決闘罪とは?当てはまる行為と罰則・過去の逮捕例を紹介
決闘罪(けっとうざい)とは、正式には「決闘罪に関する件」として、国で定められている決闘や決闘に関与することを禁止した法律です。なかなか聞きなれない罪名で、実際に決闘罪で逮捕されるような事件はほとんどありません。
今回は、気になる決闘罪について、決闘罪とはどのような罪で万が一決闘罪の容疑がかけられてしまった場合はどのような対策ができるかを解説していきます。
決闘罪とはどんな罪?
お伝えのように、決闘罪とは決闘を禁止するための法律です。では、具体的に決闘とはどのようなものでどのような行為が決闘罪に該当するのかを解説していきます。
決闘とは?|暴行やケンカとの違い
そもそも決闘とは、2人以上の人物が事前に日時、条件、場所などを約束して戦うことです。ケンカとの違いは、あらかじめ約束がされていること。暴行との違いは、決闘を受ける側・挑む側どちらも戦うことに同意しているということです。
言い換えれば、約束もせずにその場で殴り合いにでもなればケンカとなりますし、相手に知らせずに暴行を加えるなどすれば、暴行・リンチなどが考えられます。その場合、今回の決闘罪は該当しません。
決闘罪が罪に問われる要件と法定刑
決闘罪に関しては全6条から成されており、決闘を行なった人物だけではなく、立ち会った人、付き添った人、場所を提供した人なども罪に問われてきます。
決闘を挑んだ者・応じたもの【6カ月以上2年以下の懲役】
まず、決闘罪は決闘を申し立てたり応じた時点で罪が成立します。決闘を行なう為の約束状を「果たし状」とも言いますね。近年ではメールやLINEなどの連絡手段も多種多様になってきていますが、メールでの決闘の約束も決闘罪に該当します。
決闘を申し込んだり、受けた場合の罰則は【6カ月以上2年以下の懲役】となります。
決闘を行なった者【2年以上5年以下の懲役】
実際に決闘を行なったとすると、罰則が重くなります。【2年以上5年以下の懲役】が法定刑で設けられています。
決闘立会人・立ち合いを約束した者【1カ月以上1年以下の懲役】
立会人とは、決闘の現場にいた人物になります。例えば、決闘の場所に集まった観覧者などです。決闘の立会人の罰則は【1カ月以上1年以下の懲役】です。
決闘が行われることを知って場所を提供した者【1カ月以上1年以下の懲役】
決闘がそこで行われることを知っていて場所を提供した人物も処罰の対象になります。罰則は【1カ月以上1年以下の懲役】です。一方で決闘を行なった人物が人の敷地内で勝手に決闘を行なっていたのであれば、住居侵入罪【3年以下の懲役/10万円以下の罰金】が問われることもあります。
決闘罪はかなり古い罪|本来、旧武士階級の果し合いを禁じる法律
また、決闘罪の大きな特徴として、非常に古くから設立された罪であることが言えます。決闘罪(決闘罪ニ関スル件)が制定されたのは、明治22年(1889年)の事で、100年以上前の法律です。
現在の法律の基盤ともなっている日本国憲法が成立されたのが1947年の事ですので、かなり古い法律だということが言えるでしょう。もともと決闘罪は旧武士階級の果し合いを禁じる為の法律で、実際に決闘罪で逮捕されることも少なく、まさしく過去の遺物という感覚に近いでしょう。
プロレス・K1などの格闘技は決闘罪にはならない
決闘の「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもつて争闘する行為」を見ると、プロレスやボクシング、K-1などの格闘技なども決闘罪に該当するのでは?と思う方も多いでしょう。しかし、これら格闘技は刑法35条の「正当行為」によって罰則を受けることはありません。
正当行為とは、プロレスなどの試合は勧興業務としてみなされて、正当行為となるので、罰則にならないというような法律です。一方で、一般の人がプロレスの真似事で、決闘罪となり得るケースがあります。
