刑事事件では、捜査手続きの中で検察庁への呼び出しがおこなわれることもあります。
なかには、突然検察庁から呼び出しを受けて「今後どうなるのか心配」「何を聞かれるのか不安」という方もいるでしょう。
検察庁からの呼び出しは、主に事件の取り調べや起訴・不起訴の判断などのためです。
呼び出しは任意ではあるものの、無視や拒否すると逮捕されたりするおそれがあるため、連絡を受けた際は素直に応じましょう。
本記事では、検察庁から呼び出しを受ける理由や呼び出し方法、呼び出しを受けた際の準備や対処法、呼び出された場合にどうなるのかなどを解説します。
検察庁から呼び出しを受けている方へ
検察庁から呼び出しを受けた場合、対応次第では逮捕・勾留されたり、起訴されて前科が付いたりするおそれがあります。
もし呼び出しがあったら、なるべく速やかに弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士にサポートしてもらうことで、以下のようなメリットが望めます。
- 取り調べでの受け答えの仕方をアドバイスしてくれる
- 取り調べ当日に検察庁まで同行してくれる
- 被害者との示談交渉を代行してくれる
- 呼び出し後に逮捕された場合、早期釈放に向けて働きかけてくれる など
当サイト「ベンナビ刑事事件」では、刑事事件の加害者弁護に注力している全国の弁護士を掲載しています。
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検察庁からの呼び出しとは
刑事事件が発生すると、警察や検察などの捜査機関によって捜査が進められます。
捜査手続きの中では、検察庁が刑事事件の被疑者や参考人を呼び出して、事件に関する取り調べなどがおこなわれることもあります。
ここでは、検察庁の主な役割や、警察との違いなどを解説します。
検察庁とは
検察庁とは、検察官がおこなう事務を統括する法務省所属の行政機関のことです。
最高検察庁・高等検察庁・地方検察庁・区検察庁の4種類が設置されており、それぞれ対応する裁判所にて事件を扱います(検察庁法第1条、第2条)。
刑事事件での主な役割としては以下のとおりです。
- 被疑者や参考人への取り調べ
- 被疑者の起訴・不起訴の判断
- 被疑者の正式起訴・略式起訴の判断
- 刑事裁判での立証活動
- 刑罰の執行の指揮監督 など
検察と警察の違い

検察は「警察」と混同されがちですが、それぞれ刑事事件での役割は異なります。
刑事事件における警察の主な役割としては以下のとおりです。
- 刑事事件の捜査・被疑者の特定
- 被疑者の逮捕
- 被疑者や参考人への取り調べ
- 検察への事件の引き継ぎ など
ともに刑事事件を担当する組織であることは共通しているものの、一次的な捜査をおこなうのが警察で、二次的な捜査を検察がおこなうのが通常です。
上図のとおり、事件発生から事件送致までは警察が担当し、事件送致後は検察へと担当が変わって、起訴・不起訴の判断や刑事裁判などがおこなわれます。
検察庁から呼び出しを受ける4つの理由
刑事事件で検察庁から呼び出しを受ける主な理由としては、以下の4つがあります。
- 刑事事件の被疑者として取り調べをおこなうため
- 起訴・不起訴の判断を伝えるため
- 略式起訴の説明や手続きをおこなうため
- 参考人として詳しい話を聞くため
ここでは、それぞれの理由について解説します。
1.刑事事件の被疑者として取り調べをおこなうため
一つ目の理由は、刑事事件の被疑者として取り調べをおこなうためです。
検察官が起訴・不起訴を決定する際は、事件の被害状況や犯行の悪質性などのほか、被疑者側の主張や反省の態度といった個人的な事情も考慮されます。
検察官が「被疑者に確認したいことがある」「警察の取り調べでは調べきれていない部分がある」などと判断した場合、呼び出しを受けて取り調べがおこなわれることもあります。
なお、刑事事件は、被疑者の身柄を拘束して捜査手続きが進行する「身柄事件」と、身柄を拘束せずに進行する「在宅事件」の2種類に分類されます。
身柄事件の場合、刑事施設で身柄拘束された状態で取り調べがおこなわれます。
一方、在宅事件の場合は、日常生活を送りながら警察署や検察庁からの呼び出しを適宜受けることになります。
2.起訴・不起訴の判断を伝えるため
検察官が、被疑者に起訴・不起訴の判断を伝えるために呼び出すこともあります。
起訴とは、検察官が裁判所に対し、被疑者への処罰を求める手続きのことです。
起訴された場合、被疑者は被告人となり、裁判が開かれて有罪無罪や量刑が言い渡されます。
