不法滞在で強制送還される際の流れ|強制送還を回避するための方法についても解説
- 「不法滞在が見つかったら、すぐに国外退去になるのだろうか」
- 「家族と離れ離れになるのでは」
日本に不法滞在している方の中には、このような不安を抱える人も多いでしょう。
不法滞在は入管法(出入国管理及び難民認定法)に違反するため、発覚すると原則として「強制送還」の対象となります。
しかし、すぐに送還が決定するわけではなく、手続きの中で本人の事情が考慮される制度も存在します。
この記事では、強制送還の基本的な仕組みや流れ、そして合法的に日本に残るための方法をわかりやすく解説します。
不法滞在の状態にある本人だけでなく、支援したいご家族にも役立つ内容です。
最悪の事態を回避するために、まずは正しい知識を身につけましょう。
不法滞在者の強制送還(退去強制)手続きとは?
強制送還とは、日本にいる外国人を母国へ送り返す手続きの通称です。
一般的には、出入国管理及び難民認定法(入管法)で規定された「退去強制」のことを指して使われます。
退去強制とは、オーバーステイや資格外活動などの不法滞在が判明した場合におこなわれる手続きのことで、入管法第24条に以下のように規定されています。
(退去強制)
第二十四条 次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により本邦からの退去を強制し、又は第五十五条の二第一項の規定による命令により本邦から退去させることができる。
(中略)
ロ 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項の規定により本邦に在留することができる期間を含む。第二十六条第一項及び第二十六条の二第二項(第二十六条の三第二項において準用する場合を含む。)において同じ。)を経過して本邦に残留する者
ただし、全ての不法滞在者に対してすぐに強制送還がおこなわれるわけではなく、調査・審査の過程で本人の事情を述べる機会も設けられています。
出国命令制度との違い|簡易に出国できる手続き
不法滞在であっても、事情によっては「出国命令制度」が利用できる場合があります。
出国命令制度は、本人が自ら不法滞在を申し出ており、ほかの入管法違反がなく、過去に強制送還などを受けていない状況で適用が検討される制度です。
出国命令を受けると収容されずに手続きが進み、比較的短期間で自ら帰国できます。
この制度を利用した場合、原則として日本への再入国禁止期間が1年と短くなる点も大きな特徴です。
不法滞在者が強制送還されるまでの基本的な流れ
不法滞在が確認された場合、退去強制手続きは以下の流れで進みます。
- 入国警備官による調査がおこなわれる
- 入管の施設に身柄を拘束される
- 入国審査官による審査がおこなわれる
- 主任審査官から退去強制令書が発付される
- 速やかに日本から出国させられることになる
ここでは、手続き全体の流れを順を追って説明します。
1.入国警備官による調査がおこなわれる
強制送還の対象となるおそれがある場合、最初に入国警備官が不法入国や不法残留などの事実について調査します。
調査の過程で「容疑なし」と判断されればそのまま在留が継続されますが、「容疑あり」とみなされた場合は次の段階に進むことになります。
調査が開始されるきっかけは、他者からの通報や職務質問、あるいは本人からの申告などさまざまです。
2.入管の施設に身柄を拘束される
調査の結果、不法滞在に該当する「疑うに足りる相当の理由」が認められると、収容令書が発付され、対象者の身柄が収容されます。
通常は入管の収容施設に収容され、期間は最大で60日間です。
一定の事情が認められれば仮放免が許可されることもありますが、退去強制が最終的に決定した場合は、出国まで収容が続くことになります。
3.入国審査官による審査がおこなわれる
収容されたあと、対象者は48時間以内に入国審査官に引き渡されます。
入国審査官は不法入国や不法残留の事実について改めて審査し、退去強制事由に該当するかどうかを判断します。
審査の結果「容疑なし」と判断されれば在留は継続されますが、「容疑あり」と認定された場合は、本人に対してその旨が通知されます。
認定内容に異議がある場合には、口頭審理を求めることが可能です。
4.主任審査官から退去強制令書が発付される
入国審査官が不法入国や不法残留などの事実を認定し、その内容に対象者が異議を述べない場合、主任審査官によって退去強制令書が発付されます。
退去強制令書は、日本からの退去を命じる正式な文書です。
令書が発付されると、対象者にはその旨が書面で通知され、以後は送還に向けた準備が進められます。
5.速やかに日本から出国させられることになる
退去強制令書が発付されると、対象者は速やかに日本からの退去手続きへ移行します。
送還は入管の管理下で実施され、航空機などによって本国等へ移送され、退去強制の処理は終了です。
対象者は一定期間、日本への再入国が認められなくなります。
不法滞在者が強制送還を回避するための2つの方法
不法滞在と判断された場合でも、すぐに強制送還が確定するわけではありません。
手続きの途中には、本人の事情を詳しく説明し、引き続き日本での在留を求めることができる制度が用意されています。
ここでは、強制送還を適法に回避するために利用できる代表的な方法として「在留特別許可」と「口頭審理」の2つを取り上げ、その仕組みと申請のポイントを解説します。
1.在留特別許可の申請手続きをおこなう
