収賄(罪)とは?種類ごとの成立要件・法定刑・時効までわかりやすく解説
- 「収賄罪とはどんな罪か。」
- 「民間企業に頼まれ、金品を受け取る代わりに公務員の職権を使い相手の利益になることをしてしまった。これは収賄罪にあたるか。」
民間企業などから賄賂を受け取ってしまい、収賄罪にあたらないか不安を抱えている公務員の方もいるでしょう。
収賄罪には複数の種類があり、成立要件や法定刑、時効の期間は行為の内容によってさまざまです。
また、賄賂は現金に限らず、一定の条件を満たせば罪に問われる可能性があります。
本記事では、収賄罪の基本から種類別の要件や刑罰、注意点までを整理し、自身の状況を判断するための基礎知識を解説します。
収賄(罪)とは?|賄賂(わいろ)を受け取る公務員を罰する罪
収賄(しゅうわい)とは、公務員が職務に関して賄賂(わいろ)を受け取る、または要求・約束する行為を指し、収賄をおこなったものを処罰するのが収賄罪です。
一方で賄賂とは利益を得ることを目的として、関連する仕事上の権限をもつものに渡す金銭・物品を指します。
賄賂は一般企業などでもやり取りされる可能性があり、渡す相手は公務員に限られません。
ただし収賄は公務員が賄賂を受け取る場合に限った言葉であり、収賄罪の処罰対象は公務員のみです。
公務員は職務を公正におこない、国民の信頼を得なくてはなりません。
そのため刑法では、収賄罪の規定により公務員が賄賂を受け取ることを厳しく取り締まるわけです。
一般企業の社員などが不正に賄賂を受け取った場合は、背任罪など別の罪が成立します。
収賄罪と贈賄罪の違いは処罰対象が賄賂を受け取る側か贈る側か
収賄罪が賄賂を受け取る側の犯罪であるのに対し、贈賄罪の処罰対象は賄賂を贈る側です。
贈賄罪は、公務員の職務に関して賄賂を供与した、またはその申込みや約束をしたものを処罰する犯罪です。
刑法198条では、賄賂を供与した者に対し、3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金を科すと定めています。
収賄罪と違い、贈賄罪の対象は公務員に限定されません。
贈賄罪の主体は一般人です。
公務員が賄賂を受け取った場合、受け取った側の公務員が収賄罪で、贈った側(主に一般人)は贈賄罪で処罰されるわけです。
公務員には重い責任があることから、贈賄罪に比べ収賄罪の方が重い罪が科せられます。
賄賂とは金銭のやりとりだけではない
賄賂とは、職務に関して供与される不正な利益全般を指します。
金銭に限らず、有価証券や贈答品、接待、旅行やゴルフへの招待、債務免除、就職のあっせんなど、経済的価値を有する利益は広く賄賂に含まれます。
重要なのは「何を提供したか」ではなく、実質的に職務行為との対価関係があるかどうかです。
本人だけでなく、親族や関係者に対する利益供与であっても、実質的に賄賂と評価される場合があります。
収賄罪には複数の種類があり、それぞれ成立要件や法定刑が異なる
収賄罪には、単純収賄罪だけでなく、受託収賄罪、事前収賄罪、加重収賄罪など、いくつかの種類があります。
これらは、行為の内容や時期、職務との関係によって成立の条件が異なり、定められている法定刑も一様ではありません。
そのため、同じ「賄賂の受領」に見える行為でも、法的な評価が大きく変わることがあります。
具体的にどのような類型があり、どのような違いがあるのかについては、次項で詳しく解説します。
収賄罪の種類・成立要件・法定刑
収賄罪には複数の類型があり、行為の内容や時点、請託の有無などによって成立する罪名と法定刑が異なります。
ここでは、代表的な収賄罪の種類について、それぞれの成立要件と刑罰を整理します。
単純収賄罪|5年以下の拘禁刑
単純収賄罪は、公務員がその職務に関して賄賂を収受した場合、または賄賂の要求や約束をした場合に成立します。
単純収賄罪は、刑法197条1項前段に規定されており、収賄罪の中でも基本となる類型です。
実際に賄賂を受け取らなくても、要求や約束をした時点で犯罪は成立します。
法定刑は5年以下の拘禁刑です。
受託収賄罪|7年以下の拘禁刑
受託収賄罪とは、公務員が職務に関する具体的な依頼(請託)を受け、それを引き受けたうえで、賄賂を受け取ったり、要求したり、受け取る約束をした場合に成立する犯罪です。
受託収賄罪は、刑法197条1項後段に規定されています。
ここでいう「請託」とは、特定の職務行為をおこなうことについて依頼を受け、公務員がそれを承諾することを意味します。
たとえば、公務員が「この申請を許可してもらえれば金を払う」と頼まれ、「わかりました」と応じたうえで金銭を受け取ったような場合です。
単純収賄罪は、職務に関連して賄賂を受け取れば成立し、こうした具体的な依頼や約束がなくても足ります。
一方、受託収賄罪では、依頼された職務行為と賄賂との交換関係が明確で、公務の公正さを直接的に害する点に特徴があります。
