならない。

引用元:検察庁「被疑者補償規程(法務省訓令)」

起訴後に無罪判決を獲得した際に利用できる刑事補償法の補償のポイント

起訴されたものの、無罪判決を獲得したという場合には、どのような補償があるのでしょうか。

この場合は、刑事補償法の補償制度を利用できるかもしれません。

1.刑事補償法の補償制度を利用できるケース

逮捕され勾留されていた事件について無罪判決を得たら、刑事補償法によって刑事補償請求をおこなうことができます。

これは、逮捕され勾留という身柄拘束についての補償を求めることができる制度です。

つまり、起訴されて無罪判決を得たとしても、逮捕や勾留がなされていない在宅事件であった場合は、刑事補償の対象外ということです。

刑事補償は必ず受けられるわけではなく、無罪判決を下した裁判所に対して、刑事補償請求書を提出しなければなりません。

また、無罪が確定した日から3年以内に請求する必要があります。

(補償の要件)

第一条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)による通常手続又は再審若しくは非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)又は経済調査庁法(昭和二十三年法律第二百六号)によつて未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、その者は、国に対して、抑留又は拘禁による補償を請求することができる。

引用元:刑事補償法 | e-Gov 法令検索

2.刑事補償法の補償制度で受けられる賠償額

刑事補償法の補償制度で受けられる賠償額は、刑事補償法第4条において、逮捕や勾留された日数に応じて1日1,000円以上12,500円以下の割合による金額と規定されています。

なお、被疑者補償規程の補償制度を利用できるケースと同じく、補償金の額を決めるにあたっては、考慮されるべき要素が規定されています。

拘束の種類・期間・本人が受けた財産上の損失・得るはずだった利益の喪失・精神上の苦痛などによって金額は変わることを覚えておきましょう。

(補償の内容)

第四条 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。懲役、禁錮こ若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。

引用元:刑事補償法 | e-Gov 法令検索

誤認逮捕をされたら前科はつく?逮捕歴は?

誤認逮捕をされても、前科はつきません。

誤認逮捕であったことが判明すればすぐに釈放され、刑事裁判には発展しません。

裁判で罪が確定しない限り、前科がつくことはないので安心してください。

ただし、逮捕歴は残ります。

とくにニュースや新聞などによって逮捕が報じられた場合、その事実は残り続けることになります。

インターネット上で情報が出回ってしまえば、就職や結婚などの機会で不利になってしまうおそれもあるでしょう。

そのため、誤認逮捕された場合はすぐに弁護士を呼んでもらいましょう。

弁護士から意見書などを出すことによって、報道機関などに実名報道をしないよう働きかけることができます。

また、万が一インターネット上で情報が出回ってしまった場合には、弁護士から削除請求をしてもらうことで逮捕記事が残らずに済む可能性も高くなります。

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誤認逮捕をされた場合に利用を検討すべき賠償制度|国家賠償請求とは?

誤認逮捕をされてしまった場合、国家賠償請求の制度を利用することも考えることができます。

誤認逮捕されて取り調べを受けたときだけでなく、すぐに釈放された場合であっても利用可能です。

国家賠償とは、国家賠償法に定められている民事訴訟の一種で、誤認逮捕の場合には、警察官や検察官が違法な行為をおこなったことによって、私人が損害を被った場合等に、国や地方公共団体に対して賠償を受けることを指します。