在留特別許可は、退去強制事由に該当する外国人でも、個別事情を考慮して法務大臣が例外的に在留を認める制度です。
申請できるのは、収容中・仮放免中・監理措置中の外国人で、退去強制令書が発付される前が受付期間です。
収容されている場合は、申請意思を伝えたうえで入国審査官等との面接を通じて申請します。
もし仮放免中や監理措置下にある場合は、地方出入国在留管理官署へ出頭し、面接のあとに申請します。
なお、16歳未満や病気などで申請できない場合は家族が代理で申請可能です。
必要書類は状況によって異なり、永住者であれば在留カードの写し、日本国籍の経歴がある人は除籍謄本、人身取引被害者は陳述書、難民認定者は認定証明書を提出します。
審査では、家族の存在、日本での生活期間、就労状況、違反態様、健康状態などが総合的に判断されます。
2.口頭審理を申し入れる
入国審査官の判断に誤りがあると感じた場合は、口頭審理を申し入れることで、強制送還を避けられる可能性があります。
口頭審理は、特別審理官が事実関係や法の適用を改めて確認し、本人の説明を直接聞いたうえで判断する手続きです。
審理では、対象者が自分の事情を直接説明でき、必要な資料を提出することもできます。
弁護士や行政書士の同席が可能で、事前の許可があれば知人の立会いも認められています。
例えば、「滞在資格の更新申請中だった」「家族の急病で一時的に期限を過ぎてしまった」など、事実関係に誤解がある場合は口頭審理で事情を説明可能です。
口頭審理にも納得できない場合は「異議の申出」ができる
特別審理官の判断にも納得できない場合には、異議の申出をおこない、法務大臣の最終判断を求めることが可能です。
異議申出は最終的な判断を求める手続であり、法務大臣または委任を受けた地方入管長が記録を精査するため、判断が覆る可能性が残されています。
不服の理由を記載した書面を主任審査官へ提出する方法でおこない、期限は特別審理官の判定通知を受けてから3日以内です。
異議が認められなければ退去強制令書が発付されますが、事情によっては最終段階で在留特別許可が与えられる例もあります。
不法滞在の強制送還に関するよくある質問
ここでは、不法滞在中の強制送還に関するよくある質問について解説します。
Q.強制送還された場合に家族に影響は出るのか?
家族の中に有罪判決を受けた人がいても、本人が有罪となっていない限り、通常は在留資格の延長や永住許可に直接の影響はありません。
家族に前科があることだけを理由に、在留期間の更新が認められないといった扱いはされません。
注意すべきなのは「家族滞在」の在留資格で日本に滞在しているケースです。
家族滞在は、扶養する側の家族が日本で適法に在留していることが前提とされています。
そのため、扶養者となる家族が強制送還されてしまった場合、家族滞在の在留資格は根拠を失うことになります。
この場合、引き続き日本に滞在することは難しく、一度出国するか、自分自身で別の在留資格を取得する必要があります。
Q.強制送還にかかる費用は誰が負担をするのか?
強制送還が決定すると、出国のための交通費などの費用が必要になります。
この費用負担の考え方には、3つのパターンがあります。
まず、基本となるのが本人による自費負担です。
強制送還に必要な費用は、原則として本人が自分で負担することになります。
次に、以前に多くおこなわれていた国費での負担があります。
現在でも、対象者が費用を準備できない場合や経済的に支払えないと判断される場合には、国が費用を負担して送還を実施することがあります。
最後に、運送業者が費用を負担するケースです。
例えば、強制送還対象者が逃亡してしまった場合や、渡航先の国がその入国を拒否した場合など、運送業者に責任があると判断される状況では、航空会社などの運送業者が費用を負担することになります。
ただし、これは例外的な扱いで、発生頻度は高くありません。
Q.強制送還された場合に再入国することはできるか?
強制送還が実施されると、一定期間は日本へ再入国することができません。
この期間は「上陸拒否期間」と呼ばれています。
退去強制の場合、原則として強制退去の日から5年間は再入国することができず、強制退去が2回目以降の場合は10年となります。
一方、出国命令によって自主的に出国した場合には、上陸拒否期間は1年です。
再入国を希望する場合は、上陸拒否期間が経過していることが前提となり、そのうえでビザ申請をおこない、過去の退去歴を踏まえた審査を受ける必要があります。
事情によっては上陸特別許可が検討される場合もありますが、再入国が容易ではない点には注意が必要です。
さいごに|不法滞在をすると「強制送還(退去強制)」の対象になる!
不法滞在はそれ自体が退去強制事由であり、放置すると、収容や送還によって日本での生活を突然失う危険があります。
しかし、手続きの中では、本人の事情を説明し、在留継続を求めることができる制度も存在します。
在留特別許可は、日本での生活基盤や家族関係などを総合的に考慮して判断される重要な救済制度です。
また、認定内容に誤りがある場合には、口頭審理や異議申出を通じて判断の見直しを求めることができます。
強制送還の問題は、本人だけでなく家族の生活にも大きな影響を及ぼすため、早い段階で制度を正しく理解し、適切に対処することが欠かせません。
不法滞在の状態に心当たりがある人や、家族が手続きの対象になっている人は、手続きが大きく進む前に、必要な情報を整理し、専門家への相談を検討することが重要です。
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