暴行罪の時効は何年?刑事・民事の時効や加害者が取るべき対処法を解説
暴行罪には時効が定められており、犯罪の発生から一定期間を経過すれば検察官は起訴できなくなります。
暴行事件の被害者は加害者に対して損害賠償請求が可能ですが、被害者の損害賠償請求権についても時効が定められています。
暴行罪の加害者になった場合は、時効期間は何年なのか、どのタイミングで時効を迎えるのかを押さえておきましょう。
なお、捜査機関はさまざまな手段を尽くして犯人の特定や逮捕を目指すため、何もせずに時効完成を待つよりは、早いうちに弁護士に相談・依頼しておいたほうが賢明です。
本記事では、暴行罪の時効期間や時効の種類、時効の進行が停止するケースや、時効完成前の対処法などを解説します。
【結論】暴行罪の公訴時効は3年で成立する
結論として、暴行罪の公訴時効は「犯罪行為が終わったときから3年」です(刑事訴訟法第250条2項6号)。
暴行が終わってから3年が過ぎれば、検察官は被疑者を暴行罪で起訴できなくなります。
公訴時効の完成により検察官が起訴できなくなると、刑事裁判は開かれないまま捜査は終わるため、暴行罪での刑罰や前科が付くこともありません。
注意点として、なかには公訴時効の進行が停止したりすることもあり、必ずしも事件後3年で時効完成になるとはかぎりません。
公訴時効の進行停止については「暴行罪で時効の進行が停止するケース」で後述します。
暴行罪とは
暴行罪とは、他人に暴行を加えたものの、傷害を負わせていない場合に成立する犯罪です(刑法第208条)。
暴行罪の加害者になった場合、捜査機関に逮捕されて身柄が長期間拘束されたり、刑事裁判で有罪となって拘禁刑や罰金刑などの刑事罰が科されたりするおそれがあります。
ここでは、暴行罪の成立要件・刑罰・傷害罪との違いなどを解説します。
暴行罪についてより詳しく押さえておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
暴行罪の成立要件
暴行罪は、以下のような要件を満たしている場合に成立します。
- 相手に対して暴行を加えていること
- 暴行の結果、相手は傷害を負っていないこと
- 暴行が故意によるものであること
暴行の具体例は以下のとおりで、たとえ相手に直接触っていなくても暴行罪が成立する可能性があります。
- 相手の髪の毛を引っ張る
- 相手の胸ぐらを掴む
- 相手を突き飛ばす
- 相手に唾を吐きかける
- 相手の近くに物を投げつける
- 相手の至近距離で大声や大きな音を出す など
暴行罪の刑罰
暴行罪の加害者になった場合、以下のような刑罰が科されるおそれがあります。
- 2年以下の拘禁刑
- 30万円以下の罰金刑
- 拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に収容される刑罰)
- 科料(1,000円以上1万円未満の範囲内で、金銭を納付する刑罰)
なお、被告人として刑事裁判にかけられた際は、主に以下のような要素を総合的に考慮したうえで量刑が判断されます。
- 被害者の数
- 犯行の動機
- 暴行の内容
- 凶器の有無
- 計画性の有無
- 被害弁償の有無
- 前科や前歴の有無 など
暴行罪と傷害罪の違い
傷害罪とは、他人に暴行などを加えた結果、傷害を負わせた場合に成立する犯罪です(刑法第204条)。
暴行罪と傷害罪では、犯罪の成立条件や刑罰の重さなどが大きく異なります。
たとえば「相手に暴行を加えたものの、傷害は負わせていない」という場合は暴行罪、「相手に身体的なけがや精神的ダメージを与えた」という場合は傷害罪が成立します。
また、傷害罪の刑罰は「15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑(刑法第204条)」で、暴行罪よりも重く設定されています。
両者の違いについてより詳しく押さえておきたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
暴行罪の時効は2種類ある
暴行の時効に関しては「刑事上の時効」と「民事上の時効」の2種類があります。
ここでは、各時効の定義・時効期間・起算点などを解説します。
1.刑事責任の時効(公訴時効)|犯罪行為が終わったときから3年
刑事事件では、犯罪の発生から一定の時間が経てば検察官が被疑者を起訴できなくなる「公訴時効」という制度が定められています。
暴行罪の公訴時効は「犯罪行為が終わったときから3年」です(刑事訴訟法第250条2項6号)。
暴行が終わってから3年が過ぎて公訴時効が完成すれば、検察官は暴行罪で起訴できなくなり、刑事裁判は開かれないまま刑罰や前科も付かずに捜査終了となります。
なお、公訴時効の期間は犯罪の重さによって異なり、以下では暴行に関連する犯罪の公訴時効について解説します。
暴行に関連する犯罪の時効期間
暴行に関連する主な犯罪としては、傷害罪・脅迫罪・強要罪・公務執行妨害罪・不同意わいせつ罪・不同意性交等罪などがあります。
