家族や身内が、すでに強制わいせつ罪で逮捕されている場合、早急に弁護士へ相談すべきかもしれません。
強制わいせつ罪は深刻な犯罪であり、重大な刑事処分を受ける可能性もあります。今後のことも考えると、早い段階で弁護士に相談して損はありません。
逮捕から起訴までは、長くても23日間しかありません。
刑事事件が得意な弁護士を探し、刑事弁護を依頼しましょう。
強制わいせつ事件については、被害者による被害届をきっかけとして捜査が進められ、被疑者の逮捕に至るケースが少なくありません。この記事では強制わいせつ事件における被害届の意味や、被疑者としてどのように対応するべきなのかについて簡単に説明します。
【関連記事】【被害者向】性犯罪被害の相談窓口|弁護士のサポート内容も紹介
すでに家族が逮捕されていたら早急に弁護士に相談
家族や身内が、すでに強制わいせつ罪で逮捕されている場合、早急に弁護士へ相談すべきかもしれません。
強制わいせつ罪は深刻な犯罪であり、重大な刑事処分を受ける可能性もあります。今後のことも考えると、早い段階で弁護士に相談して損はありません。
逮捕から起訴までは、長くても23日間しかありません。
刑事事件が得意な弁護士を探し、刑事弁護を依頼しましょう。
そもそも刑法第176条に定められている強制わいせつ罪とは、どういった犯罪なのか理解しておきましょう。刑法上の正確な条文は、以下のとおりです。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
刑法第百七十六条 強制わいせつ
強制わいせつ罪は、暴行や脅迫によって相手の反抗を著しく困難にしつつ、わいせつ行為をしたときに成立する犯罪です。たとえば、相手を押し倒して無理やり体を触る行為などが典型ですが、態様が悪質な痴漢行為が強制わいせつ罪として立件されることもあります。
また、痴漢行為も衣服の中に触れたり、わいせつ行為をしているとみなされたりすれば、強制わいせつ罪が適用される場合もあるのです。ちなみに相手の同意がある場合には、強制わいせつ罪は成立しません。
しかし、被害者が13歳未満の場合には、暴行や脅迫は構成要件となりません。相手の同意があろうがなかろうが、わいせつ行為に及んだ時点で強制わいせつ罪が成立します。
強制わいせつ罪の法定刑は「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」です。罰金刑はなく、有罪になったら必ず懲役刑が適用される重罪と言えるでしょう。
もちろん初犯でも実刑判決を受けて、直ちに刑務所へ収監されることも考えられます。また、執行猶予があったとしても、有罪判決で前科がつくことには間違いありません。
強制わいせつ罪で被害者から被害届を提出されれば、加害者は逮捕・勾留され、最終的に起訴される可能性があるでしょう。日本の刑事裁判は、統計上、有罪となる割合が99.9%を超えると言われています。
仮に起訴された場合、たとえ起訴事実を否認していても、有罪を回避することは難しいかもしれません。もしも前科がつくのを回避したいと考えるのであれば、起訴前の逮捕・勾留の段階での対応が重要と言えるでしょう。
早期に弁護士に相談・依頼をして、検察が起訴・不起訴を判断する勾留期間の間に、何らかの対応をすることを検討してください。
ただし、確実に的確な対応をしたい場合、弁護人を指定できない国選弁護人よりも、刑事事件に関する経験が豊富な、私選弁護人を選択する方がおすすめと言えます。活動原資も国選弁護人より幅があるため、相対的に手厚いサポート・刑事弁護が期待できます。
関連記事:勾留とは|拘束される期間と要件・早期釈放を目指す5つの方法を解説
強制わいせつ罪で逮捕され、起訴や有罪判決といった不利益を避けたい場合、被害届を取り下げてもらうことを検討してみてください。提出された被害届を取り下げてもらいたいのであれば、まず優先的に検討するべきは被害者との示談協議を進めることです。
被害者との間で示談が成立すれば、事件は被害者・加害者間では解決したことになりますので、被害者側が被害届を取り下げるという対応をするのが通常です。なお、被害者が被害届を超えて、刑事告訴している場合も同様です。
被害届と一緒に話題になることがある「告訴」ですが、それぞれ意味が異なります。被害届と告訴の意味や、その役割を確認しておきましょう。
用語 |
意味・役割 |
被害届 |
被害者が捜査機関に被害を申告すること。 事実上の申告に過ぎず、捜査機関は捜査義務を負うことはないが、被害届を端緒として捜査を開始することがある。 |
告訴 |
被害者が捜査機関に被害を訴え、加害者に対して処罰を求める意思表示をすること。 告訴が受理された場合、捜査機関は捜査義務を負うため、捜査を開始しなければならない。 |
