▶併合罪とは|観念的競合・牽連犯との違いや量刑の計算方法などを解説
▶詐欺罪で逮捕|初犯で執行猶予?懲役や逮捕後の流れ、逮捕事例など
観念的競合とは|牽連犯・併合罪との違いや刑罰の考え方を解説

観念的競合とは、1つの行動で2つ以上の犯罪を起こすことです。刑罰の考え方としては、2つ以上の犯罪の中で最も重い犯罪の刑罰が対象となります。
犯罪は必ずしも1回の逮捕で1つとは限りません。1回の逮捕で、いくつもの罪に問われる被疑者もいます。
そのような人は、どのような考えの元に刑事手続が行なわれるのでしょうか。関連した語句に「牽連犯」や「併合罪」などがあります。今回は、観念的競合を中心に、いくつかの犯罪が絡んできた場合の刑事手続の行なわれ方をご説明します。
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観念的競合の仕組みと刑罰の考え方
冒頭でもご説明しました。観念的競合とは、1つの行為で2つ以上の犯罪になることです。例えば、「警察官を殴る」という1つの行為は、暴行罪と公務執行妨害罪の2つの罪が成り立ちます。
また、拳銃を発砲し、1発の弾丸が貫通して結果的に2人が死亡したのであれば、2つの殺人罪になります。相手を1発殴って怪我をさせたのであれば、傷害罪と暴行罪が成り立ちます。これらは、2つ以上の犯罪に該当しますが、被疑者の行動は1回しか行なわれていません。このような場合、観念的競合になります。
観念的競合の特徴は1つの行為ということ
観念的競合の大きな判断基準として言えるのは、1回の行為が2つ以上の犯罪に当てはまることです。上記のように、「警察官を殴る」事で、暴行罪と公務執行妨害罪が成り立つようなことです。
ですので、例えば「相手の家に勝手に入って、物を盗んだ」のであれば、住居侵入罪と窃盗罪が成り立ちますが、「家に勝手に入る(住居侵入罪)」行為と、「物を盗む(窃盗罪)」行為は別になりますので、観念的競合ではありません。
観念的競合の刑罰の考え方
それでは、観念的競合の刑罰の考え方はどのようになっているのでしょうか。2つの罪を犯したからといって、2つ分の刑罰を受けるわけではありません。観念的競合の場合、法定刑が重い犯罪のみ適用されます。
例えば、「警察官を殴った」場合、暴行罪(2年以下の懲役|30万円以下の罰金・拘留・拘留)と公務執行妨害罪(3年以下の懲役・禁錮|50万円以下の罰金)が問われ、公務執行妨害罪での刑事手続が進められていきます。
ただ、警察を殴った事実があると、もちろんその事が量刑にも影響してきて、暴行を用いず警察を妨害した場合より、刑が重くなることは想像が付くのではないでしょうか。
観念的競合と牽連犯の違いは点と線
観念的競合に関連して、「牽連犯」というものが出てきます。こちらも同じく、複数の罪にあたることですが、イメージとしては点と線のような違いと捉えて下さい。具体的に説明すると、「警察を殴る」は、1つの行為で2つの犯罪にあたります。こちらが点で観念的競合ですね。
一方、「偽の書類を作成して、金銭を騙し取る」場合、2つの犯罪行為(公文書偽造罪・詐欺罪)にあたりますが、「偽の書類を作成する」という行為を行った上で、「金銭を騙し取る」行為を行なっています。言い換えると、一つの犯罪を行なう為に、別の犯罪も利用(関連)していることになります。
牽連犯も重い刑のみ適用
牽連犯も重い罪のみ刑が適用されます。「偽の書類を作成して、金銭を騙し取る」場合ですと、公文書偽造罪(3年以下の懲役|20万円以下の罰金※公務員のハンコなどを偽造した場合は懲役1年以上10年以下)と詐欺罪(懲役10年以下)で、公務員の書類を偽造していなければ、詐欺罪の刑罰が適用されるでしょう。