各犯罪の公訴時効をまとめると以下のとおりです。
| 犯罪の種類 | 公訴時効 |
|---|---|
| 傷害罪(刑法第204条) | 10年(刑事訴訟法第250条2項3号) |
| 脅迫罪(刑法第222条) | 3年(刑事訴訟法第250条2項6号) |
| 強要罪(刑法第223条) | 3年(刑事訴訟法第250条2項6号) |
| 公務執行妨害罪(刑法第95条) | 3年(刑事訴訟法第250条2項6号) |
| 不同意わいせつ罪(刑法第176条) | 12年(刑事訴訟法第250条3項3号) |
| 不同意性交等罪(刑法第177条) | 15年(刑事訴訟法第250条3項2号) |
ほかの犯罪の公訴時効や告訴期間との違いなど、公訴時効についてより詳しく押さえておきたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
2.民事責任の時効(消滅時効)|5年または20年
暴行事件では、被害者は加害者に対して治療費や慰謝料などの損害賠償請求が可能ですが、被害者の損害賠償請求権には「消滅時効」が定められています。
消滅時効の期間は、以下のうち早いほうが適用されます。
- 被害者が損害や加害者を知ったときから5年
- 不法行為のときから20年
なお、消滅時効が完成するためには、上記の時効期間を経過したうえで、内容証明郵便などを用いて消滅時効の完成を主張する「時効の援用」という手続きが必要です。
時効の援用がおこなわれると、被害者は加害者に対して損害賠償請求ができなくなります。
暴行罪で時効の進行が停止するケース
公訴時効や消滅時効については、途中で時効の進行が止まったりする場合もあります。
ここでは、時効の進行が停止するケースについて、時効の種類ごとに解説します。
1.暴行罪の公訴時効の進行が停止する事由
暴行罪の公訴時効の場合、以下のようなケースでは時効の進行が一定期間停止します。
| 公訴時効の停止事由 | 公訴時効の停止期間 |
|---|---|
| 検察官が被疑者を起訴した場合 | 裁判が確定するまでカウントが停止する(刑事訴訟法第254条第1項) |
| 検察官が共犯者を起訴した場合 | 裁判が確定するまでカウントが停止する(刑事訴訟法第254条第2項) |
| 犯人が国外にいる場合 | 犯人が国内に戻るまでカウントが停止する(刑事訴訟法第255条第1項) |
| 犯人が逃げ隠れし、有効に起訴状の謄本の送達・略式命令の告知ができなかった場合 | 起訴状の謄本の送達・略式命令の告知が可能な状態になるまでカウントが停止する(刑事訴訟法第255条第1項) |
2.損害賠償請求権の消滅時効の進行が停止する事由
損害賠償請求権の消滅時効の場合、「時効の完成猶予」や「時効の更新」などの制度が定められています。
- 時効の完成猶予:時効の進行を一時的にストップさせる制度
- 時効の更新:時効の進行がリセットされ、はじめからカウントし直す制度
具体的には、以下のような手続きが該当します。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 時効の完成猶予 | ・ 訴訟の提起(民法第147条1項1号) ・ 支払督促の申し立て(民法第147条1項2号) ・ 民事調停の申し立て(民法第147条1項3号) ・ 強制執行(民法第148条1項1号) ・ 仮差押え・仮処分(民法第149条) ・ 催告(民法第150条1項) ・ 協議の合意(民法第151条1項) など |
| 時効の更新 | ・ 確定判決・確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定(民法第147条2項) ・ 債務の承認(民法第152条1項) など |
暴行罪の加害者となった場合の3つの対処法
暴行罪の加害者になった場合、時効の完成を待つ以外にもできることはあります。
ここでは、暴行事件の加害者になった場合に取るべき対処法を3つ解説します。
1.弁護士に相談する
暴行罪の加害者になった際は、なるべく速やかに弁護士に相談しましょう。
弁護士なら、時効完成のタイミングや今後取るべき対応をアドバイスしてくれますし、逮捕の回避や減刑獲得に向けた弁護活動なども受けられます。
多くの法律事務所では初回無料相談を実施しており、無料相談のみの利用も可能です。
弁護士には守秘義務があり、相談内容が漏れることもないので、安心してご相談ください。
2.被害者と示談交渉する
暴行事件のように被害者のいる刑事事件では、被害者との示談交渉も有効です。
被害者との示談が成立すれば、加害者側に有利な事情として考慮され、捜査機関に身柄拘束されずに済んだり、前科や実刑を回避できたりする可能性が高まります。
被害者との示談交渉では、被害者に対して謝罪の意思を伝えて示談金額などを話し合い、話し合いがまとまれば示談書を交わして示談金を支払うことになります。
暴行罪での一般的な示談金相場は10万円~30万円程度ですが、被害者側の処罰感情の強さなどによっても変動します。
