被疑者になったらどうなるの?被疑者に認められた権利や弁護士に相談するメリットなど
刑事事件の被疑者になると、逮捕や学校生活への影響など、悪い想像ばかりしてしまうはずです。
しかし、被疑者になったからといって、必ず刑務所に入ると決まったわけではありません。
憲法や刑事訴訟法には、被疑者となった場合に認められる権利が定められています。
権利を正しく行使し、早い段階で弁護士に相談すれば、逮捕を回避して処分を軽減できる可能性は十分にあるでしょう。
本記事では、被疑者になるケースや被疑者になった際に発生する手続き、被疑者になったときに覚えておくべき権利について解説します。
また、自分を守るために取るべき具体的な行動についても紹介します。
適切な行動を取るための参考にしてください。
被疑者になるのは捜査機関に犯罪の疑いをかけられたとき
被疑者とは、警察や検察などの捜査機関から犯罪の疑いをかけられ、捜査の対象となっている人物を指します。
実際に逮捕されているかどうかは関係ありません。
身柄を拘束されていなくても、自宅にいながら取調べを受けていれば被疑者になります。
被疑者は、あくまで犯罪を疑われている段階です。
裁判で有罪が決まったわけではないため、必ずしも被疑者=犯人とは限りません。
なお、テレビや新聞などのマスメディアでは、容疑者と呼びますが、法律の手続きでは被疑者という言葉を使います。
被疑者になったら発生する主な手続きや出来事
警察から疑いをかけられて被疑者になると、法律に基づいた捜査が進められます。
そのなかでも、特におさえておきたいのが以下の2つです。
- 捜査機関から取調べを受ける
- 場合によっては身柄を拘束される
それぞれの内容について、詳しく解説します。
1.捜査機関から取調べを受ける
被疑者になると、まずは警察や検察などの捜査機関から取調べを受けます。
取調べで確認される内容は、主に以下のとおりです。
- 事件との関係性
- 事件の認否
- 犯行の動機や経緯
警察は、被疑者からこのような事情を聞いたうえで、「検察官へ送致するか」「逮捕する必要があるか」を判断します。
なお、被疑者が取調べで話した内容は、供述調書という書類にまとめられます。
供述調書は、裁判で使用される重要な証拠です。
そのため、もし取調べで事実と違う内容を話してしまうと、そのまま不利な証拠として使用されるおそれがあります。
一度認めた内容をあとから覆すのは難しいため、取調べには慎重に対応してください。
2.場合によっては身柄を拘束される
取調べの結果、犯罪の嫌疑が強いと判断されると、逮捕されるおそれがあります。
逮捕されると警察署の留置場に入れられ、自宅には帰れなくなります。
学校や仕事にも行けず、スマートフォンも使えません。
ただし、全てのケースで逮捕されるわけではありません。
逮捕の要件(逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれ)を満たした場合に逮捕されます。
逮捕されない場合は「在宅事件」として扱われ、身柄を拘束されることなく捜査が進みます。
この場合は自宅で通常通りの生活を送りながら、警察からの呼び出しに応じて取調べを受けることになります。
被疑者になったときに備えて覚えておくべき4つの権利
刑事事件の被疑者になると、警察や検察による取調べが始まります。
取調べを受けるにあたって不安を抱えてしまう方は多いでしょう。
しかし、被疑者は法律で保障された権利を有しています。
権利の内容を理解して適切に権利を行使できれば、不利な状況になるのを防げます。
被疑者に認められている主な権利は、以下の4つです。
- 黙秘権
- 弁護士選任権
- 接見交通権
- 署名押印拒否権
それぞれの権利について、条文を引用しながら詳しく解説します。
1.黙秘権|取調べ中に話さなくてよい権利
黙秘権とは、取調べで質問されたことに対し「言いたくないことは言わなくてよい」という権利です。
黙秘権は、憲法第38条第1項や刑事訴訟法第198条第2項、第311条第1項などで保障されています。
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
② 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
第三百十一条 被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
取調べで黙っていたからといって、「罪を認めた」とみなされることはありません。
全ての質問に答えなくても、特定の質問だけ答えなくてもよいです。
ただし、黙秘をすれば必ず無罪となるわけではありません。
警察はほかの証拠を使って捜査を進め、犯罪の嫌疑を固めます。
また、黙秘を貫くことで、「反省していない」と受け取られるケースもあります。
黙秘を貫くかどうかは、弁護士と相談して慎重に決めましょう。
2.弁護士選任権|いつでも弁護士に依頼できる権利
弁護士選任権とは、被疑者がいつでも弁護士を依頼できる権利です。
弁護士選任権は、刑事訴訟法第30条で保障されています。
第三十条 被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。
② 被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。
取調べでは、警察官や検察官とひとりで向き合わなければなりません。
法律の知識がないまま対応すると、言いくるめられてしまったり、不利な立場に追い込まれたりするおそれがあります。
その点、弁護士がいれば、取調べでどう答えるべきかアドバイスをもらえたり、不当な扱いを受けたときに抗議してもらえたりします。
なお、本権利は全ての被疑者に認められています。
