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【弁護士解説】風俗でレイプに当たる行為とは?トラブルへの対処方法

一歩法律事務所
南 陽輔
監修記事
【弁護士解説】風俗でレイプに当たる行為とは?トラブルへの対処方法

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ファッションヘルスやデリヘル等の風俗店を利用した際、女性従業員と本番行為(性行為挿入)に及んでしまう方が一定数いるようです。しかし、本番行為は、女性従業員との合意・同意があったとしても、売春防止法に違反する違法行為です。客側が売春防止法で罰せられることはありませんが、違法行為であることは認識しておく必要があるでしょう。

さらに、女性従業員の合意・同意がないのに無理やり本番行為に及んでしまった場合には、強制性交等罪(かつての強姦罪)にあたり、処罰されることになります。中には「風俗嬢なのだからプレイの一環として許される」「お店に在籍している女の子なのだからお客さんを喜ばせる義務がある」と考える方もいるかもしれません。しかし、相手が性的サービスを提供する女性従業員だからといって、レイプが罪にならないということはありません。合意・同意のない本番行為は、明確にレイプとして扱われます。刑事罰だけではなく、女性従業員や風俗店側に対しての賠償責任等の民事上の法的責任も問われることになります。

この記事では、風俗店で働く女性従業員に対して無理やり性行為に及んだ場合に生じる法的な問題について、弁護士の視点で法律的に解説します。

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レイプとは何を指すのか

現在の刑法177条において、強制性交等罪は「13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交をした者は、強制性交の罪とする」と定められています。

同条は、かつては強姦罪として「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は強姦の罪とする」と定められていました。このかつての強姦罪について、女性による男性への強姦も含めるべき、また、女性性器への挿入以外の性的な行為も含めるべきとの議論が重ねられ、強姦罪から現在の上記177条の強制性交等罪へと法改正されました。

ただ、法改正がされてもレイプが犯罪であることに変わりはありません。レイプが強制性交等罪として処罰される要件としては、「暴行または脅迫を用いて」「性交等する」ということです。

ここでの「暴行または脅迫を用いて」というのは、被害者の性的自由を保護するという観点から、被害者が抵抗するのが困難な程度の暴行または脅迫を指すとされています。また、「性交等する」というのは、性行・肛門性行・口腔性行を指します。男性から女性従業員に対するレイプにおいては、性器の挿入で犯罪成立となるでしょう。射精の有無は関係ありません。

さらに、女性側に怪我をさせた場合や死亡させた場合には、強制性交等致傷罪(刑法181条)として、より重い刑で処罰されることになってしまいます。

風俗でのレイプも「強制性交等罪」に問われる

上記の通り、強制性交等罪の成立要件は「暴行または脅迫を用いて性交等する」ということです。これは風俗店であっても同じです。女性従業員が拒否しているのに、無理やりに性交することは強制性交等罪に該当します。

SMクラブなどの風俗店によっては、「レイプコース」という疑似的なメニューを提供していることもあるようですが、これはあくまでもプレイであり、法律的にみれば、レイプコースの提供は女性従業員・風俗店側の合意・同意を示していると言えます。そのようなコースでもないのに無理やり本番行為を行うことは強制性交等罪として処罰される危険性があります。レイプコースやレイププレイはSM等と同様に、あくまで「プレイ」の一種に過ぎず、双方の合意あってこそ許されるものであることを認識しておきましょう。

風俗で働いているのだから本番行為も許容しているだろう、営業の一環として許容しているだろうという推定は働きません。むしろ、売春禁止法で売春(本番行為)が明確に禁止されていることからすれば、女性従業員としても本番行為に同意していたわけではないと推定されます。

「強制性交等罪」の法定刑

強制性交等罪の法定刑は、「5年以上の有期懲役」です。執行猶予は懲役3年以下のものにしか付けられませんので(刑法25条)、5年以上の有期懲役ということは、執行猶予が付かず、実刑になる危険性が高いということです。なお、法律上は酌量減刑により判決で最短2年半にまで減刑することができ、その点で実刑判決を回避することも理論上は可能ですが、酌量減刑して更に執行猶予を付けてもらうには、女性従業員側と示談が成立し、反省の態度が明らかであるなどのよほどの事情がないと認められません。つまり、強制性交等罪に該当すれば、いきなり実刑判決を受けて刑務所に入る危険性があることを認識しておきましょう。

また、強制性交の際に、女性に怪我をさせてしまうと、強制性交等致傷罪(刑法181条)に当たります。同罪の法定刑は「無期または3年以上の懲役」と定められています。つまり、同罪に該当してしまうと、無期懲役刑を科される可能性もあることになります。