第一条国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

引用元:国家賠償法 | e-Gov 法令検索

もっとも、誤認逮捕による国家賠償が認められるには、警察官や検察官の行為のどの部分が違法であるのか、どのような過失があったのかなどを立証しなければなりません。

そのため、警察官や検察官の行為に問題があったと示す根拠や資料などが不可欠です。

しかし、警察官や検察官の行為が違法であることを立証するのは難しく、国家賠償訴訟では国・地方公共団体側が勝訴するケースが多いのが実情です。

国家賠償請求をおこなう意義

国家賠償訴訟では、国・地方公共団体側が勝訴するケースが多いとはいえ、仮に敗訴したとしても国家賠償請求をおこなうことには大きな意義があります。

それは、法廷という公開の場所で国に対して事実関係を明らかにさせることができることです。

また、裁判を通じて国の行為の問題点や課題点を提示することもできます。

最終的な勝訴か敗訴かに関わらず、社会的に問題意識を投げかけ、裁判所に法律判断を仰ぐことで、世の中の関心や理解を促すことにつながるでしょう。

また、泣き寝入りをすることなく訴訟できちんと戦うことで、精神的に満足が得られる場合もあるでしょう。

国家賠償請求がなされた事例

これまで国家賠償訴訟として提訴された問題は多岐にわたります。

ここでは、誤認逮捕による国家賠償訴訟を含めて3つの事例を紹介します。

B型肝炎訴訟

B型肝炎訴訟は、昭和期に国が実施した集団予防接種の際、注射器を取り替えずに連続使用されたことが原因で多くの方がB型肝炎ウイルスに感染してしまったことに対し、被害者や遺族が国に対して賠償金を求める訴訟です。

最初は原告5名による訴訟で、2006年6月にはじめて最高裁判所が原告らの幼少期に受けた集団予防接種とB型肝炎ウイルス感染の間に因果関係があると肯定しました。

これを契機として、全国の感染被害者や遺族たちが本件訴訟を提起しています。

2024年1月31日時点で原告数は累計120,541名となり、そのうち100,955名の原告との和解が成立しました。

米軍普天間飛行場の騒音訴訟

2022年には、沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の周辺住民約3,200名が原告として、アメリカ軍航空機の騒音による被害を訴え、国に対して損害賠償を求めていた訴訟の判決が出ました。

住民らは、アメリカ軍航空機の音によって会話が妨げられたり、睡眠妨害を受けたりと精神的苦痛が続いているとして被害を訴えていました。

本件訴訟では、裁判所が騒音の違法性を認定し、国に対して13億4,274万円の支払いを命じています。

誤認逮捕の訴訟

誤認逮捕について国家賠償を求める訴訟としては、2023年12月に兵庫県尼崎市のコンビニエンスストアでパート勤務をしていた60代の女性が窃盗容疑で誤認逮捕された事件が近年大きな波紋を呼びました。

当時、店長らからの通報を受け、店内の防犯カメラ映像に女性がレジの両替箱を開封している様子が映っているとして、兵庫県警尼崎南警察署はこの女性が売上金などを盗んだとして逮捕しました。

女性は一貫して犯行を否認していましたが、取り調べでは警察から執拗に容疑を認めさせようとされたとして、釈放されたあともフラッシュバックが原因となる不眠やうつ症状によって悩まされていることから訴訟に至っています。

実際、取り調べ中にコンビニを統括する本部から、盗まれたとされる数十万円はすでに本部に送金されていたとして窃盗行為はなかったことが発覚しています。

女性は、国・兵庫県・コンビニの運営会社に対する計330万円の損害賠償を求めて、神戸地裁に提訴しました。

2024年8月8日に第1回口頭弁論がおこなわれ、取り調べの間、手錠をかけられたり、縄で椅子にくくりつけられたりしていたという女性の新たな主張がなされました。

これからの裁判の進捗や判決に注目が集まっています。

さいごに|万が一誤認逮捕をされたらなるべく早く弁護士に相談しよう!

誤認逮捕は、個人の生活や信用に深刻な影響を与える可能性があります。

そのため、誤認逮捕をされたらなるべく早く弁護士に相談することが重要です。

速やかに弁護士に相談して、必要な証拠を集めることなどによって、最小限の影響で済ませることができるでしょう。

また、弁護士に依頼をすれば適切な賠償制度を利用できる可能性も高まります。

誤認逮捕についての賠償訴訟を起こすとしても、弁護士の力が必要です。

万が一勝訴や和解に至らない場合でも、訴訟を通じて問題点を明らかにすることができるため、検討したいという方はまずは相談してみましょう。

無料相談やオンライン相談に応じている法律事務所も増えています。

ぜひ、近くの弁護士や法律事務所を探せる検索サイト「ベンナビ」を活用し、信頼できる弁護士を見つけてください。

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この記事の監修者
笠井 勝紀 (愛知県弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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