ひとりで抱え込んで悩むのではなく、まずは弁護士を依頼して、取調べに冷静に対応しましょう。
3.接見交通権|立会人なしで弁護士と面会できる権利
接見交通権とは、警察官などの立会人なしで、弁護士と二人きりで面会(接見)できる権利です。
接見交通権は、刑事訴訟法第39条第1項で保障されています。
第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
家族や友人が面会に来たときは、必ず警察官が立ち会い、会話の内容を聞かれます。
また、面会できる時間も短く制限されます。
しかし、弁護士との面会には警察官の立ち会いがなく、時間の制限もありません。
そのため、誰にも聞かれずに相談できたり、今後の対策をじっくり練ったりできます。
本権利のおかげで、逮捕されていても弁護士による適切なサポートを受けられるのです。
4.署名押印拒否権|供述調書へのサインを拒否できる権利
署名押印拒否権とは、取調べで作成された供述調書の内容に納得がいかない場合、サインを拒否できる権利です。
署名押印拒否権は、刑事訴訟法第198条第5項で保障されています。
第百九十八条(中略)
⑤ 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
警察官や検察官は、被疑者が話した内容を供述調書にまとめます。
そのため、話したニュアンスと違っていたり、言ってもいないことが書かれていたりすることも少なくありません。
内容に間違いがあれば、訂正を要求しましょう。
もし訂正してくれないときや、内容に納得がいかないときは、安易にサインをしてはいけません。
一度サインをしてしまうと、内容に間違いがないことを認めたことになります。
たとえ「サインしないと帰さない」と脅されても、内容に納得できないときは勇気を持って断りましょう。
被疑者になったときにとるべき対応
事件を起こしてしまって被疑者になる可能性が高い、またはすでに警察から連絡が来ている場合、ただ不安を感じて待っているだけでは状況は良くなりません。
少しでも処分を軽くし、日常生活への悪影響を抑えるためには、早めの対応を心がけましょう。
まずおこなうべき主な対応は、以下の3つです。
- いち早く弁護士に相談・依頼する
- 弁護士を通じて被害者と示談をする
- 弁護士に出頭のサポートをしてもらう
ここでは、それぞれの対応を具体的に解説します。
1.いち早く弁護士に相談・依頼する
最も優先すべきは、刑事事件を得意とする弁護士への相談です。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 逮捕される可能性や刑罰の見込みを教えてもらえる
- 取調べでの受け答えに関するアドバイスをもらえる
- 孤独な状況でも、精神的な支えとなってくれる
逮捕されてから72時間は、家族ですら被疑者と面会できません。
しかし、弁護士であれば面会が可能です。
弁護士は直接本人と会って状況を確認し、その場で適切なアドバイスをくれます。
早期の身柄解放を目指すためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
2.弁護士を通じて被害者と示談をする
傷害・窃盗・痴漢などの被害者がいる犯罪であれば、被害者と示談を成立させることが重要です。
示談とは、加害者側が被害者と話し合い、謝罪や被害弁償をして和解することをいいます。
示談が成立し、被害者から「処罰を望まない」という許しをもらえれば、以下のような有利な結果につながりやすいです。
- 「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」がないと判断され、逮捕されにくい
- 被害者の処罰感情が緩和されていることから、検察官が起訴を控えやすい
- 仮に有罪判決が下されても、執行猶予がつく可能性が高い
しかし、加害者が直接被害者に連絡を取ろうとすると、恐怖心を与え、事態がさらに悪化するおそれがあります。
そのため、弁護士に間に入ってもらうのが一般的です。
弁護士であれば、被害者の感情に配慮しながら、冷静に交渉を進めてくれます。
3.弁護士に出頭のサポートをしてもらう
自ら警察署や裁判所に出向く行為を出頭といいます。
自分から名乗り出ることで反省している姿勢を示せるため、逮捕を回避できたり、刑罰を軽減できたりする可能性があります。
しかし、ひとりで警察署へ行くのは勇気がいるはずです。
「行ったらそのまま逮捕されるのではないか」と不安で動けなくなってしまうかもしれません。
そのようなときは、弁護士に警察署への同行を依頼しましょう。
弁護士と一緒に警察署へ行けば、「逃げる心配はないので逮捕の必要はない」と警察官に説明してくれます。
また、警察署へ行く前に相談しておけば、当日の取調べでどのように話せばよいか、アドバイスも受けられるので安心です。
また、弁護士がいれば、警察官も強引な取調べを防ぎやすくなります。
さいごに|ベンナビ刑事事件で弁護士を探してサポートを受けよう
本記事では、被疑者になるケースや被疑者になると発生する手続きについてわかりやすく解説しました。
被疑者になると、警察などの捜査機関から取調べを受けます。
場合によっては、逮捕されて身柄を拘束されることもあります。
もし不安な状況になっても、黙秘権や弁護士選任権を行使して、不利な取調べを防ぐ意識を持ってください。
供述調書の内容が間違っていたら、絶対にサインをしないことも覚えておきましょう。
また、逮捕や重い処分を避けるためには、すぐに弁護士へ連絡することも重要です。
早めに相談すれば、被害者との示談交渉や警察署への同行をお願いできます。
その結果、逮捕や有罪判決を防げる可能性があります。
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