「強制性交等罪」の成立要件

上記の通り、強制性交等罪の成立要件は、「暴行または脅迫を用いて」「性交等する」、ということです。これは風俗店であっても同じです。性行等に含まれる行為には以下のようなものがあります。

  1. 性行
  2. 肛門性行
  3. 口腔性行

性交は、文字通り、男性器と女性器との交わりであり、つまり、男性器を女性器に挿入することが性交に該当します。

加えて、女性のお尻の穴に男性器を入れる、いわゆるアナルセックスについても、強制性交等罪(177条)では、「肛門性交」も対象としていますので、無理やりアナルセックスを行った場合には、強制性交等罪で処罰されることになります。

さらに、強制性交等罪では、暴行または脅迫を用いた「口腔性交」も処罰の対象とされています。口腔性交とは、男性器を口にいれる、いわゆるフェラチオと言われる行為です。風俗店によっては、フェラチオはオプションであり、風俗店利用前の事前の申し込みがないと行わないとしているところもあります。女性が嫌がっているのに無理やり女性の口に男性器を入れることは「口腔性交」にあたり、強制性交等罪で処罰される危険性があります。

暴行または脅迫の有無が大きな要件になる

強制性交等罪で法的に最も争いになるのは「暴行または脅迫」があったかどうかです。この「暴行または脅迫」という要件については、被害者の性的自由を侵害する行為は許されないという観点から、比較的広く認められるように法解釈されています。したがって、女性従業員が拒否していれば「暴行または脅迫」があったと認定されるリスクが大きいと言えます。基本的な理解としては、女性従業員側が同意していなければ、「暴行または脅迫」があったものと推定されると認識しておいた方が良いでしょう。

風俗でレイプに及び罪に問われるケース

風俗店でレイプをしてしまった人が罪に問われるその他のケースを紹介します。

強制性交等未遂(強姦未遂)

相手が同意していないにも関わらず男性器を女性器に挿入すると強制性交が成立します。これに対して、挿入しようとしたが、女性器の周囲に男性器が当たっただけで挿入できなかったという場合には、強制性交等未遂として、刑法180条により処罰されることになります。

(未遂罪)

第百八十条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。

引用:刑法

挿入できなかった場合において、どの範囲までを強制性交等未遂として処罰されるかは、個別の事情により判断されることになります。

強制わいせつ罪

「強制わいせつ罪」とは、刑法176条において「13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」と定められています。暴行または脅迫をもちいるという点で、強制性交等罪と強制わいせつ罪は共通しています。「わいせつな行為」とは、法律的には「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」と定義されていますが、一般的には、アナルセックス・フェラチオを含む強制性交等罪に該当する行為以外の性的な行為と認識してください。

つまり、暴行または脅迫を用いて性交以外の性的な行為をした場合には、強制わいせつ罪で処罰されることになります。例えば、無理やり体に触ったり、キスしたりする行為が該当するでしょう。

風俗店でレイプに及び逮捕された判例

派遣型マッサージを利用した男性が、セラピストとして派遣された女性従業員に対して、暴行・脅迫を用いて性交したとして起訴された事案で、懲役5年の実刑判決が下されました。男性側は女性の同意があった旨を主張しましたが、利用前に性的サービスを行わない旨の誓約書を提示し、男性がこれに署名していることや、男性が本番をすることに伴い渡そうとしたお金を女性が受け取りを拒否していたことなどから、女性に同意はなく、暴行・脅迫を用いた性交であると認定されました。なお、その後の控訴審で被告人の男性と被害者の女性との間で示談が成立し、控訴審判決では懲役4年の実刑判決へと減刑されました。

参考:東京地裁令和元年12月2日判決(日本評論社・新判例解説869号25頁)

レイプをして逮捕された後の流れ

ダイアグラム自動的に生成された説明

女性従業員の同意なく本番を行ってしまうと、強制性交等罪で逮捕される危険性があります。逮捕された後の事件の流れですが、逮捕されてから48時間以内に送検され、勾留するかどうかが決められます。一般的には、逮捕された後に勾留されずに釈放されるというのは軽微な事案で多く、強制性交等罪で逮捕された場合に釈放されるケースは少ないと考えられます。勾留されると、原則10日間は身体拘束され、拘置所ないし警察署に留置されます。その間に警察・検察が捜査を行い、起訴するかどうかを決めます。なお、勾留は最大20日間まで延長されることがあります。起訴前の勾留では保釈はできません。