一方、不起訴とは、検察官が「被疑者を裁判にかけない」と判断することです。
不起訴となった場合、裁判は開かれずに捜査終了となり、被疑者は前科も付かずに解放されます。
3.略式起訴の説明や手続きをおこなうため
検察官が被疑者を略式起訴する場合、手続きのために呼び出しを受けることになります。
略式起訴とは、検察官が裁判所に対し、簡易的な手続きで被疑者への処罰を求める起訴方法のことです。
一般的な起訴方法である「正式起訴」とは異なり、略式起訴となった場合は書面だけでスピーディに審理がおこなわれ、被告人は裁判所に出廷することなく刑罰が言い渡されます。
ただし、略式起訴にはいくつか要件があり、被疑者の同意がなければ認められません。
検察官が「略式起訴が相当」と判断した場合は、呼び出しを受けて略式起訴について説明され、同意するかどうか判断を求められることになります。
なお、被疑者は略式起訴を拒否することもでき、拒否した場合は正式起訴が選択されるのが通常です。
4.参考人として詳しい話を聞くため
刑事事件の当事者ではない人に対しても、参考人として事情聴取のために呼び出すこともあります。
刑事事件の参考人とは、被害者・被疑者の家族・友人・目撃者・専門家などが該当します。
単なる参考人として呼び出された場合は、事件に関する詳しい話を聞かれるだけで、基本的に逮捕されたりすることはありません。
ただし、なかには犯行を疑われているものの、まだ容疑が固まっていないため「参考人」という形で呼び出される場合もあり、事情聴取後に容疑が固まれば逮捕されることもあります。
検察庁から呼び出しがこない3つの理由
刑事事件では「警察での取り調べが終わってから数ヵ月経っているのに、検察から呼び出しがこない」というようなケースもあります。
検察庁から呼び出しがこない主な理由としては、以下の3つがあります。
- 捜査に時間がかかっているから
- 担当検察官が別の事件に対応しているから
- すでに不起訴処分となって捜査終了しているから
ここでは、それぞれの理由について解説します。
1.捜査に時間がかかっているから
事件状況が複雑なケースや、大した証拠が集まっていないケースでは、検察官が事件関係者への聞き込みや証拠の補強などをおこなっていて、なかなか呼び出しがこないこともあります。
検察は、必要な捜査を十分に尽くしたうえで起訴・不起訴を判断します。
身柄事件であればタイムリミットが定められているためスピーディに進行しますが、在宅事件の場合は特に定めがないため長期化しやすい傾向にあります。
2.担当検察官が別の事件に対応しているから
検察官は、複数の事件を並行して担当しているのが一般的です。
特に担当検察官が身柄事件と在宅事件の両方を抱えている場合、タイムリミットがある身柄事件のほうが優先されて、なかなか在宅事件には対応してもらえないこともあります。
弁護士を通じて対応を求めれば動いてくれる場合もありますが、実際の担当検察官の処理状況によっても異なるためケースバイケースです。
3.すでに不起訴処分となって捜査終了しているから
「すでに不起訴処分となって捜査終了しているため、検察庁からの呼び出しがこない」というケースもあります。
法律上、検察官は被疑者に対して不起訴の決定を知らせる義務はありません。
自分が不起訴処分となっているかどうか確認したい場合は、担当検察官に直接連絡するか、検察庁にて不起訴処分告知書を請求することで確認できます。
不起訴処分告知書とは、不起訴処分が確定した際に取得できる書類のことで、請求を断られた場合はまだ捜査が続いている可能性があります。
検察庁からの呼び出し方法・期間
ここでは、検察庁からの呼び出し方法や呼び出しまでの期間、呼び出し回数などを解説します。
呼び出し方法は2種類ある
検察庁からの呼び出し方法は、電話と手紙の2種類あります。
呼び出し日時は検察庁が指定し、もしやむを得ない事情で対応できない場合は日時変更できないか連絡しましょう。
応じてくれるかどうかは対応先次第ですが、場合によっては別日に変更できることもあります。
1.電話
電話の場合、担当検察官から以下の事項が伝えられます。
電話を受けた際は、聞き逃しがないようにメモに書いておきましょう。
- 日時
- 場所
- 連絡先
- 当日の持ち物
- 担当者氏名・担当部署 など
なお「自分は逮捕されるのか」「どのような罰則を受けるのか」などの事件に関する質問については、今後の捜査に支障が出るおそれがあるため基本的に答えてくれません。
2.手紙
