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風俗嬢を妊娠させた人が取るべき対処と中絶や示談トラブルの最適な相談先

一歩法律事務所
南 陽輔
監修記事
風俗嬢を妊娠させた人が取るべき対処と中絶や示談トラブルの最適な相談先

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風俗店で働く女性従業員・風俗店側から「妊娠した」と告げられたらどんな気持ちになるでしょうか。普通に利用しただけであれば「そんなわけない」と判断できますが、現実に本番行為をしてしまっていたら強く否定できないでしょう。

本来、妊娠して赤ちゃんができるというのは喜ばしいことですが、それが風俗店を利用したケースでは不安や後悔を抱える人が大半です。女性従業員にとっても、仕事で出会っただけの男性の子どもの出産を希望することは少ないので、双方にとって大きなトラブルに発展する可能性が高いでしょう。

ここでは、風俗店側から「妊娠した」と言われた場合に取るべき行動や、発生しうるトラブルへの対処法を、法律的観点から解説していきます。

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女性従業員に「妊娠した」と言われたらとるべき行動

本番行為は売春防止法に反する違法行為ですが、客側への罰則規定はないため、客が売春防止法違反で処罰されることはありません。つまり、女性従業員との合意・同意の上ならば、本番を行うこと自体が問題になることはありません。

ただし、女性従業員との合意・同意なく本番を行うことは、民事上の不法行為に当たりますし、態様によっては強制性交等罪(刑法177条)等の刑事罰が科されることになります。風俗店における強制性交等罪の「性交」とは、男性器を女性器に挿入する行為を指します。挿入した時点で「性交」に当たるため、射精したかどうかは関係ありません。

女性従業員と本番を行ってしまい、突然「妊娠した」と言われたら、当然自分が父親になることなど考えてもいないでしょうから不安になることでしょう。さらに、風俗店側から、「責任を取れ」とか「中絶費用を支払え」等と言われると、パニックになってしまうのも当然です。しかし、まずはいったん落ち着いて、冷静に対処するようにしましょう。

①女性従業員や風俗店の言い分を鵜呑みにしない

女性従業員や風俗店から「妊娠した」と言われても、すぐには信用しないでください。まず、そもそも本当に妊娠しているかどうか事実確認する必要がありますし、もし説明どおりに妊娠が事実だったとしても、他の客とも本番をしているかもしれませんし、父親が誰であるかははっきりとわからない状況である可能性もあります。

さらに、相手が悪質な風俗店の場合だと、妊娠すらしていないのに中絶費用や慰謝料等のお金をだまし取ろうとしていることもあります。妊娠したと言われても、そのまま鵜呑みにせず、冷静になりましょう。

②相手との会話の録音や文章のログを保存しておく

女性従業員や風俗店の店長などから言われた内容は記録しておきましょう。やりとりの様子を録音・録画するのがベストですが、もしできなかった場合は、言われた内容等をメモに残しておきましょう。メールやLINE等の電磁記録なども証拠になります。

場合によっては、そもそも相手側の情報が事実でないこともありますし、他の客とも本番をしていて複数の客と同時に示談交渉を進めていることなどもあるでしょう。そうした場合、話し合いを重ねていく中で、女性従業員・風俗店側の主張に矛盾が生じますので、そうした風俗店側の矛盾点を突くためにも、対策として会話内容を記録するのが重要です。

また、風俗店側が中絶費用や慰謝料の支払いを求める中で、「痛い目に遭うぞ」とか、「早く支払え」などの威圧的な言動を取っていた場合には、風俗店側を脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)で告訴できる可能性もあります。そうした犯罪の立証のためにも、風俗店側の言動を記録しておくのは効果的です。

③妊娠した確証が出るまで中絶費用を払わない

風俗店側から中絶費用の支払いを求められても、妊娠したことの確証が得られるまでは支払わないようにしましょう。もし妊娠していないにもかかわらず金銭を要求された場合、風俗店は詐欺罪(刑法246条)または、お金を払う前なら未遂罪(刑法第250条)で処罰されることなります。

基本的に、中絶費用としていったんお金を支払ってしまうと、実際には妊娠していなかったことが後日分かったとしても取り返すのは大変です。一刻も早く解決したいという気持ちは分かりますが、妊娠したかどうか確信もない状態でお金を支払うことはやめましょう。

