併合罪とは?観念的競合・牽連犯との違いや量刑の計算方法などを解説
併合罪(へいごうざい)とは、同一人物が2つ以上の罪を犯したが、確定裁判を経ていないものを指します。あるいは過去に禁錮以上の刑に処する確定裁判があったとき、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪のことをいいます。(刑法第45条)
よく併合罪と勘違いされやすいものとして、観念的競合と牽連犯が挙げられます。観念的競合は1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合(刑法第54条)に適用されます。
一方、牽連犯は犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れる場合(刑法第54条)に適用されます。
この記事では、併合罪・観念的競合・牽連犯それぞれの違いや、併合罪の量刑の計算方法などについて解説します。
併合罪とは
併合罪は同一人物が2つ以上の罪を犯し、かつ確定裁判を経ていない場合に当てはまり、刑法にて以下のように定義されています。例としては、強盗殺人を犯した後に隠ぺいのため放火した場合などが当てはまります。(強盗殺人罪&放火罪)
第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
引用元:刑法第45条
観念的競合との違い
併合罪と似たものとしては、まず観念的競合が挙げられます。観念的競合は刑法第54条にて1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合と定義されており、例としては警官に暴行を加えた場合などが当てはまります。
(暴行罪&公務執行妨害)
牽連犯との違い
併合罪と似たものとして、牽連犯も挙げられます。牽連犯は刑法第54条にて犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れる場合と定義されており、例としては家屋に忍び込み金庫のお金を盗んだ場合などが当てはまります。
(住居侵入罪&窃盗罪)
法条競合
中には、1度に複数の罪を犯しても併合罪とならず、法条競合が適用されるケースも存在します。
法条競合とは、複数の罪を犯しているように見えても、刑罰法規上1つだけしか適用されないことを指します。
法条競合は、競合する罰条が特別関係、補充関係、択一関係、吸収関係いずれかに当てはまる場合に適用されます。
特別関係
特別関係とは、犯した罪が一般法と特別法の関係にある場合を指します。
一般法は適用される範囲が広い法律のことで、例として横領罪が挙げられます。一方、特別法は適用される範囲が狭い法律のことで、例として業務上横領罪が挙げられます。
補充関係
補充関係とは、犯した罪が基本法と補充法の関係にある場合を指します。
基本法は国の制度に関する基本的な方針が定められている法律のことで、例として現住建造物等放火罪が挙げられます。一方、補充法は基本法を補う法律のことで、例として非現住建造物等放火罪が挙げられます。
択一関係
択一関係とは、犯した罪が排他的関係にあり、どちらかのみが適用される場合を指します。
例として、未成年者誘拐罪と営利誘拐罪などが挙げられます。
吸収関係
吸収関係とは、犯した罪のうち、一方が他方を吸収する関係にある場合を指します。
例として、強盗罪と暴行罪などが挙げられます。
併合罪の法定刑の計算方法
併合罪の法定刑は刑の長期を罪が重い方の刑期×1.5とすると定められています。(刑法第47条)
例えば、刑の長期が懲役20年の罪と懲役15年の罪を1度に犯した場合、併合後の長期は【20×1.5=30年】です。ちなみに、併合罪により長期が伸びる場合は30年が上限であり、併合対象となる罪の法定刑が死刑・無期懲役は特に法定刑の修正はありません。
ちなみに、この場合の長期とは「長い期間」という辞書的な意味ではありません。『懲役〇〇年以上●●年以下』という場合の●●年の方を、長期といいます。
併合罪の判例
2017年12月広島地裁の判決
2016年9月に広島県にて、被告人が被害者を鈍器で殴打して殺害。さらに被害者の所持していた現金を奪った事件です。裁判所は「被告人は殺意だけでなく、強盗の犯意も持っていた」として、被告人に対して無期懲役との判決を下しました。
参考元:裁判所:下級裁裁判例
2018年2月名古屋地裁の判決