電話ではなく、検察庁から自宅に手紙が送られてくる場合もあります。
内容は電話の場合と同様で、呼び出し日時・場所・連絡先などが記載されています。
もしやむを得ない事情で対応できない場合や不明点がある場合などは、手紙に記載されている電話番号に連絡しましょう。
呼び出しまでの期間
検察庁から呼び出しを受けるまでの期間は、それぞれのケースによって異なります。
早ければ、警察から検察への事件送致後1ヵ月程度で呼び出しを受けることもあります。
一方、検察の捜査に時間がかかっている場合や担当検察官が多忙な場合などは、数ヵ月程度要することもあります。
呼び出しの回数
多くの場合、検察庁からの呼び出しは1回~2回程度で済みます。
すでに証拠が揃っており、被疑者が犯罪行為を認めている「自白事件」の場合は、1回呼び出されて取り調べを受けるだけで済むのが一般的です。
一方、証拠が不足していて、被疑者が犯罪行為を認めていない「否認事件」の場合は、何度も呼び出しを受けるおそれがあります。
検察庁から呼び出しを受けた場合の準備
ここでは、検察庁からの呼び出しに応じる場合の準備について解説します。
呼び出し当日の服装
呼び出し当日の服装については、特に指定はなく自由です。
ただし、あまりにも派手な格好やだらしない服装では、検察官からの印象が悪くなるおそれがあります。
ビジネスカジュアルなど、なるべく清潔感のあるきちんとした服装で臨むことをおすすめします。
呼び出し当日の持ち物
検察庁からの呼び出しに応じる際は、基本的に身分証と印鑑が必要となります。
なお、場合によっては事件に関連する資料の持参を求められることもあります。
詳しくは電話や手紙で連絡を受けた際に指示がありますので、担当検察官の指示に従えば問題ありません。
検察庁から呼び出しを受けた場合の3つの注意点
検察庁から呼び出しを受けた場合、対応次第では逮捕されたり起訴されたりするおそれがあります。
なるべく不利な立場を回避するためにも、呼び出しを受けた際は以下の点に注意しましょう。
- 黙秘権の行使は慎重に判断する
- 供述調書にサインする際は記載内容をよく確認する
- 示談書や嘆願書がある場合は持参する
ここでは、それぞれの注意点について解説します。
1.黙秘権の行使は慎重に判断する
検察庁から呼び出されて取り調べを受ける際、被疑者には黙秘権が認められているため、答えたくない質問には答えなくてもかまいません。
被疑者以外の参考人も同様で、供述を強要されることはありません。
ただし、安易に黙秘権を行使してしまうと取り調べが長期化したり、「反省の意思がみられない」と判断されて、結果的に長期間の身柄拘束を受けたりするおそれがあります。
黙秘権を行使すべきかどうか悩んだ際は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
2.供述調書にサインする際は記載内容をよく確認する
取り調べを受ける際は、被疑者の供述内容をまとめた供述調書が作成されます。
供述調書は刑事手続きにおいて重要な書類で、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、刑事裁判などの場面で参考材料として用いられます。
もし事実と異なる供述調書が作成された場合、のちに裁判で不利な証拠となるおそれがあります。
供述調書への署名・押印を済ませたあとは、原則として記載内容の変更は認められません。
取り調べを終えて供述調書への署名・押印を求められた際は、記載内容に間違いがないことを確認したうえで応じましょう。
3.示談書や嘆願書がある場合は持参する
被害者と交渉して示談書や嘆願書を取り交わした場合は、検察官に提出しましょう。
示談書や嘆願書を提出することで「当事者間では問題解決している」「被害者が寛大な処分を求めている」などと判断され、加害者側に有利な事情として働く可能性があります。
ただし、刑事事件では、被害者が加害者との直接交渉を拒否するケースも多くあります。
被害者との示談を考えているのであれば、弁護士に交渉代行を依頼することをおすすめします。
検察庁から呼び出しを受けた場合は弁護士への相談がおすすめ
検察庁から呼び出しを受けた場合、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士のサポートを得ることで、以下のようなメリットが望めます。
- 今後の見通しを立てることができる
- 検察庁での取り調べに同行してくれる
- 取り調べの受け方をアドバイスしてくれる