妊娠の可能性がある場合は産婦人科の医師が妊娠検査し、その結果、妊娠が事実であれば妊娠証明書(診断書)を発行します。妊娠証明書は行政から母子手帳をもらう際にも必要になるので、妊娠証明書の発行を求めることは特別なことではありません。風俗店側から「妊娠した」と言われた場合には、少なくとも、こうした妊娠証明書の提示を求めましょう。

女性従業員に対しては、妊娠証明書の提示と懐胎時期を尋ねるなどして、自分が女性従業員と本番を行った時期と重なるかどうかも確認しましょう。

なお、本番の際に膣外に射精し、膣内には射精してないから妊娠するはずがないと考える人もいるかもしれませんが、膣外射精の場合でも、性行為の最中に出た微量の精子によって妊娠することもあります。そのため、「膣外に射精したから父親は自分ではない」と安易に判断するのは危険です。避妊具(コンドーム)を付けた場合も100%大丈夫とは言い切れません。

また、中絶手術を受けた後には、中絶手術を受けたことの診断書ないしは領収書等の提示を求め、確実に中絶手術を受けたことを確認しましょう。

④連絡を断ったり無視したりしない

女性従業員・風俗店から「妊娠した」と連絡がきたときに、対応を拒否することはやめましょう。病院を受診して妊娠したことが分かっており、自分が子供の父親であることも間違いない場合には、誠意をもって交渉する必要があります。連絡を絶ったり無視したりすると、自宅・勤務先・実家に押しかけてくることもあり得ますし、待ち伏せされて暴力を振るわれるなどのトラブルにもつながりかねません。

また、もし連絡が取れなくなって女性従業員がそのまま出産し、DNA鑑定等で自分が子供の父親であることが後から明確になったときには、その子どもの養育費の支払義務を負うことになります。望まない妊娠であったとしても、父親には法律上の扶養義務が生じます。こうした事態を回避するためにも、連絡を絶ったり無視したりせず、誠実な姿勢で交渉することが大切です。

⑤可能な限り迅速に第三者に介入してもらう

女性従業員・風俗店から「妊娠した」と連絡がきたときには、可能な限り迅速に風俗店側との交渉について、第三者に介入してもらいましょう。冷静な判断や対処ができない状態で自力交渉してしまうと、本来なら見抜けたはずの風俗店側の虚偽が見抜けずに中絶費用等を支払ってしまったり、過大な請求に応じてしまったりすることもあり得ます。

こうした事態を回避するためには、できるだけ早い段階で第三者に介入してもらうのが良いと言えます。家族や友人等でも良いですが、できれば、法律知識のある弁護士が望ましいでしょう。

女性従業員の妊娠が引き起こす二次トラブルへの適切な対処法

女性従業員・風俗店から「妊娠した」と連絡が来た場合、当然、妊娠したことを告げるだけでは終わらず、お金などの何らかの要求をされることになります。ここでは、風俗店側の要求内容に応じて、対処法を解説します。

損害賠償や慰謝料を請求される

女性従業員が妊娠したことを告げられた場合、風俗店側からは中絶費用や損害賠償・慰謝料の支払いを求められることが多いでしょう。

この点について、女性従業員が妊娠したことが事実であり、自分が子供の父親であることが間違いないのであれば、一定の慰謝料の支払義務が生じるのはやむを得ません。前提として、合意の上での本番行為であったとしても、それが原因で女性従業員は中絶・堕胎という身体的・精神的な苦痛や負担を負うことになりますので、相手の男性側がそれに対して民事上の賠償義務を負うのはやむを得ないと言えます。

なお、妊娠が事実でなければ慰謝料等の支払義務はありません。もし、他にも本番をした客がいる場合には、男性らで中絶費用を分割して負担するという交渉の仕方もあるでしょう。

また、このようなトラブルでは、一般的に風俗店側は数百万円以上の過大な慰謝料請求をしてくることもあります。個別の事情によって目安となる金額は異なりますので、提示された金額が妥当か心配な場合は弁護士に相談するのが良いでしょう。

女性従業員の休業補償を請求される

女性従業員が中絶手術を受けたことで、体が回復するまでの期間の休業補償を風俗店側から要求されることもあります。この点についても、妊娠したのが事実で、自分が子供の父親である可能性があるのであれば、一定期間の休業補償は、相当因果関係のある損害として支払義務を負うこともやむを得ないと言えます。