2016年7月に愛知県にて、被告人A・Bが拳銃で被害者を殺害。さらに乗用車を焼損させたり、覚せい剤を使用したりするなど、複数の罪を犯した事件です。裁判所は「刑事責任は非常に重い」として、被告人両名に対して懲役30年との判決を下しました。
参考元:裁判所:下級裁裁判例
刑事事件の被疑者・被告人となった場合に取り得る手段
もしご自身が罪を犯してしまった場合は、以下のような防御活動があり得ます。
被害者との示談
被害者と直接交渉を進めることで、早期釈放・減刑が獲得できる可能性は高まります。
弁護士によるサポート
弁護士に依頼することでも早期釈放・減刑を望むことができます。
弁護士に依頼するメリット
- 刑事事件の流れや手続きについてアドバイスがもらえる
- 接見禁止期間中でも面会が可能
- 冤罪事件の弁護も依頼できる
呼べる弁護士
刑事弁護で登場する弁護士には国選弁護士、私選弁護士、当番弁護士がいます。
弁護士費用
弁護士費用はところによって様々ですが、一般的な相場は下のとおりです。ただし、当番弁護士、国選弁護人は費用はかかりません。
- 相談料…1時間あたり1万円
- 接見費用…約2~5万円
- 着手金…約30~50万円
- 報酬金…約30~50万円
関連記事:刑事事件の弁護士費用相場|良い弁護士に出会う3つの方法
まとめ
併合罪の中には、一見しただけでは観念的競合・牽連犯と判別が難しいケースが存在します。さらには法条競合に当てはまるケースなども存在しますので、判断に困ることでしょう。
もし1度に複数の罪を犯してしまった場合には、まず併合罪が適用されるのか確認する必要があります。
もちろん犯した罪について反省したうえで、ご自身が犯した罪は併合罪に当てはまるか、また量刑はどれほどになるか、不安な方は弁護士に相談を依頼してもよいでしょう。
参照元一覧 |
【即日接見可|不起訴・示談交渉の実績豊富◎】◆暴行/傷害/性犯罪/薬物/横領等で警察の取り調べを受けた方・捜査されている方◆早期釈放は、逮捕から72時間以内の初期対応にかかっています!
事務所詳細を見る【不起訴実績多数】【元検事が在籍】ご家族の逮捕は今すぐお電話を!【早期釈放に自信】不当な長期勾留を許さず、早期釈放・示談成立・不起訴に向けてスピード対応《詳細は写真をクリック》
事務所詳細を見る【痴漢/盗撮/不同意わいせつなど、性犯罪事件に注力◎】夜間相談&当日接見可能◆『家族が逮捕された』『警察から呼び出しを受けた』方はすぐにご相談を!解決実績1,500件以上の弁護士が、早期保釈・示談成立に向けて迅速対応!
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
その他の犯罪を起こしたらに関する新着コラム
-
罪を犯してしまったものの、証拠がないから大丈夫だろうと安心している方もいるかもしれません。本記事では、警察がどのような状況で動くのか、証拠の種類や重...
-
本記事では、YouTube違法アップロードに関する逮捕事例などを交えながら、問われる罪や視聴者側の対処法などを解説します。
-
いじめは犯罪だと聞いたことがあるかもしれません。自分の子どもが逮捕されてしまうのか、犯罪者になってしまうのか、と不安に感じる方もいるでしょう。本記事...
-
ついつい感情的になり、他人の物を壊してしまったあとで、防犯カメラに撮られていたのではないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では...
-
給付金の不正受給をしてしまったら、返還方法を含めて弁護士に相談しましょう。無料相談できる窓口もたくさんあります。不正受給は発覚すれば詐欺罪に問われる...
-
脅迫事件を含む刑事事件では逮捕・勾留、起訴までの時間が限られているため、できる限り早く弁護士に相談するのが重要です。そこで、弁護士を選ぶ際のポイント...
-
迷惑防止条例違反の初犯の量刑はどのくらいなのでしょうか。不起訴?罰金?もしかして懲役?と不安に感じているのではないでしょうか。この記事では、迷惑防止...
-
一見軽微な犯罪と思われる器物損壊罪は弁護士に相談する必要がある?実は、損壊した部分や内容によっては別の犯罪に該当することも。この記事では、弁護士に相...
-
たとえ初犯であっても、恐喝で逮捕された場合は重い刑事罰が科せられる可能性があります。この記事では、恐喝の初犯で逮捕された場合、どれほどの量刑が科せら...
-
脅迫の初犯で逮捕された場合、どれほどの量刑が科せられるのでしょうか。場合によっては懲役刑となる可能性もあるため、家族や知人などは早期の対応が大切と言...