- 被害者と示談して不起訴処分を獲得できる可能性が高まる
ここでは、弁護士に相談・依頼するメリットについて解説します。
1.今後の見通しを立てることができる
実際に検察庁から呼び出しを受けると、法律知識のない素人ではどのように対応すればよいかわからず、今後の見通しもつかずに不安になるものです。
弁護士に相談すれば、今後の刑事手続きの流れや処分の見通しなどを説明してくれます。
刑事事件の加害者弁護が得意な弁護士なら、相談者が不安に思っていることにも寄り添って対応してくれて、精神面でのサポートも望めます。
2.検察庁での取り調べに同行してくれる
弁護士なら、検察庁への同行を依頼することも可能です。
1人で不安な気持ちを抱えたまま向かうよりも、弁護士に横に付いてもらったほうが精神的にも安定するでしょう。
さらに、弁護士が同行することで捜査機関による不当な取り調べがおこなわれにくくなる、というメリットもあります。
なお、原則として弁護士は取り調べに立ち会うことはできないため、取り調べの最中は近くで待機してもらうことになります。
3.取り調べの受け方をアドバイスしてくれる
弁護士なら、取り調べでどのように受け答えすればよいかアドバイスしてくれます。
取り調べでは、検察官の誘導に乗せられて不利な供述をしてしまうケースもあります。
場合によっては黙秘権の行使も有効ですが、安易に黙秘を貫くと取り調べが長期化したりして精神的・肉体的に疲弊するおそれもあります。
事前に弁護士のアドバイスを受けておくことで適切な対処が望めます。
なお、弁護士に検察庁への同行を依頼した場合は、取り調べの直前や休憩時間中などのタイミングでアドバイスしてもらうことも可能です。
4.被害者と示談して不起訴処分を獲得できる可能性が高まる
弁護士なら、被害者との示談交渉を依頼できます。
被害者との示談が成立すれば不起訴処分を獲得できる可能性が高まりますが、加害者との直接交渉には応じてくれないことが多く、連絡先すらわからずに何もできないケースもあります。
第三者である弁護士が間に入ることで、警察や検察を通じて被害者の連絡先を入手できたり、被害者が交渉に応じてくれたりする可能性があります。
弁護士なら、被害者側にも寄り添いながら交渉を進めてくれてスムーズな示談成立が期待できますし、示談成立後の示談書作成も一任することができます。
検察庁からの呼び出しに関するよくある質問
ここでは、検察庁からの呼び出しに関するよくある質問について解説します。
検察から呼び出されたらどうなるの?不起訴は無理?
検察庁から呼び出された場合、事件について取り調べを受けたり、略式起訴に同意するかどうかの判断を求められたりします。
まだ取り調べの段階であれば、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
不起訴処分の可能性を高めるためには、弁護士に依頼して被害者との示談を成立させたり、素直に取り調べに応じて反省の態度を示したりするのが有効です。
検察からの呼び出しは任意ですか?無視するとどうなる?
検察庁からの呼び出しは任意であるため、無視や拒否することも可能です。
出頭を無視・拒否したからといって、直接的に罰則が科されることはありません。
ただし、正当な理由なく呼び出しに応じない場合、捜査機関側が「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断して逮捕される可能性が高まります。
したがって、検察庁から呼び出しを受けた際は素直に応じることをおすすめします。
検察からは何回ぐらい呼び出される?
多くの場合、検察庁からの呼び出しは1回~2回程度で済みます。
すでに証拠が揃っており、被疑者が犯罪行為を認めている「自白事件」の場合は、1回呼び出されて取り調べを受けるだけで済むのが一般的です。
一方、証拠が不足していて、被疑者が犯罪行為を認めていない「否認事件」の場合は、何度も呼び出しを受けるおそれがあります。
さいごに|検察庁から呼び出しを受けたら、ベンナビ刑事事件で相談を
検察庁から呼び出しを受けた際は、どのような立場で呼び出されたのかを把握し、弁護士に相談して適切な対応を取ることが大切です。
検察庁からの呼び出しは任意ではあるものの、無視や拒否すると逮捕されるおそれがあります。
刑事事件の被疑者として疑われている場合、慎重に対応しないと起訴されて有罪判決となり、前科が付く可能性もあります。
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