10日~20日間の勾留期間を経た時点で、検察官が起訴するかどうかの処分を決めます。検察官が、起訴しない(不起訴処分)、あるいは、起訴するかどうかを猶予する起訴猶予処分とした場合には、その時点で釈放されます。これに対して、起訴された場合は、裁判が終わるまで勾留が続くことになり、拘置所で留置さえることになります。起訴後から裁判(判決)までの間の勾留を解くには、保釈という制度を利用します。保釈は、裁判所が定める一定の金額を裁判所に納付することで身体を自由にしてもらうという制度です。

刑事裁判の判決に至り、その内容が実刑判決であった場合には、控訴をしなければ、そのまま刑が確定し、刑務所で服役することになります。判決の内容が執行猶予付きの判決だった場合には、その判決が出た時点で身体拘束は解かれます。起訴後に保釈して外に出ていた場合には、実刑判決であれば、判決言い渡しの際に再び身体拘束されることになります。この時、保釈金は戻ってきます。執行猶予付き判決であった場合には、そのまま身体拘束を受けることなく生活を送ることができます。

強制性交等罪は法定刑が5年以上の懲役であり、執行猶予付き判決がでる可能性は低いです。つまり、逮捕されると、起訴後の保釈をしない限りは、そのまま勾留され、判決後は刑務所に服役することになる可能性があるということです。

風俗でレイプに及んだ場合に弁護士へ相談するメリット

風俗を利用して女性従業員の同意なく本番を行ってしまった場合は、円滑な解決のためにも、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。以下、弁護士に相談するメリットを挙げます。

①刑事事件ではなく示談での解決を目指せる

刑事事件になるかどうかは、女性従業員、風俗店側が警察に被害届を提出するかどうかにかかっています。風俗店側が警察に被害の申告をする前に風俗店側と示談できれば、刑事事件となることを回避することができます。

もし、風俗店側が被害届を出すなど、刑事事件化してしまったとしても、早く示談を成立させることで、検察が起訴せずに不起訴処分で事件を終わらせる可能性もあるでしょう。

刑事事件化して検察官が起訴した場合には、その後に示談ができたとしても判決で無罪になることはありません。暴行脅迫がない等、裁判所が強制性交等罪の要件を欠くとして無罪判決としない限りは、軽くても執行猶予付き判決となるに留まります。

このような刑事事件の流れを考えると、できる限り早く示談を成立させ、刑事事件化しない、あるいは不起訴処分で終わるよう努めるべきです。

風俗店側と示談交渉を行うには、専門家である弁護士に相談したほうが良いと言えるでしょう。

②風俗店からの脅迫や恐喝を止めることができる

風俗店によっては、本番行為に対して、罰金として法外なお金を請求してくることもあります。そうした請求の中で、風俗店は、お金を払わなければ痛い目に遭う等の脅迫や、暴言等の威圧的な言動を用いて強引にお金を支払わせようと恐喝してくることがあります。

弁護士に相談して、代理人となって交渉してもらえば、こうした脅迫や恐喝を止めることができます。

③家族や会社へバレないように解決に動ける

悪質な店舗であれば、「家族や会社にばらすぞ」等と言って脅迫してくることもあります。弁護士に代理人についてもらえば、弁護士から風俗店側に家族や仕事場に連絡することは違法行為である旨を告げて、こうした行為をしないように止めてもらうことができます。また、弁護士は依頼者の家族や会社に直接連絡したりすることはまずありません。

弁護士に相談することで、家族や会社にばらされることを回避できるでしょう。

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まとめ

風俗嬢(女性従業員)との合意なく本番行為に及ぶことは以下のようなリスクがあります。

  • 同意なく本番行為に及ぶと強制性交等罪で逮捕され、処罰を受けるリスクがある
  • 相手が風俗嬢だからといって、強制性交等罪の要件が軽くなるわけではない、同意は推定されない
  • 強制性交等罪の法定刑は懲役5年以上と非常に重いものである
  • 仮に風俗嬢の同意があったとしても売春防止法に違反する違法行為である

上記の点から、風俗嬢の同意なく、本番行為に及ぶことは非常にリスクがあると言えます。風俗店だからといって、本番行為への同意が推定されるわけもなく、むしろ同意したら売春防止法違反に問われるのは風俗店側なので、基本的には同意しない風俗店・女性従業員がほとんどです。

風俗嬢と性交してトラブルになった場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。刑事事件化する前に示談すべきか、風俗店側とどのように交渉すべきか等、弁護士が最適なアドバイスをしてくれます。

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この記事の監修者
一歩法律事務所
南 陽輔 (大阪弁護士会)
大阪大学法学部卒業。法律事務所に12年勤務した後、2021年3月独立開業。いわゆる「町弁」として、労働トラブルや、離婚トラブル等の一般民事事件全般、刑事事件トラブルなどを主に取り扱っている。
編集部

本記事はベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ刑事事件(旧:刑事事件弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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