そのため、受託収賄罪は単純収賄罪よりも社会的影響が大きいとして、7年以下の拘禁刑という重い法定刑が定められています。
事前収賄罪|5年以下の拘禁刑
事前収賄罪とは、公務員に就任する前の者が、将来担当する職務について具体的な依頼(請託)を受け、その見返りとして賄賂を受け取ったり、要求したり、受け取る約束をした場合に成立する犯罪です。
事前収賄罪は、刑法197条2項に規定されています。
たとえば、官公庁への内定者が「就任後にこの許認可を有利に扱ってほしい」と依頼され、「わかりました」と引き受けたうえで金銭の約束をした場合がこれに当たります。
単純収賄罪は、すでに公務員である者が、現に担当している職務に関して賄賂を受け取った場合に成立します。
これに対し、事前収賄罪の特徴は、まだ公務員ではない段階で、将来の職務を対象に請託と賄賂の関係が結ばれる点にあります。
なお、実際に公務員に就任しなかった場合には罪は成立しません。
法定刑は、5年以下の拘禁刑です。
第三者供賄罪|1年以上の有期拘禁刑
第三者供賄罪とは、公務員が職務に関する具体的な依頼(請託)を受け、その見返りとして、賄賂を自分ではなく第三者に供与させたり、その供与を要求または約束した場合に成立する犯罪です。
第三者供賄罪は、刑法197条の2に規定されています。
たとえば、公務員が「この許可を出す代わりに、私の親族の会社に金を支払ってほしい」と申し出て、相手がその要求に従った場合、金銭が公務員本人に渡っていなくても第三者供賄罪となります。
単純収賄罪では、賄賂は公務員本人が受け取ることが前提です。
これに対し、第三者供賄罪の特徴は、賄賂の受取先が親族や関係者などの第三者であっても、実質的には公務員への不正な利益供与と評価される点にあります。
このように、受取先を第三者にすることで処罰を免れることを防ぐため、第三者供賄罪が設けられています。
加重収賄罪|1年以上の有期拘禁刑
加重収賄罪とは、単純収賄罪や受託収賄罪などが成立したうえで、公務員が賄賂の見返りとして実際に不正な職務行為をおこなった、または本来おこなうべき職務をあえておこなわなかった場合に成立する犯罪です。
加重収賄罪は、刑法197条の3第1項に規定されています。
たとえば、公務員が金銭を受け取るだけであれば単純収賄罪にとどまりますが、その金銭と引き換えに不正な許可を出したり、本来拒否すべき申請を黙認したりした場合には、加重収賄罪となります。
また、不正な職務行為をおこなった後に、その見返りとして賄賂を受け取った場合でも成立します。
単純収賄罪は、「職務に関連して賄賂を受け取った」という段階で成立する犯罪です。
これに対し、加重収賄罪は、賄賂によって実際に職務の内容がゆがめられ、公務の結果そのものが不正となった点に特徴があります。
このように、職務の公正と社会的信頼を直接的かつ重大に害するため、加重収賄罪には収賄罪の中でも最も重い、1年以上の有期拘禁刑が定められています。
事後収賄罪|5年以下の拘禁刑
事後収賄罪とは、公務員が先に不正な職務行為をおこなった、または本来おこなうべき職務をおこなわなかったことについて、その「あとで」賄賂を受け取ったり、要求したり、受け取る約束をしたりした場合に成立する犯罪です。
事後収賄罪は、刑法197条の3第2項に規定されています。
たとえば、公務員が業者に便宜を図って不正な許可を出した後になって、「先日の件のお礼」として金銭を受け取った場合がこれに当たります。
このように、賄賂の約束が不正行為の前にある必要はありません。
単純収賄罪は、職務に関連して賄賂を受け取った時点で成立し、職務行為との時間的な前後関係は問いません。
これに対し事後収賄罪の特徴は、不正な職務行為が先におこなわれ、その結果に対する「後払い」として賄賂が供与される点にあります。
なお、在職中の不正行為に対する賄賂であれば、公務員を退職した後に受け取った場合でも成立します。
行為の時期により、法定刑は1年以上の有期拘禁刑または5年以下の拘禁刑とされています。
あっせん収賄罪|5年以下の拘禁刑
あっせん収賄罪は、公務員が職務に関する依頼を受け、ほかの公務員に職務行為をするよう働きかけた場合に適用されます。
その対価として、賄賂を受け取ったり、要求・約束したりすることがあっせん収賄罪が成立する要件です。
あっせん収賄罪は、刑法197条の4に規定されています。
たとえば、公務員が「同僚の担当者に話を通して欲しい」と頼まれ、その見返りとして金銭を受け取った場合がこれに当たります。
単純収賄罪は、公務員が自分の職務について、直接、賄賂を受け取る場合に成立します。
これに対し、あっせん収賄罪では、自分の職務ではなく、他人の職務を不正に動かす点が特徴です。
実際に職務をおこなっていなくても、影響力を利用した行為自体が処罰の対象となります。
収賄罪の時効は何年?