3.自首をする
暴行事件を起こした場合は、自首も検討しましょう。
自首は刑法にて、任意的減刑事由のひとつとして定められています(刑法第42条1項)。
自首が成立した場合も、加害者側に有利な事情として考慮され、重い処分を回避できる可能性が高まります。
暴行罪の時効完成前に弁護士に依頼する3つのメリット
暴行罪の加害者になった場合、弁護士は頼もしい味方として尽力してくれます。
ここでは、暴行罪の時効完成前に弁護士に依頼するメリットを3つ解説します。
1.被害者との示談交渉を代行してくれる
弁護士は、加害者の代理人として被害者との示談交渉を進めてくれます。
暴行罪での重い処分を回避するためには、被害者との示談交渉が有効です。
ただし、刑事事件の被害者は、加害者に対して怒りや恐怖心などを抱いているケースも多く、直接交渉しようとすると拒否されたり無視されたりするおそれがあります。
弁護士が間に入ることで被害者も交渉に応じやすくなりますし、被害者側の感情にも寄り添いながら冷静かつ的確な対応が望めるため、スムーズな示談成立が期待できます。
2.自首のアドバイスや自首当日の同行を依頼できる
弁護士は、自首に関するアドバイスやサポートもしてくれます。
暴行罪での重い処分を回避するためには、捜査機関への自首も有効です。
ただし、自首が成立するためには一定の要件を満たしていなければならず、素人が自己判断で警察署に出向いたりすると自首として扱ってもらえない場合もあります。
弁護士なら、自首の成立要件を満たしているのか法的視点から判断してくれますし、自首当日は逮捕阻止に向けた上申書を携えて同行してくれて、確実な自首の成立が望めます。
3.逮捕後も早期釈放や減刑獲得に向けた弁護活動が受けられる
暴行事件で逮捕されたあとでも、弁護士は早期釈放や減刑獲得に向けてサポートしてくれます。
刑事事件の被疑者として逮捕された場合、刑事手続きはスピーディに進行し、初動対応が遅れると身柄拘束が長期化したり起訴されたりするリスクが高まります。
弁護士なら、裁判所の勾留決定に対して不服を申し立てて釈放を求めてくれたり、検察官に意見書を提出するなどして起訴の必要がないことを主張してくれたりします。
刑事裁判でも、弁護士は被告人に有利な証拠を集めて検察側の主張に反論してくれて、執行猶予が付いたり罰金刑のみで済んだりする場合もあります。
暴行罪の時効に関するよくある質問3選
ここでは、暴行罪の時効に関するよくある質問について解説します。
1.暴行罪の時効は何年?起算点はいつ?
暴行の時効に関しては「刑事上の時効」と「民事上の時効」の2種類があり、時効の期間や起算点は以下のとおりです。
- 暴行罪の公訴時効:暴行が終わったときから3年(刑事訴訟法第250条2項6号)
- 損害賠償請求権の消滅時効:「被害者が損害や加害者を知ったときから5年」と「不法行為のときから20年」のどちらか早いほう(民法第742条、第742条の2)
暴行罪の公訴時効が完成した場合は、検察官は被疑者を暴行罪で起訴できなくなり、刑事裁判は開かれないまま捜査が終了します。
なお、損害賠償請求権の消滅時効が完成するには時効の援用が必要で、時効期間を経過したうえで時効の援用がおこなわれると、被害者は加害者に対して損害賠償請求できなくなります。
2.暴行罪を犯したら時効完成まで逃げ切れる?
暴行事件を起こした場合、時効完成まで逃げ切るのは現実的には困難です。
現在では捜査手法が高度化しており、防犯カメラの映像・DNA鑑定・スマホ位置情報の解析・SNSのデータ解析などによって、身元の特定や行動履歴の追跡が容易になっています。
「いつか突然警察に逮捕されるかもしれない」という恐怖や不安を感じながら生活を続けるのは、想像以上に大きな精神的負担となります。
事件後に逃げ隠れすると、心証が悪化して重い処分を受ける可能性も高まるため、ただ時間が過ぎるのを待って逃げ切ろうとするのは避けたほうが賢明です。
3.暴行罪で逮捕されたらどうなる?

暴行罪で逮捕された場合は、上図のような流れで刑事手続きが進行します。
警察官による取り調べや検察官への事件送致などの手続きがスピーディに進められ、逮捕後から数えると最大23日間の身柄拘束が続くおそれがあります。
検察官が起訴した場合は刑事裁判へ移りますが、起訴後の有罪率は99%以上と非常に高く、拘禁刑や罰金刑などの有罪判決が言い渡されるのがほとんどです。
暴行罪で刑罰や前科が付くことを回避したいなら、なるべく早い段階で弁護士に相談しましょう。
さいごに|暴行罪の加害者になったら、時効完成を待たずに弁護士に相談を
暴行罪の公訴時効は3年で成立しますが、時効完成まで逃げ切るのは現実的には困難です。
暴行罪の加害者になった場合は、速やかに弁護士に相談して適切な弁護活動を受けることで、逮捕の回避・早期釈放の実現・前科の回避・執行猶予の獲得などが望めます。
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