示談が成立した場合、一般的にはこれらの取り下げが行われます。取り下げ専用の書面があるわけではありませんが、「当事者間で解決してるので加害者の刑罰を望まない」旨の書類を提出するのです。
誰でも作成できる書類ですが、文言の一つ一つに気を配る必要があります。一般的には弁護士に作成してもらい、内容に納得できれば署名をしてもらうものです。
被害者のいる犯罪の場合、捜査機関の捜査には被害者の協力が不可欠です。被害者が自主的に被害届や刑事告訴を取り下げたような場合、捜査機関としては被害者の協力が得られません。
刑事手続きを進めることは困難であるとして、捜査を終了したり、事件を起訴しないという判断をすることがあります。
また、被害者により被害届や告訴が取り下げられたという場合、事件が当事者間では解決していることを重視して、事件を起訴しないという判断をする場合もあるでしょう。被害者が被害届や告訴を取り下げるかどうかは、その後の刑事手続の方向性を決める上で、重要となる場合があります。
示談には、当然に被害弁償も含まれますので、被害者側にも事件により被った損害が、一定程度補填されるメリットがあります。したがって、加害者としては、犯罪事実が事実であれば、被害者との間で示談協議を進めることを積極的に検討するべきでしょう。
被疑者又は被疑者の近親者が被害者と直接示談交渉を進めるのは、一般的に困難です。被疑者本人は、逮捕・勾留されていれば被害者への連絡が物理的に不可能であり、示談協議どころではありません。
仮に身柄を拘束されていなくても、性犯罪の被害者であれば、通常、被疑者からの連絡に対して強い拒否反応を示すでしょう。このことは被疑者近親者にも同じことが言えます。
被害者の連絡先を知っていればともかく、これを知らない場合には捜査機関から連絡先を入手する以外方法はありませんが、被疑者や被疑者近親者が尋ねても、情報は開示されないことがほとんどです。
したがって、強制わいせつ罪のような性犯罪で、被害者との間で示談協議を進めたいのであれば、刑事弁護人のサポートは不可欠です。
強制わいせつ罪で逮捕されたとき、どのような弁護士に弁護を依頼すれば良いのでしょうか。ここでは、強制わいせつ罪で被害届を出されている場合の、刑事弁護人の選び方を紹介します。
ひと言で「弁護士」と言っても、得意分野や積極的に取り組んでいる分野はさまざまです。弁護士であれば刑法や刑事訴訟法の基礎知識は有していますが、誰しもが刑事事件を得意としていたり、経験が豊富だったりするとは限りません。
強制わいせつ罪の刑事弁護を依頼したいなら、まずは「刑事弁護」に熱心に取り組んでいる弁護士を探しましょう。また、強制わいせつ罪は「性犯罪」に分類されるので、刑事弁護の中でも特に「性犯罪」に力を入れていて、解決実績の高い弁護士を選ぶと安心かもしれません。
強制わいせつ事件で「頼れる」弁護士は、どのように探せば良いのでしょうか。前述の通り、性犯罪・刑事事件の経験がある弁護士を含めて、確認すべきポイントを紹介します。
刑事事件に熱心に取り組んでいる弁護士の中でも、「性犯罪」に長けているかを調べます。各法律事務所のホームページや、紹介ページに記載してある、実績に関する情報を確認しましょう。
また、過去の解決実績や過去に執筆した書籍、重大な事件に弁護人として関わって判例時報等に掲載された実績などが掲載されているケースがあります。解決実績が豊富な弁護士であれば、さまざまな方法で被疑者をサポートしてくれることが期待可能です。
刑事弁護人を選ぶとき、ホームページの情報だけではなく、場所についても確認しておきましょう。弁護士事務所が拘束・捜査されている施設・組織(留置所・拘置所)の近くにあるかをチェックしてください。
実際の刑事弁護活動において、複数回弁護士に接見してもらう必要があるケースの場合、遠くの弁護士だと対応が難しくなるためです。
また、対応がスピーディでコミュニケーションをとりやすいことも、重要な要素かもしれません。本人が接見を依頼してもなかなか動いてくれない、被害者との示談交渉もなかなか進めてくれないと、刑事手続き上の弁護活動はもちろん、精神的にも不安があるでしょう。
相談をしてすぐに対応してくれるか、電話やメールでコミュニケーションを取りやすいか、会ったときの印象などの観点を交えて、依頼するかどうかの参考にしてください。
刑事弁護人には、本人の人生を左右する重大事項を任せることになり得ます。依頼者に親身な姿勢を持っていることが、頼れる弁護士の大切な要因と言えるかもしれません。
実際に会ってみたとき、家族や本人に誠実な態度で接してくれたり、何でも質問しやすかったり、要望を告げやすいなど、信頼関係を築きやすい弁護士に依頼を検討してみましょう。
強制わいせつ罪で被害者との間で示談を成立させ、被害届や告訴を取り下げてもらうために刑事弁護人のサポートが必須であることは上記のとおりです。実際に行われる示談協議について、具体的に確認しておきましょう。