決闘の結果、人を怪我・死亡させてしまうと傷害罪や殺人罪になる
また決闘の結果、人にケガをさせてしまったり、死亡させてしまうと、決闘罪より重い罪が問われてきます。このことは後述しますが、決闘では怪我人が出ることも多いため、決闘罪ではなく別の罪に問われてくることも多いのです。
決闘罪で逮捕されるケースはごく稀
度々お伝えしていますが、決闘罪で逮捕されること自体が稀で、「決闘罪」という珍しい罪名であることから、決闘罪で逮捕されてしまうとニュースになることが多いです。こちらでは、決闘罪の傾向についてお伝えしていきます。
決闘罪で逮捕されたニュース
まずは、実際に決闘罪で逮捕された例を見てみましょう。
暴力団組員ら3人を決闘容疑で逮捕
暴力団組員のAと無職Bのトラブルにより、A「ぶち殺したろか。一人で来い」B「受けて立つ」と、決闘を行なったとして逮捕されました。また、決闘の当日Aと同じ暴力団組員のCも決闘に参加、Bが鼻の骨を折るなどの怪我をしました。
こちらで着目していただきたいことは、鼻の骨を折るなどの被害の大きかったBも決闘罪で逮捕されていることです。お伝えの通り、決闘罪では、決闘を受けて立った時点で罪が成立します。
参照「組員ら3人、決闘容疑で逮捕」
決闘容疑で少年14人書類送検
対立する少年グループと決闘するために凶器を所持して集まったとして、暴走族メンバー14人が摘発されたニュースです。決闘では、暴走族リーダーが暴走族の仲間を、相手となった高校生は地元の遊び仲間約40人を呼んで決闘に集まりました。
決闘では、金属バットなどの凶器を所持してきていた暴走族グループが一方的に素手の高校生側を暴行する展開になりました。決闘罪ではこのような不良漫画で見られるような、グループ同士の抗争・決闘に適用されることが多いです。
ルールを決めた決闘 22人を逮捕
岐阜県可児市の広場で、集団で殴り合いのけんかをしたとして14~19歳の少年ら22人が書類送検されました。少年らは、事前にLINEを使って場所や日時を決め、当日には「蹴らない」「髪の毛を掴まない」「凶器を使わない」とルールを決めました。
当日集まった22人が互いに入り乱れ、素手で殴るなどの行為をしました。参加していた少年の110番通報によって事件が発覚、決闘に参加していた少年ら22人が書類送検されています。
参照「「決闘だ!でも蹴り・凶器はなし」 少年22人書類送検、岐阜」
決闘罪で逮捕されると報道されやすい
「決闘罪」という名前自体が珍しく、適用されることも少ないため、決闘罪で逮捕されてしまうと報道機関に報道される可能性が高いでしょう。未成年の場合、本名は伏せられますが、成人の場合、実名報道をされる可能性が高くなってしまいます。
逮捕された事実を直接的に知られる可能性は極めて低いのですが、報道されたことにより周りの知人に逮捕の事実を知られてしまう可能性がかなり上がると言えるでしょう。
決闘罪と関連してくる罪
決闘には、暴行や凶器所持など、他の犯罪が関与してくることが考えられます。決闘を行なった結果、相手がケガ・死亡してしまった場合は、決闘罪ではなく、より重い罰則の罪で捜査が進められることがありますので、こちらでは決闘罪と関連してくる罪についてご説明します。
暴行罪【2年以下の懲役/30万円以下の罰金/科料/拘留】
暴行を加えた人物が傷害に至らなかった場合、暴行罪に問われることがあります。暴行罪の罰則は【2年以下の懲役/30万円以下の罰金/科料/拘留】です。決闘を行なった罪よりも刑罰が軽いため、決闘により怪我をした人物がいなければ決闘罪の刑で処断される可能性が高いです。
参照「暴行罪とは|成立する構成要件と傷害罪との違い」
傷害罪【15年以下の懲役/50万円以下の罰金】
