児童買春の時効は何年間?公訴時効と消滅時効の期間、弁護士に相談すべき理由を解説
- 「児童買春に関わったことがあるが、今でも罪に問われるのだろうか?」
- 「事件から何年も経っているが、すでに時効になっているのではないか?」
このように、過去の行為について時効の有無や刑事責任を不安に感じている方は少なくありません。
また、刑事事件には「公訴時効」、民事上の損害賠償請求には「消滅時効」という制度が存在し、一定期間を経過すると起訴や請求ができなくなる仕組みがあります。
しかし、児童買春に関する時効の計算は単純ではなく、行為の内容や発覚状況によって起算点や期間が変わるため、「すでに時効が完成した」と自己判断するのは非常に危険です。
本記事では、児童買春に適用される公訴時効と消滅時効の基本を整理し、弁護士に相談すべき理由についてわかりやすく解説します。
正しい知識を持ち、自分の立場やリスクを冷静に把握することが大切です。
児童買春をした場合の時効はいつ?公訴時効と消滅時効
児童買春をしたときに問われる法的責任は、刑事責任と民事責任の2種類です。
刑事責任については公訴時効が、民事責任については消滅時効が適用されます。
ここでは、児童買春をしたときにいつまで法的責任に問われる可能性があるのかについて解説します。
児童買春の公訴時効|5年
児童買春の公訴時効は、5年です。
公訴時効とは、犯罪行為が終了してから一定期間が経過すると刑事責任を問われなくなる制度のことをいいます。
そして、公訴時効期間は各犯罪類型の法定刑によって異なります。
たとえば、児童買春罪の法定刑は5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金刑です。
(児童買春)
第四条 児童買春をした者は、五年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
そして、刑事訴訟法第250条第2項第5号では、長期10年未満の拘禁刑に当たる罪の公訴時効期間は5年と定められています。
第二百五十条
② 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期拘禁刑に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の拘禁刑に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の拘禁刑に当たる罪については七年
五 長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年
六 長期五年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
引用元:刑事訴訟法|e-Gov法令検索
以上を踏まえると、児童買春罪は犯罪行為が終わってから5年が経過した時点で公訴時効が完成すると導かれるのです。
児童買春の消滅時効|3年または20年
児童買春をした場合、被害者に対して民事の賠償責任・不法行為責任を果たす必要があります。
たとえば、怪我やPTSDの治療費や精神的損害への慰謝料などについて金銭賠償を求められたときには、この請求に応じなければいけません。
預貯金などで支払うことができない場合には、自宅や自動車、給与などが差し押さえられます。
ただし、刑事責任に公訴時効制度が定められているのと同じように、民事責任には消滅時効制度が用意されている点に注意が必要です。
以下のように、消滅時効の完成によって児童買春の被害者が有する不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅します。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
引用元:民法|e-Gov法令検索
消滅時効期間を整理すると以下のようになります。
- 被害者または法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間
- 不法行為のときから20年間
なお、児童買春事件の民事責任に関する消滅時効は、起算点に注意する必要があります。
たとえば、児童買春の被害を受けた事実は把握しているものの、加害者を特定できていない場合には、「被害者または法定代理人が損害及び加害者を知ったとき」という要件を満たしません。
被害者または法定代理人が児童買春被害と加害者の両方を知ったときに、ようやく3年の消滅時効期間がスタートするのです。
「加害者を知ったとき」とは、加害者の氏名や住所などを把握し、現実的に損害賠償請求が可能になった状態のことを意味します。
一方で、児童買春の被害者側の認識とは関係なく、児童買春事件を起こしてから20年間が経過すれば消滅時効が完成するので、民事の賠償責任を問われることはありません。
児童買春以外の犯罪が成立した場合の公訴時効の期間
児童などの未成年者に対して性加害行為に及んだときには、児童買春罪以外の犯罪類型が適用される可能性があります。