弁護士(刑事弁護人)が被害者との示談交渉を進める際には、以下のような流れで対応します。
被害者との間で示談協議をするということは、前提として被疑事実に間違いがないことを認めた上で、被害者との間で事件解決の話し合いをするということです。そのため、被疑事実が事実ではない、争いがあるという場合、そもそも示談協議を進めることが困難な場合がほとんどです。
したがって、被害者との間で示談協議を進めるかどうかを判断する前提として、被疑者・弁護人間で被疑事実に間違いはないのか、被疑事実が間違いないことを前提に示談協議を進めてよいかについて十分協議する必要があります。
被害者との間で示談交渉を進めるためには、まず被害者の連絡先を入手する必要があります。この点、被害者と加害者が顔見知りであり連絡先を知っているなどの場合でなければ、捜査機関を通じて入手する以外に方法はありません。
刑事弁護人は、捜査機関を通じて被害者に示談の意向があるかどうかを確認してもらい、示談の意向がある場合には捜査機関に連絡先を教えてもらいます。被害者側に一切示談の意向がない場合、この時点で連絡先を取得できず、示談協議を進めることは不可能となります。
被害者側が連絡先を教えてくれるかどうかが、一つの判断の分かれ目になると言えます。
被害者との示談交渉では、被疑事実を認めた上での謝罪、被害者の被った損害(精神的損害を含む)の弁償、これを条件とする加害者への宥恕(許すこと)等を協議します。あくまで示談が成立するかどうかは、当事者間に合意が成立するかどうかです。
被害者側が法外な賠償金を求めた場合、加害者側としてこれに応じることが不可能であれば、示談は成立しません。被害者側には示談に応じる義務はありませんので、話し合いで妥当なラインに決着できれば良いですが、そうでない場合は示談は成立しないということです。
刑事弁護人は、自身の知識・経験に基づき被害者が妥当なラインで示談に応じてくれるよう説明・説得を行うのが通常ですが、最終的には被害者側の意向が全てですので、必ずしも示談が成立しないこともあります。
被害者との間で示談が成立した場合、被害者が加害者を許し、被害届・刑事告訴を取り下げる旨約束してもらうのが通常です。しかし、被害者によっては、示談には応じるが、加害者を許す文言を示談合意に入れることや、被害届・刑事告訴を取り下げることを拒否するという対応をされることがあり得ます。
このような場合でも、被害者との間で示談が成立し、被害弁償が行われた事実は被疑者・被告人に有利な事情となり得ます。当該条件でも示談に応じるべきかどうかはケースバイケースですので、被疑者・被告人と弁護人で十分協議するべきでしょう。
強制わいせつ罪で被害者と示談するとき、具体的にどのくらいの示談金額を支払えば良いのでしょうか?
示談金は被害者に対する損害の補填の趣旨で支払われるものであるため、その金額はケースバイケースです。数十万円のケースもあれば、数百万円というケースもあるでしょう。
たとえば、以下のようなケースでは、示談金は高額になる可能性が否定できません。
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結局は、被害者が当該金額に納得するかどうかに関わりますので、低い金額でまとまる場合もありますし、高額でもまとまらない場合もあります。
被害者が示談交渉に一切応じないという場合、被害者に対する直接的な被害弁償は困難です。それでも何かしらの金銭的償いをしたいという場合、加害者側としてできることは、被害者に対する損害賠償金を法務局に供託したり、犯罪被害者支援を行う組織・団体に対する贖罪寄付を行うなどの方法があり得ます。
当該供託や贖罪寄付がどれほど有意義かはケースバイケースであり、一定の効果を有する場合もあれば、何ら意味がないという場合もあるでしょう。もっとも、当該供託や贖罪寄付はあくまで反省の念を外部に示す意味で行われるものであるため、意味がある・なしは重要なことではないかもしれません。
具体的な活動方針については、個別の事情に応じた対応が必要です。刑事弁護人と相談しながら、弁護の方向性を検討していきましょう。
強制わいせつ罪と提出される被害届、その意味や弁護士に期待できるか弁護活動について解説しました。
被害届・告訴の取り下げを目指す場合、示談協議を進めていくことが有効ですが、被疑者・被告人やその関係者が行えるものではありません。弁護士とよく検討して、示談協議を進めていきましょう。
また、選ぶ弁護士についても、刑事事件・性犯罪に関する経験・実績の差があることは否定できません。可能な限り不利益を小さくしたいのであれば、実績があり、スピーディーに対応してくれる親身な弁護士を選びましょう。
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