決闘の結果、負傷者が出ると傷害罪に該当してきます。傷害罪の罰則は【15年以下の懲役/50万円以下の罰金】です。罰則も重いため、負傷者が出た決闘では傷害罪で捜査が進められることもあります。
参照「傷害罪とは?刑法での定義と逮捕後の流れ・示談交渉などを解説」
殺人罪【死刑/無期もしくは5年以上の懲役】
決闘により死亡者を出してしまうと、殺人罪が問われるケースがあります。ご存知の通り、殺人の罪は非常に重く、罰則も【死刑/無期もしくは5年以上の懲役】と重く、決闘により死亡者を出してしまうと、殺人事件もしくは傷害致死事件として捜査されていくでしょう。
参照「殺人罪とは|構成要件と量刑を解説」
凶器準備集合罪【2年以下の懲役/30万円以下の罰金】
元々暴力団などの抗争を早期に取り締まるために設立された凶器準備集合罪ですが、決闘で凶器を持って集まると、凶器準備集合罪に問われることもあります。凶器準備集合罪は【2年以下の懲役/30万円以下の罰金】となっているので、決闘を行なったのであれば罰則の重い決闘罪が適用されることが多いです。
決闘罪は未成年者も多い
上記のニュースでも多いように、決闘罪は未成年が起こしてしまうことが多いです。現在の日本で決闘が考えられるケースとしては、「暴走族の抗争」「不良同士のケンカ」「不良漫画や格闘技の真似事」などが多いです。
それらを行なってしまう年ごろとしては、思春期で反抗期になっている少年が多く、事実決闘罪のニュースを見てみても、被疑者が未成年になっていることが多いです。未成年の逮捕後の流れは、成人の場合と若干違いますので、以下のコラムを一度ご覧ください。
参照「少年事件での事件後の流れと解決へ向けた5つの弁護方法」
決闘罪で逮捕されてしまった場合の対処法
最後に、滅多に起こり得ることではないでしょうが、もし決闘罪でご家族の方や知人などの身近な方が逮捕されてしまった場合の対処法についてご説明していきたいと思います。
本人がきちんと反省すること
まず、決闘に関与してしまったことをきちんと本人がきちんと反省することが重要になります。決闘罪はお伝えのように、決闘を行なった人、申し立てた人、向けた人、立ち会った人、場所を提供した人、それぞれ逮捕の対象になります。
例えば、決闘で怪我を負わされた人のように「なんで自分も逮捕されるんだ?」という状況の方もいます。しかし、それでも決闘罪は決闘に関与した時点で罰則の対象になります。決闘に関与してしまったことをきちんと本人が反省してください。
弁護士に相談すること
逮捕された後は、誰でも一度は無料で弁護士を呼ぶことができます。当番弁護士制度というものです。逮捕された後の流れや、今後のアドバイスなど、より具体的な解決策をもらうためにも弁護士に相談することは忘れないようにして下さい。
【関連記事】「当番弁護士とは?呼び方や費用など、制度の概要をわかりやすく解説」
相手がケガをしてしまった場合は弁護士を通して示談をすること
相手がケガをしてしまった場合は、傷害罪に問われることもあります。その場合、怪我をさせた側が加害者、怪我をした側が被害者になります。示談交渉をすることで罰則を軽減できる可能性が高まります。
しかし、元々決闘をするような関係性だったため、本人同士の示談交渉が成立するとは考えにくいですし、本人同士が接触することも禁止されることが考えられます。そのような場合は、弁護士を通して示談交渉をすることを検討してください。
【関連記事】「傷害罪とは?刑法での定義と逮捕後の流れ・示談交渉などを解説」
まとめ
いかがでしょうか。「決闘罪」という普段聞きなれない罪ですが、現在も法律で決闘罪が設けられており、決闘を行なえば決闘罪で逮捕される可能性もあります。
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