その他の犯罪を起こしたらに関する人気コラム
-
違法ダウンロード(いほうだうんろーど)とは、インターネット上に違法にアップロードされたコンテンツ(画像や動画等)をダウンロードする行為のことです。こ...
-
迷惑電話や執拗なクレームは、威力業務妨害に問われる危険があります。自分では正当な理由があると思っていても、刑罰が科せられる可能性があります。この記事...
-
脅迫罪とは被害者に害悪の告知をする犯罪で、【2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金】の法定刑が定められています。脅迫に聞こえるような脅し文句や言葉...
-
本記事では、名誉毀損が成立する条件、名誉毀損が成立する具体例、トラブルに発展した時の対処法について解説します。
-
住居侵入罪(いわゆる不要侵入)は、正当な理由もなく他人の住居に侵入した際に成立する犯罪です。この記事では、住居侵入罪で逮捕された場合の逮捕後の流れや...
-
映画や小説などのフィクションでよく見るサイコパスは、現実に存在します。この記事では、犯罪心理学者にサイコパスの特徴や、その基準を伺いました。イメージ...
-
公文書偽造(こうぶんしょぎぞう)とは、国や地方公共団体などの機関や公務員が作成する公文書を偽造・変造する犯罪です。【法定刑は1年以上10年以下】と意...
-
不法投棄(ふほうとうき)とは、法律(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に反して決められた処分場以外に、廃棄物を投棄することです。
-
死刑になる犯罪は全部で18種類あり、殺人罪などのイメージしやすいものから、海賊行為を規定したイメージしにくいものまで多くあります。裁判で死刑が下され...
-
護身目的でもナイフなどを携帯できないことをご存知ですか?この記事では銃刀法違反で逮捕されかねないケースと銃刀法違反の罰則、逮捕されてしまったときにと...
その他の犯罪を起こしたらの関連コラム
-
酔っ払って、物を壊してしまった。器物破損での逮捕は、比較的罪の軽い犯罪です。しかし、軽いからこそ身の回りでもよく発生する犯罪でもあります。
-
2chの書き込みで逮捕されるケースがあります。この記事では、2chの書き込みで逮捕された場合の対処法から、考えられるリスク、弁護士が行ってくれる弁護...
-
迷惑電話や執拗なクレームは、威力業務妨害に問われる危険があります。自分では正当な理由があると思っていても、刑罰が科せられる可能性があります。この記事...
-
どのような行為が軽犯罪法違反で罰則の対象となるのか、逮捕されるのかどうか、更に罰則が重くなることはないのかなど、軽犯罪法に違反する行為やその罰則、弁...
-
死刑になる犯罪は全部で18種類あり、殺人罪などのイメージしやすいものから、海賊行為を規定したイメージしにくいものまで多くあります。裁判で死刑が下され...
-
死体遺棄とは、死体を埋葬せずに捨て置く犯罪行為で、犯した場合は死体遺棄罪で罰せられます。遺骨の遺棄は罰則対象となりますが、散骨については明確に罰する...
-
2000年に『ストーカー規制法』が施行されて以来、ストーカー行為にも刑事罰が科されるようになりました。ストーカー規制法の対象となる行為や罰則、逮捕さ...
-
強要罪とは、暴行や脅迫を用いて、相手に義務のないことを行わせる(強要)犯罪です。なかなか馴染みのない罪名かもしれませんが、身近でも起こり得る犯罪で、...
-
たとえ初犯であっても、恐喝で逮捕された場合は重い刑事罰が科せられる可能性があります。この記事では、恐喝の初犯で逮捕された場合、どれほどの量刑が科せら...
-
不退去罪(ふたいきょざい)とは、住居などから出ていくように要求を受けたにもかかわらず、退去せずにそのまま居座り続けることで罪が成立する犯罪です。
-
いじめは犯罪だと聞いたことがあるかもしれません。自分の子どもが逮捕されてしまうのか、犯罪者になってしまうのか、と不安に感じる方もいるでしょう。本記事...
-
ついつい感情的になり、他人の物を壊してしまったあとで、防犯カメラに撮られていたのではないかと不安に感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では...
その他の犯罪を起こしたらコラム一覧へ戻る