侵奪とは?不動産侵奪罪の構成要件や具体例などの基本知識について詳しく解説
- 「侵奪ってどのような意味なの?」
- 「不動産侵奪罪はどんな行為で成立するの?」
このような疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。
不動産侵奪罪とは、他人が占有している土地や建物を、権限がないにもかかわらず力ずくで奪ったり、無断で占拠したりした場合に成立する可能性がある犯罪です。
境界トラブルや立ち退き問題、相続をめぐる争いなどをきっかけに問題化するケースも少なくありません。
しかし、「どこからが違法行為になるのか」「無断使用との違いは何か」がわからず、不安を感じている方も多いでしょう。
そこで本記事では、侵奪の意味や不動産侵奪罪の構成要件、具体例、成立した場合の刑罰についてわかりやすく解説します。
侵奪(しんだつ)とは?一般的には他人の所有物を奪う行為のこと
侵奪(しんだつ)とは、他人の領域や所有などを侵し、その権益や所有物を奪うことを意味する言葉です。
辞書では、「他人の領域や所有などをおかしてその権益・所有物などをうばうこと」と説明されています。
「侵」は「おかす」、「奪」は「うばう」という意味を持ち、単に物を取るというよりも、本来は他人に属するものを不当に取り上げるというニュアンスが含まれます。
刑法に定められている「不動産侵奪罪」とはどんな犯罪?
不動産侵奪罪とは、他人の不動産を侵奪した場合に成立する犯罪です。
刑法235条の2にて、以下のとおりに定められています。
(不動産侵奪)
第二百三十五条の二 他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
引用元:刑法 | e-Gov 法令検索
不動産侵奪罪は、刑法第36章「窃盗及び強盗の罪」に位置付けられており、窃盗の一類型とされています。
もともと刑法制定当初には存在しなかった犯罪ですが、昭和35年の法改正により新設されました。
その背景には、不動産の無断占拠をめぐる事件があり、不法占拠を処罰する必要性が高まったことが挙げられます。
なお、不動産侵奪罪は、発生頻度が高い犯罪ではありません。
しかし、無断占拠などの行為が刑事責任に発展する可能性がある点には注意が必要です。
不動産侵奪罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」
不動産侵奪罪に対して法律が定めている刑罰は「10年以下の拘禁刑」です。
罰金刑の規定はなく、有罪となれば拘禁刑が言い渡されます。
また、公訴時効は7年とされています。
さらに、親族間でおこなわれた場合には、刑法第244条の「親族相盗例」が適用され、一定の範囲で刑が免除されたり、告訴がなければ起訴できなかったりする特例もあります。
不動産侵奪罪が成立するための2つの要件と意味
不動産侵奪罪が成立する要件として、以下の2つが挙げられます。
- 対象が他人の不動産であること
- 侵奪行為がおこなわれたこと
各要件について、詳しく解説します。
1.対象が他人の不動産であること
本罪の対象となるのは、「他人の不動産」です。
ここでいう「他人」には、個人だけでなく法人も含まれます。
また、「不動産」とは土地およびその定着物を指します。
土地には、地表や地下だけでなく空中部分も含まれると考えられています。
そのため、所有者が一時的に不在であったり、十分に管理されていなかったりする不動産であっても、他人が所有または占有している不動産であれば、不動産侵奪罪の対象になり得ます。
2.侵奪行為がおこなわれていること
不動産侵奪罪における侵奪とは、不動産に対する他人の占有を排除し、自己または第三者に占有を移すことをいいます。
「占有」とは、物に対する事実上の支配を意味する法律用語です。
不動産の場合でも、本来の所有者が自由に使用・管理できない状態にし、自らが事実上支配する状況を作り出せば、占有を排除したと評価される可能性があります。
そのため、単なる一時的な立ち入りなのか、事実上の支配を移したといえるのかが重要な判断ポイントとなります。
一方で、不動産に対する事実的支配を侵害していない行為、たとえば登記の改ざんや虚偽申請による名義変更などは、不動産侵奪罪には該当しないとされています。
このような場合は、公正証書原本不実記載等罪など別の犯罪が問題となります。
不動産侵奪罪が成立する可能性がある具体的なケース
不動産侵奪罪は、「他人の不動産を侵奪した」と評価される場合に成立しますが、どのような行為が「侵奪」にあたるかは、占有の排除の程度や原状回復の容易さなどによって判断されます。
ここでは、実際に問題となった事例をもとに、具体的なケースを確認します。
1.他人の土地に勝手に家を建てた場合
他人の土地に無断で建物を建てる行為は、不動産侵奪罪に該当する可能性が高いとされています。
たとえ簡易的な建物であっても、土地所有者の警告を無視して使用を続けるなど、本来の所有者が自由に利用できない状態を作り出した場合には、「占有を排除した」と評価されることがあります。
実際に、無断で建物を建築し居住を続けた事案について、侵奪にあたると判断された裁判例(最高裁平成12年12月15日判決)があります。
2.他人の土地に車やごみなどを放置した場合
他人所有の土地を無断で使用し、車両や資材、ごみなどを継続的に置いている場合も、不動産侵奪罪が成立する可能性があります。
単なる一時的な使用にとどまらず、土地所有者が自由に利用できない状態を生じさせた場合には、「占有を排除した」と評価されることがあります。
一方で、原状回復が容易であり、実質的な損害がほとんど生じていない場合には、侵奪にあたらないと判断された例もあります。
3.他人の土地を勝手に耕して田畑を作った場合
他人の土地を無断で耕し、作物を植えて畑として利用する行為も、不動産侵奪罪が成立する可能性がある類型です。
このような行為は、土地所有者の占有を排除し、自己の占有に移したと評価されることがあります。
ただし、原状回復が容易で、土地所有者の受ける損害が極めて小さい場合には、侵奪にはあたらないとされた事案(大阪高等裁判所昭和40年12月17日判決)もあります。
4.他人の土地上に突き出す建築物を作った場合
土地の所有権は、地表だけでなくその上下にも及ぶとされています。
そのため、自宅を増築する際に隣地の空間部分へ建物を突き出させる行為も、隣地の占有を侵害することになります。
実際に、隣接地の上空部分に建物を張り出す形で増築した行為について、不動産侵奪罪の成立が認められた裁判例(大阪地方裁判所昭和43年11月15日判決)もあります。
さいごに|不動産侵奪罪が疑われる場合は早めに弁護士に相談しよう
不動産侵奪罪は、無断で建物を建てるような明らかなケースだけでなく、他人の土地に車両や資材、ごみなどを継続的に置くといった行為から問題となることもあります。
最初は「一時的な利用」のつもりであっても、土地所有者が自由に使えない状態が続けば、刑事責任に発展する可能性があります。
侵奪にあたるかどうかは、占有の程度や原状回復の可否など、具体的な事情を踏まえて判断されます。
自己判断で放置してしまうと、状況が悪化するおそれもあります。
不動産侵奪罪が疑われる場合には、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
弁護士に相談すれば、事実関係の整理や法的な見通しの説明を受けられるほか、撤去や示談など適切な対応策について助言を受けることができます。
トラブルを深刻化させないためにも、早期の相談を検討しましょう。
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