観念的競合と併合罪の違い
もう一つ、観念的競合と関連して、「併合罪」というものがあります。捉え方としては、観念的競合にも、牽連犯にも当てはまらない2つ以上の犯罪を起こした場合として良いでしょう。
例えば、2回発砲しAとBを殺害した場合、2回発砲していますので、観念的競合にはなりません。また、Aを殺害する理由とB を殺害する理由も関連してないですので、牽連犯も当てはまりません。(Aを殺害しようとしたら、BがかばってきたのでBを殺害して、Aを殺害したのであれば、牽連犯も考えられます。)
この場合、別の殺人罪をそれぞれ行なったとして、併合罪で刑事手続が行なわれます。また、連続事件(誘拐や殺人など)は、逮捕されるまで複数の犯罪を起こしています。この場合も、併合罪になります。
刑罰の受け方が変わってくる
併合罪が、観念的競合と牽連犯と大きく違ってくることが、刑罰の考え方です。併合罪に対する刑罰の考え方の根底として、起こした犯罪の刑罰を合計するという考えです。
例えば、罰金刑の場合、法定刑が30万円以下と設けられている暴行罪と、50万円以下と設けられている名誉毀損罪を併合罪で犯すと、合計の80万円以下の罰金となります。
懲役・禁固刑の併合罪の考え方
併合罪の懲役刑の場合、単純に合算するわけではありません。例えば、詐欺罪(懲役10年以下)と強要罪(懲役3年以下)の場合、重い刑に1.5倍が加重され、詐欺罪の懲役10年以下に1.5倍をした、懲役15年以下となります。この加重は、上限30年までとなっています。
海外の刑罰はなぜ何百年にもなるのか
余談にはなってしまいますが、テレビ番組や映画、ニュースなどを見ていて、海外で「懲役◯百年」という判決を受けた被告人を見たことがありませんか?これは、海外には、併合罪という考えが少なく、犯罪を複数起こしたのであれば、各犯罪の刑罰を、それぞれ加算しているからです。
ですので、仮に日本で、いくつも犯罪を起こして併合罪で最大30年の懲役でも、海外ではそれぞれが加算されて何百年となるのです。(もちろん日本でも、死刑や無期懲役刑に該当する犯罪にいくつも当てはまるようでしたら、死刑や無期懲役刑の判決を受けるでしょう。)
観念的競合や牽連犯が起きやすい犯罪
このように、併合罪になると、量刑が重くなってきます。刑事弁護の場合、併合罪になるか、観念的競合・牽連犯になるかということも見逃せないことです。観念的競合で、いくつかの犯罪が絡んでくる可能性が考えられる犯罪は、併合罪で量刑が重くなっていないかにも、注目してみてください。
強要罪
「相手を脅迫・暴行して、義務のないことを行わせる」というように、脅迫罪には、脅迫罪や暴行罪が関連してきます。ほとんどが、牽連犯となるでしょう。強要罪について詳しくは「強要罪の成立要件と逮捕された後の適切な弁護活動」をご覧ください。
詐欺罪
詐欺を行なうにあたって、他の犯罪を利用して、牽連犯となることも考えられます。詐欺罪に関して、詳しくは「詐欺罪の逮捕後の流れと対処法」をご覧ください。
公務執行妨害罪
公務執行妨害罪も、公務を妨害するにあたって別の犯罪を起こしていることが多くあります。例えば、「爆弾を仕掛けた」と脅迫罪を行ない、警察が出動すれば、脅迫罪と公務執行妨害罪の牽連犯になります。
まとめ
いかがでしょうか。2つ以上の犯罪を起こした場合の、観念的競合と牽連犯、併合罪の仕組みを理解していただけたでしょうか。複数の犯罪を起こした場合は、このような考え方がなされています。



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