収賄罪には「公訴時効」があり、一定の期間が経過すると、検察が起訴できなくなります。
最も重い類型である加重収賄罪については、公訴時効は10年と定められています。
これは、賄賂の見返りとして実際に不正な職務行為がおこなわれ、公務の結果そのものがゆがめられるためです。
これに対し、単純収賄罪や受託収賄罪、事前収賄罪、事後収賄罪、あっせん収賄罪など、その他の収賄罪については、公訴時効は5年とされています。
一方で、賄賂を受け取る側ではなく、提供する側を処罰する贈賄罪については、公訴時効は3年と、収賄罪より短く定められています。
収賄罪についてよくある質問
ここでは、収賄罪についてよくある質問を紹介します。
収賄罪が公務員以外に適用されることはある?民間人にも適用される?
刑法上の収賄罪は、原則として公務員にのみ適用されます。
ただ、法律により公務員とみなされる「みなし公務員」も、その対象に含まれます。
みなし公務員とは、形式上は民間人だが国や公的制度に深く関わる業務を担うため、法律により公務員と同様に扱われる立場の人のことです。
具体的には、国立大学法人や日本銀行、日本年金機構などにおいて、法律で公務員とみなされる職務に従事する役職員が含まれます。
一方で、民間人が賄賂を受け取った場合は、原則として刑法の収賄罪がそのまま適用されることはありません。
その代わり、民間人については、社会福祉法や会社法などの個別法により、立場や業務内容に応じて、収賄に類する犯罪として処罰される可能性があります。
民間人は賄賂をもらっても処罰されない、というわけではないので注意ください。
収賄はいくらから罪になるの?
収賄罪は、公務員の職務と対価関係が認められれば成立する罪であり、金額の多寡によって左右されるものではありません。
少額であっても、職務との関連性や実質的な対価関係が認められれば、収賄罪が成立する可能性があります。
一方で、お中元やお歳暮など、職務とは無関係な私的交友関係に基づく社交儀礼的な贈与であれば、直ちに賄賂にあたるとは限りません。
もっとも、判例上は、形式的には社交儀礼の範囲に見える贈与であっても、実質的に職務との関連性や対価関係が認められる場合には、収賄罪が成立するとされています。
このため、贈与の金額だけでなく、その目的や経緯、贈与の時期、公務員の職務内容との関係性などを総合的に判断される点に注意が必要です。
さいごに|収賄の発覚が不安であれば弁護士に相談を!
収賄罪には複数の類型があり、それぞれ成立要件や法定刑が異なります。
賄賂にあたる行為の範囲も広いため、本人としては問題ないと考えていた行為が、法的には収賄罪に該当するケースも少なくありません。
収賄罪が成立した場合、刑事責任を問われるだけでなく、懲戒免職や失職といった重大な不利益を受ける可能性があります。
また、退職後であっても、在職中の行為について捜査や処罰の対象となることがあります。
業者からの接待や贈与について不安を感じている場合や、すでに警察から事情聴取を受けている場合には、早い段階で弁護士に相談しましょう。
専門家の助言を受けることで、自身の状況を正確に把握し、適切な対応を検討することができます。
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