ただし、慰謝料同様、風俗店側が過大な要求をしてくることもあります。例えば、休業1日につき50万円とか、休業期間を1年間で計算して請求してくることもありえます。どこまでが正当な範囲かというのは個別の事情にもよりますので、風俗店と誠実に交渉して妥協点を探りましょう。1人で対応するよりも、法律知識のある弁護士に介入してもらった方がスムーズに進むはずです。

「本番行為」に対しての罰金や罰則を言い渡される

風俗店は、当然ながら表向きは本番行為を禁止しており店側で独自に本番行為の罰金を定めていることもあります。女性従業員の妊娠が発覚したことで、客と女性従業員が本番を行ったことを風俗店が初めて知り、中絶費用等とは別に本番行為の罰金を求めてくることもあるでしょう。

しかし、女性従業員との合意の上で本番を行ったのであれば、一方的に罰金を負わされるのは不当とも言えますし、本番行為の際に女性従業員へ別途金銭を支払ったのであれば、その点も交渉材料の一つとすべきです。

店側が独自で罰金制度を定めていたしても、それは客に対して拘束力を持ちません。仮に利用前の誓約書に本番行為の罰金について記載があり、客が署名していたとしても、その金額が過大である場合は誓約書が無効となるケースもあります。

「家族や勤め先にバラす」と脅迫される

風俗店側から「家族や勤め先にばらす」と脅されることもあります。しかし、風俗店側としては、そのようなことを実行するメリットは何もありません。単にお金を支払わせるための脅しの言葉に過ぎません。

しかし、だからといって風俗店側の言い分を無視していると、腹いせに本当に家族へばらされるリスクもあります。風俗店側にとってメリットのない、単なる脅し文句に過ぎないと理解したうえで、冷静に交渉しましょう。

「強姦をしたと警察に通報する」と脅迫される

風俗店側から、「警察に通報する」と脅されることもあります。もし、女性従業員の同意なく無理やり本番を行ったのであれば、強制性交等罪(刑法177条)にあたるとして処罰される危険性があります。強制性交とは「暴力または脅迫を用いて性交すること」であり、「強姦(レイプ)」と同じ意味です。

当然、女性従業員との合意・同意の上で本番に及んだ場合には強制性交等罪は成立せず、合意・同意を得ずに行われたとしても、「暴力または脅迫」がなければ成立しません。

風俗店が「警察に通報する」というのは、単にお金を支払わせるための脅し文句として言っているだけの可能性もあります。しかし、もし実際に警察へ相談して刑事事件化してしまうと、いきなり逮捕される可能性は少ないものの、警察から事情を聴かれたり呼び出されたりすることもあるでしょう。したがって、風俗店の言い分も聞いた上で、冷静に交渉することが大切です。

人工妊娠中絶を行う場合に必要な手続き

女性が妊娠した場合、病院などの医療機関によらずに勝手に堕胎(中絶)することは犯罪にあたります(刑法212条~216条)。適法に中絶するためには、必ず産婦人科の医師による人工妊娠中絶の手術を受けなればなりません。また、現在の法律上、人工妊娠中絶を選択できるのは妊娠22週に至る前までとされています。

人工妊娠中絶については、医療技術の発展により、現在では日帰り手術で対応できる医療機関も増えています。

原則として男性の同意書が必要

産婦人科で人工妊娠中絶を受けて堕胎するためには、原則として相手方男性の同意が必要です(母体保護法3条)。なお、暴行・脅迫による姦淫で妊娠した場合、相手が不明な場合などは例外的に同意が不要です(母体保護法14条)。

中絶手術を行う医師は、女性従業員に対して、「同意書がないから手術できない」と言うことがあります。これを受けて、女性従業員・風俗店側から、同意書へのサインを求められることがあります。自分が女性従業員を妊娠させた可能性があるのであれば、同意書へのサインもやむを得ないでしょう。

なお、同意書にサインをしたとしても、「自分が子供の父親であることを認知した」という法律的な拘束力は生じません(ただし、自分が子供の父親であることを証明する一要素となる可能性はあります)。

人工妊娠中絶の方法

男性の同意書があり、かつ女性従業員本人が希望する場合には、産婦人科で人工妊娠中絶を受けることができます。中絶の方法は妊娠の週数によって違いがあり、初期中絶(12週未満)の場合には吸引法(麻酔で眠っている間に吸引チューブを子宮頚管内に挿入して、子宮内の胎児や胎盤などの内容物を吸い出す方法)や、掻爬法(鉗子とキュレットという医療器具を使用して、子宮内容物を書き出す方法)が用いられます。