ここでは、児童買春罪に関連する不同意性交等罪や不同意わいせつ罪、青少年保護育成条例違反の公訴時効期間について解説します。
1.不同意性交等罪の場合|15年+数年
児童買春の際、以下のような行為を伴って性行為に及んだ場合は不同意性交等罪が成立する可能性があります。
- 暴行または脅迫を加える
- 心身の障害を利用する
- アルコールや薬物の影響を利用する
- 睡眠など意識が明瞭ではない状態に乗じる
- 同意しない意思を表明する時間的余裕を与えない
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させる
- 虐待に起因する心理的反応を悪用する
- 経済的または社会的関係上の優越的な地位・影響力によって不利益を加えられると憂慮させる
- 行為がわいせつではないと誤信させたり人違いをさせたりする
また、被害者が16歳未満の場合、性交等に及んだだけで不同意性交等罪が成立する点に注意しましょう。
ただし、被害者が13歳以上16歳未満のケースでは、不同意性交等罪の容疑で立件される加害者は、被害者よりも5歳以上歳上の人物に限られます。
不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑と定められていますが、以下のように、公訴時効については特則が設けられています。
第二百五十条
③ 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
二 刑法第百七十七条若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪 十五年
④ 前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
引用元:刑事訴訟法|e-Gov法令検索
ここから、不同意性交等罪及び不同意性交等未遂罪の公訴時効期間は、以下のように整理できます。
- 不同意性交等罪の原則的な公訴時効期間:犯罪行為が終わったときから15年
- 不同意性交等罪の被害者が18歳未満の場合の公訴時効期間:15年 + 犯罪行為が終わったときから被害者が18歳に達する日までに相当する期間
未成年者に対して不同意性交等罪に問われる事件を起こした場合、被害者の実年齢を正確に把握していないケースは少なくありません。
想定していたよりも公訴時効期間が長い可能性があることを踏まえると、ただ公訴時効完成を待つのではなく、弁護士に相談をして、適切な防御活動を展開してもらうべきでしょう。
2.不同意わいせつ罪の場合|12年+数年
児童買春の際に、相手が同意できない状態にさせたり、同意を示せない・貫けない状況に追い込み、またはそのような状況にあることを利用してわいせつな行為に及んだ場合、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
なお、被害者が16歳未満のときには、わいせつな行為に及んだ時点で不同意わいせつ罪が成立する点に注意しましょう。
ただし、被害者が13歳以上16歳未満のケースについては、不同意性交等罪と同じように、被害者よりも5歳以上歳上の加害者だけが刑事処罰の対象とされます。
また、不同意わいせつ罪の公訴時効期間についても、刑事訴訟法において以下の特則が設けられています。
第二百五十条
③ 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
三 刑法第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る。) 十二年
④ 前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
引用元:刑事訴訟法|e-Gov法令検索
ここから、不同意わいせつ罪の公訴時効期間は以下のように整理できます。
- 不同意性交等罪の原則的な公訴時効期間:犯罪行為が終わったときから12年
- 不同意性交等罪の被害者が18歳未満の場合の公訴時効期間:12年 + 犯罪行為が終わったときから被害者が18歳に達する日までに相当する期間
3.青少年保護育成条例違反の場合|3年
児童に対して買春行為に及んだ場合には、各自治体が定める青少年保護育成条例違反の容疑をかけられる可能性があります。
青少年保護育成条例の内容は自治体によって異なりますが、たとえば東京都では、以下のような規定により、青少年とのみだらな性交または性交類似行為、いわゆる淫行を禁止しています。
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第18条の6 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第24条の3 第18条の6の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
東京都の青少年保護育成条例では、淫行について2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑の法定刑を定めています。
そして、刑事訴訟法第250条第2項第6号において、長期5年未満の拘禁刑または罰金に当たる罪の公訴時効期間は3年とされています。
そのため、淫行事件は青少年とみだらな性交または性交類似行為に及んでから3年で公訴時効が完成すると考えられるでしょう。
なお、各都道府県の青少年保護育成条例については、「都道府県の青少年育成条例等|こども家庭庁」を確認してください。
児童買春の時効成立を待つより弁護士に相談するほうがよい
過去に児童買春をおこなった場合には、現段階で警察から出頭要請がかかっていないとしても、念のために弁護士に相談することをおすすめします。
というのも、刑事事件への対応が得意な弁護士に相談・依頼することで、以下のメリットを得られるからです。
- 今後の方針についてアドバイスをもらえる
- 被害者との間で示談交渉を進めてくれる
- 自首についてのサポートを期待できる
それぞれのメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
1.今後の方針についてアドバイスがもらえる
数年前の児童買春行為が現段階で立件されていないとしても、公訴時効の完成を期待するのはハイリスクです。
実際、公訴時効完成ギリギリのタイミングで児童買春罪や不同意性交等罪の容疑で立件されるケースは少なくありません。
その点、刑事事件が得意な弁護士に相談すれば、児童買春行為に及んだ当時の状況やその後の推移、相手方との連絡状況などの個別事情を聴取したうえで、今後の防御方針について以下のようなアドバイスを提示してくれるでしょう。
- 明らかに刑事訴追されるリスクがなさそうであれば、公訴時効期間が満了するまで様子を見る
- 児童買春の被害者側から内容証明郵便などの形で何かしらのアプローチがある状況なら、早期に示談交渉を開始して民事的解決を目指す
- 被害者側からの連絡の内容や事件の経緯から立件リスクが高いと判断できるなら、先手を打って自首をして、軽い刑事処分獲得を目指す など
今度の見通しが立つことは、児童買春での逮捕をおそれている人にとって大きな安心材料となるはずです。
2.被害者やその親との示談交渉を進められる
児童買春をしたときには、スピーディーに示談成立を実現できるかがポイントになります。
というのも、被害者との間で示談が成立すれば、刑事手続きにおいて以下のメリットを得られるからです。
- 被害者が被害届や告訴状を提出する前に示談が成立すれば、刑事責任を追求されるリスクが事実上消滅する
- 示談成立によって被害者の処罰感情がなくなっていることを証明できれば、起訴猶予処分や執行猶予付き判決などの有利な刑事処分・量刑判断を引き出しやすくなる
- 示談交渉が前向きな形で進んでいる事実から被疑者側が犯行を認めて反省している姿勢を示すことができるので、逮捕・勾留といった身柄拘束処分を回避し、在宅事件として処理される可能性が高まる
ここで注意を要するのが、誰が示談交渉をおこなうのかという点です。
示談交渉は刑事事件の当事者間で自由に話し合いを進めるものなので、本来であれば、児童買春の加害者本人が被害者にコンタクトをとって交渉をしても差し支えありません。
しかし、児童買春はその性質上、被害者やその親が加害者と直接コンタクトを取ることに嫌悪感を示すことが多いです。
無理やり接触を試みようとすると、むしろ示談の成立からは遠ざかってしまう可能性もあるでしょう。
その点、弁護士は加害者の代理人として被害者に接触し、被害者にも寄り添いながら示談の成立を目指します。
結果的にスムーズに示談が成立する可能性も高まるでしょう。
3.自首する場合に同行などのサポートを受けられる
児童買春をしてしまったときは、自首を検討するのも一つの選択肢です。
その際、事前に弁護士へ相談しておくことで、自首の有効性を判断してもらえるだけでなく、自首に同行してもらうことができます。
また、自首をする前に弁護士に相談すれば、自首後に実施される取り調べでどのような供述をするべきかや、自首をする際に任意で提出するべき証拠物についてのアドバイスを受けることが可能です。
適切な事前準備をしたうえで自首をすれば、逮捕・勾留といった強制的な身柄拘束処分を回避できる可能性が高まりますし、起訴猶予処分の判断を引き出しやすくなるでしょう。
さいごに|児童買春の公訴時効は5年!ほかの犯罪だと長くなる可能性もある
児童買春罪の公訴時効期間は5年です。
また、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が適用される可能性があるケースでは、公訴時効が完成するまでにさらに長期間を要します。
そのため、過去の児童買春事件について、安易に公訴時効の完成を期待するのは避けるべきだと考えられます。
知らない間に被害者に、入念な捜査活動が展開されてしまうと、自首や示談交渉などの防御活動を展開するチャンスを失ってしまうからです。
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