中期中絶(12週~21週)では、多くの場合、分娩法(手術前日に子宮口と子宮頸管を拡張するための処置を行い、翌日に子宮収縮剤を投与して分娩方式で行う方法)が用いられます。いずれにしても、強制的に堕胎するということは、女性従業員の身体に負担がかかります。

ちなみに、手術費用は自由診療であり、具体的な金額は産婦人科医師で異なりますが、一般的には初期中絶の方が低額というところが多いようです。

妊娠後22週以降は「母体保護法」により手術できない

妊娠後22週を超えると、母体保護法に基づき人工妊娠中絶は受けられません。したがって、女性従業員・風俗店と中絶に関して交渉可能な時期は、妊娠後22週(約5ヶ月)までです。女性従業員の精神的負担・身体的負担を減らすためにも、できる限り早急に交渉してください。

女性従業員の妊娠トラブルを弁護士へ相談をするメリット

女性従業員の妊娠トラブルについて弁護士に相談した場合、次のようなメリットが望めます。

適正な条件で示談を結ぶことができる

女性従業員・風俗店によっては、数百万円を超えるような過大な請求を受けることもあります。しかし、実際のところ、どの程度であれば妥当なのかというのは、知識がなければ判断できないでしょう。弁護士であれば、こうしたトラブルも依頼でき、個別の事情に応じて適正な慰謝料額を判断し、風俗店側と交渉してくれます。

また、弁護士が代理人として交渉する場合には、最終的に示談書等の書面を作成しますが、その中に清算条項や守秘義務条項などを入れてくれます。

清算条項とは、今後お互いに一切のかかわりを持たない、何ら請求しないという確認をするものであり、これを入れておかないと、示談後に風俗店側から「別の損害が生じた」と、何かしらの請求をされてしまうこともあります。また、守秘義務条項とは、お互いにこの示談の内容を他人に口外しないことを約束するというものです。これを入れておくことで、風俗店側が家族・友人・知人・勤務先などに知らせることを回避できます。

弁護士は法律事務を熟知し、日々法律トラブルに対応しています。弁護士に依頼すれば、適正な条件で示談し、トラブルを解決できるでしょう。

家族や職場にバレないように解決できる

悪質な風俗店であれば、「家族・職場にばらすぞ」等と言って脅してくることもあります。弁護士に代理人についてもらえば、風俗店に対して、家族や職場に連絡することは違法行為である旨を告げて、こうした行為をしないように止めてもらうことができます。

また、弁護士が依頼者の家族や職場に直接連絡することはまずありません。弁護士に相談することで、家族や会社には内緒のまま悩みを解消でき、生活への悪影響を最小限に抑えられます。

二次的なトラブルを避けることができる

女性従業員との妊娠トラブルでは、中絶費用や慰謝料などのほか、本番を行ったことについて罰金の支払いを求められることもあります。そのほかにも、「これは強姦に当たるから刑事告訴する」等と脅されるなどの二次的なトラブルもあるでしょう。

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弁護士に介入してもらえば、こうした風俗店側の請求に対しても、法的視点から冷静に対応してくれます。示談の中で一挙解決を図り、刑事事件化するなどの二次的トラブルの回避が望めるでしょう。

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まとめ

風俗店の女性従業員・風俗店側から妊娠したと告げられた時は、以下の点に留意してください。

  • 本当に妊娠しているかどうか、自分が父親の可能性があるかを確認する。
  • 十分な事実確認をせずに、安易に中絶費用や慰謝料を支払わない
  • 風俗店側との会話内容を記録として残す
  • 風俗店側との連絡を断ったり無視したりせず、誠実に交渉する
  • 妊娠が事実であれば早期に示談して、女性従業員に中絶手術を受けてもらう必要がある

女性従業員の妊娠が間違いなければ、一定の慰謝料の支払はやむを得ないものと認識しましょう。ただし、過大な要求に応じる必要はありません。どこまでが正当な要求か、自分では判断できない場合は、法律知識のある弁護士に法律相談しましょう。

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この記事の監修者
一歩法律事務所
南 陽輔 (大阪弁護士会)
大阪大学法学部卒業。法律事務所に12年勤務した後、2021年3月独立開業。いわゆる「町弁」として、労働トラブルや、離婚トラブル等の一般民事事件全般、刑事事件トラブルなどを主に取り扱っている。
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編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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